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2018年のベストテンです。

2018年は、後半ほとんど映画館へ行けていないのですが、それでも観た映画を並べてみたら結構いい映画が多くて、強引ですがベストテンを作ってしまいました。昨年は観た本数が少ない割にいい映画が多かったみたいです。

第1位「ぼくの名前はズッキーニ」
コマ撮りの人形アニメで、冒頭はちょっとブラックな味わいへ進むのかと思わせるのですが、親を失って施設に預けられた主人公の物語が、すごく泣かせるのですよ。ただ、泣かせるというのではなく、そこに「子供をいじめたり、捨てちゃダメ」という明確なメッセージがあって、作り手の怒りと希望が伝わってくるところがすごくよかったです。生身の人間が演じたら、痛々しくて生臭くなってしまうであろうお話が、人形アニメになったことで、その言いたいところが素直に心に届く当たりのうまさも含めて、2018年のベストワンです。ラストシーンはマジで大泣きさせられちゃいましたが、泣かせるための映画ではないところが、憎いと言うか、まんまとはまってしまったと言うか。

第2位「告白小説、その結末」
お疲れ気味の人気女性作家が、ファンだという女性と知り合い、仲良くなるのですが、段々、そのファンの女が作家の生活を侵食し始めるというお話で、ロマン・ポランスキー監督が語りのうまさで最後まで引っ張るミステリーの一編。ラストをきちんと説明しないで、観客に投げてるんですけど、それでも面白くて、観た後の満足感が高かったです。ああ、こういう展開、こういう結末でも面白い映画は作れるんだなあって感心しちゃいました。最近の映画では珍しい、知的エンタメ度の高い映画ということでここに上げてしまいました。

第3位「タリーと私の秘密の時間」
共働きで育児にお疲れのヒロインにさらに子供がうまれてグロッキー状態。そんな彼女がナイトシッターを頼んだら、これがちょっと不思議ちゃんだけど有能で、荒れていた家庭の中も明るく変わっていくというお話なんですが、これが結構シリアスな展開になるのがびっくり。日本の家庭にもあてはまる題材だけに、若いカップルにオススメしたい映画。これすごいいいところ突いてる映画だと思ったんだけど、あまり話題にならなかったんだよなあ。


第4位「男と女、モントーク岬で」
自分の過去の恋愛をモチーフに小説を書いている人気作家が、かつての恋人と再会し、ちょっとしたアバンチュールを期待するという男の身勝手視点と、過去に決着をつけたい恋人の視点が交錯するのが面白い大人の寓話のようなお話でした。二人の相容れない感じを巨匠フォルカー・シュレンドルフが丹念に描いていて見応えがありましたので、これを4位にあげちゃいます。

第5位「スリー・ビルボード」
惨殺された娘の母親が、街の入り口に警察批判の看板を掲げたことから起きるドラマは、物語として大変見応えのあるものでした。絶望と希望が交錯するドラマの中に、ぎりぎりの善意を織り交ぜていく脚本と演出が見事でした。血生臭い展開もあるし、愉快になれる映画ではないけれど、映画を観たという満足感が一番高かった映画です。

第6位「Search/サーチ」
パソコンのディスプレイ上の映像だけでドラマが展開するという、かなり奇をてらった作りの映画ながら、行方不明の娘を探すドラマがスリリング。二転三転する展開が見事で、サスペンスミステリーとして大変面白かったです。あまり内容を語れないのですが、パソコン上の映像だけなのに、きちんと大スクリーンでの鑑賞に堪える絵になっているのも点数高く、なるほど基本のアイデアの上に、色々な趣向を盛り込んでいることに感心させられました。

第7位「ロープ 戦場の生命線」
停戦後のボスニア・ヘルツェゴビナで働く「国境なき水と衛生管理団」のチームのある一日を描いたドラマです。地雷があちこちに埋まっていて、まだ武装した連中もうろうろしている中で、丸腰で頑張る国際NGOを、コミカルな味わいで描いたドラマは、日本で平和に暮らしている自分には色々な発見がありました。死と隣り合わせでも、住民の日々の暮らしが続いていく様を見せていくところも驚きでしたが、、そんな中に外国から乗り込んで行って、住民のために頑張るNGOの姿をコミカルに見せたセンスもよかったです。説教臭くなく、人の善意と勇気、そしてしぶとさを描いた映画として記憶にとどめておくべき映画と思いました。

第8位「女と男の観覧車」
ウディ・アレンの映画ですが、舞台劇のような見せ方で、役者の演技で物語を語る作りが新鮮で、ヒロインのケイト・ウィンスレットがまたうまい。元女優の四十女が、義理の娘が突然転がり込んできたことで、不幸が連鎖した挙句、最後は壊れていくという悲劇をどこかシニカルに眺めた視点で描いて、ドラマとしての見応えがありました。

第9位「恋するシェフの最強レシピ」
中国製のベタなラブコメですが、ヒロインがかわいくて、お約束の展開がすごく楽しかったので、ベストテンに入れちゃいました。大富豪の息子、金城武と天才シェフ、チョウ・ドンユイの恋愛模様は、夢のようなカップルではあるんですが、どこかどんくさい恋愛模様が何だかいとおしくなっちゃうのですよ。キスシーンすらないのに、二人が好きあっているのがビンビン伝わってくるのが楽しい一品でした。

第10位「アンロック 陰謀のコード」
CIAの尋問官であるヒロインがある事件に巻き込まれ行くというサスペンスものです。傑作というわけでもないし、とびきりのオススメではないのですが、ベテラン職人マイケル・アプテッド監督の手堅い演出で、よくできた娯楽映画に仕上がっています。最近、こういうジャンルで手堅い面白さを持った映画が少ないのであえてベストテンに入れさせていただきました。

この他では、ドラマとしての見応えがあった「バトル・オブ・セクシーズ」「ペンタゴン・ペーパーズ」、重厚な人間ドラマとしての「女は二度決断する」「ラブレス」、愛すべき小品としての「ビッグ・シック」「レディ・バード」といった作品が、ベストテンからこぼれてしまいました。2018年はあまり本数は稼げなかったのですが、当たりの映画の多い充実した1年だったと言えそうです。

毎年やってる、ベストテンには入らないけど、局所的に気になったピンポイントベスト5を挙げます。かなり無理やりひねりだした感はありますけど。

第1位 クチコミでヒットした「カメラを止めるな」がドタバタコメディでした。
低予算、ノースターの日本映画がまさかの大ヒット。シネコンでも拡大公開して、出演者がテレビにバンバン出るようになったりと、評判が評判を呼んだので、これがカルト映画なのかなと思いきや、劇場で鑑賞したら、楽しいドタバタコメディだったのにびっくり。伏線回収のうまさにまんまと映画にはまってしまいました。こういう楽しく笑える映画にスポットライトが当たるってのがうれしい事件でした。

第2位 「私はあなたのニグロではない」で自分の差別意識の根幹に気づかれてしまう。
アメリカの黒人の現代史のドキュメンタリーですが、そこで語られる「白人は差別する対象を必要としたのだ」という言葉は、そのまま日本人の自分にあてはまるなあってところが発見でした。それは同時に、黒人差別をする白人と同じメンタリティを自分を含めた日本人も持っているということになるわけで、他人事の筈の黒人差別の映画で、痛いところを突かれてしまいました。

第3位 「シェイプ・オブ・ウォーター」がアカデミー作品賞を獲っちゃったこと
ギレルモ・デル・トロ監督のオタク魂爆発の映画でしたけど、まさかアカデミー作品賞を獲っちゃうとは思いませんでした。黒人とかLGBTといったマイノリティ差別ネタが強かったアカデミー賞ですが、まさかこういうマイノリティにまで賞をくれるってのはどうなのって思っちゃいました。「ノートルダムの鐘」で最後に市民はせむしのカジモドに喝采をするのですが、それが長続きはしないであろう一時の熱狂です。それと同じように、この映画への評価、これにアカデミー賞を与えてしまった時代への評価が、この先どうなるのかなあってところが気になります。いい話だし、ドラマとしてもうまい映画なのですが、日陰だからこそ輝く映画もあるんじゃないかって言ったら怒られちゃうかしら。

第4位 「あなたの旅立ち、綴ります」のアマンダ・セイフライド
2018年の女優さんは豊作でして、「女と男の観覧車」のケイト・ウィンスレットを筆頭に、「ビッグ・シック」のゾーイ・カザン、「アバウト・レイ」のエル・ファニング、「ロープ 戦場の生命線」のメラニー・ティエリー、「ピーター・ラビット」のローズ・バーン、「バトル・オブ・セクシーズ」のエマ・ストーン、「スカイスクレイパー」のネーヴ・キャンベル、「ウインド・リバー」のエリザベス・オルセンといった面々が印象に残りました。そんな中で、特によかったと思ったのが、「あなたの旅立ち、綴ります」のアマンダ・セイフライドでして、シャーリー・マクレーンを向こうに回した演技合戦で引けを取らない実力を見せて見事でした。この人、色々なジャンルの役に挑戦していく姿勢がかっこいい女優さんだなあって思いますです。

第5位 「ラッキー」を見て、こういうジジイになりたいと思ったこと
自分の周囲の年寄りを眺めてると「こうはなりたくないものだ」と思わせられることばかりなのですが、そんな中で、「ラッキー」の主人公、ラッキーじいさんは、一見頑固ジジイのようで、経験や知識をひけらかすことなく、他人の言葉に耳を傾け、正しいと思ったらそれを受け入れる柔軟な思考の持ち主で、若い人からも一目置かれる存在です。もういい年の自分ですが、できることならこういうジジイになりたいと思わせる数少ないサンプルでした。映画としても、間のおかしさが楽しくて、ためになるジジイ映画でした。

というわけで、2019年も色々な映画に出会いたいと思っておりますので、本年もよろしくお願いいたします。
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2017年のベストテンです。

2017年は、中盤に体調を壊してあまり映画館へ足を運べず、観た映画全部を記事にできなかったりもしたのですが、それでも、1年の総決算ということで無理やりベストテンを作ってみました。選択基準は「映画を観て発見のあったもの」でして、発見のある映画が上位にランクされています。

第1位「エル ELLE」
映画の冒頭で、自宅でレイプされたヒロインがどう出るのかというお話なんですが、一筋縄ではいかないヒロインの行動から、意外なハッピーエンド風まで、とにかく面白かったから1位です。ポール・ヴァーホーベン監督と主演のイザベル・ユペールが、ものすごいヒロインを作り出しています。エロくて面白くて痛快な映画、こんな映画、めったにお目にかかれるものではありません。

第2位「パターソン」
パターソンの町のバス運転手パターソンの1週間を淡々とつづったドラマです。ジム・ジャームッシュ監督は、普通の人の日々の暮らしを淡々とコミカルに描いているのですが、それが娯楽映画として成立しているのが見事だったので、2位にランクインです。1位も2位も「こんな話でエンタテイメント」という共通点がありまして、そっかー、こういう題材で娯楽映画が作れるんだという発見がありました。また、この映画のほのぼのまではいかないけど、ちょっといい感じというのが、うまいなあって感心しちゃったのですよ。

第3位「アイヒマンの後継者」
ミルグラム博士の行った実験は、権威と指示が与えられると、誰でも人間的に非道なことができちゃうというのを証明してしまいます。誰でもアイヒマンになる可能性があるという、誰にとっても不愉快な事実を突きつけてくる話なのですが、この映画は、ミルグラム博士の半生を描くという体裁を取りながら、アイヒマン実験を丁寧に絵解きして、この事実を思い出してというメッセージ映画になっています。キナ臭くなってきたご時世の中で、人は誰でも自分の望まない残虐行為を行える、自分自身も危ういという事実は、肝に銘じておく必要があります。戦争責任とか自己責任といったものに一石を投じる映画であり、多くの人の目に触れて欲しい映画でした。

第4位「メッセージ」
宇宙からきた巨大な宇宙船にいる宇宙人とコンタクトを取ろうというお話を、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が大ハッタリの重厚演出で見せた一編で、その見せ方には若干の抵抗を感じたものの、お話がちゃんとしたSFで、そして時間の観念が変わったらどうなるかというのをかなり真面目に絵解きしている点が高い評価になりました。「そうか、時間の観念が変わるとそうなるのか」という発見があったので、4位にランクインです。また、その変化を受け入れるヒロインがなかなか感動的で、そういう意味でも見応えがある映画でした。

第5位「彷徨える河」
コロンビアのアマゾン川上流に聖なる植物ヤクルナを求めて現地人ガイドと一緒にジャングルを進む男。二つの時間の二人の男が同じガイドと一緒にジャングルを行く物語を、並行して描くことで見えてくる現地人の生活と、それを否定し破壊していく白人の文化と宗教。映画は、神秘的な映像の中で、白人の文化がもたらすものを歴史的な視点で描いていきます。かつてはマジョリティであった被征服者から見た白人の文化という視点に発見があり、見応えのある映画でした。

第6位「わたしはダニエル・ブレイク」
イギリスの福祉の状況をストレートに批判した映画。怪我をして雇用支援手当を受けようとしたダニエルが、お役所の困った人をさらに困らせる仕事っぷりに腹を立てるというお話。食べることにも不自由しているシングルマザーが人としてのプライドをズタズタにされちゃうところなど、観ていて辛くなるシーンもありますが、人間はみな平等に幸せになる権利があるというのに、お上は困ってる人への気遣いすら否定してくる。自己責任という言葉で、貧乏人同士をいがみあわせている日本のお上のやり方に、もっと気づくべきだと思わせる映画でした。今の言論統制された(自粛の押し付け合いという意味で)日本では作れない映画ということで、ベストテン入りです。

第7位「否定と肯定」
「ホロコーストはなかったろう」論者が、ホロコースト研究者を名誉棄損で訴えたという実話に基づくお話です。裁判はホロコーストの有無を問う方向へは進まなかったのですが、下手をすれば、法廷でホロコーストの有無が争われたというかなり怖いお話。そんな時、自分がホロコーストがあったことを何をもって確信しているのかと考えると「意外と曖昧じゃね?」ということに気づいたという怖い発見がありました。ベストテンには入りませんでしたが、「沈黙 サイレンス」にもつながる自明のことが危うくなるという視点は、ちょっと目を背けたいけど、耳に痛いものがありました。

第8位「婚約者の友人」
戦死した婚約者の友人として現れた男を喜んで迎え入れるヒロインと婚約者の両親、その友人には秘密があったというお話をリメイクするにあたり、フランソワ・オゾンは後日談を付け加えて、ヒロインをさらに振り回すのでした。後半の展開に、そう来るかと思わせる作者の悪意を感じつつ、戦争のもたらす悲劇としてきちんと仕上げた物語の面白さで、ベストテン入りとなりました。意地の悪い映画だけど、そのうまさは認めちゃうという感じ。

第9位「女神の見えざる手」
凄腕のロビイストであるヒロインがいつもの金儲け関係なく、銃規制キャンペーンに手を染めたら、聴聞会に呼ばれて大変なことになるというお話。フランスとアメリカの資本で、イギリス人の脚本・監督が、アメリカを舞台にしたドラマを、面白い視点で作りました。ロビイストのお仕事ですとか、銃規制キャンペーンを張ることのアメリカでの位置づけが伺えて、発見のある映画でしたし、お話の面白さ、脇に至るまでの演技陣のよさもあって、面白くて見応えがありました。

第10位「ザ・ウォール」
イラク戦争の真っただ中、偵察中の米軍狙撃兵二人が、謎の狙撃手に命を狙われるスリラー。政治的な視点や主張を入れずに作っているところが新鮮で、イラク戦争を題材に、娯楽エンタテイメントを作れるようになったんだという発見がありましたし、心理サスペンスとしても面白くて、最後まで楽しめました。登場人物2人に、通信機の向こうに声が一人でドラマが作れるので、舞台劇にもできそう。

この他、日本人だからこその視点で興味深かった「沈黙 サイレンス」、オフビートなコメディとして笑えた「マギーズ・プラン」、重厚な人間ドラマとして見応えのあった「セールスマン」、映像詩ともいうべき「とうもろこしの島」などがベストテンからこぼれてしまったので、結構充実した映画鑑賞の1年だったのかも。特に「沈黙 サイレンス」は、「彷徨える河」と表裏一体を成す映画として記憶に残る映画でした。

一方でアカデミー賞で話題となった「ラ・ラ・ランド」「ムーンライト」「ライオン 25年目のただいま」などは、面白かったのですが、ベストテンの作品ほどには印象に残らなかったのは意外でした。年のせいで映画の嗜好が変わってきたのかも。



後、例年の、ベストテンには入らないけど、局所的に気になったピンポイントベスト5を挙げます。
第1位 子供にも見せられる映画としての「僕のワンダフルライフ」「少女ファニーと運命の旅」
最近の洋画って、アメコミとアニメとか、若い人をターゲットにしてるのが多くて、子供に見せられて大人も楽しめる映画が少ないように思います。そんな中で、この2本は大人が安心して子供と一緒に観ることができる映画でした。こういう映画がもっと公開されて、子供の映画ファンが増えるといいなあって思います。最近、若者ターゲット映画以外で、映画館で若い人を見かけることが少なくなってきているように思います。映画鑑賞が、今や、盆栽や詩吟みたいな年寄り向けの趣味になってきているのかなあ。

第2位 「幸福なひとりぼっち」に見る高齢化社会への不安と希望
この映画の主人公オーヴェは、ご近所の人間をバカだと見下して、何だかんだとイチャモンつけてる困ったじじい。それでも近所の人は何かあれば声をかけてくれてすごく親切。なぜなのかと思っていると、後半、彼の亡くなった奥さんがものすごくいい人だったからというのがわかるのですが、奥さんによる底上げがなかったら、ホントにただの嫌われ者のじじいでしかないじゃんと思うと、ジジイに両足突っ込みかけている自分としては、年を取ることが本当に不安。オーヴェを反面教師にして、こんなじじいにならないようにしなければ思わせたところにこの映画の意義があったように思います。

第3位 「シンクロナイズド・モンスター」のアン・ハサウェイ
今年の女優陣では、美形プラスアルファのキャラで魅力的だった人が多く、「パーソナル・ショッパー」のクリステン・スチュワート、「パーティで女の子に話しかけるには」のエル・ファニング、「ブレードランナー2049」の萌えキャラ、アナ・デ・アルマス、「マギーズ・プラン」の変なヒロイン、グレタ・ガーウィグ、「フリ・ファイヤー」のブリー・ラーソン、「ダーティ・グランパ」のジュリアン・ハフなどが印象的でしたけど、その中でインパクトあったのが、珍品「シンクロナイズド・モンスター」のアン・ハサウェイでした。いつもちょっと上玉の女性を演じてきた彼女のダメヒロインぶりが、かわいくておかしくて、2017年のベストアクトレスでした。

第4位 「スキップ・トレース」の観光映画の味わいがちょっと懐かしいような
記事にはできなかったのですが、ジャッキー・チェン主演のアクションものは、主人公が悪者に追われて、結構のんびり逃げ回るというお話です。そんな途中で、中国の田舎の観光紹介のような展開になるのですが、その昔、テレビでよく放送されていた日本映画に日本各地を旅してその地方を紹介していくような構成のものをよく見かけたのを思い出しました。「××旅行」とか「××温泉」とかもろにご当地もののような映画もありましたし、普通のドラマでも地方ロケをしながら移動していくようなものもありました。中国みたいな広い国なら、まだ観光目線のカメラが入っていない地域がいっぱいありそうで、この映画のようなアクション映画の中で、地方の風習やお祭りとかを紹介していくパターンがこれから出てきそうな予感があります。

第5位 川崎チネチッタのLIVE ZOUND音響設備
川崎のシネコン、チネチッタにはそれまで低音を増強したライブサウンドというシステムが装備された劇場がありました。そして、今年は、さらに音響を強化して、16台のスピーカーと4台のサブウーファーを追加したシステムLIVE ZOUNDをスクリーン8に設置しました。迫力ある音響と腹に響く重低音の両方を実現しています。このシステムのいいところは、ライブサウンドと同じく、追加料金なしというところ。ドルビーアトモスの追加料金とは差別化して、一方で爆音上映に近い効果を出しているのがすごい。他の劇場でも、こういうアドオンのサービスを追加料金なしでやってほしいなあって期待しています。この仕掛けで観た映画では「ダンケルク」と「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」が重低音の迫力と、臨場感がすごかったです。


というわけで本年もよろしくお願いいたします。

キネマ旬報ベストテンを見て、あれ?と思ってしまって

映画雑誌のキネマ旬報のベストテンが発表されたんですって。私は中学生の頃から「キネマ旬報」を読み始めて、中年になって卒業しました。映画音楽の記事がつまらなくなったからというそれだけの理由なんですが、以降は「映画秘宝」から映画の情報を仕入れるようにしています。で、2016年のベストテンが出たのですが、それが以下の通りです。

■日本映画ベスト・テン

1位 この世界の片隅に
2位 シン・ゴジラ
3位 淵に立つ
4位 ディストラクション・ベイビーズ
5位 永い言い訳
6位 リップヴァンウィンクルの花嫁
7位 湯を沸かすほどの熱い愛
8位 クリーピー 偽りの隣人
9位 オーバー・フェンス
10位 怒り

■外国映画ベスト・テン

1位 ハドソン川の奇跡
2位 キャロル
3位 ブリッジ・オブ・スパイ
4位 ランボ ハリウッドに最も嫌われた男
5位 山河ノスタルジア
6位 サウルの息子
7位 スポットライト 世紀のスクープ
8位 イレブン・ミニッツ
9位 ブルックリン
10位 ルーム

ああ、面白いなあって思ったのは、日本映画のベストテンの1位と2位。「この世界の片隅に」と「シン・ゴジラ」ですって。で、あれだけヒットした「君の名は」はベストテンに入っていません。あれだけヒットした「君の名は」をベストテンに入れないまでは、キネ旬らしいと思うのですが、ヒット作である「シン・ゴジラ」を2位にしちゃうあたりが、何だかキネ旬らしくないなあって思うし、さらに1位にアニメですからね。それも世間でも評判の高い「この世界の片隅に」です。世間の評価とシンクロしようとするなら、「君の名は」はベストに入れてほしいと思いますし、映画の中身にこだわるなら「シン・ゴジラ」は圏外と思うのですが、どこへ行こうとしているんだろうなあ、この雑誌は。

後、外国映画ベストテンで驚いたのは、私事になるのですが、10本とも、私が観た映画だったということ。私はシネコン中心で映画鑑賞していまして、マイナー系映画はたまに観る程度なので、キネ旬のベストテンに入るような映画は、観てないことが多かったのですが、今回はちょっと違うのですよね。この中で、いわゆるミニシアター系映画というのは、5位の「山河ノスタルジア」と8位の「イレブン・ミニッツ」くらいで、他は普通にシネコンで公開された映画です。これは二通り考えられまして、いわゆる「キネ旬が選ぶ映画」をシネコンが上映するようになったということか、或いはキネ旬がメジャー系映画に迎合したのか。それとも、キネ旬の選者があまり映画を観ない人になったのか、さらに敷衍すれば、配給会社がメディア向け試写会をしなくなったのかなとも考えてしまいました。ちょっと世間とずれた高尚な選択が、キネ旬の持ち味と思っていたのですが、これでは、読者のベストテンと言われても納得しちゃうような選択ではないかしら。これなら、ブログの色々な方のベストテンの方が次に観る映画の参考になるなあって思ってしまったのでした。

ベストテンを、追っかけ鑑賞のガイドみたいに使っている私としては、キネ旬のベストテンにちょっとびっくりなのでした。

2016年のベストテンを作ってみました。

2016年の最後に今年のベストテンを作ってみました。十分な本数を観たとは言えませんが、とりあえず面白かったもの、そして発見があったものを中心に10本選んでみました。まあ、要は好きな映画、言い換えると私と相性がよかった映画10本です。

第1位「みかんの丘」
グルジアに住むリトアニア人のおじいさんの家に敵対する二人がケガをして転がり込んだというお話で、戦争の愚かさを描いた優れた反戦映画です。でも、それ以上に面白くできていて、おじいさんがかっこいい。愁嘆場を見せないドライな展開は、山の中のハードボイルド映画として見応えのあるものでした。こういう反戦映画の作り方もあるのかと感心したのと、その作りのうまさで、今年のベストワン映画です。

第2位「アスファルト」
団地で起こった3つのささやかなエピソードは愛というほど大げさではないけど、人間の持つ好意を描いた映画として、ほっこりさせてくれました。演技陣の好演もあり、ちょっと浮世離れしたお話ですけど、好意が人をつないでいくというドラマは、すごく心地よくって、こういう映画好き。年のせいか、刺激の強い映画についていけなくなったってこともあるんですが、今年一番愛おしさを感じさせてくれた映画でした。

第3位「手紙は憶えている」
認知症の老人が元ナチに復讐するために旅に出るというお話。自分の境遇も手紙を読まないと忘れちゃうというおじいちゃんに復讐なんてできるのかと思わせるのですが、その復讐の結末はなるほどと納得してしまいました。第二次大戦の当事者が限界まで高齢化した、今を描いたドラマとしても、執拗な復讐のドラマとしても見応えがありました。そして、何よりも今年の映画の中で、面白さが一番だったのがこれです。

第4位「アイ・イン・ザ・スカイ」
ドローンを使って、テロリストをやっつけようとしたら、パン売りの少女が標的の家の前で店を出してました、さてどうするというお話で、自分の決断を信じる軍人と決断できない政治家の間で時間だけが過ぎていく展開から、攻撃に移ってからの、サスペンス演出がお見事な一品。戦争の持つ嫌な側面を色々とぶちこんで、戦争ってのは誰にとってもロクなもんじゃないってことを見せる映画でした。でも、現実には、人間は戦争から逃げられないという嫌なメッセージも垣間見れちゃうかなり意地の悪い映画で、とにかく作りのうまさ、輻輳するメッセージの巧妙さが光る一品として見応えがありました。

第5位「世界一キライなあなたへ」
全身不随の若者の介護士として雇われた女の子が奮闘するお話で結構ヘビーな結末なラブストーリーなんですが、とにかくヒロインを演じたエミリア・クラークがかわいくて、第5位に挙げちゃいました。仕事がなくてお金のために介護士の職についたヒロインの頑張りぶりの微笑ましさから、後半ラブストーリーへ移ってからの切ない展開まで、成長するヒロインの映画として大変見応えがありました。

第6位「ボーダー・ライン」
麻薬カルテルを壊滅させるために派遣された女性FBI捜査官を主人公にした社会派ドラマのように始まるのですが、お話が二転三転して復讐の物語へとシフトしていくのを、重厚なドラマとして見せた一品です。重苦しいドロドロしたお話をぐいぐいと引っ張っていくドゥニ・ヴィルヌーブの演出が見事で、映画を観たという満腹感があったので、第6位に入れました。ドラマとしてのボリューム感ではこれが一番でした。

第7位「ダーク・プレイス」
幼い頃、姉二人と母親を殺された主人公はその犯人として兄を名指ししていました、というかなり異常な設定で始まるミステリーで、関係者みんなどこか歪んでいるところが、話をややこしくして、真相がなかなか見えないというところが面白い映画でした。自分の記憶が怪しいヒロインのお話ということでは「ガール・オン・ザ・トレイン」も面白かったのですが、苦悩するヒロインに共感できた分、こちらの方に軍配が上がりました。どこか心に引っかかるところのある映画ということでも、印象に残った第7位です。

第8位「虹蛇と眠る女」
オーストラリアを舞台に、子供二人が行方不明になった母親をニコール・キッドマンが熱演した、ちょっと変わった味わいの人間ドラマです。コミュニケーションがうまくとれなくて疎外感にさいなまれる人間がどうやって自分を取り戻すのかというのを、面白い切り口で見せた映画として印象的でした。色々な解釈が可能なお話は、語り口は固いけど、どこか心に引っかかるものがあって、どうにも気になってベストテンからはずせないという感じでしょうか。

第9位「オートマタ」
人間が滅びゆくなかで、その後を担うのはロボットであり、それが自然の流れなのだという見せ方が新鮮な、ペシミスティックSFの一編です。ロボットが人間を滅ぼすというお話ではなく、自然の流れの中で人間が滅び、ロボットが生き残るというのが、面白い視点で、その点だけでもベストテン入りでした。さらに、新しいロボット原則とか、人間型の次の世代のロボットのデザインですとか色々と発見のある映画でもあって第9位です。人間型ロボットが登場するSFとして「エクスマキナ」も面白かったのですが、説得力という意味で、こっちの方を取ります。

第10位「トランボ」
実在した脚本家ダルトン・トランボの半生を描いた実録ものの一編です。この類の映画って、歴史の裏話みたいな味わいはあってもあまり面白くないものが多かったのですが、この映画は、娯楽映画としても面白くできていて、歴史のお勉強にもなるという一粒で二度おいしい映画になっていたので、ベストテン入りです。アカの烙印を押されてハリウッドで仕事ができなくなって主人公が偽名を使って、脚本を書き続けるという展開がなかなかに痛快に描かれていて、個人が組織を出し抜くお話としても楽しめました。

というわけで、骨太ドラマとして見応えのあった「レヴェナント 蘇えりし者」、異常な発端から静かな感動があった「ルーム」、戦争映画として見応えがあった「ローグ・ワン」、エンタテイメントとして大変よくできていた「ブリッジ・オブ・スパイ」といった作品がベストテンからこぼれてしまいました。上記4本はベストテンに入っても全然おかしくない映画でしたから、今年は結構豊作の年だったと言えそうです。


次にベストテンには入らなかったけど、この部分がよかったというのを、「ピンポイントベスト5」として、以下に挙げます。

第1位「人間爆弾 桜花」の特攻隊の生き残りへの冷静で客観的な視点
特攻隊の生き残りの証言を淡々とつづった映画なんですが、証言者をある意味突き放したような冷静で客観的な視点が感じられたのが新鮮でした。作り手が対象にあえて共感しないで、距離を置いていることで、メッセージ性は薄まりましたが、その分、証言者の生きた時代のありのままが見えてくるのは、これまでの戦争体験者の証言ドキュメンタリーにはなかったものでした。なんと言うか、普遍性とでも言いましょうか、純粋な記録としての価値の高い映像になっているように思います。

第2位「サウルの息子」の嫌なライド感
ライド感というと、私は勢いのある臨場感という風に解釈していまして、今年の映画ですと「ジェイソン・ボーン」なんてのは、ライド感のある映画ということになると思ってます。特に「サウルの息子」はアウシュビッツのゾンダーコマンドの主人公をカメラがずっと追い続けることで、収容所を舞台にした映画なのに、そのライド感が半端なく、まるで自分が主人公と一体化して収容所にいるような気分になっちゃうのですよ。こういう題材を扱った映画に、ライド感を持ち込むことで、観客はおぞましい映像体験に放り込まれることになります。スタンダードサイズの映像で、エグい絵を直接見せることなく、ライド感を出すテクニックは見事としか言いようがないです。

第3位「尾崎支配人が泣いたも夜 DOCUMETARY OF HKT48」のプロパガンダ映画としての面白さ
プロパガンダ映画というと、政治イデオロギーの宣伝映画みたいなイメージもありますが、この映画は、アイドルグループのHKT48、引いてはアイドル業界のプロパガンダ映画として大変面白くできていました。アイドルとファンの関係ですとか、頑張るアイドルの存在理由といったものを丁寧に見せることで、なるほどアイドルってあなどれないね、HKT48って応援する価値のあるアイドルだねってことをうまく感じさせる作りになっているのですよ。宣伝映像ということはいわゆるコマーシャルということになるのですが、これはきちんとドキュメンタリー映画の体裁をとっていて、直接のメッセージを言葉にしていないのですが、それでも、きちんとアイドル支持を刷り込む映画になっているのは、面白いなあって思いました。他のAKB48のドキュメンタリーをテレビで観たことがあるのですが、それらには、この映画のような一般人へ向けたプロパガンダ映画の作りではなく、むしろオタクへ向けたメッセージになっていたので、この映画の面白さが際立つように感じました。

第4位「スティーブ・ジョブズ」のケイト・ウィンスレット
今年の女優陣は豊作でして、ベストテンでもあげたエミリア・クラーク(ほんとかわいい)の他にも、「ガール・オン・ザ・トレイン」のヘイリー・ベネット、「ジェイソン・ボーン」のアリシア・ヴィキャンデル、「ミモザの島に消えた母」のメラニー・ロラン、「ある天文学者の恋文」のオルガ・キュリレンコ、「ゴースト・バスターズ」のケイト・マッキノン、「ヤング・アダルト・ニューヨーク」のアマンダ・サイフリッド、「アンジェリカの微笑み」のピラール・ロペス・デ・アジャラ、「トランボ」のダイアン・レインとエル・ファニング、「人生は小説よりも奇なり」のマリサ・トメイ、「マイ・ベスト・フレンド」のドリュー・バリモアなどが印象的でしたが、その中では、やはりドラマを支える演技力ということで、「スティーブ・ジョブズ」のケイト・ウィンスレットが頭一つ抜きん出ていたように思います。まあ、私のミーハー趣味といえば、それまでなんですけど。

第5位「pk」の宗教へのチャレンジが見事
インド映画の「pk」は、SFであり、ラブストーリーでもある大変面白い娯楽映画なのですが、その中心に「神様を名乗る人間への懐疑」を持ち込んでいるのがすごかったです。宇宙人が望みは神様に頼めと言われて、あらゆる宗教の門をくぐるのですが、望みはかなわない、宗教によって神様の代理人のいうことが違う、これはおかしいと言い出すのです。宗教に対するものすごく素朴な疑問から、神様の名を借りた人間の不正を暴くというキャンペーンを展開するというお話は、信仰心の篤いインドでやるのはすごく度胸の必要なことだと思います。それを娯楽映画の中でやるのはすごいなあって感心。これって、信仰に限らず何かの権威を借りて好き勝手言う人はいますから、そういう人全般への警鐘になっているので、日本でもあてはまるお話なんですよね。

今年は、大ヒットした「君の名は」にイマイチ乗り切れなくて、若い人の感性についていけなくなったのかなあってのを実感した年でもありました。これからもオヤジ目線での映画鑑賞記事になりますが、来年もよろしくお願いします。

2015年のベストテンを作ってみました。

2015年も終わりですので、あまり多くの本数を観ていない中から、ベストテンを作ってみました。選出基準はとにかく面白くて印象深かったもの、それと何か発見のあったものとなっています。今年も映画を楽しむ一方で、勉強になる映画も多かったです。

第1位「デビルズ・ノット」
猟奇殺人事件の犯人をとにかくはっきりさせたいコミュニティが、反社会的な若者を犯人と決めつける怖さを描く映画ですが、そこで事件の真相は明快になりません。何だか、はっきりしない映画だなあって不満を感じたとき、その感情は、とにかく犯人を決めたがった映画の中のコミュニティの人間と同じじゃないかと気づかされると、自分自身にぞっとするというとても怖い仕掛けの画です。冤罪とか他人事じゃないかと思っていると、自分の中にその種があることに気づかされる、そんな怖さを持った映画は初めてでした。初公開は2014年ですが、私は今年観たので、この映画を2015年のベストワンです。

第2位「Re:LIFE リライフ」
もともとラブコメは好きな方なのですが、いい年こいた大人の恋愛ドラマとして、私のツボに大はまりだったのがこの映画。売れない映画脚本家と大学で学ぶシングルマザーの友情的関係から、恋愛感情へとゆっくりと方向転換して、ラストで恋愛映画に落ち着くという作りが大変魅力的でした。主演二人、特にマリサ・トメイが大変魅力的でして、これまでも彼女のファンでしたけど、余計目にファンになりました。好きな映画ということで言えば、今年のベストワンでしょう。

第3位「はじまりのうた」
音楽をきっかけに知り合った男女二人が、その歌を売り出していく過程の中で、各々の人生の再構築を図っていくというお話。音楽ものに弱い自分は、すぐにウルウルしちゃうお話ではあるのですが、主人公の二人が音楽を間に挟んで、友情以上恋愛未満の微妙な関係を取っていくところが、音楽以上によくできていまして、ツボでした。音楽というものを、どう捉えるかの違いをあえて否定しないで、それでも、音楽の持つ力を実感させる演出が見事でした。音楽を糧にして人生を充実させるお話として、すごく繊細で、そして寛容な映画でオススメ度はベストかも。

第4位「顔のないヒトラーたち」
ドイツ国内で、ナチスのやったことを告発するようになるという事実に基づくお話です。若い判事が、国内の批判を浴びながら元ナチスのやったことを告発していく過程はスリリングなエンタテイメントなのですが、それだけのお話ではありません。正義の迷宮に入り込んでしまった主人公がどうやってそれを克服していくのかというところに、見応えト感動がありました。今更過去を掘り起こすことに何の意味があるのか、その問いに一つの見識を示したという点に大変感心しました。それが正しいか、共感できるかは映画を観て確認していただきたいですが、私には共感できるものがありました。また、問題提起という意味でも見応えのある映画だと思います。

第5位「ドローン・オブ・ウォー」
新しい戦争の形態としての、ドローンによるピンポイント攻撃を描いた映画です。主人公はアメリカの基地にいて、ドローンを遠隔操縦して、紛争地域で地上部隊を支援したり、テロリストの掃討をしています。絶対安全な場所からテロリストへの攻撃を加える主人公の姿から、言い訳や情緒を削り取った戦争の本質が見えてくる展開が見事な反戦映画になっています。そして、ラストで主人公の取る行動が、ドローン戦争の持つもう一つの特別な側面をあぶりだし、ネット社会への警鐘にもなっているという欲張りな構成です。

