FC2ブログ

「スクラップ・ヘブン」作ってる方ほど観ている方は楽しくない

今回は2005年に封切られた日本映画「スクラップ・ヘブン」を横浜のシネマ・ベティで観てきました。今、自分にとっての一番手近な映画館でして、ここで上映される映画はモノが何であれ、なんとなく観てしまう機会が増えてきます。

デスクワークばっかの警察官シンゴ(加瀬亮)はバスジャック事件に遭遇するのですが、自分では何もできないまま、若者が銃で撃たれ、乗り合わせた若い娘は義眼を落とし、犯人は結局自殺します。その後、街で撃たれた若者テツ(オダギリ・ジョー)と再会し、二人は「世の中想像力を欠く連中ばっかだ」というところで意気投合して、復讐代行業なるものを立ち上げます。そして、公衆トイレで依頼を受けて、医療事故を起こした院長や子供を虐待する母親への復讐を実行するのでした。そして、バスジャックに遭った娘サキは薬剤師ながらヤバイ爆発物を作っている様子で、二人に社会全体への復讐を依頼してきます。一方、シンゴは職場でのイジメを受けてるし、テツの父親は精神病院に入院しているし、どうにも世間とうまく折り合わない3人の行方は?

「フラ・ガール」で一躍メジャーになった李相日監督が、脚本も兼任しました。才気走った絵作りの導入部が、いかにも若い監督らしさを感じさせるのですが、どっか変なところに連れてかれそうな不安も感じてしまいました。

シンゴとテツが意気投合するまでは、まるで「ファイト・クラブ」みたいで、リアリティを感じさせない展開なので、テツは実はバスジャックで死んじゃってるんじゃないかと思ったりもしたのですが、後半、父親の存在が見えてくると、あ、こいつも現実に存在する人間なんだとわかってきます。でも前半は「ファイト・クラブ」をかなり意識してるのかパクってるような印象を与えます。

想像力の足りない連中が多いというのは確かにその通りかもと思うところがあるんですが、それが復讐代行業に結びつく理屈がよくわからないです。復讐しようと思ってもできないのは想像力の欠如よりも、世間の常識が邪魔をするのではないかしら。想像力が欠如してるのは、むしろ、こいつらの方かもしれません。まあ、若い連中は世間を見下したようなところがありますから、シンゴとテツにはそういう意味のリアリティはあります。

悪徳院長や虐待母親への復讐シーンはテンポよくコミカルに演出しているのですが、偉そうなことをのたまった後にやってる事の見せ方としては、座りが悪いという印象を持ってしまいました。自分のやった復讐代行の新聞記事をシンゴがスクラップしてるのが題名の「スクラップ・ヘブン」につながるようなのですが、それがエスカレートして、交番から拳銃を盗み出すところまで行ってしまうと、またお話が飛躍してしまいます。シンゴをイジメる警察組織はメンツをつぶされると一番応えるから、交番から拳銃を盗んじゃおうというのは、ひねくり過ぎの発想でしょう。シンゴとテツが本気でそう思って行動したのだとしたら、ホントに只のバカです。後半のために無理やりとってつけたような展開は、脚本、監督兼任の限界のように思われます。

以後は結末に触れますのでご注意ください。

後半になると、個人の復讐に飽き足らなさを感じ出した二人が、社会に復讐したいというサキの依頼に共鳴します。「全部を一瞬にして消しちゃう」方法があると言って、サキは爆薬を見せびらかします。この先「全部を一瞬にして消しちゃう」ことがキーワードになるんですが、その意味は最終的に映画の中では語られません。それがわからないのは、観ているこちらの想像力の欠如になるのでしょうか、私に言わせれば作り手の説明力、創造力の欠如だと思うのですが、全体的に後半は思わせぶりな展開、演出が目立ってきます。テンポもだんだん落ちてきて、作り手の思い入れが観てる方に伝わってこないように思えます。きっと、作ってる方や演じてる方は思い通りにやって、楽しかっただろうなあって気がするのですが、それがやけに冗長に見えてしまうのです。そんな中では、柄本明の登場シーンだけは無駄がなくてインパクトも十分でした。演技に冗長さがないからそう見えるからかもしれません。

主人公3人はみんな独善的で、他人の事情なんてお構いないので、まるで共感を呼びません。若いときは、唯我独尊みたいなところがあるから、それを研ぎ澄ませば、反社会的なテロ的な行動になるのかもしれません。それに3人ともそれぞれに社会に対する反抗心を抱く理由づけはされているのですが、それでも共感を呼ぶにはちと弱いです。また、ラスト近く、シンゴとテツのやった交番襲撃が同時多発的に起こるという展開は、単に愉快犯を扇動しただけのようで、私には不愉快でした。テツがバスジャック遭遇時の服装で、県警本部に乗り込んで最後に自爆するに至っては、正直なところまるっきりついていけませんでした。自爆する理由がなさすぎなんです。何か事を成し遂げた覚悟の自殺でもないですし、そもそも警察に出頭する理由がわかりません。シンゴが死ねそうで死ねないラストも、やたらに長い。作り手、演じ手のやりたいほうだいやって楽しそうなのが伝わってくるだけに、思うところをきちんとフィルムに焼き付けてくれよと言いたくなるのですよ。

スポンサーサイト



プロフィール

einhorn2233

Author:einhorn2233
Yahooブログから引っ越してきました。静岡出身の横浜市民で映画とサントラのファンです。よろしくお願いいたします。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR