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おかしくてやがて悲しき「ブロークン・フラワーズ」

新しい映画の話です。「ブロークン・フラワーズ」を日比谷シャンテシネ2で観て来ました。ここはシネシャンテの2階の映画館でフラットな作りですが、以前に比べてスクリーン位置を上げたのか、見易くなったような気がします。

元プレイボーイのドン(ビル・マーレイ)のもとに、差出人不明の手紙が届きます。「あなたには、19歳になる息子がいます」って言うんです。身に覚えがあるようなないような困惑するドンですが、隣人にけしかけられるように、当時の恋人5人をリストアップして、故人の一人を除く4人に会いに出かけます。果たして、その4人の中に、ドンに手紙を送った女性がいるのでしょうか。そして、彼に本当に19歳になる子供がいるのでしょうか。

ジム・ジャームッシュが脚本、監督し、2005年のカンヌ映画祭でグランプリを受賞している映画です。この人は「ストレンジャー・ザン・パラダイス」などで高く評価され、その後も様々な話題作を発表しています。私はこの人の映画は「ナイト・オン・ザ・プラネット」「ゴースト・ドッグ」「コーヒー&シガレッツ」を観ているのですが、何だか趣味的な変な映画だなあって印象が強かったです。面白いことは面白いんですが、普通の娯楽映画のツボを外したような感じでしょうか。

今回の「ブロークン・フラワーズ」は設定と役者の面白さで見せる映画でして、かなり笑えて面白い映画に仕上がっています。ただし、ハリウッド製娯楽映画と違って、結末は曖昧ですし、ストレートでもシニカルでもない不思議な笑いは、ちょっと斜に構えた気取った印象も持ってしまいます。

とはいえ、元プレイボーイのビル・マーレーという設定がおかしく、その彼がずっと仏頂面のまま、4人の元恋人を訪ねる展開はかなり笑えます。最初は、手紙を無視しようとしてると隣人のウィンストン(ジェフリー・ライトがケッサク)にああしろこうしろ言われるうちに元カノ訪問に旅立ってしまうあたりがかなり笑えます。この辺りの間のおかしさは、落語のノリが感じられて楽しかったです。場面転換をゆっくりした暗転で行っているのも、間のおかしさにつながっているようです。そして、訪問先で、シャロン・ストーン、フランセス・コンロイ、ジェシカ・ラング、ティルダ・スウィントンといった元カノ達が、四人四様の人生を歩んでいて、幸福そうなのあり、そうでもなさそうなのがあり、それに直面するドンの感情はあまり愉快ではなさそうです。でも、花束持って会いに行ってしまうあたりに中年男のどっちつかず感が感じられて面白かったです。

自分の子供なんて、知りたくもないことを調べに行くんですから、そりゃごもっとも。でも、ラストでは、若いバックパッカーを見ると自分の子供かもしれないと思ってしまう自分に当惑してしまいます。今を刹那的に生きてきた筈の主人公が、過去に振り回されるようになるってのは、結構残酷な「老い」という事実を突きつけられているのかもしれません。

何だかバタバタした元カノ訪問が、物悲しい後味につながるあたりに、人生の切なさを感じてしまいました。、私も老いを実感する年頃になったのかもしれません。私は、元カノや隠し子の可能性はないんですが、でも未来のために今を大事に生きるなんてのは、若い時だから実感できることではないのかしらということを感じさせるラストは、面白うてやがて悲しき、の味わいがありました。シャロン・ストーンの娘がすぐ脱ぐ設定だとか、ラストでビル・マーレーの視線の先にあるのは、マーレーの本当の息子だったりといった、楽屋オチ的な軽い笑いを交えたり、ラストで明確な結末をつけなかったりすることで、ライトな味わいもつけているのですが、ビル・マーレーのラストの表情に切なさを感じてホロ苦い後味になってしまいました。笑いのツボはかなりたくさんあったんですけどね。

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静岡東映パラスの記憶(1)

こんどはまた昔の映画館のお話です。

七間町の交差点の角っこにあった映画館が静岡東映でして、ここで東映まんがまつりを親に連れられて何度か観に行った記憶があります。「アンデルセン物語」「長靴をはいた猫」「空飛ぶゆうれい船」なんてのをここで観ました。当時は家のテレビが白黒だったので、「ひみつのアッコちゃん」をカラーで観られるというだけでうれしかった記憶があります。