第6位「ドラフト・デイ」
アメフトの一大イベントであるらしい、ドラフト会議の駆け引きを描いたドラマで、アクションも爆発もラブシーンもないけれど、とにかく面白くてラストのカタルシスが痛快な、これぞ娯楽という映画。勝ち目のないトレードをせざるを得なくなる主人公がラストで見せる大逆転がお見事で、観終わって最高の気分になれるという意味では、今年のトップでしょう。ドラフトのルールが込み入っているせいもあって、地味な公開であまり宣伝もされなかったのですが、もっと評価されて欲しい映画でした。

第7位「アクトレス 女たちの舞台」
ベテラン女優が、かつて演じた舞台で、若いヒロインから中年の相手役を演じることになる、その過程を演技陣の力量で見せ切る一品は、映画としての満足度が高かったです。主人公の2人のやり取りのうまさもあることながら、ジュリエット・ビノシュとクリスティン・スチュワートの存在感が見事で、惚れ惚れしちゃいました。ちょっとファンタジー入ったドラマ展開もあって、ドラマとしての充実度と、一粒で二度おいしい映画でした。

第8位「奇跡の2000マイル」
ヒロインがオーストラリアを2000マイル歩くというお話で、すごくシンプルに旅に特化しているところが新鮮でした。出不精な私にも旅の魅力とか旅したくなる気持ちが伝わってくるところに発見があったので、ベストテンに入りました。映像の美しさとかヒロインのミア・ワシコウスカの魅力、適格な演出もあって、映画としてよくできています。

第9位「サンドラの週末」
自分の職場に復職しようとしたら、彼女の復職かボーナスかの投票がされていて、彼女は職を失うことに。覆すには週末に同僚たちを説得して、再投票で結果をひっくり返さないといけない状況。そんな、珍しい設定の中で、ヒロインは週末に同僚の家をまわることになります。多数決を覆すための個人の頑張りを普通の女性がやるっていうところから、透けて見えてくる、自我と善意、そして個々の事情。色々と考えさせられるところが多かったということでは今年のトップではないかしら。こういう視点に触れることで、映画って勉強になるなあってところでベストテン入りです。

第10位「マップ・トゥ・ザ・スターズ」
虚飾に満ちたハリウッドをひたすら悪意で描いたクローネンバーグ監督作品がベストテン入りです。これは、どこがいいとか、勉強になったとかいうことではなく、ひたすらインパクトが強くて印象に残った映画だから。映画館へ足を運んだ時、こういう映画にあたっても、映画を観た満足感があるってのは不思議な感じですが、悪意に満ちているなりに見応えがあったということになるのでしょう。

そんなわけで、ドラマとして見応えのあった「黄金のアデーレ」「あの日のように抱きしめて」、純粋にエンタメとして面白かった「マッドマックス 怒りのデスロード」「ミッション・インポッシブル ローグ・ネイション」などがこぼれてしまいました。SFやホラーが1本も入ってないところに、自分も年を取ったんだなあってしみじみしちゃいます。

次に映画としてはベストテンからこぼれたけど、ここはよかったというピンポイントベスト5を挙げます。 

第1位「海街diary」のつかず離れずの家族関係
美人4姉妹の眼福もあった映画でしたけど、この映画で描かれた姉妹の距離感が大変心地よくって、ああこれだよなあって感心しちゃいました。時には深入りしそうになるけど、引くところは引く、言いたいことは言い、言いたくないことは言わない、そんなさじ加減が細やかに描かれていました。日本映画って、やたら、テンション高く怒鳴りあうイメージがあるのですが、この映画の会話シーンの抑制されたおだやかさは宝物だなって思っちゃいました。

第2位「ジミー 野を駆ける伝説」のダンスシーン
この映画は、内容的にもベストテンに入ってもいい見応えのあるものでした。保守と革新の対立の中で、穏健派がその仲介役になれないところに切なさがあるのですが、恋愛ドラマとしても、切ない展開に見応えがありました。お互い愛し合いながらも10年後の再会で女性は人の妻になっていました。月明りの下で、二人が万感の思いで無言でダンスを踊るシーンは、最近の映画のラブシーンの中でもベストだと思いました。無言で踊る二人を長回しで追う演出も見事でした。

第3位「毛皮のヴィーナス」の縦構図へのこだわり
今年は、あまり映像に凝った映画には当たらなかったのですが、その中で、凝った構図で楽しませてくれたのが、この映画。登場人物2人だけの映画ながら、シネスコ画面に、登場人物を遠くと手前に配置する縦の構図を多用して、見応えのある絵を作っていました。映画そのものも面白かったのですが、シネスコ画面の手前と奥の両方で演技している図ってのはなかなかお目にかかれなかったので、ここで挙げておきます。

第4位「ピッチ・パーフェクト」のアナ・ケンドリック
今年の女優陣は豊作でして、ベストテンに挙げたマリサ・トメイ、ミア・ワシコウスカとクリスティン・スチュワートは素晴らしかったですし、「ANNIE アニー」のローズ・バーン、「海街diary」の夏帆、「カリフォルニア・ダウン」のアレクサンドラ・ダダリオ、「ted2」のアマンダ・セイフライド、「セッション」のメリッサ・ブノワ、「エレファント・ソング」のキャスリーン・キーナーといった面々が印象に残りました。でも、今年のベストアクトレスということでは、実は3年前の映画だけど「ピッチ・パーフェクト」で青春映画のヒロインを全うに演じたアナ・ケンドリックを挙げます。アカペラコーラスがメインの映画ではあるのですが、それをきちんと青春映画としても見せることに成功しているのは、彼女の好演があったからだと思っています。

第5位「マイ・インターン」のまろやかな味わい
コメディとしてそこそこの出来だった「マイ・インターン」ですが、それは毒も恋愛も諍いもないコメディだからだということもできます。なんとなくうまくまとまった感じというのでしょうか。そこには、脚本、監督のナンシー・マイヤーズの人間(特に女性)に対するやさしい視線があってこそだと思います。尖ったところのない展開を退屈させないでまとめるのは大変だと思いますが、マイヤーズはそこのところをうまくクリアして、まろやかな味わいだけど、退屈させずに面白い映画に仕上げることに成功しています。特に、男目線ではあり得ない浮気ダンナの行動と、それに対する妻のリアクションなんか、なるほどこういう収め方もあるのかって感心しちゃいました。ハリウッドの中では、こういう映画を作る芸ってのは地味な才能ってことになるのかもしれませんが、彼女の映画には、他の監督にはないものを感じます。

というわけで、2016年もよろしくお願いいたします。

2014年のベストテンを作ってみました

今年はここ数年の中でも映画を観た本数が少なくて、ベストテンを作るのもおこがましいのですが、好きな映画をピックアップしたら、10本以上あったので、その中でベストを出させていただきます。年のせいか、アメコミ映画とアニメものは興味なくなってしまったので、そういう感じのベストテンになっています。

第1位 「ショート・ターム」
家庭に問題のある児童を一時的に預かる施設のお話で、子供たちのかなりシビアな現実が描かれています。そこで働く職員たちを主人公にしたドラマは決して甘くはないけど、それでも見えてくる希望が、彼らを励まし、日々の仕事に向かう力となっています。何かを告発したり、主張したりするのではなく、人は何かに元気をもらって日々を生きているという姿を見せることで、普遍的な生きる希望の物語になっているので、これがベストワンです。観ていて、こっちも元気をもらえる映画になっています。

第2位 「ブルー・ジャスミン」
セレブ夫人がどん底に落ちたら壊れちゃったというお話なのですが、とにかく面白かったので、2位に入れちゃいました。シニカルな描き方ながら、突き放しきれないウディ・アレンの視線も何だか面白くて、ケイト・ブランシェットの目一杯演じてますという演技もおかしくて、映画の作り全体が面白かったのですよ、これが。リアリティがあるのかないのかよくわからないヒロインの組み立て方が見事でした。

第3位 「イーダ」
第2次大戦後のポーランドで孤児の修道女イーダがおばと自分の過去をたどる旅を静かに描いたドラマ。モノクロ、スタンダードの画面が物語より映像で語り掛けてくる不思議な映画でした。ポーランドにとって大変不幸な歴史を描いてはいるのですが、それよりも純真無垢なイーダが人生の肉付きをまとっていく過程に惹かれる映画でした。他人にオススメしていいのか微妙な感じなんですが、不思議な味わいが私にははまりました。

第4位 「ゴーン・ガール」
これは、ミステリーとして、そしてスリラーとして、とにかく面白く作ってありまして、本年度もっとも娯楽度の高い映画でした。デビッド・フィンチャーって娯楽に振り切るとものすごいパワーがあるんだなあって感心。物語を隅々まで丁寧に描いて、濃厚ソースで味付けしたボリューム感がすごい。2時間半もあると長いよって観る気が半減しちゃう私も、ここまで描くなら2時間半も仕方ないなあって納得できちゃったので4位です。

第5位 「リスボンに誘われて」
1冊の本を巡るミステリーであり、ポルトガルの現代史の勉強になり、ジェレミー・アイアンズのラブコメが観れるという、お得感満載な映画でした。弾圧政治をする政府と反政府活動の若者たちという関係は、最近の映画ではあまり見かけないだけに、新鮮な感じもしましたし、映画としての満足度が高かったので、ここでランクインです。

第6位 「ある過去の行方」
2010年の私のベストワン「彼女が消えた浜辺」、2012年のベストワン「別離」のアスガー・ファルハディ監督の新作は、どうやってもうまくいかない人間関係の在り様が、見応えあるドラマに仕上がっていました。1位にしなかったのは、ドラマの構造が込み入りすぎて若干リアリティを欠いているように思えたからですが、やはりお話の紡ぎ方が見事なので、ベストテンからははずせませんでした。

第7位 「さよなら、アドルフ」
第2次大戦後、ナチス幹部の子供たちが、親を失い、食べるものもなくドイツ国内をさまようというお話。まず生き抜かなきゃいけないという物理的な問題と、自分の持っていた価値観がくつがえるという精神的な問題を抱えながら葛藤するヒロイン。ものすごい不幸な教育を受けてきた少女が、ものすごい不幸な境遇におちいってしまうというお話を淡々と描いて見応えがありました。ヒロインの凛とした姿に人間の強さを感じ、そんな彼女を翻弄する歴史の残酷さを感じさせる映画でした。


第8位 「おとなの恋には嘘がある」
美男美女からは遠い、おじさんとおばさんの恋愛をやさしい視線で描いたドラマ。この突き放さず持ち上げすぎずのバランス感覚が心地よい映画でした。全然ドラマチックでない決着に流れる穏やかな空気と余韻。若い人向けじゃないけど、同世代の男女をほっこりさせてくれるところが好きな映画です。

第9位 「少女は自転車に乗って」
サウジアラビアの映画というのがまず珍しいのですが、中身は割と普通というか、ティーンの少女ががんばるというお話。女の子はおしとやかであれという文化の中で、自由なヒロインがすごくキュート。ドラマチックな展開はないのですが、ヒロインの身の丈の頑張りがすごく楽しかったです。愁嘆場もないけれど、ちょっとホロリはあるというくらいのさじ加減が好き。

第10位 「ラブレース」
伝説のポルノ映画「ディープ・スロート」の主演女優リンダ・ラブレースの半生を描いた実録ドラマです。ポルノ映画の製作の裏側ということで下衆な興味もあったのですが、普通の女の子がひどい男につかまってポルノ映画に出る羽目になるという話をシリアスに描いていて、その中に「ポルノ、ダメ、ゼッタイ」というメッセージを明確に出しているところが大変印象的でした。印象的というよりは、ポルノ映画界を、彼らを否定する視点で描くという意外性(?)に「あ、やられた」って感じでしょうか。

視点の面白さを持った「ローン・サバイバー」、ヘビーな歴史を淡々と描いた「シャトーブリアンからの手紙」、ドラマの仕掛け先行の展開が惜しかった「ディス/コネクト」といった作品がベストテンからこぼれてしまいました。若い頃なら、絶対にベストテンに入れていただろう「ザ・イースト」が落ちてしまったというところで、加齢とともに映画の嗜好が変わってきてるなあって実感した一年でした。

次に、映画としてはベストテンからこぼれてしまったけど、ここがよかったというピンポイントベスト5を挙げます。

第1位 「旅する映写機」の記録映像としての価値
映画としては、フィルム映写機を使ってる映画館を紹介しているというもので、ベストには入らないのですが、デジタル化の怒涛のような展開を思うと、これだけフィルム映写機を使う様子を記録した映像ってのは貴重なのではないかしら。それも、数年後残っているかどうかわからなそうな映画館がかなり登場しているだけに、こういう映画を撮っておいたことがすごく価値があることだなって思いました。映画ファンにとって貴重な映像になるかも。

第2位 「神は死んだのか」「パンドラの約束」から学べるプロパガンダ映画の鑑賞方法
「神は死んだのか」「パンドラの約束」は、前者は「神の存在」、後者は「原発は安全」という明確なメッセージを持っていまして、そのメッセージのプロパガンダ映画になっています。どっちにも共通しているのは、メッセージを批判する人は愚かしく見せて、メッセージを支持する人が複数登場して、最後はみんながそのメッセージが正しいって言ってんだから、正しいんだよと丸め込む。なるほどなあ、他人に自分の言いたいことを刷り込みたいときは、こうすればいいんだ。逆に、こういう流れで自分を説得する人は落ち着いて疑った方がいいんだって、勉強になりました。

第3位 「アバウト・タイム」のレイチェル・マクアダムス
2014年に観た女優さんの中では、「ザ・イースト」のブリット・マーリング、「なんちゃって家族」のジェニファー・アニストン、「ダラス・バイヤーズ・クラブ」のジェニファー・ガーナー、「とらわれて夏」のケイト・ウィンスレット、「ラスト・ベガス」のメアリー・スティーンバージェン、「ラスト・ミッション」のアンバー・ハード、「イコライザー」のクロエ・グレース・モレッツなどが印象に残っていますが、今年の一番かわいかったのは、「アバウト・タイム」のレイチェル・マクアダムスでしょう。男目線からすると最高にかわいい女の子でした。でも、男受けがいいってことは、ひょっとしたら、女性からは嫌われるタイプなのかな。

第4位 映画音楽にポストクラシカルが参入してきてる
これは今年だからという話ではないのですが、最近の映画音楽が迫力でぶん回す音楽と、ほとんどメロディラインのないアンビエント音楽と二極分化してきていたのですが、その狭間に使われるようになってきたのが、ポストクラシカルというジャンルの音楽です。小編成の管楽器とストリングスに、シンゼサイザーの音を加えて静かな心にしみる音が、映画音楽として使われるようになってきました。有名どころでは、「サラの鍵」「ディス/コネクト」「少女は自転車に乗って」のマックス・リヒター、「プリズナーズ」「悪童日記」「博士と彼女のセオリー」のヨハン・ヨハンソンが積極的に映画音楽を作曲しています。21世紀に入って、何だか行き詰ってる感を映画音楽に感じていた私には、映画音楽の新しい方向が見えてきたという気がして、このジャンルのアーチストのサントラへの参加に期待するところあります。

第5位 「マリリンの青春」から見えてくる五十代女子の予感
今や、アラフォー世代が女子と呼ばれる時代になりまして、その年代の女子をターゲットにした「Marisol マリソル」「GLOW グロウ」「Domani ドマーニ」といった女性雑誌も登場してきて、四十代も乙女として仕事に恋に充実してますって空気になってきています。この「マリリンの青春」のヒロインは五十代のバツイチキャリアウーマンで、新しい恋人を探し、恋愛の駆け引きだってしちゃう。そんな五十代でも女子という皆様の存在が、日本でも認知されるようになってくるのではないかしら。

今年はあまり映画を観ていないので、リストアップするのもおこがましいベストになっちゃいましたが、来年は、もう少しマメに映画館に足を運びたいと思います。来年もよろしくお願いいたします。

2013年のベストテンを作ってみました。

2013年は思うほど映画館へ足を運べなかったので、ベストテンとか作れるのかなとも思っていたのですが、並べてみると、いい映画がたくさんあって、豊作だったのかなって気がしてきました。基本は好きな映画をあげ、後、扱っている題材に学ぶところが多い映画も入れています。


第1位 「ある海辺の詩人」
イタリアの猟師町、出稼ぎ中国人女店員と、詩人と呼ばれる初老の漁師の、心の触れあいを描いた一編です。恋愛じゃないけど、もっと深い何かを感じさせる関係が、ラストで意外な形で情感が湧き上がります。穏やかな人間関係のつつましい感じとか、全体を包む空気が何だか好き。とにかく、心に響く映画だったので、これが1位。アンドレア・セグレ監督の他の作品も観たくなりました。

第2位 「偽りなき者」
幼女の気まぐれな一言で、保育園の先生がイタズラしたと思われちゃって、コミュニティから排斥されちゃうという、リアルなスリラー。冤罪がいつの間にか事実になっちゃうプロセスの怖さは他人事ではありません。日本でも起こりうるお話だけに、気をつけなくちゃと思わせる映画でした。映画としても大変見応えのあるものになっています。

第3位 「ハンナ・アーレント」
ユダヤ人虐殺の元締めと言われていたナチスのアイヒマン、逮捕されて裁判にかけてみたら、鬼でも悪魔でもない、ただの田舎の小役人でした。そのことを記事にして世界中からバッシングされた女性ハンナの物語。あまり、お近づきになりたくないタイプのヒロインなんですが、言ってることには説得力があり、それを敷衍すれば、偏見や悪意がなくても人間は残虐な行動を取れるのだという耳の痛い話にたどりつくのです。戦争や虐殺を繰り返さないためには、その人間の弱さをあるものとして受け入れて、抑止する必要があるという映画でした。

第4位 「最愛の大地」
アンジェリーナ・ジョリーが脚本、監督した入魂の戦争ドラマ。ボスニア紛争を舞台に、レイプ、殺戮をリアルに描き、並行して立場が相反する男女の恋愛を重厚に描いた作品です。戦争ドラマにお決まりの「愛は克つ」ではなく「愛は負ける」物語ではあるのに、画面に引き込まれてしまうあたりに、映画の力を感じました。ヘビーな内容の映画ではあるのですが、ドラマとして大変面白くできているので、ベストテン入りです。

第5位 「ゼロ・グラビティ」
宇宙空間を体験できる映像の素晴らしさ、精緻な音響など見所多く、さらに閉塞空間からのサバイバルドラマとして、最後には感動までさせてくれる映画の逸品でした。ストーリーはすごくシンプルなのに、主演のサンドラ・ブロックの熱演もあって、ドラマとしての満足度が大変高かったです。

第6位 「熱波」
今年のラブストーリーは、ミステリータッチの「セイフ・ヘイブン」なんかが好きだったのですが、ケッタイな発端から、ドロドロなお話を不思議な語り口で見せてくれた「熱波」が一番印象に残りました。モノクロの映像や背景音をシャットアウトした音響設計などの仕掛けがうまく作用して、不思議な味わいの恋愛映画になっていました。こういう見せ方もあるんだなあっていう発見もありましたし。

第7位 「東ベルリンから来た女」
ハードボイルドなサスペンス映画として一番面白かったのがこれ。東西冷戦の時代、西側へ亡命しようとする女医さんを主人公にしたサスペンスもの。冷戦の緊張感のリアルな描写から、ラストの苦いカタルシスまで、一気に見せる面白さ。印象的な風景描写、ヒロインの凛としたかっこよさなど見所も一杯詰まっていて、映画としての満足度が高い逸品でした。

第8位「マーサ、あるいはマーシー・メイ」
今年はホラーやスリラーの類はほとんど観られていなかったのですが、佳作「ファインド・アウト」「ザ・コール」などに比べて怖さが際立っていたのがこれ。カルト集団に取り込まれた少女が、そこから抜け出せない様子を不気味に描写していました。集団から逃げ帰った後も、そこであったことを他人に話せない少女が孤立してしまい、結局心を許せる人間が教団にしかいないとわかってくるあたりの怖さは格別でした。

第9位「故郷よ」
チェルノブイリ事故で、自分の故郷が立ち入り禁止区域になってしまった人々の心のありようを詩的に描いた一品です。誰もが持っている故郷への想いが、この異常な環境で、より鮮明に浮き彫りになるところに見応えがありました。故郷を不自然な形で奪われた人々の切なさが胸を打つ映画でした。

第10位「パシフィック・リム」
怪獣映画ファンである私へのごほうびみたいな映画でしたけど、ディティールだけでなく、ちゃんとドラマとしても面白いってところが点数高い映画でした。怪獣モノやSFアニメの定番を、骨太ドラマの中に丁寧に織り込んでいった脚本と演出が見事で、原点を知らなくても、十分楽しめる内容でして、素直に盛り上がれちゃうところがお気に入りです。


「パシフィック・リム」が10位になっちゃってるってことからしても、今年の映画は豊作だったように思います。ドラマとして大変面白かった「ペーパーボーイ 真夏の引力」「フライト」「鑑定士 顔のない依頼人」、娯楽映画としてのサービス精神があっぱれだった「ホワイトハウス・ダウン」、変化球のようで実はまっとうなコメディだった「ted テッド」、個人的には好きにはなれないけど、その作りのうまさは見事だった「ゼロ・ダーク・サーティ」「キャプテン・フィリップス」、よくわからないけれど、何だかそそられる「コズモポリス」などがベストからこぼれてしまいました。


次に、映画としてはベストテンからこぼれてしまったけど、ここがよかったというピンポイントベスト5を挙げます。

第1位「きっと、うまくいく」の有無を言わせぬエンタテイメント
これはベストテンに入れてもおかしくない映画だったのですが、3時間をベタな泣き笑いで引っ張って、しかもドラマとしての満腹感もたっぷりという娯楽映画のごちそうでした。ミステリー要素あり社会派のネタあり、とにかく色々と盛り込んで観客を楽しませようとする姿勢があっぱれな一品でした。各地で単館公開されてロングランされたってことはそれだけ観客の支持を得たということでしょう。こういうベタな人情話の映画で、劇場にお客が集まったということはもっと注目されていいと思いました。

第2位「ゼロ・ダーク・サーティ」のサスペンス演出
主人公の見せ方が好きになれなくて、ベストテンには入れなかったのですが、それでも、ビンラディンを探し出して襲撃するまでの展開はドキドキハラハラの連続で、ある種の知的興奮もあり、エンタテイメントとしてもお見事でした。テロリスト逮捕のためという名目で、アメリカがムチャやってるのですが、でも面白いのですよ、これが。

第3位「鑑定士 顔のない依頼人」の音楽のサラウンド効果
映画としても面白いミステリーだったのですが、この映画の中で、主人公が女性の肖像画に囲まれて恍惚となるシーンで、エンニオ・モリコーネの音楽が、観客を取り囲むように流れるのが大変効果的でした。臨場感を出すために劇場の左右後方のスピーカーから音を出すのはよくあるのですが、音楽を効果的に鳴らすために、この壁面スピーカーを使うのは珍しいのではないかしら。主人公が女性肖像画に囲まれるのを、音で表現していまして、女性ボーカルがあちこちから聞こえてくるのですよ。こういうのもっとやってくれないかなあ、最近の映画って音楽の出番が昔より少ないのが不満なので、こういう音楽の丁寧な扱いがうれしくなって、特筆しちゃいました。

第4位 「スマイル・アゲイン」のジェシカ・ビール
2013年の女優陣では、「シャドー・ダンサー」のアンドレア・ライズブロー、「ファインド・アウト」のアマンダ・セイフライド、「箱入り息子の恋」の夏帆、「セイフ・ヘイブン」のジュリアン・ハフ、「ted テッド」のミラ・クニス、「エンド・オブ・ウォッチ」のアナ・ケンドリック、「故郷よ」のオルガ・キュリレンコといった面々が印象に残りました。その中では「スマイル・アゲイン」のジェシカ・ビールの誠実なキャリアウーマンぶりが大変好印象でした。映画としての出来栄えは今一つの「スマイル・アゲイン」でしたけど、彼女はどんどんいい女優さんになってきていて、この先も期待大。

第5位「ムービー43」の関係者の黒歴史になるだろう度数100%
映画スターが、コメディにカメオ出演したり、テレビのセサミ・ストリートとかバラエティに出たりするのって、それなりにスターの箔になったり、いいイメージを追加することになるのですが、この映画はその例外になりそう。一応オムニバスコメディなんですが、とにかくひたすら下品。下品ネタで始めても、オチをスマートに決めれば、コメディとしては上々という評価になるのですが、この映画は徹頭徹尾下品。結構なメンツが出ているのですが、フィルモグラフィから外したい人もいるのではないかなあ。「ムービー43」のヒュー・ジャックマンってのは、蔑称になるのではないかしら。


というわけで、また、細々と更新していきますが、本年もよろしくお願いいたします。

今頃アカデミー賞を

2012年のアカデミー賞関係の映画を「ジャンゴ 繋がれざる者」を除いて一通り観ることができましたので、すんごい遅まきながら、今年のアカデミー賞にコメントしてみたいと思います。何しろ授賞式の頃は該当映画をほとんど観ていない状況なので、誰が本命だろうが、受賞しようが「ふーん」って感じだったのですが、今なら、もう少し何か書けそうなので、備忘録を作ってみます。


助演女優賞:アン・ハサウェイ「レ・ミゼラブル」
彼女の演技は他の映画と比べて変化球だし、立ち位置的には準主役だし、この人が選ばれるのは不思議な気がしました。助演女優というなら、「世界で一つのプレイブック」のジャッキー・ウィーバーの方が映画を支えるいい仕事をしているのになあって思いましたけど、まあハサウェイが受賞した方が華があっていいのかなってところでした。

助演男優賞:クリストフ・ヴァルツ「ジャンゴ 繋がれざる者」
これは、映画を観ていないから何とも言えないのですが、他の4人の候補の中だったら、「アルゴ」のアラン・アーキンがよかったように思います。彼のおかげで、「アルゴ」という映画が一回り膨らんだように思えたからです。

監督賞:アン・リー「ライフ・オブ・パイ」
映画が演出力によって救われた映画ということであれば、アン・リーの受賞は大変妥当なものだと思いました。他の映画に比べて骨太な物語をきっちりと捌いたという点が見事だったように思います。他の候補作では「世界で一つのプレイブック」が演出が隅々まで行き届いていたという印象でよかったように思いました。演出力ということでは、映画そのものは好きじゃないけど「ゼロ・ダーク・サーティ」なんかうまいなあって感心していたのですが、これは候補にも入ってなかったんですね、意外。

作品賞「アルゴ」
正直なところ、これが作品賞なの?ってのが第一印象でした。面白い映画だけど、結構突っ込みどころが多かっただけに、ハリウッドのその年のトップを張るほどでもないかなって。でも、他の候補作を並べてみたとき、他の作品にも、これだという決め手になるものがなく。他部門の受賞を逃した「アルゴ」が受賞するのがバランス的にも無難なのかなって気がしました。

撮影賞:クラウディオ・ミランダ「ライフ・オブ・パイ」
撮影賞の良し悪しってのは、最近はよくわからなくなってきました。この映画もほとんどがグリーンスクリーンの前での撮影だったようですし、さらにデジタルカラー補正が入るのも当たり前なので、撮影監督がどこまでその絵をコントロールしているのかがわかりにくいご時勢になっているからです。撮影監督が、合成やデジタル加工用の映像素材提供者になりつつあるのかもしれません。「ライフ・オブ・パイ」の映像はきれいだと思いましたが、ミランダがその映像にどこまで貢献しているのかなあって気がしました。

脚色賞:クリス・テリオ「アルゴ」
これは実話ベースのお話を娯楽ストーリーにまとめたテリオの受賞は納得しちゃいました。脚色賞ってのは、原作との差異で評価されるのか、単に原作モノの脚本の出来を評価しているのかがわからないのですが、候補作の中では、「アルゴ」がやはりよくできているって思いました。

脚本賞:クエンティン・タランティーノ「ジャンゴ 繋がれざる者」
観てない映画なので、コメントしかねちゃうのですが、やはり面白かったんでしょうね、きっと。「ムーンライズ・キングダム」が候補に入ってるのは意外でした。

作曲賞:マイケル・ダナ「ライフ・オブ・パイ」
「アンナ・カレーニナ」は未見ですが、他の候補作はどれも音楽が前面に出てこない縁の下の力持ち的なポジションの映画でした。「007 スカイフォール」や「アルゴ」は、シーンを語る音楽ではあってもドラマを語る音楽ではなく、「リンカーン」も定番のウィリアムズ節以上のものでなかったので、ダナのこの作品が選ばれたのかなあって気がしています。ちょっとエスニックなメインテーマが「ライフ・オブ・パイ」という二重構造のドラマのイメージをうまく表現していたように思います。

主題歌賞:「007 スカイフォール」
「レ・ミゼラブル」の歌曲はどれもよかったと思っていたので、「007 スカイフォール」の受賞はちょっと意外でした。ただ、最近の007映画の主題歌がノリの軽い、潤いのない歌が多くて、シリアスなドラマを支えきれていなかったことからすれば、この「スカイフォール」は大当たりでした。ドラマ主題歌の王道という意味では確かに説得力がありましたです。

主演女優賞:ジェニファー・ローレンス「世界にひとつのプレイブック」
「インポッシブル」は未見なのですが、他の候補者と並べたときに、消去法で彼女が受賞になっちゃうのかなって気がしました。「愛、アムール」のエマニュエル・リバは大変過酷な演技を求められて、それに応えている点で、すごいなあって思うのですが、その演技から、一人の人間のキャラクターと存在感を形作っているのは、やはりローレンスなのではないかしら。

主演男優賞:ダニエル・デイ・ルイス「リンカーン」
これは納得の受賞でした。実在した人間を偉人として演じるというものすごく高いハードルをクリアしているのですからすごい。人間リンカーンを演じたのなら、他の候補者との競争にもなったのでしょうが、偉人リンカーンを最後まで演じきったパワーは、他の候補者になかったものだと思います。


あくまで個人的な感想ですが、作品賞候補はどれもよくできた映画だと思う一方で、その中で、この1本という決め手を欠いているように思えました。作品賞の候補の中で、自分のベストテンに入れたいと思ったのは「世界に一つのプレイブック」だけでしたが、それもドラマの力というよりは題材の面白さが目を引いたという理由によります。アカデミー賞ってのは、それ自体がお祭り的なものですが、その結果から、自分の好みが必ずしも世間の評価と一致しないんだなってのを確認できるってのは面白いと思います。だから、自分の好きな映画が世間の評判が低くても、めげる必要はないんだなって。

美術賞や編集賞、衣装デザイン賞、メイクアップ賞は語る言葉が何もないのでノーコメントにしちゃいました。視覚効果賞も何がどう素晴らしいのか私の中で基準がわからないのでパス。考えてみれば、良し悪しというのを突き詰めれば、要は好き嫌いなので、何も言えないってことはないのかもしれません。でも、好みってのは、年齢とか性別、その日の気分で変わるものなので、単に好き嫌いだけなら、忘れてしまってもかまわないって感じです。これはあくまで備忘録なので。

2012年のベストテンを作ってみました

2012年ももう終わりということで、例年のごとくベストテンを作ってみました。今年は劇場に足を運んだ回数が少なかったとは言え、映画鑑賞としては豊作だったようで、多くの作品がベストテンからこぼれてしまいました。選択の基準は、映画の印象が強い順です。観終わって「ふーん」という印象しか残らない映画はベストテンからははずれてしまいます。

第1位 「別離」
2010年の私のベストワン映画だった「彼女が消えた浜辺」のアスカー・ファルハディの脚本・監督による一編は、ある一家に起こった事件を様々な視点から描いていて大変に見応えがありました。そのクールな視点はサスペンスタッチでもあり、その中から垣間見える、善意、憎しみ、面子といった人間の感情が非常にリアルに描かれていて、共感もできちゃうという見事なドラマに仕上がっていたので、これが1位です。何よりもまずドラマに引き込まれてしまう面白さが決め手となりました。

第2位 「恋と愛の測り方」
これまたイラン出身のマッシー・タジェディンが脚本・監督を担当した、ある夫婦の夜から朝までを描いたドラマです。お互いが別の異性と一夜を過ごすことになり、その葛藤からの選択そして結末まで、ドラマとして大変面白くできていました。ものすごいドラマチックではなく、感情の揺らぎのようなものを捉えたセンスがすごく好き。映画館へ足を運ぶのはこういう映画が観たいから、ということで、第2位にしちゃいます。

第3位 「善き人」
普通の大学教授がいつの間にかナチスの幹部にさせられちゃっていたという、ある意味ホラーな一編。人間、良い行いをしているつもりでいても、いつの間にか抜き差しならない状態になっちゃっていることがあるというのを、リアルに見せてくれていて、ヘビーだけど見応え十分。ヴィゴー・モーテンセンをはじめとする演技陣の好演もあって、他人事とは思わせないところが見事。

第4位 「無言歌」
中国の現代史の中で、文化大革命の影に隠れたもうひとつの黒歴史を描いた力作です。こういう歴史の暗部にスポットライトがあたったということもすごいことだと思うのですが、極限状況における人間の尊厳と悲しみをきちんと描いているところが見事でした。とにかく、観たインパクトでは、今年一番ではないかしら。

第5位 「ヤングアダルト」
今年観たコメディの中で一番笑えたのがこの映画。30過ぎの自意識過剰ヒロインの暴走っぷりがおかしくて、そのリアルビッチぶりが見事でした。シャーリーズ・セロンのいけしゃあしゃあのヒロインは、最優秀主演女優賞。(キティちゃんが助演女優賞かな)とにかく面白い映画でした。

第6位 「ルルドの泉で」
ルルドの泉で起こった奇跡の物語から見えてくるのは、信仰への希望と妥協、そして善意と信念。さまざまな人間の持つ感情を描くことで、信仰とは何なんだろうと考えさせてくれる映画でした。不信心な私にも、神様を信じるってこういうことなのかなって思わせてくれるすごい映画でした。

第7位 「ドラゴンタトゥーの女」
横溝正史タッチの因縁ミステリーに、探偵側のドラゴンタトゥーの女のドラマを加えて、エンタメ度の高い映画に仕上がっていました。2012年に観た映画の中で、エンタテイメントとして一番面白かったのがこれです。デヴィッド・フィンチャー監督の骨太演出が2時間48分を退屈させません。

第8位 「死刑弁護人」
麻原彰晃や林真須美の弁護士として、良くも悪くもその名を知られる安田好弘弁護士を追ったドキュメンタリーです。現代社会、そして公正さと正義を考えさせられる映画として、多くの人に見て欲しいと思いました。映画として突っ込み不足と思わせる部分もありますし、安田弁護士に共感できない部分もありましたが、それでも観る価値のある映画です。

第9位 「ドリーム・ハウス」
超自然ホラーかと思わせておいて、意外な方向に展開するサスペンススリラーの一編。小品ではあるのですが、ジム・シェリダンの行き届いた演出、ダニエル・クレイグ以下演技陣の好演もあって、映画としての満足度が高かったです。クライマックスで一瞬だけ超自然ホラー展開するところが圧巻でした。

第10位 「少年と自転車」
親にネグレクトされた少年がある女性との出会いによって、未来が変わっていくというお話。ダルデンヌ兄弟のリアルだけど暖かい演出が、希望と癒しを与えてくれる映画でした。淡々と見せているけれど、でも後味がすごく暖かいってのは、やはり演出のうまさなのだと思いまして、10位にランキングです。

上記のベスト以外では、ドラマとしての見応えという意味で、「オレンジと太陽」「最強のふたり」などが印象に残りました。また、正統派バカコメディとしての「ジョニー・イングリッシュ 偽りの報酬」も楽しい一編でした。もう一本バカ映画として「エクスペンダブルズ2」も挙げておきます。


また、例年の、ベストテンには入らなかったけど、どっか気になるピンポイントベスト5を以下に挙げます。

第1位 「ディクテーター 身元不明でニューヨーク」の最後の演説
サッシャ・バロン・コーエン扮する中東の独裁者がアメリカで迷子になるという、お下劣ネタと風刺ネタ満載のコメディなんですが、クライマックスで「独裁政治のどこが悪い」という演説が圧巻でした。「独裁政治下なら、国民の1%が90%の富を独占できる、報道も一族独裁で自由にできるし、福祉や教育予算を減らすことができ、理由をでっちあげて戦争を始めることができる」と今のアメリカの現状をあげつらうのですよ。ここまで言うかと思うのですが、日本では絶対できない風刺ギャグだよなあって感心。ただの下品コメディではありません。

第2位 「ルート・アイリッシュ」の戦争はビジネスだ。
ケン・ローチ監督の「ルート・アイリッシュ」は、傭兵ビジネスを扱った戦争サスペンス映画でした。民間軍事会社の傭兵たちは、治外法権を持ち、イラク市民の生活を蹂躙しても罪に問われることはありません。会社の目的は、イラク市民の保護でもなく民主化でもなく、お金をもうけることです。国際化、自由化はとうとう戦争そのものをビジネスとし始めました。そこには倫理とか理性よりも利益が優先されてしまうのです。恐ろしい現代の仕組みをつきつけてくる映画として、この映画の存在価値があると思いました。

第3位 「テイク・ディス・ワルツ」のミシェル・ウィリアムス
2012年の女優陣では「ドリーム・ハウス」のレイチェル・ワイス、「ペント・ハウス」のティア・レオーニ、「人生はビギナーズ」のメラニー・ロラン、「ブライズ・メイズ」のローズ・バーン、「ブラック&ホワイト」のリース・ウィザースプーン、「ディクテーター 身元不明でニューヨーク」のアンナ・ファリス、「君への誓い」のレイチェル・マクアダムス、「だれもがクジラを愛している」のドリュー・バリモア、「崖っぷちの男」のエリザベス・バンクスなどが印象的でしたが、等身大のヒロインをリアルに演じたミシェル・ウィリアムスが特に光っていたように思います。マリリン・モンローの時とは別人のようなもの憂げな人妻ぶりが見事でした。

第4位 「バトルシップ」の意外に面白い視点
世間の評判はバカSFみたいに言われていますけど、これが結構面白い構成になっているのですよ。エイリアンは他国から武装してやってきた調査団で、地球人は原住民。エイリアンは敵意のない者には攻撃してこないけど、攻撃に対してはすごい武器で反撃してきて、地球人はゲリラ戦を挑むしかなくなります。これって、エイリアンがアメリカ軍で、地球人がイラクやアフガニスタンという構図になるのですよ。エイリアンが傷ついて地球人に捕らえられた仲間を助けるシーンとかもあって、エイリアン側が決してバカでも非道でもないってところがよく考えられていました。

第5位 「ピラミッド 5000年の嘘」の木曜スペシャル度
ピラミッドに色々な秘密の数字が隠されているというところから始まって、ラストにはなぜか未来の警告になっちゃうという大ハッタリの強引な展開。若い人には目新しいかもしれないけれど、40歳以上には、昔懐かしい木曜スペシャルの世界です。今は未来の心配というとお金のことばかりになっちゃうのですが、昔は人類の滅亡とか大災害とかを心配していました。そういう大らかな時代を思い出させてくれた映画でした。

そんなわけで、来年もまたよろしくお願いいたします。

予告編も色々ありますが、観る映画を選ぶときには重宝してます

今は、映画の公式サイトから簡単に参照できるのが映画の予告編です。映画館でも上映前にかかるのが予告編なんですが、私の場合、観に行く映画を決める時、予告編を観て決めることが多いです。予告編次第で映画への期待度が変わりますし、予告編でわくわくさせてくれるものは、その予告編自体がお値打ちものだということが言えましょう。そこで、映画の予告編のポイントを以下にいくつか挙げさせていただきます。


1、映画のジャンルがわかる
これが、予告編の一番基本的なところではないかしら。その映画がラブストーリーなのか、人間ドラマなのか、コメディなのか、ホラーなのか、そこのところを明快にしてくれるのが短い予告編のポイントだと思います。逆に、予告編を観ても、これは一体どういうジャンルなのかわからない映画だと食指が動きません。何を期待してよいやらということになります。最近の映画ですと「戦火の馬」の予告編は、一体どういう映画なのか想像つかなくて、結局観に行くのをパスしちゃいました。丁寧に説明しているからわかりやすいというわけではありません。バットマンの最新作の予告編は断片だけ見せて何も説明がないのですが、ああ活劇なんだなってわかりますから、これはこれでOK。大体、ラブコメの予告編なんてのはわかりやすくていいですね。

2、あらすじを見せる
人間ドラマなんかですと、物語の発端を見せて、こういうお話なんですよって説明するものがあります。「灼熱の嵐」とか「アーチスト」「リアル・スティール」なんかは、物語の中盤くらいまで予告編で見せて、後は映画館で確認してねという見せ方になっています。結末までわかっちゃう予告編もたまにありますけど、それでも、ラストのサプライズは隠しているものが普通です。「ペントハウス」とか「サラの鍵」の予告編はそんな感じでした。恋愛もの、特にラブコメなんて結末は大体お決まりなので、予告編としては、あらすじを語るものは少ないようです。

3、雰囲気だけで見せる
これは、ホラーものなんかに多い予告編なんですが、とにかく何か怖そうな絵をつなげて、「どう?怖そうでしょ」って煽ってくるだけの予告編。こういうホラー映画の予告編はラストにショックシーンを持ってくるパターンが多いので、あまり心臓によくありません。後、映画本編そのものがわけわからないので、雰囲気を伝えるのが精一杯な予告編というのがあります「ツリー・オブ・ライフ」とか「メランコリア」なんかは、本編にイっちゃってるところがあるので、予告編もそのイっちゃってる感をほのめかしながら、何となく感動的な雰囲気にまとめています。後、ジャンルを不明にして雰囲気だけで、お客を惹こうとする予告編もあります。最近ですと「ドラゴンタトゥーの女」の予告編は、一体どういうジャンルの映画なのかもわからないが、雰囲気は何だかすごそうという見せ方をして成功しています。

4、観客をミスリードする
これは、ジャンルがわかるってのと反することなんですが、狙ってやっている場合と、何かの間違いでやっちゃた場合があるようです。最近ですと、冒険ファンタジーみたいな予告編を見せた「ヒューゴの不思議な発明」なんてのは確信犯でしょう。映画創世期の話だなんて言われても、若い層にはアピールしないし、ああいう映像だと年配の方は来ないでしょうし、ある意味苦肉の策だったように思います。ミスリードの成功例としては、「顔のないスパイ」なんてのも、映画の前半部分を映画のカギのように見せて、本編を観ると、予告編以上に面白いということにつながることもあります。ただ、予告編で期待したものと、違うものが出てくるわけで、本編を観て「ダマされた」と思う可能性があります。「いつか来たる君へ」の予告編からは、ドイツ軍による村一つ虐殺を題材にした映画だとは想像がつきません。映画館で本編を観て、「ええー」ということになります。

5、どっか間違ってる
これは、ミスリードじゃなくて、予告編と本編があきらかに違うというもの。コメディなのに、人間ドラマのような見せ方をしたり、シリアスな人間ドラマなのに恋愛モノみたいな見せ方をしたり。配給元がセールスポイントがないもんだから苦肉の策でやるんでしょうけど、劇場で「予告と違うだろ」って突っ込みが入っちゃう予告編があります。最近ですと「ルルドの泉で」の予告編で「奇跡を巡るサスペンスフルドラマ」だって。それは違うだろう。

6、ちゃんと内容を伝えている
これが1番に来るのが普通なんですけど、やはり予告編の醍醐味は、きちんと本編の内容を伝えていること。それができてれば、本編を観に来たお客さんを満足させることができます。こういうのはアクション映画が得意なようで、「ミッション・インポッシブル」なんてのがその典型。まあ、本編が面白かったら、予告編も面白く作れる筈だとは思うのですが。


というわけで、予告編は映画館に足を運ばせるための重宝なメディアで、そこには色々なパターンや役目があります。と、ゴタゴタ言いましたが、お客さんがその映画を観に来てくれたら、その予告編はよくできた予告編ということになります。最近の予告編は、ナレーションや字幕で観客を煽ることが少なくなり、ある意味お行儀のよいものが増えています。その中で、お客さんを映画館へ呼び込まなきゃいけないので、大変だと言えば大変だと言えましょう。最近の映画で気になった予告編は「オレンジと太陽」です。これはあらすじを語るパターンの予告編ですが、ぜひ本編を観たくなりました。

2011年のベストテン作ってみました

2011年も終わりですが、今年も思うように映画館に足を運べない1年でした。そんな中で、ベストテンを作らせていただきました。全体的に映画の作りの面白い作品がベストに上がっています。

第1位 「サラの鍵」
実際に起こった悲惨な事件で始まる物語が意外なところに落ち着くまでが、映画として大変面白いと思ったので1位です。直接事件に関与しなかった女性の、好奇心の着地点の見せ方に感心しました。映画としての構成の面白さということでは、「つぐない」のような意外性がありました。キネ旬での評価が低くても、私はこの映画推します。

第2位 「クロエ」
娼婦に自分の夫を誘惑するように依頼する人妻の話、と言ってしまうと実も蓋もない話のようなんですが、これが映画として大変面白くできていまして、ミステリアスであり、人間ドラマとしても、考えさせられるところあり、そして登場人物が大変魅力的に描かれていました。第1位と同じく、映画としての満足度が高い映画でした。

第3位 「くまのプーさん」
今年はあまりコメディの当たりが少なかったのですが、それでも面白かった映画で「宇宙人ポール」と争った結果、一番おかしかったのがこれ。ボケキャラばかりで、ツッコミがいない。物語らしい物語がない。それでも、全編に渡って、小ネタを仕込んで、メインでは大ボケかますという、見事に楽しい映画に仕上がっていました。感動も涙もありませんが、笑いはたっぷり、意表をつかれて、最後は大満足でした。

第4位 「キッズ・オール・ライト」
女性のゲイのカップルのホームドラマなんですが、ホームドラマとしての細やかな作りが映画として大変よくできていたので、これが4位になりました。大きな事件が起きるわけではないのですが、平凡なゲイカップル家庭に起こるささやかな波風を暖かい視点で描いているのが、心地よい映画でした。映画としての作りは平凡でも、その人間を見る視線の暖かさが映画としてのポイントを上げています。

第5位 「4デイズ」
アメリカの3都市に核爆弾を仕掛けた男と、彼からその場所を聞き出そうとする拷問のプロフェショナルの闘い。双方ともにギリギリの精神状態で、目的を達しようとします。手段を選ばない拷問人は最後の手段をとるのですが、果たして?という展開ながら、ゲーム感覚よりも人間ドラマを見せた構成が見事でした。ショッキングなシーンもありますが、着眼点の面白さと演技陣の好演によって、見ごたえのある映画に仕上がっていました。

第6位 「スリーピング・ビューティ 禁断の悦楽」
若い女の子が、金持ちジジイ相手の秘密クラブに就職します。そして、おおせつかった仕事は、睡眠薬を飲んでベッドで眠ること。そこへ老人がやってきて好きなことしちゃうわけですが、基本的にやってることはエロは抜き。なのに、映画として、これがエロチックでそそるのですよ。ドラマチックな展開があるわけではないのですが、不思議な映画的興奮があります。映像の面白さと、映画としての満腹感で、これが第6位です。

第7位 「白いリボン」
ドイツのある村、一見のどかに見えるけど、そこでは大人たちが表と裏の顔を持ち、それが子供たちに暗い影を落としていました。ミステリータッチで展開するけれど、結局何も解決しない。でも、村にひそむおそろしい魔の姿が浮き上がってくるというお話は、映画として大変面白かったです。映画館という切り取られた空間の中で、引き込まれて観ると観終わって、ぞっとする後味の残る映画ですから、まさに映画館で観るための映画と言えましょう。

第8位 「ゴースト・ライター」
元首相の自叙伝のゴーストライターになった男が巻き込まれる不可解な事件。今年の映画の中で、純粋にエンタテイメントとして一番よくできていた映画ではないかと思っています。ミステリーとして多少フェアじゃなくても、映像、演出が見事に映画としての満足感を与えてくれます。

第9位 「メアリー&マックス」
クレイアニメーションだからと「ウォレスとグルミット」みたいなのを期待すると、そのヘビーな展開に裏切られた気分になります。内向的な少女とアスペルガー症候群の中年男の文通を通した友情を描いた映画は、痛いけど心惹かれるものがありました。ブラックユーモアの先のシャレにならない部分も描いていますが、それでも心が穏やかになれる後味を持つ、不思議な映画でした。私にとっては、初めて観るジャンルの映画で、それだけに強い印象が残りました。

第10位 「ブラック・スワン」
今年はホラー映画はほとんど観ていないのですが、そんな数少ないホラーの中で、「ザ・ウォード」とこれで迷った結果がこれでした。とにかく、ヒロインを徹底的にいたぶっていく趣向と見せ方のホラーの古典的手法が見事にマッチしていました。なまじ、バレリーナのお話というきれいな衣装を身にまとっているだけに、中身のえげつないまでのホラー趣向が際立ちました。バレエのシーンで、観客の視点のカットを一切見せない演出からして、これはバレエ映画ではないですもの。

この他には、アイデア勝負プラスアルファの面白さがあった「ミッション:8ミニッツ」、、ベタなラブストーリーのようでいてドラマとしての奥行きを感じさせた「親愛なる君へ」、エンタテイメントとしての完成度が高かった「ミケランジェロの暗号」、静謐な空気感が心に残る「ラビット・ホール」、表現的にはうまいとは思わないけどその伝えたいポイントに共感できる「チェルノブイリ・ハート」といった映画が印象に残っています。


後、映画そのものはベストに入らないけど、ピンポイント的によかったベスト5を、ピンポイントベスト5として挙げさせていただきます。

第1位 究極のわんこ映画としての「木洩れ日の家で」
これは、ベストテンに入ってもおかしくない映画でもあったのですが、とにかくわんこ映画としての完成度が高かったです。私は泣かせを売り物にするわんこ映画は好きではないのですが、この映画は、すごくお気に入りです。主人公のおばあちゃんの一挙手一投足に必ずわんこのカットが入るという演出が見事。彼女を見守る天使みたいなポジションになっているのでしょうが、これには「やられた」という気分になりました。

第2位 「ブリューゲルの動く絵」のアート気分
これは、映画としてというよりは、テレビの美術番組の企画と言うべきものなのでしょう。ある絵ができるまでを、ファンタジックに絵解きして見せているという点がユニークでした。こういう映画を観ているとアート気分になれますし、また、美術館に足を運んでみようかなって気分にさせてくれます。

第3位 「親愛なる君へ」のアマンダ・セイフライド
今年の映画の女優さんでは、「マーガレットと素敵な何か」のソフィ・マルソー、「RED」のメアリー・ルイーズ・パーカー、「アレクサンドリア」のレイチェル・ワイズ、「ステイ・フレンズ」のミラ・クニス、「ザ・ウォード 監禁病棟」のアンバー・ハード、「ブルー・バレンタイン」のミシェル・ウィリアムズなどが印象的でしたけど、「クロエ」も含めてアマンダが一番輝いていたように思えます。単にかわいいだけじゃ、これだけ売れないでしょうし、来年も公開作が控えているようで、楽しみな女優さんです。

第4位 「ザ・ウォード 監禁病棟」での、ジョン・カーペンターの復活
カーペンターファンの私としては、彼の新作が劇場で観られたことがうれしかったです。相変わらずのシネスコ画面へのこだわりですとか、ホラー職人としての腕を堪能することができました。ラストがショックシーンで終わるとか、音楽が彼自身の手によらないといった不満点もあったのですが、よくある題材も料理の仕方でモンスターホラーになるというところがお気に入りでして、そのおどろおどろしいパワーが衰えていないことを再確認できました。

第5位「六ヶ所村ラプソディ」に見る、原発と住民の微妙な関係
2006年の映画なんですが、今年、劇場で観ることができて、色々と発見が多かったので、ここに挙げておきます。使用済み核燃料再処理施設を誘致するかしないかで、村の人や第三者といった人の意見を並べて描いた作品です。冷静に考えれば危険なものが、流れに流されるかのようにできあがって行く様子は、怖いと思いつつも人間の考えることを単純に二元論で割り切れないなあって、再認識しました。沈黙の中立などあり得ないということは、耳に痛い話でした。


そんなわけで、2012年もできるだけ映画館に足を運ぶようにして、このブログは細々と続けていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

2010年のベストテン(観た本数少ないけど無理やりひねり出しました)

2010年は例年になく映画館に行けてなくて、ベストテンを作るのもおこがましいのですが、それでも、何もないのも寂しいので、強引にベストテンに仕立ててしまいました。映画としての良し悪しよりも、見せ方の面白さとか娯楽性が先に立ったベストテンになってます。

第1位「彼女が消えた浜辺」
イランのアスガー・ファルハディ監督作品が今年の1位になりました。友人たちの旅行に連れて来た知り合いの女の子が行方不明になっちゃう、その後の気まずい雰囲気が妙にリアルで、いいとこついてるなあって感心。ものの感じ方、文化といったものが、日本もイランも意外と同じじゃんってところに発見がありました。

第2位「コララインとボタンの魔女」
人形アニメなんですが、これがイメージの宝箱みたいで観ていて楽しい。パパとママは目がボタンになっちゃうとか、ネズミのサーカスとか、ちょっとダークな感じもまたマルでした。イメージてんこ盛りということでは「ミック・マック」と競ったのですが、こちらのヒロインの妙にリアルな女の子ぶりに軍配が上がりました。

第3位「ぼくのエリ 200歳の少女」
スウェーデンの寒々とした空気の中で展開するバンパイアの少女といじめられっ子のラブストーリー。どこか切ないようで、でもその底にあるかなり怖い世界観が見事でした。ラブとファンタジーとホラーのさじ加減が素晴らしく、映像と音楽の美しさも絶品でした。

第4位「(500)日のサマー」
サマーというちょっと変わった女の子との恋愛模様を描いておいて、実はサマーの成長物語になっていたという、ヒネリの効いたラブコメが4位に入りました。ヒロインを演じたズーイー・デシャネルの魅力もさることながら、不思議ちゃんなヒロインに共感できた演出が見事な一編でした。

第5位「グリーン・ゾーン」
イラク戦争の初期の頃を舞台に描くアメリカの陰謀。昔なら、マジな政治サスペンスにしちゃうところを、派手なアクションバリバリの娯楽エンタテイメントに仕上げているところが見事でした。「ユナイテッド93」で、マジメな題材を面白く作り過ぎてると思わせたポール・グリーングラス監督による、正面切ってアメリカを悪役にした映画です。

第6位「プレシャス」
16歳の少女、プレシャスの状況はまことに悲惨でして、それをこれでもかと見せる展開は結構しんどいものがありました。それでも、この映画を推すのは、教育への希望が描かれているから。勉強したい子供がいて、学ばせたいと思う大人がいる、そんなことがすごくうれしく思える映画でした。

第7位「リミット」
棺おけに閉じ込められて土に埋められた男、その棺おけの中だけで展開するサバイバルサスペンス。設定だけの出オチ映画かと思いきや、展開の面白さで見せる映画になっていました。ラストの盛り上がりなんて「おおぅ」と思わせるものがありましたもの。見せ方のうまさの勝利でしょうね。

第8位「シルビアのいる街で」
街のスケッチをえんえんと見せる、その映像と音を楽しむ映画でして、そこにはまるとかなり面白く、はまらないと何じゃこりゃってことになっちゃいます。ああこういう映画もあるんだなあってのが、新鮮で楽しかったです。一度限りの手だとは思うのですが、やったもの勝ちってのはありますよね。

第9位「すべて彼女のために」
冤罪で刑務所に入れられちゃった奥さんのためにダンナが何をするのか。ええー、そっちかよーって突っ込みが入る展開なんですが、これが面白くて見応えのある映画に仕上がっていました。こういうドラマが珍しかったってこともあるんですが、これはもっと評価されていい映画だと思いましたです。

第10位「ローラー・ガールズ・ダイアリー」
ドリュー・バリモア監督第一作ということだったんですが、これが大変手堅く作られた青春映画だったのが意外でした。ヒロインの成長ぶりを素直に描写していること、脇役を丁寧に描いているところなど、ホントによくできてる映画でした。友人とケンカして和解したり、親との葛藤があったり、ライバルとのやりとりがあったりと定石をきっちり積み上げているのも点数高かったです。


後、ベストテンからはみ出てしまったのには、ジェットコースタームービーの作りだけどちゃんとキャラが立っていた「ソルト」、リアルにオヤジが壊れていく「ストーン」などがありました。


