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「リーピング」は神と悪魔の代理戦争、人間はたまらんわな

今回は新作の「リーピング」をTOHOシネマズ川崎3で観てきました。ここは画面がシネスコになるとき縦に縮まないのがいいところです。

奇跡と呼ばれる現象の調査活動を行っているキャサリン(ヒラリー・スワンク)のところにヘイブンという町で起こっている怪事件の調査以来がきます。相棒のベンと共に現地に向かうと、川が真っ赤に染まっています。町民たちは、ある少女ローレンが全ての原因だと言います。彼女の兄が怪死した直後に川が真っ赤になったというのです。そして、カエルが集団死し、アブやウジが大量発生し、旧約聖書の10の災厄がそのまま現実化しているようなのです。少女を追う彼女ですが、どうやら本当に悪魔が復活しようとしていることがわかってきます。一体、悪魔が誰で、誰が神の使いなのか、ヘイブンという町で恐ろしいことが始まろうとしているのです。

ホラー映画のブランド、ダーク・キャッスルの作品です。今回は、演技派女優ヒラリー・スワンクを主演に、悪魔復活の恐怖を描いたホラー映画でして、「プレデター2」「ブローン・アウェイ」などその手堅さに実績のある娯楽映画の職人スティーブン・ホプキンスが監督しました。彼が監督しているということで食指が動きました。

オープニングで奇跡の調査を行ったら実は工場廃液が原因だったという事例が示されます。キャサリンはもと牧師だったのですが、スーダンで夫と娘を失ってから、信仰も失い、奇跡現象の学術的調査を行っていました。そんな彼女が今回請け負った調査もなんらかの科学的な説明ができるだろうという見通しがありました。真っ赤に染まった川は微生物の繁殖によるものではないかと思われたのですが、魚やカエルの集団死など、聖書の通りに怪現象が次から次へと起こるものですから、これはどうやら超自然の力が働いているとしか思えなくなってきます。ローレンの家には、悪魔の信仰のマークが刻み込まれており、その母親も悪魔の信仰者のようです。すると、少女も悪魔の信者であり、彼女が悪魔を復活させようとしているのか。そして、夢と現実のはざまに現れるローレンと死んだ自分の娘。彼女の中で捨てたはずだった信仰がまた揺らぎ始めるのです。


この後は結末に触れますのでご注意ください。


ホプキンスの演出は説明不足のままどんどんドラマを引っ張っていきます。ショックシーンを織り込みながら、ヒロインの過去と、謎の少女をうまくだぶらせていきます。町の連中が少女を殺そうと彼女の家にやってくると、イナゴの群れで逆襲するあたりで、どっちが悪魔なのかがだんだんとわからなくなってきます。クライマックスで、ローレンはもともと町の連中に生贄にされそうになって逃げ出したのだというのがわかってきます。そして、悪魔信仰の町ヘイブンに、神が10の災厄をもたらしているのだという驚くべき展開になります。結局、災厄というのは、神がやっても悪魔がやっても同じことだということになるのでしょう。旧約聖書のそれも神の御業だったのですから、アメリカの田舎町でその程度の奇跡を起こすくらいちょろいものです。

ここでは、神が善であり、悪魔が悪であるという図式は成立しません。悪魔信仰の人々であるヘイブンの町民には、ダニやできものが発生し、最後には天からの炎に焼かれてしまいます。生き残ったキャサリンは悪魔によってその種をはらませられてしまうという結末は、善意のキャサリンや、信仰心の篤いベンに対してずいぶんな扱いと言えましょう。人間サイドに立つから理不尽な話に見えますが、神と悪魔が人間という駒をつかってゲームをしていると思うと、何だか納得できるところがあります。駒はあくまで勝負のために使われるもので、駒自体に人格や葛藤はありません。ただ、それが生身の人間だから、実際に駒に使われた人間はひどい目に遭うというお話に思えてきます。その昔、同じ旧約聖書の10の災厄を舞台にしたディズニーの「プリンス・オブ・エジプト」を観たとき、結局人間が神様の代理戦争をさせられているんだなあって感じたことを思い出しました。「リーピング」でも、結局、神と悪魔が人間を振り回して勝ち負けを競っているようにしか見えません。そして、神も悪魔も人間の犠牲には無頓着であるというのもよくわかる展開になっています。ラストに悪魔の子をはらませられたヒロインの悲劇は、ホラー映画のオチというにはちょっと痛いものがあります。それとも、信仰を失って、10の災厄を信じなかった者への罰なのか? だとしたら、そんな自己チューで倫理観が人間よりも劣る神様とは、お近づきになりたくないと思ってしまうのでした。

「ミリオンダラー・ベイビー」のヒラリー・スワンクがこういうジャンルの映画に主演しているというのが一つの売りらしいのですが、彼女、超能力ホラー「ザ・ギフト」や「ザ・コア」なんていうトンデモSF映画にも出ているので、結構この類が好きなんじゃないかと思っています。ラストの葛藤はなかなかの熱演で、複雑な構成になっているドラマの中で頑張っていたように思います。リチャード・ユリシッチによる視覚効果がどこで出てくるのかと思っていたら、ラストで大花火をあげたのにはびっくりでした。ここは「スペース・バンパイア」を思わせるところがあり、少女の無表情の不気味は「光る眼」とイメージがだぶるところありました。どっかで見た要素はあるのですが、神と悪魔の代理戦争で人間がひどい目に遭う物語を現代劇にしたというところに視点の新しさを感じます。そして、それはイラク戦争にも例えられるところに、この映画の今日性があります。