そして、その静岡東映の上の階にあったのが、静岡東映パラスという映画館。確か幼い頃は、ニュー東映という名前でヤクザ映画をやっていたような記憶があるんですが、私が映画を自分で観に行くようになってからは、そこは静岡東映パラスであり、よく洋ピンを上映していたような記憶があるのですがいつのころからか普通の映画を上映するようになり、私が初めて、ここで観た映画は、ブルース・リーの「ドラゴンへの道」とディズニー映画「続・ラブ・バッグ」の二本立てで、これはお正月映画でした。ここは不思議なつくりの映画館で、フラットな座席が数列ならんでいると、そこにすごい段差があって、その後ろに3列ほどの席があり、さらに2階席があるというものでした。1975年の映画年鑑によると定員は332で、これは当時の静岡の映画館で小劇場の次にキャパの小さな映画館になってます。たてに長いつくりになっているので、ビスタサイズの時も画面が横一杯で、シネスコサイズになると、横はちょっとだけ広がって、縦が若干縮むという、今のシネコンの小さいスクリーンみたいな作りになってました。晩年は2階席は使用禁止になってましたから、耐用年数ぎりぎりまで使い込んだということでしょうか。

その次に観たのは、やはりお正月映画で「カサンドラクロス」と「ラスト・コンサート」の2本立てでこの時は大混雑だったという記憶があります。この時のお正月映画は、本命が「キングコング」で、対抗が「カサンドラクロス」でして、一方の「キングコング」は静岡オリオン座と静岡名画座での2館での公開だったのですが、映画の出来栄えは「カサンドラクロス」の方が断然面白く、お客はこっちの方へ流れたんですが、何せ、映画館が小さいものだから、すごい混雑だったような記憶があります。

でも、普段は大体ガラガラで、たまにオジさんがタバコふかしながら前の方で足を上げて映画観てるようなところでした。でも、ここでB級アクションやホラー映画を観た記憶があり、また、ここではよくディズニーの映画を上映していたように思います。

「ヨコハマメリー」の語りきれない見応え

また、新しい映画です。横浜ニューテアトルでドキュメンタリー映画「ヨコハマメリー」を観て来ました。横浜ニューテアトルは伊勢佐木町に残る数少ない映画館で、地下1階で120席ほどでロビーもない映画館です。これまで、あまり混雑してるところに遭遇したことなかったのですが、今回はなんと満席状態、年配の方が多かったですが、映画も横浜の戦後史を垣間見せるものでした。

ヨコハマのメリーさんという名前で知られた女性がいました。真っ白い厚化粧で真っ白いドレスを着たその姿は関内伊勢佐木町で多くの人が目にしていました。彼女は戦後アメリカ兵に体を売る街娼であり、それが横浜へと流れてきて、横浜の街にその姿を見せていました。彼女を知り、時には援助し、時には見捨てた人々の証言から浮かびあがるのは戦後の横浜の街です。1995年に横浜から姿を消したメリーさんですが、彼女をよく知るシャンソン歌手の永登元次郎のもとにメリーさんからの手紙が届くのでした。

私は横浜市民になって、20年余になるのですが、休日の朝、映画を観に伊勢佐木町に出かけて、当時の森永ラブというハンバーガーショップで、異様ないでたちの真っ白なおばあさんを見かけたことがあります。何だろうこのチンドン屋のような厚化粧をした人は、と思った記憶があります。それが、ヨコハマメリーさんでした。彼女を見かけたのは2度ほどでしたが、彼女が街娼であり、ハマの有名人であると知ったのはずっと後のことでした。この映画では、そのメリーさんを知る人々が次々とカメラの前で彼女や、彼女がいた横浜について語っていくのです。

この映画の監督さんは、1975年生まれで、この映画の撮影は1999年頃からとのことですから、20代の時に始めた仕事のようです。若い分、横浜とか街娼とかそういうものをノスタルジックというよりは、純粋な好奇心から見ている視点を感じました。それが、この映画からウェットな懐古趣味を排除して、叙事的な記録映画の味わいを出すことに成功しているように思いました。カメラはあくまで対象に近寄りすぎない距離感を維持しているのです。それだからこそ、ラストに大きな感動が生まれ、そして、今、既にメリーさんや永登元次郎さんが既に亡くなっている事実に切ない時の流れを感じることになります。