この他にも、毎度のピンポイントベスト5を挙げておきます。

第1位「超強台風」の特撮
中国製のディザスター映画なんですが、その災害シーンがCGじゃなくて、ミニチュア中心の特撮になっているのが楽しかったです。人命救助中心の展開で、人が一人も死なないドラマってのも印象的だったのですが、ミニチュア特撮にわくわくしちゃったのは、私がゴジラ世代だからでしょう。

第2位「ニューヨーク・アイ・ラブ・ユー」の岩井俊二編
オムニバス映画として、よくできてたとは思うのですが、やはり好き好きが出てしまいまして、その中でよかったのがこのエピソード。行き詰った作曲家が監督のアシスタントと電話で会話していくうちに恋が芽生えるという、とてつもなく素敵なお話でした。ここ数年のラブコメの中でもベストではないかしら。

第3位「パラノーマル・アクティビティ」のよく研究してる度
映画としては、反則なつくりではあるのですが、フェイクドキュメンタリーとして、よくできていました。「本当にあった呪いのビデオ」などの怪奇実録ビデオを研究した後がありまして、リアルな間のはずし方や、異常現象からのカメラワークなど、既視感ありありなんですが、それを隅々まで作りこんでいるのはお見事だと思いました。

第4位「川の底からこんにちは」の満島ひかり
2010年の映画のヒロインというと「(500)日のサマー」のズーイー・デシャネル、「バレンタインデー」のジェシカ・ビール、「恋愛遊戯」の深田恭子、「インセプション」のエレン・ペイジなどが印象的でしたが、そんな中でとにかくインパクトが強かったのは、「川の底からこんにちは」の満島ひかりでした。映画の出来栄えとは別格に、かわいいけどある意味不気味な存在感を示していて印象的でした。

第5位「NINE」の映像の圧倒的迫力
映画館で観るための絵を作っていたと思うのが、この「NINE」でした。シネスコの大画面をフルに活用したディオン・ビープの絵作りは、奥行きと迫力が見事でして、この映像はテレビじゃなくて映画館だよねという説得力がありました。

そんなわけで、2011年もよろしくお願いいたします。

最近の映画館の段取りがちょっとなじまない

今回はちょっとオヤジのグチでご容赦下さい。先日、日比谷有楽座で「食べて、祈って、恋をして」を観て、改めて思ったのですが、最近の映画館って、映画の始まりがダラダラしてるのが気になっています。

その昔、子供の頃は、映画館は、年に2、3回しか行けない特別な場所でした。で、映画館に入ると、スクリーン前には、幕があって(いい劇場だと緞帳でした)が、左右のスピーカーから音楽が流れていまして、レコード屋の名前が広告されていたように思います。家で見るテレビは19インチのモノクロでしたから、映画館で観る画面のでかさと美しさは大変インパクトがありました。

さて、映画が始まるときは、まず場外のベルが鳴り、その後場内のブザーが鳴って、幕が上がります、映画館によっては、左右に開く幕があるのですが、これが開く時間が、日常から非日常への転換ポイントになります。幕が開ききったころには、場内も暗くなっていまして、まずニュース映画が始まり、その後に予告編を何本かやった後、本編が始まります。二本立てだと、併映の上映の時には、ニュースも予告編もなく、即本編の上映となります。友達とガヤガヤ話していても、ブザーが鳴って幕が開く間には、なぜか姿勢を正して、さあ、映画だぞっていうある種の緊張がありました。場内の明かりが消えたら、そこから先は映画の世界、非日常の異空間になるというのが、大変、わかりやすい段取りになっていました。

今は、どの映画館も、基本がシネコン仕様になってしまいました。まず、スクリーンの前に幕がなくなりました。これによって、幕が開くというセレモニーがなくなり、映画が始まるというわくわく感が一つ消えました。スクリーン前の幕がなくなったということには一長一短ありまして、前に座った人間の頭が映画鑑賞の邪魔になるかならないかが、映画が始まる前にわかるというメリットは無視できません。空いてる映画館なら、他の席へ移動することも可能ですから。

さて、映画の開始時間が近くなってくると、いつの間にか、劇場の前の方だけ暗くなって、ケッタイなうさぎやリスがグダグダと会話するオチなしコントアニメが始まります。場内は暗くないので、お客さんも隣の人とのおしゃべりをやめる義理はないです。コントが聞き取れなくてイラっとくる人がいるかもしれませんが、そもそも観客全員に注目して欲しいわけではなさそうです。で、その後に、お馴染み鷹の爪団のアニメによる、TOHOシネマズの紹介コント。その後、場内がもう1段階暗くなって、コマーシャルが始まります。政府広報やらマヨネーズのコマーシャルが上映されて、その後、映画の予告編が始まります。このあたりまで来ると、場内はだいぶ暗くなってますが、その前からおしゃべりしてたおばちゃんたちは、おしゃべりを継続。何しろ、「映画が始まる」というきっちりとしたイベントがないんですから、気持ちを切り替えるタイミングがありません。そして、予告編が終わると、「ケータイの電源はオフに! 館内きーんえーん、上映中はお静かに、撮影禁止.... 」などの注意事項が流れます。さて、これで始まるかと思ってると、ドルビーデジタルのロゴがでます。さあ、これで本編が開始かと思うと、さらに予告編が出てくる。どうやら、本編フィルムの頭に予告編がついてるみたいなんです。そして、最近はおなじみになった著作権を守ろうキャンペーンの小芝居があって、やっと本編の始まり始まり。

正直言って、なげーよ。さらにいうなら、どこから映画鑑賞モードに入ればいいのかわかんなーい。日常から、映画鑑賞という非日常への切り替えポイントがきちんと設定されてないから、場内はずーっとざわざわしたままだし、どこから先が、映画鑑賞の時間になるのが曖昧だから、気に入らないと思っても文句を言う根拠がありません。映画館は、なぜこういうグダグダな映画の始め方をするのかしら。オヤジの言い方をすれば、映画鑑賞にけじめがないんですよね。確かに映画館の中で騒いだり、ウロウロするガキは、今も昔もなのですが、昔はニュース映画や予告編の最中でもうるさかったら注意の対象になりました。それが、今では、本編が始まるまでは、注意できない雰囲気なんです。

理屈で言うなら、徐々に場内が暗くなることで、観客の目を慣れさせるということもありますでしょうし、CMの時間までは、入場者を入れる前提で明るくしてるのかもしれないのですが、やはり、きちんとした線引きがないと、短気なオヤジはどこか落ち着かないのですよ。映画館によっては、まず「まもなく上映が始まります」という表示があって、しばらく間を置いて、かなり明るいままでCMから始めるところもあるのですが、これまた、ダラダラとしていて締まりがないのです。

確かに昔に比べると、場内で喫煙する人はいなくなりましたし(昔はひどかったです。おかげでタバコ嫌いになって今日に至っています。)、前の席に足を上げて観てるオヤジも見かけなくなりました。昔の映画鑑賞環境の方がよかっただなんて、口が裂けても言えません。でも、映画が始まるまでの、ダラダラ感はなんとかならないのかと思ってしまいます。テレビのコマーシャル時間みたいなトイレタイムのような扱いになってるような気がしますし、節目のない段取りは、結果的に行儀が悪くなると思うのですが、まあ、これは、オヤジのグチなのでしょうね。

あと、自分が何年か年をとって、オヤジからじいさんになったとき、この記事を読んで、共感するのか、「神経質なやっちゃ」と思うのか。どちらにせよ、その頃の映画館がより快適な場所になってくれていればと思いますです。

2009年のベストテン

2009年も終わりということで、今年のベストテンを作ってみました。観た映画の本数が例年より少なかったので、邦画洋画ドキュメンタリーひっくるめて、一つのベストテンにまとめてみました。上位5本は、何かと考えさせられたもの、下位5本はエンタテイメントとしてよくできてるものが並びました。

第1位「愛を読むひと」
人はその環境に順応していく、その中で人としてひどいことをしてしまうことがあり、時として、それを過去に葬ることで生き続けなければならない。若い男の子が年上の女性にメロメロになっちゃうお話から、歴史の中で変わる価値観、歴史をどうやって自分の事として受け入れるか、自分の罪を認識したとき何ができるのか、などなど様々な問題提起をしてきます。色々と考えさせられ、恋愛ドラマとしてもよくできていたので、これはやはり1位です。

第2位「この自由な世界で」
グローバル化とか言われるご時世ですが、その実態は、弱い者がより弱い者を食い物にするという、すごくやな構図の再生産だったというお話。監督の突き放したような視点は、救いのないドラマのように見えました。でも、それを冷静に事実認識しないと世界はよくならないなあって気もしました。

第3位「エレジー」
初老の男と若くて美しい女性の恋愛ドラマですが、その中で男女のあり方の本音と建前が大変よく描かれていたように思います。年の差があるからこそ、その絆の中から、純粋な愛の形が見えてくる展開がすばらしいと思いました。

第4位「冬の兵士」
イラク戦争に従軍した兵士が、自分は国を愛しているが、この戦争はやめるべきだと語ります。彼らは戦争の最前線にいる人間だけに言葉に説得力があります。イデオロギーや自国批判でない形で、反戦を描いたという点で記憶されるべき映画だと思います。愛国者で反戦意識を持った人間が黙って出撃して死んでいく日本の戦争映画に納得できなかった私には、腑に落ちる映画でした。

第5位「台湾人生」
日本統治時代に生まれて、日本人としての教育を受けた台湾人の証言による、日本と台湾の歴史。大東亜戦争前後の歴史について、日本人以外の視点から語られると、意外な発見がありました。そして、人は歴史の積み重ねの上に生きているというより、生まれた時から今までの切り取られた歴史の中で生きているのだと気付かされました。

第6位「チェンジリング」
行方不明になっていた自分の息子が見つかったと思ったら別人だった。実録ものだというのが恐れ入りましたというお話。クリント・イーストウッドがストーリーを語る達人だということを証明しました。映画としての作りが豪華で丹精。映画館で観るのにふさわしい、骨太エンターテイメントでした。

第7位「ナイト・ミュージアム2」
ハリウッドは、ファミリー向け映画を作るのがうまいなあって改めて感心させられた映画。同じくファミリー向け映画では佳作「ウィッチ・マウンテン」も捨てがたかったのですが、ベタなお笑いで点数を稼いでいる点で、こっちをとりました。SFXをこれ見よがしな使い方をしていないのも好感度大です。

第8位「ジュリー&ジュリア」
フランス料理のカリスマであるジュリアに憧れるジュリーが料理ブログを始めるというお話。イコンとなっているジュリアが、ジュリーの心の支えとなり、自分への自信と信頼を取り戻していくというお話は出来過ぎの感もあるのですが、メリル・ストリープとエイミー・アダムスの演技が楽しく、娯楽映画としてよくできていました。

第9位「わたし出すわ」
お金が人を狂わせることが多いけど、でも、人間の行動の動機って意外とお金以外のところにあるよねっていう見せ方が面白かったです。お金の力ってすごいなあって思わせておいて、でも、人はお金で動くってわけじゃないんだよってのが見事にはまりました。

第10位「ビッグ・バグズ・パニック」
今年はあまりゲテもの系映画は観てなかったのですが、観た中で楽しかったのがこれ。どっか妙にツボをはずしたオフビートな感覚がおかしくて、それでも、巣の大ボスをやっつけるという大筋がきちんと描かれているのがよかったです。なぜ巨大昆虫が現れて人間を襲うのか、最後まで説明しないってのは、「ゾンビ」の設定のパクリなのか?って後で気付きました。


この他には、好きな映画で「扉をたたく人」「ダイアナの選択」「ダウト」などがありました。ドキュメタリーの「嗚呼 満蒙開拓団」は見応えがありましたけど、観ていて痛すぎる内容でした


後、映画のベストテンには入らなかったけど、映画の一部、ピンポイントがお気に入りというピンポイントベスト5を挙げます。

第1位「しんぼる」のくだらないことにお金かけてます度
私は結構好きなんですよね、「しんぼる」。そして、そのくだらないことにかなりのお金を費やしてるなってところも好きです。手の込んだCG使って、やってるのは「チ○コ押すと何か出てくる」の繰り返しですからね。「大日本人」のように大きく構えたところのない「しょもなさ」が何とも楽しいのですよ。

第2位「ヘルボーイ2 ゴールデン・アーミー」の異形の人々に描き方
現代社会のちょっと裏には、妖精の皆さんがいて、社会を営んでいるという世界観がきっちりと描かれているんですよね。人間サイドにいる主人公がやたら人間になりたがってるのに、そっちの世界の皆さんは人間だから妖精だからという意識は一切ないのですよ。人間の世界には差別があって、そこで主人公たちはやな思いをしちゃうという展開は、寓意に満ちたもので、ギレルモ・デル・トロはただのオタクじゃないぞと感心させられました。

第3位「レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで」のみんな人の噂が大好き
ブラックな笑いを底に秘めたドラマも面白かったですが、この映画の主人公の住む高級住宅地は、みんな人の噂が大好き。だから、自分がどんな噂をされているのかもすごく気になっちゃう。日本人にはすごくわかりやすい心理なんですが、アメリカでも似たようなもんだなあってところがおかしかったです。住んでる国、地方によって気性が違うってのはよく言われますが、一方で大差ないなあってのがわかるのは、相互理解の上でも大事なことなのかも。

第4位「ダウト」のエイミー・アダムス
今年の映画の好きなヒロインというと「ヘルボーイ2」のセルマ・ブレア、「愛を読むひと」のケイト・ウィンスレット、「パリ」のジュリエット・ビノシュ、「そんな彼なら捨てちゃえば」のジェニファー・コネリー、「イエスマン」のズーイー・デシャネル、「Dear Doctor」の井川遥などが印象に残っていますが、その中でも筆頭は「ダウト」のエイミー・アダムズでした。善意と信仰と現実逃避の狭間に揺れるシスター役は脇役とはいえ見事だったと思います。

第5位 3Dの映画だからって3Dで観なきゃいけないわけじゃない
今年に観た3Dの映画は「モンスターVSエイリアン」と「カールじいさんの空飛ぶ家」でした。前者は話が腹立たしいところあってバツ、後者はお話も映像も美しくて、3Dで観る必然性はありませんでした。なるほど、3D映画が増えてくるみたいですが、何でも3Dで観なくてもいいじゃんってことに気付きました。2D画面、3D画面の各々に長所短所があるなあって気付いたのは収穫でした。

というわけで、2010年もよろしくお願いいたします。

最近の音楽がつまらなくて、80年代の洋楽がなぜかよく思える

サントラの話とは、ちょっとはずれるのですが、最近カラオケに行ってないという話から、最近の歌ってあんまり歌いたい曲もないなあって気がしてきました。サントラにしても、最近のは面白いのが少ないなあって思うことありますし、特に洋楽に耳に残るものが少ないような気がします。マイケル・ジャクソンやマドンナのピークが80年代ですし(これはあくまで私見ですが)、自分もよく聴いたのが、80年代の音で、いわゆるビッグヒット以外の中でも、これはいいなあって思うのが多かったように思います。さらに、当時はPV(プロモーション・ビデオ)に力を入れていたころで、MTVという形で様々な楽曲が映像化されていました。

その中でも、ビッグヒットだけでなく、いわゆる佳曲と呼ばれる楽曲にいいものが結構あったように思います。まあ、個人的な好みで選んだ曲なんですが。

ハワード・ジョーンズの「All I Want」
ハワード・ジョーンズというとシンセを駆使した音で、聴きやすい曲を作る人です。ライトな味わいが人気あったんですが、この曲も、耳に心地よいリズムと高音のサビがいい感じにまとまっています。楽曲だけでも、なかなかいいんですが、PVが青い色調で統一されていて、これもまた、目に心地よいものになっています。どっちかというと、クセのあるメロディラインの多い人なんですが、この曲では、シンプルなメロディで、彼としては異色作になるのではないのかしら。



ペット・ショップ・ボーイズ の「Love Comes Quickly」
今も新作が発表されている、息の長いテクノユニットですが、最近の作品には、初期の頃のような、シニカルで陰にこもった楽曲が少なくなってきているように思えます。「ウエスト・エンド・ガール」のヒットが有名ですが、「Love Comes Quickly」はわかりやすいラブソングという印象で、ストレートな盛り上げも、彼ららしくないけど、そこが聴いていて心地よいものになっています。



a-haの「Hunting High and Low」
PVの映像のよさもあって、初めて聴いたときは美しい曲という印象でした。オーケストラをバックにつけてスケールの大きさもあって、かなり好きだったんです。この後の「Take On Me」でブレイクした記憶があるんですが、これもヒットしたんでしょうね。



マリリン・マーティンの「Night Moves」
これは曲そのものはありがちなんですが、ドラマ仕立てのPVのホラー映画っぽさがよくできているので、曲自体の好きになっちゃいました。映像のインパクト込みで今聴いてもなかなか聴き応えがあります。この頃のPVには歌手のドラマ仕立てのものも結構あったんですが、歌手のナルシスティックな恋愛パターンが多くて、こういうのが新鮮だったってこともあります。



挙げていくとキリがないのですが、自分の耳になじんでいるせいか、今の歌よりはこういうナンバーの方がどっか心に引っかかるものがあるのです。でも、それはあくまで私の個人的な感想ではあります。自分の耳が信用できないのは、例えばビートルズにあまり心が魅かれないってことからも、重々承知の上なんですが、80年代のこれら佳曲がまた再認識されるといいなあって思うのでございました。

2008年のベストテン作ってみました。

2008年は例年ほど映画館に足を運べなくて後悔の1年でもあったのですが、少ないながらもその中からベストテンを組んでみました。世間のそれとはだいぶ違うのですが、2008年を私なりに総決算してみました。

第1位「ミスト」
極限状態の人間の姿を、最近の映画には珍しいペシミスティックな視点から描いたハードSFホラー。正義と悪、知性と無知、そんな対照が全部チャラになってしまうラストの衝撃は見事。神ならぬ人間、どうあがいても、大差ないじゃんという見せ方には、人間の驕りを蹴散らす破壊力がありました。そこに至るまでのドラマも見事でしたし、もっと評価されていい映画だと思います。

第2位「ラースと、その彼女」
ラブドールを恋人にする内向的青年のお話、と言っちゃったら元も子もないお話なのに、なぜ、この映画はこんなに感動的なのか。普通の人の善意をこんなに自然に描いた映画ってないんだもの。2008年で一番泣けた映画なので、これ。でも、ラブドールを一途に愛する青年に泣かされたわけじゃないんですよね。説明するより、観て欲しい映画。

第3位「ある愛の風景」
戦争から帰ってきた夫はまるで別人のようだった。ヘビーで見応えのある戦争後映画の傑作です。戦争がなぜいけないことなのかを正面からきちんと描いていて、戦争から帰ってきた兵士を人殺し呼ばわりすることも許さない、その真摯な姿勢には心を打たれるものがありました。戦争は悪、希望は愛、そんなストレートなメッセージを持った骨太な映画。