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アルティスタコルダオーケストラによる「ハンス・ジマーの映画音楽」コンサート

今回は、東京芸術劇場大ホールで、アルティスタコルダスーパーオーケストラ コンサート「ハンス・ジマーの映画音楽」を聴いてきました。このオーケストラ、女性ばかりの編成で、人数はそんなに多くはないんですが、着ているファッションも重視していて、全員が立って演奏するという珍しいスタイルのオーケストラです。総監督のリュウ菅野が編曲と指揮を担当しています。こういうコンサートの場で映画音楽に特化したものは珍しく、特にハンス・ジマーを特集している点で、サントラオタクの私の食指が動きました。

オーケストラと言っても、あまり大きな編成ではなく、バイオリンが20名程度、ビオラが6名程度、チェロが4名、コントラバス2名、ブラスセクション6名に、ピアノ、ハープ、パーカッション4名、コーラス5名にパイプオルガンといった程度です。ホーンと木管が薄いのを頑張ってるなあというのと、その編成に合わせたアレンジがされているのが印象的でした。

プログラムは以下の通りです。
「パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊」よりメドレー
「パイレーツ・オブ・カリビアン」の1作目でして、活劇調のテーマを目一杯鳴らしているのが見事でした。ストリングセクション中心でもアクション音楽を演奏できるんだってところがちょっとした発見でした。ヒロイックなテーマが鳴って、その後からテンポの速いメインテーマが快調に聞こえてきて、つかみはOKという感じでしょうか。尚、この曲はクラウス・バデルトととの共作となっています。

「パールハーバー」
映画としては、「???」な作品だったので、どういう曲が出てくるのかと思っていたのですが、いわゆる愛のテーマが同じメロディの反復というミニマルミュージックを思わせる形で演奏されました。予告編などでよく使われる曲で、「そっかー、モトはこれだったのかー」という発見がありました。

「スピリット」
馬のアニメの音楽ですが、走る躍動感を思い切り表現して、コンサートの前半の山場になっていました。ジマーらしい音になっているのですが、ホーンセクションの頑張りが印象的でした。

「バックドラフト」
ラストの葬送の音楽から、毎度おなじみのテーマへなだれ込むのですが、ストリングス中心でこの曲を演奏するのはかなり難しそうだなという印象でした。葬送の部分のいわゆる音のタメの部分は大変よかったのですが、ラストのマーチで主旋律が前面に出てこなかったのがちょっと残念でした。

「ライオン・キング」
映画のラストを彩った曲だそうで、私もこの映画を観たのが10年以上前なので、印象が曖昧だったのですが、ここでもいわゆるジマー特有のオーケストラの音が確認でき、ラストはアフリカの雄大な自然を描写する感動的な音楽になっていました。

と、ここで休憩が入って、後半は「パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト」からの作品集となります。

「キャプテン・ジャック・スパロウ」
ジャックを描写するコミカルな曲ですが、今回の一番の聞き物でした。チェロのソロがシンプルなメロディを奏でると、バックのストリングスがそれに応えるという掛け合い風の音で始まって、その後、オケ、チェロ、ソロのチェロが複雑に絡み合いながら、盛り上がっていきます。映画は未見なんですが、この曲の確認のためにサントラ盤が欲しくなりました。しかし、コンサート用に大変盛り上がるアレンジが施されているように感じましたから、この演奏ライブがCDになることを期待したいです。

「ディヴィ・ジョーンズ」
敵役のタコ男、ディヴィ・ジョーンズを描写した曲で、彼が劇中パイプオルガンを弾くシーンがあることから、実際にパイプオルガンを前面に出した音で、まずはパイプオルガンのソロが続いてそこにオケがかぶさってくるという構成になっています。どこかコミカルで物悲しいメロディが色々なスタイルで演奏しているのが聞きものです。

「ザ・クラーケン」
でっかいイカの化け物を描写した音楽で、これはメインとなるメロディを持たないアンダースコアに近いものでした。大暴れするイカのうねうね感が今一つだったのは残念でしたけど、この編成としての最大限の効果を出していたように思います。

で、ここから先がアンコールなんですが、色々と出てくるんですわ。

「オペラ座の怪人」
これもパイプオルガンを前面に出してメインテーマをコーラスとストリングスで盛り上げています。パイプオルガンの音が強すぎて、これが鳴るとストリングスがかき消されてしまうのは、たぶん計算ミスだと思うのですが、ストリングスが前面に出る部分は見事で聞き応えがありました。個人的に好きな曲をこういうサプライズで聞かされるのはかなりうれしい。

その後。「リベルタンゴ」「ベストフレンズ」と続き「パイレーツ・オブ・カリビアン」を手拍子の中で演奏するという大盛り上がりを見せてくれました。

全体としては、独特の編成に合わせた編曲がされているので、オリジナルな音の再現とはちょっと違うのですが、選曲の目の付け所がよくて、こういう曲をコンサートで聴けるなんてすごいと思わせるものが多かったです。特に後半の「パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト」の曲は、素人の私にもいい演奏だとわかりました。このオーケストラにまた、別の作曲家にもトライして欲しいような気もしますが、一方で、このオケに相応しいジマーを選んだんだなと思わせるところもありました。ともあれ、楽しいコンサートで、映画音楽をこういう形で聴ける企画は大歓迎です。

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einhorn2233

Author:einhorn2233
Yahooブログから引っ越してきました。静岡出身の横浜市民で映画とサントラのファンです。よろしくお願いいたします。

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