この映画の中で、彼女について、「彼女は胸を張り、自分の存在を周りに知らしめようとしているようだった」というコメントがありました。また、気位が高くて、皇后陛下と呼ばれたり、将校クラスしか客をとらなかったとか、彼女の人となりについての証言があるんですが、そういったものが、彼女の写真に負けちゃってるんですよね。彼女の姿を捉えた写真の語る力に証言が追いつかないということでしょうか。彼女が一人の女性を離れた「ヨコハマメリー」という存在、街の記憶に変わってしまっているようなのです。

カメラの前で語る人々にとって、メリーさんは記憶であり、歴史の一部です。それは横浜という街を記憶するときに忘れてならないアイテムであるようです。映画は、メリーさんを媒介として語られる街の歴史に焦点を当てて、なかなかメリーさんに迫っていきません。ただし、永登元次郎さんが末期癌に侵されていること、メリーさんの写真集を撮った森日出夫氏が自分が興味を持った題材は1年後には消えていると語るシーンなどから、死のイメージがずっとつきまとっています。そして、メリーさんの手紙が病床の永登元次郎さんのもとに届いて、ある展開を見せます。そのラストは劇場で確認していただきたいのですが、それまでの彼女が「ヨコハマメリー」という街のイコンであり、その呪縛から解放されたと思わせる結末に泣かされてしまったのです。

人の生き方という言葉で、一括りにできないものをこの映画では描いています。様々な視点から、色々なことを考えさせてくれる映画ですので、一見をオススメします。妙な思い入れを極力排した中村高寛の演出力は高く評価できると思います。

楽しい「プロデューサーズ」

また、新しい映画の話です。藤沢オデオン2番館で「プロデューサーズ」を観て来ました。

ブロードウェイのプロデューサー、マックス(ネイサン・レイン)の最近の舞台はコケてばっかりです。若い会計士レオ(マシュー・ブロドリック)の一言「金を集めてつまらない舞台を作ってこけた方が金が残る」に、ピンときたマックスは、レオも巻き込んで、最低の舞台を作ろうと思い立ちます。最低の脚本、演出、俳優を集めてみれば、脚本はヒトラー礼賛、演出はゲイとどう考えても当たりそうもないものになるはずだったのですが、これが意外やヒットしてしまうのです....。

コメディで有名なメル・ブルックスが1968年に作った映画を自らミュージカル化したら大ヒットしました。そして、それを舞台のスタッフ、キャストで再度映画化したというものです。ミュージカルの映画化というと去年「オペラ座の怪人」を観たのですが、リアルなドラマの中で突然登場人物が自分の想いを歌い上げるというのにどうにも違和感を覚えてしまい、今回の映画化にも不安がありました。しかし、観てみれば、その予感はいい方に裏切られました。

オープニングから、舞台を見終えた観客がその舞台をこきおろすナンバーで始まります。そして、ドラマが始まると、レインとブロドリックが舞台のハイテンション演技がそのまま展開していきます。映画化された舞台ではなく、舞台中継を観ていることに気付けば、すんなりとドラマに引き込まれて、最後まで楽しんでしまいました。なるほど、最初からリアルなドラマじゃないところで客をつかんでしまえば、後はミュージカルのお約束で突っ走れるわけだと感心しました。この映画、ツカミがうまい。

そして、この映画、とにかく笑えるのです。特に、マックスを演じるネイサン・レインが、演技、歌、動きとどれをとっても一級品でしかもおかしい。特に、留置場で、それまでの経緯を説明するナンバーは大爆笑ものでした。また、マックスの舞台で、主役のヒットラーをゲイで演じてしまうゲイリー・ビーチも見事に笑いをとっています。こういう登場人物の面白さというか芸の部分でも楽しめるのですが、ストーリーとしてもかなりおかしくて、当たらない舞台を作ろうという設定、そしてその出来上がった舞台がゲイのヒトラーの世界征服ものだというのがすごいです。そして、それが「鋭い風刺に満ちた傑作コメディ」としてヒットしてしまうのです。