第4位「その土曜日 午前7時58分」
人間ドラマとしての面白さ、見応えが素晴らしく、映画としての満足度の高さは一番かもしれません。運命に翻弄される人間の弱さ、そしてその最悪の状況下での人間の愚かさ。映画館でこういう映画を観るのが久しぶりだったのですが、昔はもっとこういう映画がたくさん劇場公開されていたような気がします。

第5位「JUNO ジュノ」
妊娠しちゃった女子高生の日々の暮らしをコミカルに描いたドラマなんですが、ヒロインの身の丈にあった頑張りがすごく愛おしく思える佳編でした。ほのぼのしたドラマの中で、ヒロインや彼女の周囲の人物の人となりを丁寧にすくいとった演出のうまさ。なーんかいい感じの味わいは捨てがたく、したたかじゃないけどしなやかなヒロインを応援したくなるのですよ。

第6位「つぐない」
正直言ってヒロインには全然感情移入できなかったのですが、ドラマの構成、語り口が面白いなあって思ったので、このランキングになりました。映像的な見せ場とか、ちょっとした仕掛けの妙など、映画で表現可能な面白さがいろいろと入っているのが、心にひっかかる佳作という感じでしょうか。

第7位「ダーク・ナイト」
DCコミックの原作を大予算、豪華キャストで映画化したのですが、大味にならない、細やかな作りに感心した一編です。2008年のハリウッド映画の大作って、みんな大味で、見終わった満足感が足りないのが多かったのですが、本作は、コミックのキャラでヘビーなドラマを作るというやり方が成功していまして、ドラマを観たなあって満足度の高い映画に仕上がっていました。ヘビーな展開の割に説教臭くないのがよかったのかも。

第8位「MR.ビーン カンヌで大迷惑」
「俺たちフィギュアスケーター」とか「トロピックサンダー」などコメディ映画は結構あって、それぞれ笑わせてはくれたのですが、コメディ映画として一番ちゃんとできてたのは何かなあって思ったら、結局、MRビーンにたどり着いてしまいました。子供連れのロードムービーとしての構成も丁寧で、ビーンにキャラがないのに、ちゃんと主人公になっているあたり、うまさを感じさせるコメディとして、この映画を推します。

第9位「ドラゴン・キングダム」
ジャッキー・チェン、ジェット・リーの共演が話題になった(ならなかった?)アクション巨編です。この映画は、最新のSFXと人間のアクションの両方を丁寧に見せることに成功している点を高く評価したいです。最近のチェンのハリウッド映画ってCGばっかで生身のアクションを感じさせないものが多かったのですが、この作品はファンタジーとしてSFXをフルに使いながら、人間のアクションでも手に汗握らせる迫力がありました。これからのアクション映画のあり方に希望を持たせたという点でも、記憶しておきたい映画です。(忘れたいのは「ラッシュアワー3」かな。)

第10位「接吻」
これ、日本映画なんですが、インパクト強くて、ベストテンに割り込ませちゃいました。小池栄子扮するヒロインのぞっとさせる存在感がモンスタームービーのようであり、いびつな恋愛映画でもあり、観ていて「おおぅ」と引き込まれるものがありました。ヒロインで見せる映画としては、ベストワンかも。



今回は日本映画はベストを組めるほど観ていないので、パス。その割に記録映画を観る機会に恵まれましたので、記録映画でベスト5を作ってみました。記録映画を劇場で観ることができたのは、横浜シネマジャック&ベティが通常興行の枠で上映してくれたおかげですが、こういう映画を観ると色々と勉強になること多いです。

第1位「おいしいコーヒーの真実」
自分にとって身近な存在であるコーヒーにひそむ意外な真実。フェアトレードという言葉を知ったのもこの映画のおかげでしたし、支援物資は受け取る国民のプライドを挫いてしまうというメッセージには、目からウロコの思いでした。強いものが弱いものを支配する国際関係、そして、「強さ」とは金の力なのだということを再認識させる映画でもありました。

第2位「オオカミの護符」
今も日本に生きている御山の民間信仰を題材にした映画なんですが、まだまだ信仰が形を持って残っているんだなあっていうのが、自分にとって大きな発見でした。信仰に縁がない私もこういう場に自分がいたら、やはり御山へお札をもらいに行くのかなって気分になりましたもの。

第3位「いのちの食べかた」
人間が食物を得る方法は、いまやシステム化していまして、その食物取得の流れを映像だけで見せる映画です。自分たちが口にする、野菜や肉がどうやって作られているのか、意外と初めて見る光景もあって、そっかー、この映画の内容くらいのことは知っておいたほうがいいよなーって気分になりました。

第4位「いまここにある風景」
オリンピックで一気に世界の注目を集めた中国を題材に、急速な産業化が持たされた中国で今、何が起こっているのかを描いたドキュメンタリーです。何しろ、とにかくでかい国でかつてないスピードで変化が起こるってのはすごいことだと再認識させられます。でも、多くの国がたどった産業化から環境破壊という同じ道をたどっているのを見ると、何とかならないのかなあって気分にもなります。

第5位「花はどこへいった」
ベトナム戦争から40年、散布された枯葉剤は、当時生まれていなかった世代にまで、影響を及ぼし続けています。戦争で、アメリカはおぞましい人体実験をしたのです。きっと、今のイラク戦争でも、新しい兵器で同じことをしているのでしょう、誰もそれを止めないから。記憶すること、知ることから、始めることに、意味があるのかしらと思いつつ。語り伝えるべき歴史がここにあると思いました。


2009年はもう少し、劇場へも足を運びたいと思いますので、今年もよろしくお願いいたします。




この記事をリライトさせるにあたり、いただいた3つのコメントが消えてしまいました。下記に記します。


2009/1/7(水) 午後 10:06
「凪」さんからのコメント
あちこちでこういう記事を見るので、やってみようと思うのですが、
順位はつけられずに新年も1週間になりました。
【ミスト】が1位とは凄い!確かにインパクトはありましたね。

→ なぎさん、コメントありがとうございます。「ミスト」はインパクトもすごいのですが、
  そのお話が人間の傲慢さへのしっぺ返しみたいなところがあって、面白さでも一級品でした。
  偉そうなこと言う人間も、神の前ではみな平等というお話にも思えましたし。また、凪さん
  のベストテンも拝見したいです。


2009/1/7(水) 午後 10:47
「hiromtb2007」さんからのコメント
第1位が「ミスト」ですか!レンタル屋でパッケージは見てても、まったくノーチェックでした^^;!今度レンタしますっ!

→ hiromtb2007さん、 コメントありがとうございます。この映画、ちょっと見はゲテモノホラーで、中身も確かにその通りではあるんですが、登場する人間の描写が見事で、その中から、人類の思い上がりのようなものが浮き上がってくるのが圧巻です。


2009/1/7(水) 午後 10:56
「じゅり」さんからのコメント
お~洋画1位は「ミスト」できましたか~
これも凄い作品でしたねぇ。過程で描かれた伏線が活きてて、ラストの展開で傑作に押し上げられたように思います。
鑑賞は洋画で半分、邦画で全滅でした(^-^;

→ じゅりさん、コメントありがとうございます。「ミスト」が1位というのは、そんなに意外性ありましたかしら。2008年は多くの映画を見逃してしまいましたから、かなり偏ったベストテンになってしまいました。昨年はラブコメが今一つ振るわなかったように思います。ドリュー・バリモア嬢の映画がなかったからかも。

2007年のサントラベストテン

映画のベストテンを作って、後、何かないかなと思ってたのですが、2007年に観たサントラのベストテンを挙げてみました。映画のベストテンとは全然観点が違うので、あまりかぶってないのはよかったかなという感じです。ただ、映画のベストテンよりも順位は曖昧でして、1位も10位も大差ありません。

第1位「ブラック・ブック」
第二次大戦当時のオランダを舞台に、運命に翻弄されるヒロインを中心に人間の悪意をエネルギッシュに描いた、ポール・バーホーベン監督作品です。音楽は、アート・オブ・ノイズにも参加していて、映画音楽家としても「フル・モンティ」でアカデミー作曲賞をとっている実績のあるアン・ダドリーが担当しています。物語も波乱万丈なのですが、ダドリーの重厚なオーケストラ音楽は、その映像を見事にサポートしていました。オーソドックスな音作りながら、力強さを感じさせる音が印象的です。

第2位「ファウンテン 永遠に続く愛」
永遠の命の樹を求める主人公が3つの世界を行きかうという映画は正直言って私にとっては手に余る代物でしたけど、音楽も映画の哲学っぽい雰囲気に合わせた、アンビエント風現代音楽になっています。 クリント・マンセルの作曲した曲を、クロノス・カルテットとモグワイというグループが演奏しています。ミニマルミュージックかと思うと、じわじわと音の盛り上がりを見せていき、スケールの大きな曲になっていく様が圧巻です。映画の暴走に音楽もめ一杯大風呂敷を広げたという感じでしょうか。音楽だけ聴いてもなかなか面白い作品です。

第3位「ローグ・アサシン」
ジェイソン・ステイサムとジェット・リーが主演のマフィア抗争ものアクション編です。映画自体が派手なアクションシーンが多いのですが、音楽も激しいアクションに負けないように大盤振る舞いしています。音楽を作曲指揮しているのは、最近公開作がやたら多い、「コンスタンティン」「ワイルド・スピード3」のブライアン・タイラーです。テンポのいい部分は打ち込みサウンドのようですが、バックのオーケストラにロンドン交響楽団が参加しているという豪華サウンドは聴き応え十分です。普通なら打ち込みだけで済ませるアップテンポの部分もオーケストラがきっちり旋律を鳴らしていて、他のアクション映画の音楽と一線を画す出来栄えです。

第4位「題名のない子守唄」
ジュゼッペ・トルナトーレ監督が数奇な運命に弄ばれる女性の半生を描いた異色人間ドラマに、映画音楽のマエストロ、エンニオ・モリコーネが音楽を描きました。美しいけどどこか陰のあるメインテーマから、全体的に不安な音を鳴らしていまして、映画の縁の下の力持ちに徹しているのですが、それでも音楽として聴き応えがあり、アルバムで再度聴きなおしても、その素晴らしさを再確認できてしまうあたりに、マエストロの底力を感じてしまいます。

第5位「ボビー」
ロバート・ケネディが暗殺される一日を描いた群像劇の音楽を、「クラッシュ」「ネル」のマーク・アイシャムが手がけました。トランペットをフィーチャーしたアメリカらしいテーマが静かに流れるメインテーマから、群像ドラマを控えめに支える音作りが見事でした。

第6位「パンズ・ラビリンス」
ギレルモ・デル・トロ監督による、戦時中のスペインを舞台に描く哀しいファンタジーです。音楽はギレルモ・ナバロが担当し、マリオ・クレメンス指揮のシティ・オブ・プラハ・フィルハーモニック・オーケストラが演奏しています。メインテーマの哀しげな子守唄が大変美しく、全編にこのメロディが流れていまして、ストリングスやピアノ、コーラスで何度も演奏されます。その他の曲もドラマチックに鳴り響きながら、最後にテーマ曲にまとまるという音作りになっていて、テーマ曲によって映画のカラーを決定づけていると言えましょう。

第7位「約束の旅路」
エチオピア難民の子供が、ユダヤ人と偽ってイスラエルへ里子に出されるもの、いつか母親に再会することを夢見ていたのでした、という感動のドラマの音楽をアマンド・アマールが担当しました。オーケストラに女性ヴォーカルが重なって、感動的な音楽になっています。

第8位「ゾディアック」
連続殺人なのに地味な味わいだった映画に音楽をつけたの「サブウェイ・パニック」「カンバセーション 盗聴」などのベテラン、デビッド・シャイアです。全体に場面の空気感を描写するような音楽で、静かに流れる音作りが映画の淡々とした展開を見事に支えています。何と言うか、非常に説得力のある音楽になっていまして、そのシーンにパズルのピースのようにフィットするところがベテランの味を感じさせます。

第9位「マリア」
キリストの生誕の物語の音楽を「ロンリー・ハート」「リトル・ミス・サンシャイン」のマイケル・ダナが担当しました。聖書劇らしくコーラスやオケーストラを重厚に駆使してドラマを盛り上げているのですが、既成曲も中に交えているらしく、ラストは「きよしこの夜」のメロディが使われています。

第10位「ブレイブ・ワン」
ジョディ・フォスターの自警市民を描いたドラマの音楽をダリオ・マリアネリが担当しました。ドラマチックな展開とは別に、ヒロインの心情を控えめに描写した音楽が多く、地味な音作りと言えます。ヒロインの揺れる心理をピアノソロやストリングの不協和音とシンセサイザーで描いているところがなかなかに聴き応えのある音楽になっています。ピアノの響きで彼女の孤独感が伝わってくるところが印象的でした。


ベストテンからこぼれた中ではガブリエル・ヤードの2作「こわれゆく世界の中で」「善き人のためのソナタ」、J・ピーター・ロボンソンの「世界最速のインディアン」、ジョン・パウエルの「ボーン・アルティメイタム」、ダニー・エルフマンの「キングダム 見えざる敵」などが印象的でした。

2007年邦画ベストテン

今年は初めて、日本映画のベストテンを作ってみました。観た本数は少ないのですが、どれも珠玉の作品揃いだったので、ちょっと無理やりですがベストテン。


第1位「紙屋悦子の青春」
封切は2006年ですが、2007年の最初に観た映画がこれ。黒木和雄監督の遺作ですが、敗戦間近い九州の一軒の家を舞台に、涙と笑いと反戦の物語を作り上げました。リアルな生活感と同居する戦争の影を見事に描いています。主演の原田知世さんの凛とした美しさが素晴らしかったです。


第2位「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」
両親の死を契機に、兄、兄嫁、妹の前にとんでもない自己チュー姉が舞い戻ってくる。人間ってのは面白くてしぶといもんだと思わせる、ブラックコメディ風味のパワフルなホームドラマ。サトエリ、佐津川愛美嬢、永作博美さんという女優陣の演技が圧巻。特に儲け役ながら、底抜けの善意の下に無限のパワーを秘めた兄嫁を演じた永作さん萌え。


第3位「天然コケッコー」
生徒が7人しかいない田舎の小中併設校を舞台に、夏帆ちゃん演じるヒロインのおかしくて、ヘタレで、でも真面目な日々が、共感を呼ぶ形で描かれます。子供たちのやんちゃな善意に「これはこれでいいんだよね」って励まされる大人のためのファンタジー。2006年の泣かせてんこ盛りの青春映画が幅を利かせる中で、涙ゼロでも心の琴線に触れる映画は作れることを実証してくれました。うまい、ホントによくできている娯楽映画の逸品。


第4位「陸に上った軍艦」
監督としても有名な新藤兼人氏の戦争体験をインタビューと再現ドラマで構成しました。暴力と弱いものいじめの横行する軍隊を、「二度とごめんだ」という視点で描いたドラマは、戦争が人間を醜く変えてしまうことを見事に表現しています。一番弱い立場のものが虐げられる様は、実は時代、場所を超越した人間の本性なんだと実感します。だからこそ、理性と思いやりが本性に流される自分を制御しなきゃいけないんですよね。


第5位「キサラギ」
火事でなくなったアイドルの一周忌に集まった5人の男。彼らがアイドルへの追悼の意を捧げているとそこから現れてくる新事実。5人という登場人物と限定された時間と場所の中で、二転三転どころか五転も六転もするドラマが高いテンションを維持しながら展開する脚本の面白さ。主演の5人の好演をうまく捌いた演出の妙。面白さの密度が高くて、笑いあり涙ありという娯楽のツボを押さえた逸品でした。


第6位「あしたの私のつくり方」
鳴海璃子嬢扮するヒロインの小学6年から高校生までの成長を描いた青春ドラマです。小学生のときの友達に正体を偽ってメイル交換しているヒロインが「偽りの自分」に悩むのですが、でも「偽りの自分も自分のうちじゃん」ということに気付いたとき、改めて自分に信頼を置けるようになります。ヒロインの成長を的確に演じた鳴海璃子嬢の演技力に驚かされました、この子すごい。そして友達を演じた前田敦子嬢はAKB48のメンバーですって。48人中の1人、紅白で識別できるかしら。

第7位「ひめゆり」
沖縄のひめゆり部隊のドキュメントであり、当時ひめゆり部隊にいた人々のインタビューと、記録フィルムで成り立っています。2007年は、沖縄戦で市民に日本軍が自殺を強要したかどうかということが争われていました。しかし直接の指示を出さなくとも、死という選択肢しか与えられていなかった人々が追い詰められて自らの命を絶って行ったのです。そして、そういう教育、洗脳をしたのは日本国、日本軍です。この映画は、主義主張を控えて、生き残った方々の声に真摯に耳を傾けようとしているのですが、それでも、本土決戦とか言って、日本人をできる限り生き残らせることを放棄した国の中枢の人々への怒りを感じてしまいます。


第8位「殯の森」
認知症のシゲキさんとそれに振り回されるケアハウスの介護人の真知子さんの物語です。奥さんの墓参りということで出発したシゲキさんがどんどん山の中へ入って行っちゃうもので、真知子さんはそれに振り回されて、山の中で一晩明かすことになっちゃいます。シゲキさんが最後にたどり着いた場所は奥さんを殯る場所だったのですが、真知子さんはそれをどう受け入れたのかなあってところが気になる映画でした。ロケーションの美しさ、音響のリアルさは素晴らしいのですが、さて?


