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「超強台風」はディザスター映画の定番のようで、実はすごく珍しい掘り出し物

今回は新作の「超強台風」を新宿ミラノ3で観て来ました。新宿歌舞伎町に残る数少ない映画館の一つです。でも、公開2週目にして、1日2回の上映になっちゃってるし、座席数1000のミラノ1では、韓国映画「TSUNAMI 津波」をやってて紛らわしいことこの上なし。ちなみに、こっちは今注目の中国映画でございます。

藍鯨と名づけられた巨大な台風は、中国の沿岸都市温州に接近してきていました。しかし、動きは迷走台風でして、行ったり来たり。市長(ウー・ガン)は人命を最優先させようというポリシーの持ち主でしたが、大規模な避難活動を行ったときの経済的損害も考える必要がありました。また、ダムの水位が危険になった時には、放水をしなければいけないのですが、それは彼の進めてきた新開発地域を水没させることを意味していました。招聘された気象学者は市長の小学校の先生でした。彼女の直感は、一度はそれたと思われた台風が再度上陸してくると言い切ります。市長は、市民への避難命令を発令し、自分の独断で、警察も軍も自分の指揮下に置いて、陣頭指揮を取ります。果たして、台風は温州市へ上陸します。港では船を救うべく海へ繰り出そうとする漁師たちと役人が押し問答になっています。すると市長は、自ら暴風の中、港へ赴き、命を落としてくれるなと漁師に嘆願し、漁師たちも彼の行動に打たれて避難誘導に従うのでした。一方、島に産気づいた女性を救うべく、台風の目の通過タイミングを狙って、軍のヘリが飛び立つのですが....。

冒頭で、宇宙の銀河から、太陽系に入って、キャメラが地球をアップにし、さらにその下の中国の街に座っている少年まで、一気に移動するという大仰なショットが、何だこれは?という気分にさせるのですが、この映画、その冒頭の大風呂敷がふさわしい作品に仕上がっているのですよ。ある都市を巨大な台風が襲うというだけのストーリーを寄り道させずに、骨太タッチに描いているのです。主人公は、市長でして、彼が人命を救うために、恩師である気象学者のアドバイスを受けながら、様々な決断をしていくのがメインストーリーです。脇のキャラでは、町のスリとか、漁師の男、台風が近いのに娘の結婚を祝っていてクビになってしまう町長、離島で産気づいた妻と、本土でそれを気遣う夫、さらに医師のいない離島の診療所でアタフタする看護婦といった面々が登場します。そういう意味では、グランドホテル形式の人間ドラマもあるのですが、物語は基本的に市長から脇道にそれないので、各々のエピソードが冗長になっていません。フォン・シャオニン監督は、もっと長くできそうな内容をうまく刈り込んで、1時間半を一気に見せるのに成功しています。

見ていて、市民も警察も軍も、ゴタゴタ言わずに人助けに頑張ってるってところがよかったです。この映画では、誰一人悪人は登場しませんし、誰かの足を引っ張るような足手まといもいません。そのストレートな展開が小気味よく、かつちょっとした感動を味わうこともできます。みんなとにかくガタガタ言わずに動くのですよ。恋愛模様も一切入らないのが気に入ってます。日本映画だったら、市長が呼んだ気象学者が女性で、市長と過去の因縁があるとしたら、絶対恋愛沙汰にしたでしょうけど、何しろこの映画のおばちゃん気象学者は、市長の恩師という設定です。離島にいる産気づいた妻を気遣う夫が登場しますが、嘆きの長ゼリフを言うよりも行動に出るあたりがいい感じなのですよ。

市長がとにかくかっこよく描かれていまして、躊躇することなくてきぱきと決断し、即行動に出るのが、まあ時代劇の主人公みたいに颯爽としているのですよ。要所要所で見得を切るのも、時代劇っぽいです。その一方で、ちょっとしたところで、人としての懐の深さを感じさせるエピソードを入れるなど、シャオニン監督は、必要なところはきちんと押さえています。細かいところでは、お年寄りは避難したがらないから、役所の人間が説得してまわらないといけないですとか、離島の妊婦のために、駐留している軍の中から献血者を募るですとか、そんな心配りが映画に一本筋を通しているように思いました。また、セリフを台風に関するものに絞り込んでいるのも成功していまして、ドラマの盛り上げをセリフではなく、登場人物の行動で見せるので、そこにじわりとくる感動があるのですよ。

特撮シーンも結構ありまして、宇宙のシーンや、台風のロングショット、竜巻や台風の目の描写などはCGを使っているようですが、高波が押し寄せる港や、浸水する街などはミニチュア特撮も多用しています。特に水の描写はミニチュアだとリアリティを出すのが難しいのですが、予算の関係もあるのか、そこをあえてCGにしなかった点のセンスは見事だと思います。実際の高波の実写とミニチュアセットをつなげることで、画面に一体感がうまれています。若干、ミニチュアにアラが出てしまってはいるのですが、ミニチュアセットの中に人間をうまくはめ込むことによって、ミニチュアのクオリティ以上の効果が生まれています。私は、ミニチュアやメカニカルイフェクトが頑張っている映画が好きなので、こういう映画はついひいきをしたくなります。CGで最良の効果が生まれるわけではないってことを、きちんと見せてくれているのがうれしい映画です。

いわゆるディザスター(災害)映画なんですが、驚くことに誰も死なず、誰も悪いことをしないで、人それぞれの行動をきちんと描くという、実は離れ業をやってのけている映画です。確かに、主人公の市長が大見得を切るシーンとか笑っちゃうところもあるのですが、それも、この題材に真っ向勝負している演出の表れとして評価したくなります。人命を優先するのが大前提という設定と、余計なものをそぎ落としたドラマ展開が清々しさすら感じさせてくれます。何だ、こういう映画も探せばあるじゃないかって、気分にさせられちゃう、掘り出し物としてオススメしたい一品です。

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「恋愛遊戯 私と恋におちてください」は、恋愛も遊戯もどっちつかずでも深キョンかわいい。

今回は新作の「恋愛遊戯 私と恋におちてください」をヒューマントラストシネマ有楽町シアター2で観てきました。公開1週間で、座席数192のシアター1から、座席数63のシアター2へ移ってましたから、あまりお客さん入ってなさそう。映画の日でも余裕の鑑賞でした。

人気脚本家の谷山真由美(深田恭子)は、新作ドラマのシナリオが進まなくて、関東テレビのスタッフはハラハラしてました。営業部と編成部と制作部が仲悪くて、それぞれの思惑があるみたい。制作部から、ダメ社員と言われている向井(椎名桔平)をプロデューサーに仕立てて、彼女がカンヅメになっているホテルに送り込みます。真由美が言うには、「私は恋をしないと書けないの。私と恋に落ちてちょうだい。」ですって。そう言われても困っちゃう向井ですが、何とか締切りまでに書いてもらわないとということで、何でも言うこと聞きますと言ったものの、彼女のご機嫌をとるのは難しそう。編成部からは、イケメン柳原(塚本高史)を送り込んで、何とか彼女に書かせようと画策します。ところが、やっと彼女がひねり出したストーリーは、スポンサーに出した粗筋とは全然違う代物。そろそろ才能も枯れてきたと思われてる谷山真由美に、営業部と編成部はプランBを考え始めるのですが、向井は何とか、彼女にシナリオを書いてもらおうと頑張るのでした。

舞台で知られる鴻上尚史が、自分のヒット舞台劇を映画用に脚色し、監督も手がけた作品です。そろそろ落ち目の女流脚本家と新進プロデューサーが共同で愛のドラマのシナリオを創っていく過程を中心に、テレビ局の舞台裏を垣間見せながら、最終的に脚本家とプロデューサーのラブコメディに収束というお話です。シナリオの中身が映像化され、さらにその映画内映画の中で、シナリオが登場し、映画内映画内映画という「インセプション」みたいな趣向も登場し、各々のストーリーの中で、深キョンと椎名桔平がカップルとして登場します。一方、テレビ局の裏話的な部分では、局内の制作部、編成部、営業がいがみあってて、お互いに自部署の手柄のために奔走する様子が描かれます。

そして、真由美と向井の恋愛模様の方は、ラスト近くまであまり語られません。なんとなくいい感じをほのめかすシーンが何度か登場するのですが、タイトルに「恋愛」を謳う割には、恋愛ドラマしてないのは、何だか肩透かしを食らったみたいです。結局、才能に見切りをつけられて、ゴーストライターを立てられちゃうという手痛い仕打ちを受けて、一念発起して、改心のシナリオを一気に仕上げるという展開になります。そして、真由美が向井に、実はそれは向井のためにやったのよって告白して、そこが恋愛部分のクライマックスになるはずなんですが、鴻上の演出は、そこらへんをあっさりと流してしまっていました。恋愛部分と、シナリオ作りがシンクロしてない感じなのですよ。

深キョン演じる谷山真由美は、若くして才能を開花させ、それなりの実績のある30代のシナリオライターらしいのですが、彼女がかわい過ぎて、そういうキャラクターにはなかなか見えないので、ちょっとつかみで失敗してるかなって、気がしちゃいました。舞台なら、セリフや動きによって、キャラクターを組み立てられるのでしょうけど、カメラがアップで寄る映画というメディアの場合、俳優の持ち味と、演じるキャラにギャップがあると、それをカバーしきれないことがあります。今回の深キョンがそんな感じなんです。彼女はかわいくて大好きなんですが、自分の恋愛経験をシナリオ化してヒットドラマを作ってきたという女性にしては、何だか少女のようなウブな感じなのが、どっかキャラがフワフワしているような気がしました。「シナリオ書いて欲しけりゃ、私と恋に落ちて!」なんてセリフが、恋愛体験豊富な女性の口から出るとはどうしても思えないのですよ。夢見る夢子さんじゃないんですから。

テレビ局関係者を演じた、清水美沙、西村雅彦、井上順といった面々が濃いキャラを見せてくれているのに比べると、深キョンや椎名桔平が何考えてるのかがよくわからないので、なかなか感情移入しにくかったです。これは狙ってやってるのかなという気もしました。でも、主人公二人を距離感を置いて描くのなら、そこにシニカルな視線と笑いを弾ませて欲しかったように思います。ラストまでたどり着いた時、あまりにもベタなラブシーンを見せられるので、これはマジか?と思ってしまいました。30過ぎの大人のラブストーリーか?これは、と、突っ込み入れたくなってしまったのですが、これはあまりに汚れてしまったオヤジの発想なのかしら。

最近観た中国のラブコメで「ソフィの復讐」がベタな恋愛を扱いながら、思い切りヒロインのキャラをマンガチックにして、ファンタジックな映像で彩って、楽しかったのに比べると、何かこうフワフワしているというか、迷いが感じられてしまうのですよ。ヒロインのリアルなキャラに切り込むか、もっと華やかなビジュアルで嘘を盛り上げるか、どっちかに吹っ切れて欲しいように思います。そこはよく言えば、バランス感覚ということになるのかもしれませんが、こういうラブコメへ私が期待するところは、感情移入してのハッピーエンドの満足感か、徹底した底抜けの楽しさのどっちかなので、期待とは外れちゃったみたいです。

と、言いつつも、深キョンかわいさに最後まで付き合えちゃう映画でもあります。彼女の年齢不詳で、つかみどころのないキャラですとか、文字通りフワフワ(ぷよぷよかな?)したルックスですとか、彼女を観る映画と割り切っちゃえばかなり楽しい。相手役の椎名桔平が、あまり表情を変えないので、彼女の華やかさが余計目に際立ちました。ただ、余計目に、ヒットドラマ作家には見えなかったですけど。
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Yahooブログから引っ越してきました。静岡出身の横浜市民で映画とサントラのファンです。よろしくお願いいたします。

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