でも、この映画は、そのヒトラーやゲイのネタを、風刺とかブラックユーモアでなく、ひたすら下世話なギャグとして使っています。例えば、子供はわけもなく「チンコ、ウンコ」ネタが好きで、「チンコ、ウンコって言うだけでギャハハと笑いますけど、それを大人にあてはめたら、「ヒトラーとオカマ」だったというノリなんです。もともと、ブルックスの映画は高尚なユーモアというよりは下世話なギャグとパロディの面白さで楽しませるものでしたから、そのスタンスをこのミュージカルでも守っているということになります。そして、その結果、ブロードウェイとか、その観客や批評家も笑いの種として、コケにしてしまったようです。

ドラマの後半では、マックスとレオの友情とかも語られるのですが、それも基本的に笑いをとるための振りでしかないあたりに、コメディ作家としてのブルックスの心意気を感じます。エンドクレジットの後のカーテンコールでブルックス自身がこの映画を締めるんですが、まだまだ老成してないいけすかないじいさんぶりを見せてくれてうれしかったです。

滅法面白い「ファイヤー・ウォール」

また、新作の話です。川崎のTOHOシネマズで「ファイヤー・ウォール」を観てきました。

銀行のセキュリティ責任者であるジャック(ハリソン・フォード)の家に、ビル(ポール・ベタニー)率いる武装した男たちが押し入ってきて、奥さん、娘、息子、犬を人質にとってしまいます。ビルは、ジャックに銀行システムを操作して金を盗めと強要してきます。ジャック一家は徹底的な監視下におかれていて、出し抜こうとした試みはことごとく失敗、ビルは部下でも平気で殺す冷血漢とわかって、もう逆らいようがありません。ところが、銀行の合併が進んでいて、システムをジャック一人で操作できないとわかって、ビル一味の計画が狂ってくるのですが、家族の命を握られているジャックは、ビルに従わざるを得ないのでした。

札束抱えて走り回るのが銀行強盗のイメージなんですが、今や大きなヤマを狙うならコンピュータ上のデータです。実際、カードで振込みやってみると、もはや現金なんて存在しない現実を実感しますもの。やはり、今の時代、でかい金を狙うなら、銀行のセキュリティ責任者を狙うなんてのは結構説得力があります。そして、家族を人質にとられたジャックはビルに協力せざるを得なくなり、ついには顧客口座の金をビルの口座に送金してしまうのです。しかし、それで無事に帰してくれるほどビルも甘くないわけでして、果たしてジャックは家族を救うことができるのかというサスペンスになります。

TV映画での活躍が多かったというリチャード・ロンクレイン監督はメインストーリーだけを丹念に追う演出でドキドキハラハラを持続させることに成功してます。前半、ビルを出し抜こうとしてことごとく失敗したジャックの反撃が、腕力勝負だったというのは意外な面白さがありました。窮鼠猫を噛むという展開をすんなり受け入れらたのもロンクレインの演出の手腕でしょう。ただし、その分、脇のアラン・アーキン、ロバート・フォスター、ロバート・パトリックといった曲者役者連を使いこなしきれてないのがもったいなかったです。奥さん役のヴァージニア・マドセンにも見せ場がなかったし。唯一、メアリー・リン・ライスカブ扮する秘書のジャネットの間をはずしたコミカルなキャラが印象に残りました。

ポール・ベタニー扮する悪党のビルは大胆不敵で、そして残忍で強欲。この強欲さがジャックに逆転のチャンスを与えるあたりが面白かったです。この類の犯罪映画はラスト近くで悪党側が自滅していくというパターンが多いのですが、この映画では自滅しそうでしぶといので、クライマックスの肉弾戦まで緊張感を維持することに成功しています。クライマックスのアクションは重量感があって最近の映画の中ではかなり点数高いと思います。

この映画のプログラムに、犯罪の手口について、ある程度はリアルに描いているものの、犯罪カタログにならないよう、実際には不可能なやり方を見せているとありました。私もコンピュータ関係の仕事をしてるので、こんなセキュリティのゆるいシステムはあり得ないと思ったのですが、そこには、お話としてのリアルさに留めておく必要があったようです。セキュリティ責任者一人押さえたら、客の金を好き放題にできるシステムだったら、とても使い物になりませんものね。ただし、悪意を持ったセキュリティ責任者がその権限と技術力をフル活用したら、ひょっとしたら?と思わせるところもありました。

