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「エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?」の儲け文化にウンザリ

今回はキネカ大森2で「エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?」を観てきました。ここは、キネカ大森で2番目に大きなスクリーンとはいえ69席という小劇場で、でもスクリーンサイズは結構あって映画観るにはいい劇場です。

アメリカの優良企業と呼ばれたエンロンですが、その内実は不正に利益を操作して、経営陣だけが大きな富をつかむ仕掛けでした。エネルギー産業の規制緩和をもとにさらに儲けを広げようとしていたのですが、疑惑報道から株価が大暴落、一月半後にエンロンは倒産し、それまでの幹部たちのやってきたことが白日のもとにさらされることになるのです。

遠いアメリカの1企業であるエンロンが倒産したからといっても、こちらには「ふーん」というレベルのものでしたが、それがアメリカを揺るがす大事件だったというのはこの映画の存在で知りました。エネルギー供給会社であったエンロンが商社としてエネルギーを売買する会社になったあたりから、この会社は様子がおかしくなったようです。

この映画はエンロンの企業としての全貌を詳細に説明してはくれないので、一体、この企業がどこから始まって、どこからおかしくなったのかわかりにくいところが多かったです。監督のアレックス・ギブニーは、作家や内部告発者の証言と、証人喚問などの映像をつないで、なぜエンロンが崩壊するに至ったかを見せようとしているのですが、予備知識のない人間には、一体誰がどう悪さをしたのかが理解できなくて、結論のみが印象に残ってしまいました。

その結論とは、エンロンは儲けを追求するという単純な理論にあまりにも忠実であり、そのためにやった小さな不正が、破綻したとき、さらにちょっと大きな不正に手を染め、それを繰り返すうちに取り返しがつかないところにまで行ってしまったというのです。

でも、素人目にもおかしな仕掛けがあるなあと思うのは、時価会計というもの。これは、会社の資産価値を未来の取引も勘案した形で計上しようというもので、10年先の発電事業まで、資産として計上していたというのです。でも、これが程度の問題で、2,3年先の金融取引には適用するのは妥当だとされているのだそうです。もし、そうなら、それを10年先のエネルギー取引にまで拡大することは、それほど大きな悪意や犯意を必要とはしないでしょう。そして、海外に作った発電所は、その作った電力の買い手がなくて破綻してしまうのでした。

その赤字を補填しようとして、エンロンは恐ろしいことをやってのけたとこの映画では言ってます。カリフォリニア州で計画停電をやって電力価格を操作したというのです。日本では基本的に電力は安定供給されるもの、供給能力を需要が上回らない限りは電力が供給されないなんてあり得ないことです。しかし、カリフォルニア州では規制緩和で電力も自由化されていて、供給を細くすることで、電力価格を吊り上げることができるというのです。さらに、電力の自由化は、発電所を作るリスクを大きくしたため、需要の拡大に供給が追いつかないという弊害も生じ、電気代は上がる、停電は起こるという電力危機をもたらしたのですが、その裏で電力市場で大儲けをしていた人間がいたというのです。

こういうトレーダーには、プライドも倫理観もありませんから、停電で困ってる人を笑い飛ばしているような連中です。エンロンのトップだけが腐っているわけではないのです。儲けのためなら、やっていいことはあっても、やって悪いことはないという倫理観がはびこる空間があって、そこに一般人は入り込むことはできないのです。自由化とか、規制緩和ということの負の意味を知ったことができただけでもこの映画を観た価値がありました。

また、エンロンはブッシュ親子にも大量の献金をしており、カリフォルニア州が電力供給のための規制をしてくれという依頼を自由経済を盾に断っています。その結果、州知事はリコールされ、アーノルド・シュワルツネッガーが後任の知事に当選するのですが、その前に、エンロンのCEOとシュワルツネッガーが密会をしていたという事実もあるのです。何も信用できなくなるような話ですが、偉い人間が金儲けを無自覚にやっていれば、どこかでボロが出るということなのかもしれません。ライブドアのホリエモンが「金儲けしてどこが悪い」と言い切った後のことを思えば、奢れるものは久しからずなのでしょう、というか、そう思いたいです。

それにしても、マネートレードの世界は我々一般市民を大なり小なり食い物にして、金を儲けているのだと再認識しました。そして、自由化は、倫理の歯止めをはずしてしまうことになるんだということもわかりました。自由が悪だというのわけではないのですが、自由化は、悪に自由を与えてしまうこともあるのだということは覚えておく必要があると思った次第です。エンロン事件はよその国の話ですが、その精神構造は日本にだってある、損失補填のために不正経理なんて絶対やってる連中はいると思います。ただ、計画停電を起こして電力価格の利ざやで稼ごうなんて連中はまだ登場してはいないようです。ここで、日本の「恥の文化」に期待するしかないですが、やっぱり濡れ手に粟の金儲けなんてあり得ない、あったとしたら後ろめたい、そんな文化であって欲しいと思います。