第9位「花の夢 ある中国残留婦人」
17歳のときに満蒙開拓女子義勇隊に参加した栗原貞子さんは、満州へのソ連侵攻時、身重の身で難民として中国を逃げ回り、帰国するタイミングを逸したため、日本から見捨てられてしまいます。彼女の証言を通して、歴史が目を背けてきた事実を記録しようとするドキュメンタリーです。シネマベティでの上映後、わずか4人の観客の前で東監督がご挨拶してくれました。私の的はずれの質問にも真摯に答えてくださってありがとうございました。


第10位「選挙」
川崎市議会選挙に自民党公認で急に立候補することになった山内さん。42歳で選挙なんて初めての山内さんの演説会からビラ配りなど全ての選挙活動をカメラがずっと追いかけたドキュメンタリーです。選挙では、政策なんか関係なくてひたすら「人脈、地縁」に「支援者の善意」で事が運んでいきます。日頃から胡散臭い存在でしなかい、選挙と立候補者をコミカルにそしてシニカルに追っていくのがなかなか面白い映画です。


と、いうわけでドキュメンタリーの目立つベストテンですが、日本映画って食指の動く映画が少ないのですよ。他には堀北真希さんがかわいかった「恋する日曜日 私恋した」もあったのですが死病映画なので圏外です。

2007年の洋画ベストテンを

毎年映画のベストテンを作っているのですが、今回は割と多めに観ることができたので、まず洋画だけのベストテンを作ってみました。まあ印象に残って好きな映画です。

第1位「ルワンダの涙」
ルワンダ虐殺の実態を、英国人教師という第三者の目を通した映画なんですが、彼も当事者の立場から逃げられなくなるとき、どういう行動を取れたのか。最近、映画で泣きたい若い人が多いそうですから、そういう人たちに是非観て欲しい映画です。痛い涙ってのもあるんだなって実感できます。なぜ、彼らは殺されなければならないのか、なぜ彼らは虐殺者になってしまうのか、同じ人間なのに。

[http://blogs.yahoo.co.jp/einhorn2233/28370557.html 「ルワンダの涙」]

第2位「ラブソングができるまで」
ラブコメ好きで、ドリュー・バリモア好き。彼女の出る映画は面白いのが多いのですが、この映画は、80年代ミュージックに覚えのある人には大ハマリだと思います。とにかくまず笑えて、その後ホロリとさせて、音楽で愛を伝えて、ラストはチャーミングな満面の笑顔。幸せな映画でございます。

[http://blogs.yahoo.co.jp/einhorn2233/31743706.html 「ラブソングができるまで」]

第3位「ナショナル・トレジャー リンカーン暗殺者の手紙」
役者がよくて、お金たくさんつかって見せ場多くて、でも笑えて、ストーリーも楽しくて、子供からお年寄りまでみんなにオススメできる、娯楽映画の逸品。家族そろって楽しめるドキドキハラハラエンタテイメントを作った、ジョン・タートルトーブ監督偉い。日本映画もこういうの作って欲しいとマジに思いますです。

[http://blogs.yahoo.co.jp/einhorn2233/39081298.html 「ナショナル・トレジャー リンカーン暗殺者の手紙」]

第4位「あなたになら言える秘密のこと」
海底油田採掘サイロを舞台に描かれる重傷者と看護婦の数日間。そこから見えてくる彼女の過去、それはヘビーな歴史の1ページでした。しかし、物語はただ事実をそこに並べるだけでなく、その先の希望と不安を語ります。同情や愛情を超えた人間としての衝動が、ヒロインの心に届くところが圧巻でした。泣かせる映画なんですが、「泣かせる映画」というくくりでは語りきれない重厚なドラマでした。

[http://blogs.yahoo.co.jp/einhorn2233/28451006.html 「あなたになら言える秘密のこと」]

第5位「麦の穂を揺らす風」
英国軍に蹂躙されるアイルランド。義憤にIRAに志願した医師志望の主人公。しかし、理想と現実の確執がIRA軍の中を二分し、主人公と兄の絆も裂いてしまうのです。命がけで戦っている相手、守るべきものにズレが生じてくることによって起こる悲劇は救いがありません。ですが、歴史はこういう悲劇を何度も繰り返していることから目を逸らしてはいけないと思わせる映画です。

[http://blogs.yahoo.co.jp/einhorn2233/30817463.html 「麦の穂を揺らす風」]

第6位「パラダイス・ナウ」
パレスチナの青年2人が自爆テロ要員に選ばれるという物語。イスラエル目線では自爆テロでも、パレスチナ目線では聖戦なのだということを思い知らされる映画。そして、イスラエルによるパレスチナ爆撃も、イスラエル目線では戦闘行為でも、パレスチナにとってはテロ行為に他ならない。この映画はメッセージ性は控えめですが、私にとって知るところの多い映画でした。

[http://blogs.yahoo.co.jp/einhorn2233/31867362.html 「パラダイス・ナウ」]

第7位「ドリーム・クルーズ」
ホラー映画は今年はあまり観に行けていないのですが、「リング0」の鶴田法男監督が木村佳乃をヒロインにした怪談映画は、よくできた怖いドラマでした。これがアメリカ映画なのが、ちょっと残念なような、納得できないような、でも、木村佳乃がいいなあってことでベスト7。

[http://blogs.yahoo.co.jp/einhorn2233/33133014.html 「ドリーム・クルーズ」]

第8位「ツォツィ」
南アフリカのストリートギャング、ツォツイが強盗した車の中には赤ん坊がいたのです。オープニング、ケダモノの目をしていたツォツィが、その赤ん坊を親のもとに返そうと思ったときに、彼の目に宿る人間の少年の瞳。そこに生まれる人間の信頼。奇跡のようであり、ファンタジーのようであり、だから人間あなどれないという映画でありました。

[http://blogs.yahoo.co.jp/einhorn2233/32974665.html 「ツォツィ」]

第9位「TOKKO 特攻」
特攻隊を描いた記録映画が、日系アメリカ人リサ・モリモト監督によって作られたことは意義のあることだと思います。日本人の間では語りにくいことも、第三者的視点で語られることによって、今まで見えないことが見えてくるのではないかという期待もありました。そして、この軍事行為そのものが気狂い沙汰であり、軍上層部の責任回避の先送りによるものだということがわかるだけでも、この映画の存在意義がありましょう。

[http://blogs.yahoo.co.jp/einhorn2233/35585118.html 「TOKKO 特攻」]

第10位「ヒロシマナガサキ」
これまた原爆を扱ったドキュメンタリーなんですがアメリカ映画。広島、長崎の生存者と、爆撃した元アメリカ兵士の証言を記録したものです。この怖ろしい新型爆弾によって本土決戦が回避され、日米両国の多くの命が救われたという事実。一方で、この爆弾が多くの一般市民の命を惨たらしい形で奪い、蝕み続けているという事実。どちらかの事実にだけ目を向けたり背けたりしてはいけないということを再認識させる映画でした。

[http://blogs.yahoo.co.jp/einhorn2233/38746109.html 「ヒロシマナガサキ」]

上記以外では、人間ドラマの視点の面白さで「イカとクジラ」「リトル・チルドレン」「あるスキャンダルの覚書」、コメディとして面白かった「Gガール 破壊的な彼女」「ホリデイ」、スリラーの佳品「モーテル」「リーピング」、娯楽映画のパワーを感じた「ボーン・アルティメイタム」「世界最速のインディアン」、人間の悪のパワー満載の「ブラック・ブック」、ストレートなドラマの見応えで「クイーン」「こわれゆく世界の中で」といった作品が印象に残っています。


さらに、映画1本まるごとでなく、特定部分に注目したピンポイントベスト5をあげます。

第1位「ダーウィンの悪夢」の我々との地続き度
タンザニアのヴィクトリア湖に、お金になるナイルパーチという魚をたくさん持ち込んだことから始まる生態系の破壊、貧富の格差などを描いたドキュメンタリー。その魚の顧客に日本もあるのだとナレーションで語られるうちはピンとこなかったのですが、工場で加工された白身魚のパックを見たら「ああ、これスーパーで見たことある」とびっくり。このドキュメンタリーと我々の食生活が地続きなんだと実感したら、他人事に見えなくなってきました。

第2位「シッコ」「不都合な真実」のドキュメンタリーのケレン味
2007年はたくさんのドキュメンタリーが公開されたのですが、その中でメジャーだったのが、この2作だったのですが、マイケル・ムーアとアル・ゴア、どちらも語り慣れしてるので、うまく観客を自分の思うツボに誘導していきます。そのあまりに見事な語り口に、この話、真に受けていいのかなという気分になってきました。通販番組のような、見事な語りが、逆に嘘くせえーと見えてしまうのが不思議というか。

第3位「インベイション」のニコル・キッドマン
2007年の映画は女優陣が充実してまして、「カンバセーションズ」のヘレナ・ボナム・カーター(好き)「Gガール 破壊的な彼女」のアンナ・ファリス、「DOA デッド・オア・アライブ」のビキニ女性陣の皆様、「デジャヴ」のポーラ・パットン、「バベル」のケイト・ブランシェット、「ボビー」のメアリー・エリザベス・ウィンステッド、「愛されるために、ここにいる」のアンヌ・コンシニ、「アドレナリン」のエイミー・スマート(面白かわいい)、「モーテル」のケイト・ベッキンセール、「ストーン・カウンシル」のモニカ・ベルッチなどが印象的でしたが、侵略SF映画を「ニコル・キッドマンのインベイション」にしちゃった彼女が最強でしょう。汚れてもきれいなキッドマンにはインベーダーも勝てないよなあ。

第4位「ブレイブ・ワン」の結末
ジョディ・フォスターが自警市民を演じた社会派サスペンスのように、社会の歪を描いておいて、ラストで「情」に走る結末が「やりやっがたな」って感じでした。「フライトプラン」といい、最近、作品の選択を間違ってないか、ジョディ。

第5位シネマジャック&ベティのラインナップの充実
横浜のシネマジャック&ベティという庶民派ミニシアターなんですが、横浜日劇の閉館とともに一度は閉館していたのです。その後、細々と上映開始したのですが、2006年の「蟻の軍隊」あたりから、上映作品が充実してきまして、今年もミニシアター系映画の二番館上映とか、戦争関連ドキュメンタリーの積極的な上映など、横浜の文化の核になりつつあります。私も全番組をチェックできてはいないのですが、映画行くときはまずここで何をやっているかチェックします。ローカルな話で恐縮ですが、2008年もがんばって欲しい映画館です。

そんな感じで、2008年もよろしくお願いします。

2006年の映画ベストテンを

2006年はあまり映画館に例年ほどには映画館へ足を運べていないのですが、キネマ旬報のベストテンも出たようですし、個人のベストテンを作ってみました。洋画中心に観ているので、邦画は入っていません。まあ、観た本数の割りには当たりの多い1年でしたので、それなりにベストテンだとは思っています。順位はかなりいい加減というか、甲乙つけがたいものがありました。

第1位 上海の伯爵夫人
ロシア革命で亡命してきた伯爵夫人が上海で酒場の女給になっているという発端から展開する非常に濃密で大人の愛の物語。映画を観たという満足感が一番高い映画だったのでこれをベスト1にします。扱っている題材そのものは決して目新しいものではなく、古風でもあるのですが、それをきちんと料理してみせたジェームズ・アイボリーは見事だと思います。演技陣も素晴らしかったです。

第2位 クラッシュ
オスカーの作品賞をとった映画だけあって、やっぱりよくできてます。群像劇ということでは、やはり脚本家出身のジョン・セイルズの「希望の街」を思い出させるものがあるのですが、これもやはり映画館での満足度が高かったです。頑張ってもうまくいかない人間関係を淡々と見せるあたりのシビアな味わいがピリっとした映画に仕上げています。

第3位 ウォレスとグルミット野菜畑で大ピンチ
今年の一番楽しかった映画がこれ。毎度のことながら、クレイアニメーションでパロディとアクションをマジにやっちゃうところがすごい映画。クライマックスの畳み込みの見事さは、他のアクション映画にも見習って欲しいものです。一方で、イギリスらしいシニカルな笑いもきっちりと押えていて、さらに、ホラータッチの部分はきちんと怖いという至れり尽くせりの映画。


第4位 ホテル・ルワンダ
民族間の対立から100万人の虐殺を生んだルワンダ内戦の、わずかな希望の部分にスポットを当てた映画です。でも、そこから導かれる勇気と善意には胸を打つものがありました。異民族間の対立と意図的なアジテーションがとんでもない虐殺につながった事実を知ると同時に、勇気の使い方を教わったような気になる映画です。

第5位 親密すぎるうちあけ話
恋愛ものということで一番面白かったのがこれでした。偶然の出会いから始まるなんだかおかしくて、ちょっとSMチックな恋の顛末は、役者のうまさもあってなかなかの見応えでした。恋の顛末ってのは、確かに駆け引き的な要素が大きいのですが、ボタンの掛け違いのような関係で展開する恋愛模様がなんとなくハッピーエンドになるおかしさは、若い人にはわかりにくいかも。

第6位 心の棘
死んだ亭主の生まれ変わりという少年に翻弄される未亡人のお話なんですが、一応はミステリーとしての仕掛けがあり、そして、最後はヒロインがどんどん壊れていってしまう悲劇的な展開となります。これが、妙に心に残る映画になってるのですよ。題名の通り、心にひっかかる棘のような映画でした。ニコル・キッドマンの美しさ自体がミステリーっぽいのかな。

第7位 16ブロック
犯罪ものということでは、「ファイヤー・ウォール」とか荒唐無稽な「トランスポーター2」「センチネル陰謀の星条旗」など佳作の多い年でしたが、リチャード・ドナーの職人芸が冴えたこの逸品を推します。役者のよさと、「人間いつでもやり直せる」という前向きなメッセージで、いい感じの娯楽映画に仕上がっています。

第8位 ヒストリー・オブ・バイオレンス
「16ブロック」が「人間いつでもやり直せる」というお話なら、こちらは「人間は暴力の呪縛から逃れることができない」というヘビーな内容を持ったバイオレンス編です。日常生活に潜む暴力の芽、そして、一度は捨てた筈の衝動が蘇る一瞬の怖さ。ラストの長回しで暗示される暴力の連鎖こそが題名にもある暴力の歴史なのでしょう。とにかく怖くて、でも面白くできている映画でした。

第9位 2番目のキス
コメディということでは、「ピンクパンサー」とか「もしも昨日が選べたら」「ナニー・マクフィーの魔法のステッキ」などが面白かったのですが、やはり、ドリュー・バリモア嬢のこの作品に軍配があがります。日本公開のあまりの扱いの悪さへの判官贔屓もあるんですが、とにかく、毒のファレリー兄弟が監督しているのに映画は、ドリュー色に染まっているというのがすごいなあってことでベストテン入りです。映画としても面白かったんですよ。

第10位 サイレント・ヒル
今年はあまりホラー映画を観てないんですが、この映画はグロはあってもショック少なめの、雰囲気で見せるホラーになっているということで点数高いです。クライマックスのスプラッタ描写の後にラストの悲劇的な余韻が大変よかったです。クリストフ・ガンズ監督のセンスを感じたのでここに挙げておきます。僅差で「エミリー・ローズ」が落ちてしまいました。


ベストテン以外で気になった映画は、ドラマとしての厚みを感じた「ナイロビの蜂」「父親たちの星条旗」「グッドナイト&グッドラック」、視点の面白さに引き込まれる「サンキュー・スモーキング」「ある子供」「スパングリッシュ」、画面の美しさが印象的だった「狩人と犬、最後の旅」、ラストのちょっと不思議な余韻で「太陽」「胡同のひまわり」「ブロークン・フラワーズ」といったものがありました。

そして別格ということで、この2本が特別賞です。

「蟻の兵隊」
敗戦後も中国で戦争をさせられていた日本軍人がいたというドキュメンタリーです。大陸で日本軍が何をし、何をされたのかがわかるという題材の貴重さもあるのですが、ただ、それだけにとどまらず、当事者である奥村和一氏を単に美化せず、その内面にまで踏み込んだ映像の力が大変に見応えのある映画になっています。根っこのところで日本軍人である奥村氏の言動を映像に残したという点でも出色のドキュメンタリーであり、また、一人の人間の中で二つの思想が葛藤しているのを実物で見せたという点でも貴重な人間の記録だと言えましょう。

「ヨコハマメリー」
一人の娼婦を題材にしたドキュメンタリーながら、そこから浮かび上がってくる、戦後の横浜の姿。一人の人間を掘り下げるのではなく、一人の人間に焦点をあてることで、その周囲の人間、そして街の姿を描くという、「蟻の兵隊」とは逆のアプローチをした作品です。ラストシーンでため息の出る感動が得られる映画はそうはないです。

さらに、映画1本まるごとでなく、特定部分に注目したピンポイントベスト5をあげます。

第1位「ユナイテッド93」の面白すぎ
9.11同時多発テロの映画化なんですが、映画の半分は生存者のいない旅客機内の描写でして、ここは交信内容からの推測で語られ、一方の当局側の描写は当の本人を連れてきてリアルに再現しているようなのです。つまり、信憑性のレベルがかなり異なる素材を二つくっつけて、目一杯ドキドキハラハラさせる面白い映画を作ってしまったのです。同時多発テロのようなデリケートな題材を、ウソとホントの境目がまったくわからない娯楽映画に仕上げるってのはどうなの?と思ってしまいました。これ観たら、イスラム教はヤバい宗教に見えるし、アメリカ人はみんな死を怖れぬ勇敢な連中に思えてくるし、事件を冷静に受け止めるのに邪魔になる映画ではないのかしら。相当な問題作ですよ、これは。「ワールド・トレード・センター」は作り手の良心を感じましたけど、こっちには、職人芸のうまさを感じてしまいましたからね。でも、この題材で発揮していいのかよ。

第2位「幻遊伝」のアイドル映画の味わい
田中麗奈主演の台湾映画です。お話としては、過去に行っちゃったヒロインがそこで恋に冒険に、という他愛のないものなんですが、ここで田中麗奈をきっちり清純アイドルとしてたてているのが、大変印象的でした。日本ではアイドルというよりは女優のイメージが強い田中麗奈も、こうしてアイドルっぽく見せると結構かわいいんだなあって妙に新鮮に感じました。ラストのちょっと胸キュンな味わいもいかにもアイドルっぽくって。でも、彼女もう25なんだよなあ。

第3位「サンキュー・スモーキング」「ワールド・トレード・センター」のマリア・ベロ
2006年の映画では、ヒロインというより脇の女優陣に魅力的なキャラが多かったです。「ピンクパンサー」「マッチポイント」のエミリー・モーティマー、「トランスポーター2」のアンバー・ヴァレッタ、「MI:Ⅲ」のマギー・Q、「ナニー・マクフィー」のケリー・マクドナルド(かわいい!)、「スパングリッシュ」のティア・レオーニ(好き)、「ロシアン・ドールズ」のオドレイ・トトウ、「地獄の変異」のパイパー・ペラーボ、「もしも昨日がえらべたら」のケイト・ベッキンセール、「幸せのポートレート」のレイチェル・マクアダムス、「リトル・ミス・サンシャイン」のトニ・コレットなどが印象的でしたが、中でも、マリア・ベロが平凡な主婦、胡散臭いキャリアウーマンの両方の顔を見せて魅力的でした。(彼女は、他にも「ヒストリー・オブ・バイオレンス」や「アサルト13要塞警察」でも重要な役どころでいい演技を見せてました。)後、「美しい人」「スタンド・アップ」のシシー・スペイセクは別格で素晴らしかったです。また、脇のオヤジベスト3ということでは、「16ブロック」のデビッド・モース、「心の棘」のダニー・ヒューストン、「スタンド・アップ」「サイレント・ヒル」のショーン・ビーンを挙げます。

第4位「美しき運命の傷跡」のラストのオチ
ほんのささいなアクシデントから人生を大きく振り回される姉妹の重厚でシリアスな映画です。ドラマとしては大変見応えがあってベストテンに入ってもおかしくない出来栄えでした。でも、この映画、色々あった結果、最後の母親の一言(筆談なんですが)に全てぶっとんでしまうようなおかしさと怖さがありました。

第5位「シャーロットのおくりもの」の蜘蛛の巣を張るシーン
生命の輪をわかりやすい形で描いた映画も大変よかったのですが、特にその中で、蜘蛛のシャーロットが巣を作るシーンは映像とダニー・エルフマンの音楽の相乗効果で、そこだけで感動モノのシーンになっていました。

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einhorn2233

Author:einhorn2233
Yahooブログから引っ越してきました。静岡出身の横浜市民で映画とサントラのファンです。よろしくお願いいたします。

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