ハリソン・フォードが、ティーンの子供を持つ親には老けすぎだとか、強すぎるとか、あまり評判はよくないですが、二転三転するストーリーや、無理のない伏線の張り方など、娯楽映画としてはきちんとまとまってまして、サスペンスアクションとしては佳作の部類に入るのではないでしょうか。映画館まで足を運んだら、このくらいの面白さがアベレージになって欲しい思うレベルの映画です。ところがこの映画のレベルがなかなかアベレージにならないのがこまりものなんですが。個人的な好みで言えば、同じように家族を人質をとられる設定の「ホステージ」より、こっちの方を買います。

この映画の音楽を担当してるのが「ホステージ」や「スズメバチ」で重厚なオーケストラサウンドを鳴らしたアレクサンドラ・デプラでして、サントラCDも出ています。今回は、オーケストラを使った音なんですが、よりハリウッドのサスペンス音楽らしく、シンセも交えたパーカッシブな音が中心です。ドラマの流れをフォローしてサスペンスを盛り上げる音作りはさすがでして、特に前半、ジャックがビルを出し抜こうと悪戦苦闘するバックに流れるドラマチックな音が印象的でした。ただし、メインタイトル曲が彼のオリジナルでなく、マッシブアタックの「エンジェル」でして、これは彼の采配によるものなのか、不本意な挿入なのか気になるところです。IT犯罪のオープニングとしては、この選曲はピッタリなんですけど、デプラなら自力でそういう曲を書けそうな気がするのです。

スティーブン・セガールの映画が年末年始に3本

また、今回は最近の映画の話です。

去年の後半から今年にかけて、誰の主演映画を一番観たのかと考えてみたら、トップがスティーブン・セガールでした。要は、この人の映画がコンスタントに封切られていることにもなるんですが、全部、銀座シネパトスという小さい劇場での2週間程度の公開というのがちょっと悲しくもあります。いわゆるビデオ(DVD)にするときのハク付けのための劇場公開とも思えてしまうからなんです。一昔前の晩年のチャールズ・ブロンソンや、ちょっと前のジャン・クロード・バン・ダムみたいな感じです。セガールも「沈黙の戦艦」から「暴走特急」「電撃」あたりまでは、まだそこそこのバジェットの映画に出ていたのですが、それ以降は、1ランク下のバジェットのB級映画ばっかになってきちゃってます。特にバン・ダム映画と同じく、ブルガリアでの撮影作品が出てきてる(製作にボアズ・デヴィドソンが噛んできてる)ようになり、ここらでもう少し盛り返して欲しいものだと思ってます。この半年くらいの間に劇場で観た彼の映画を挙げてみますとこんな感じ。

「イントゥ・ザ・サン」
セガール扮する捜査官が日本のヤクザと戦うというアクション映画。日本でもロケしてあるし、セガールが吹き替えでない流暢(?)な日本語で話すところもあり、日本人俳優も多数出演といういわゆる珍品映画。敵役の大沢たかおを初め、豊原功補、寺尾聰、伊武雅刀といった面々がマジメに助演しています。スタッフはアメリカ人で、監督もミンクというPV出身の人だそうですが、日本の描き方は割とマトモ。セガールがドス振り回して暴れまわるクライマックスまで、日本人だと結構楽しめてしまうかも。日本人ヒロインは無名の山口佳奈子という女優さんですが、てんで今風じゃない顔立ちとメイクでセガールと桜の木の下で、指きりげんまんしてます。そういうところも含めて、楽しめる人にはオススメ。一応、ヤクザ映画の基本的な段取りは脇役が押さえていて、主人公はしがらみ抜きのやりたい放題の大暴れという感じがセガール映画らしくてよいです。

「沈黙の追撃」
兵士を洗脳して自分の意のままに操ろうという悪い博士がいて、その陰謀を阻止しようということで、元海軍にいた主人公(セガール)がかつての部下を引き連れて、敵地に潜入するというもの。ヘリ、潜水艦などを使った戦争映画のような前半から、後半はアクション映画になり、クライマックスはオペラの劇場での暗殺ものと、色々なネタをいっぱいに盛り込んではあるものの、アンソニー・ヒコックスの演出はそれを順番に並べただけで、山場を作ることができなかったようです。ヴィニー・ジョーンズを初めとするセガールの部下たちのチームプレイを描こうとした節もあるのですが、これまた不完全燃焼でして、それなりの見せ場をゆるゆる楽しむ映画といったところでしょうか。この映画、エンドクレジットを観てると、やたらと、~V、~VAで終わる名前の人が多くて、どうやらブルガリアで撮影しているみたいです。