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「フラガール」はコミュニケーションのある映画だから好き

今回は2006年に封切られた「フラガール」をシネマジャックで観てきました。昨年の映画でも2本立てでやってくれるのがありがたい映画館で、このスタイルを続けてくれると映画鑑賞量が豊富になるので是非頑張って欲しい映画館です。

昭和40年、石炭産業の斜陽化は、常磐炭鉱にも合理化、人員削減をもたらしました。そんな中で、温泉施設を使った常磐ハワイアンセンターで雇用確保を図ろうとする人たちがいました。ハワイアンダンサーも現地調達というわけで、志願者を募り、紀美子(蒼井優)たちが集まります。東京から元SKDのダンサーである平山まどか(松雪泰子)を招いて指導してもらうことになるのですが、生徒は4人しかいないし、まどかもやる気がありませんでした。しかし、紀美子や早苗の熱意がまどかを動かし、そしてダンサーも増えていきました。ハワイアンセンターのために全国行脚する彼女たち、そのために親の死に目に遭えない娘が出たため、まどかは講師の職を追われることになります。まどかの乗る汽車を見つけた生徒たちは、何とか彼女を引きとめようとするのですが...。

「スクラップヘブン」で好き放題やった李相日監督が今度は娯楽映画の王道ともいうべき涙と笑いの感動編を作り上げました。舞台は斜陽の炭鉱で、娯楽施設を作ることで雇用の確保を図ろうという人々、特にハワイアンダンサーにスポットをあてたもので、これまで炭鉱一本でやってきた人々から白い眼で見られ、特に肌をさらして踊りを踊るなんてとんでもないと思われながらも、頑張って、プロのダンサーへと成長していく女性たちを描いたドラマです。

最初にダンサーになろうと言い出す早苗(徳永えりがかわいい)とそれに引きずられる形で参加する紀美子、最初はぎくしゃくしていたまどかと生徒たちの関係も、生徒たちの前向きな本気がまどかを動かします。そして、生徒も増えてダンスの腕前も向上します。でも、問題は出てくるわけで、早苗は父親が整理解雇されて、北海道へと旅立っていきます。紀美子も母親からダンサーをすることを認めてもらえず勘当状態。そして、落盤事故によってダンサーの子の家族にも犠牲者が出てしまいます。また、まどかは借金を抱えているらしく怪しげな男が脅しにきたりして、それぞれに問題を抱えているのですが、何とかハワイアンセンターを成功させたいという気持ちがばらばらになりがちな皆の心をまとめていきます。

李監督の演出はエピソードを積み重ねて群像ドラマを作ろうとしているようで、誰が主役ということもなく、場面毎に主役がいるという構成が成功しています。特に、松雪泰子と蒼井優のソロのダンスは編集の妙もあって素晴らしく躍動感があって、そこだけ切り取っても見事です。また、豊川悦司が演じた紀美子の兄も紀美子やまどかを見る視線のやさしさが、その場面では主役たりえていました。そんな中で、終始脇役に徹した岸部一徳が儲け役ながら、大変味のある演技でハワイアンセンターの人間を代表していました。ハワイアンダンサーである女性陣が主役の物語でありますが、むしろ役者は男優陣の方が光っていたようにも思えるくらい、皆好演しています。炭鉱にこだわりたいけど、でも現実は石炭は先が見えている、そんな思いをきちんと描いているところがドラマに奥行きを与えています。

クライマックスはセンターを去ろうとするまどかを生徒たちが引きとめようとするシーンです。北海道に去る早苗との別れのシーンでベタな演出をしていたのですが、今回はさらにフラダンスでまどかを引き止めるというハッタリ演出をかまして、それが見事に着地していたのが驚きでした。見ていてホロリとなるシーンなんですが、蒼井優の健気さを前面に出した演技がうまくはまって名シーンとなりました。

「スクラップヘブン」では、登場人物がコミュニケーションを取らないいわゆる一人言というか、卒業式の呼びかけみたいな構成が私には今イチだったのですが、「フラガール」では登場人物が誰かにつながっていて、常にコミュニケーションがあるところがまず好感が持てました。クライマックスで踊りに見せる以上の意味、思いを込めたあたりは見事だと思いました。その正攻法の演出でドラマをきちんと作る力のある人のようなので、今後の作品が楽しみになりました。

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Author:einhorn2233
Yahooブログから引っ越してきました。静岡出身の横浜市民で映画とサントラのファンです。よろしくお願いいたします。

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