「沈黙の脱獄」
セガール扮する義賊が、足を洗って引き受けた運転手が何と強盗の運転手で、その上警察に彼だけ捕まって刑務所送り。そこで囚人のトップと仲良くなって、彼の協力で脱獄に成功し、自分をはめた連中に復讐するというもの。撮影監督出身のドン・E・ファンロイが監督していて、相棒を演じるのが黒人ラッパーということで、「電撃」を思わせるところもあるんですが、予算も内容もグレードダウンしているみたいで、特にセガールが義賊みたいな設定の割に、簡単に人を殺しまくるのでどうにも共感できませんでした。とにかく、B級っぽさをこれでもかと思うくらいに前面に出してきまして、セガール自身のアクションもあまりないという状況。セガールが動けないのであれば、相棒にアクションさせるとか、別の部分でドラマに色をつけるとかすればいいのですが、それもないのが辛いところです。まだ、セガールでは、チャールズ・ブロンソンのようにそこにいるだけで映画になるという域には達していないようなので、次の映画では、もう少し工夫をこらして欲しいと思ってしまうのでした。

というような感じで、どの映画の出来も決してよいとは言いがたいのですが、それでも、またセガール映画が封切られたら劇場に足を運ぶことになると思います。この類の映画が劇場で観られなくなるってのはさびしいものがありますから。学生の頃。「ジャガーNo1」とか「トラックダウン」といったB級アクションを映画館で楽しんだ自分としては、この灯を消してはいけないと思うわけです(大げさ)。

昨年公開された、「ワイルドタウン英雄伝説」のザ・ロックが、ブロンソン、ヴァン・ダム、セガールの路線を継いでくれそうな予感もあるのですが、まだまだ、セガールやヴァン・ダムの次回作はきちんと劇場公開して欲しいものです。

「ホテル・ルワンダ」で考える

ちょっとまた最近の映画の話題です。今年になってやっと公開にこぎつけた「ホテル・ルワンダ」というのは観ていてかなり恐ろしい映画でありました。

ルワンダでもともとあったフツ族とツチ族の対立は、ここを属国としていたベルギーの統治政策もあって、大きなものとなっていました。そして、1992年に大統領暗殺を契機として、フツ族民兵によるツチ族の虐殺が始まり、100万人もの犠牲者が出るに至ります。そんな中で首都ギガリのホテル支配人のポール(ドン・チードル)は自分の妻がツチ族でもあることから、できる限りのツチ族市民をホテルにかくまい、1200人余の命を救うのでした。

と、いうお話をアイルランド出身のテリー・ジョーンズが監督した映画「ホテル・ルワンダ」は数々の賞をとり、日本でもシネコンでの拡大公開にまでこぎつけました。映画としての見応えもさることながら、つい数年前、隣人の異民族を「ゴキブリ」呼ばわりして100万人も虐殺するという世界が存在したということがショッキングな映画でした。そんな中で、主人公のポールが自分の地位や才覚を駆使し、時には自分の命を盾にして、多くの人の命を救うというのが感動的でありました。勇気とか度胸とかそういうものがまるでない自分にとっては、かなり痛い映画でもありました。こういうすごい人がそうたくさんいるわけじゃないから映画になるんだと思えば、並の人間の慰めにはなるのかもしれませんが。

民族間の紛争というのは、歴史をながめると、昔から今までずっとあるのですが、ルワンダのケースはその中でも特殊なものではないように思えます。ルワンダの虐殺を題材にしたNHKのドキュメンタリーを観たのですが、不気味に虐殺を煽るラジオ放送に戦慄させられたことを思い出します。原始的なメディアによる洗脳とも言えるのかもしれませんが、オリンピックやワールドカップの「行け行けニッポン」と同じようなことが、「ツチ族のゴキブリを皆殺しにしろ」というメッセージとなって市民に届いたというのが大変怖いと思った次第です。もちろん、そこに至るまでのツチ族とフツ族の民族間の対立があり、一時はツチ族の方が優位にあったということもあり、感情的な部分はあるかもしれないとも思えるのですが、それが、ナタや鎌による大量虐殺に行き着くというところは、平和な日本に暮らしている自分には理解しがたいものがあります。でも、昔の日本軍が中国人を度胸試しに殺してたということも考えると自分が集団暴力や殺人を煽られたとき、どうしたら、まず自分が狂気の沙汰から一歩さがって、武器を捨てられるだろうか、というところには考えさせられるものがありました。

この映画での虐殺する側のフツ族の行動について、成り行きの盛り上がりのようなものが感じられたの興味深かったです。政府も軍も止められなくなっている虐殺を見ていると、引き金を引いた連中にももうコントロールできなくなっているようで、これでは、歴史に何を学べばよいのかという気分になってきます。この映画では、主人公や国連平和維持軍の行動に希望を見出すことはできますが、集団の狂気に対して、個人の勇気と善意でしか太刀打ちできないのかというところに余計目な怖さを感じる映画になっています。そうなると、大きな権力が私欲より善意を優先してくれることを期待するしかなくなってしまうのですが。

でも、映画としての見応えは十分で、感動もあります。映画としての出来は見事だと思います。それだけに考えさせられるところの多い映画でもありました。

静岡名画座の記憶(2)

また、ちょい昔の映画館のお話です。

私が学生の頃、静岡名画座は新作のロードショー館としての顔がメインになっていました。

大作はオリオン座、ちょっと小洒落た映画はアート・シアター・ミラノみたいな映画館のカラーが当時はまだあったのですが、私の印象では、静岡名画座はホラーとアクションが多いというのがありました。当時は確かにホラー映画はブームみたいなところありましたけど、それでもここで観たホラー映画が多いのです。以下にちょっと挙げてみます。

「ハロウィン」
ジョン・カーペンターの出世作ですが、これの公開にあたり日本で音の加工をしたらしく、とにかく、突然、でっかい音で「ドッギャーン」とショックシーンが来る度に映画館で震え上がって観た記憶があります。とにかく、静かなシーンになると、「ああ、またドッギャーンがくるぞ」ってビビってましたから。殺人鬼マイケルが画面で暴れまわってるシーンの方が、ビックリが来ないので安心して観ていられるというくらい音で驚かせる映画でした。4チャンネルステレオ音響による上映で、音に取り囲まれて逃げられない怖さを感じましたからね。「ハロウィン」とか「ファンタズム」って当時予告編もステレオ音響で驚いた記憶があります。

「溶解人間」
宇宙飛行士が地球に帰ってきたら、ドロドロに溶け出して人間の肉を食うという話なんですが、追いかける捜査官が一人だけで、全然盛り上がらないまま、当人が溶け切っておしまいという映画。まあ、劇場で観られてラッキーだったのかな。特殊メイクのリック・ベイカーの若い頃の仕事という意外はあまり観るところなかったような。

「ドッグ」
動物パニック映画の極北。原因が最後までよくわからないんですが、犬が急に獰猛になって人間を襲うというもの。その上、人間側が集団でいるのにやられちゃうというのはかなり無理がある展開。銃でも刃物でもいくらでもやりようがあるのに、画面には犬の死骸は写らず、人間の死体ばかりがゴロゴロするという、ある意味、動物愛護映画。

「ドラキュラ・ゾルタン」
これまた、犬なんですが、ドラキュラの飼い犬が、ドラキュラの末裔のまわりをウロウロするというお話。東京では一本立てでロードショー公開していたのですから、当時はいい時代だったのかも。

「他人の眼」
連続殺人ものなんですが、特殊メイクが「ゾンビ」のトム・サヴィーニで、ジェニファー・ジェーソン・リーが盲目の少女の役で、「初体験リッチモンドハイ」より先に脱いでることが有名な映画。でも、映画そのものも、女性TVキャスターと殺人鬼の攻防をシャープに描いていまして、小品ながらも佳作の出来栄え。面白かったです。

「ゾンゲリア」
海辺の町の連続殺人を追うおまわりさん、でも、死んだはずの男が生き返ってたりして妙な展開になるというスリラー。「ジュラシックパーク」などでビッグになったスタン・ウィンストンがデザインした特殊メイクのゲロゲロ度が話題になった映画ですが、オープニングの海辺の描写から殺人シーンのショック、ラストのオチまで非常によくできてます。今なら絶対R15指定になる描写の数々がすごいんですが、オープニングとラストの静かなイメージがすばらしい。(ジョー・レンゼッティの音楽が見事)

私は劇場で観てないんですが、「ゾンビ」の静岡公開もこの名画座でした。とにかくこんな映画ばっかりやってたというイメージが強かったです。ホラー映画のブームの時は、他の映画館でも確かに上映してたんですが上記のようなB級ホラーをコンスタントに公開していたのがこの映画館でした。

「ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ」はマジで面白い

また、新作の話なのですが、「ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ」を観てまいりました。

このシリーズはテレビでも観ましたし、「危機一髪」が劇場公開された時は映画館まで観に行きました。もともとはイギリスのアードマンというところの手作りタッチの作品だったのですが、今回はドリームワークスがバックについてハリウッド大作の装いになっています。とはいえ、発明狂のウォレスとその賢い飼い犬グルミットのコンビが起こす騒動を楽しく描いた作品にあることは変わりなく、子供から大人まで楽しめる映画に仕上がっています。観終わって、隣の親子連れが「面白かったー」ってすごく満足げでしたもの。ドラえもんのようにキャラがメジャーじゃないけど、それでも子供が楽しめるってのは、映画そのもの実力なのでしょうね。アカデミー賞の長編アニメ賞を受賞しただけのことはありますし、これを選んだアカデミー協会もえらいです。

クレイアニメーションというのはいわゆる粘土人形を使って映画の一こまずつを撮影してつなげるという非常に手間のかかる作業です。今回も製作に何年もかかっているようですが、そんな手間は思いを馳せる余裕もないほど、面白さが一杯つまっています。今回は、野菜コンクールを控えた町でうさぎがたくさん発生して困っているというところから始まります。ウォレスがウサギ捕獲員みたいなことをやって、うさぎを捕まえては飼っていたのですが、そのうち、でかいウサギ男なる怪物が町の野菜を荒らしまわるようになるというお話。「狼男」のネタをベースに色々な映画のパロディをぎっしり詰め込んで、最後まで楽しませてくれるのですよ、これが。

特に感心したのは、ホラー映画の演出をクレイアニメーションできっちりとやっていること。グルミットがトラックに残されるシーンや、ウサギ男の足跡をたどっていくシーンのサスペンスなどは、パロディというよりはまんまスリラーなんですよ。さらに「危機一髪」でも見せた、畳み込むアクション演出は今回も健在で、クライマックスの追跡&アクションの盛り上がること。これもパロディを超えたマジでアクション映画になっているのです。パロディとしてのおかしさを大人は楽しめますし、パロディを抜きにした、サスペンス、アクションとしてもちゃんと面白い映画になっているところで、大人も子供も楽しめ、そして、キャラの面白さで子供はさらに満足できるのではないかしら。犬のグルミットはセリフが一言もなくても、そのクールでシニカルな表情がたまらなくおかしいです。また、ウォレスや町の人々の素っ頓狂なキャラは日本のアニメではまずお目にかかれません。(その昔、「まんが日本昔ばなし」で観た、力太郎を思い出しました。)さらに、今回は一見かわいくないウサギたちが登場するのですが、これが後半に行くに連れてかわいく見えてくるのがおかしかったです。

笑いの取り方も子供と大人の両方が笑えるようになってまして、細かいところで色々なギャグやパロディが盛り込まれています。個人的に笑ったのは、綿あめが西部劇の草のように風に舞うシーンと、遊園地のコーヒーカップにスプーンがついてカタカタ鳴るギャグですね。クライマックスに色々な趣向を一気に盛り込んで畳み込む演出で、映画を観終わったときの満足度は高いです。脚本がよく練られているのでしょう。正直、予想のつかない展開でしたもの。

こういう映画は、手間をかけているから偉いというわけではないんですが、その手間を映画の面白さに昇華させているのが偉いと思います。人形を使ったアニメでは、昨年「コープス・ブライド」がありましたけど、素直に親子揃って楽しめる映画としてはこっちの方が上でしょう。また、最近のホラーやアクション映画に物足りなさを感じてる人にもオススメしたいです。キャラのおかしさや人形アニメじゃんということで食わず嫌いにしておくにはもったいない一品です。

プロフィール

einhorn2233

Author:einhorn2233
Yahooブログから引っ越してきました。静岡出身の横浜市民で映画とサントラのファンです。よろしくお願いいたします。

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