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「ザ・タウン」は向こうのヤクザ映画だけど、意外とソフトにまとまっています

今回は新作の「ザ・タウン」を川崎チネチッタ9で観てきました。ここは座席数の割にスクリーンが大きくて見上げる感じになるところ、気軽に前列に陣取ると結構首が疲れる、今風のシネコンじゃない映画館。そして、この映画もまたシネスコサイズの映画。映画がみんなシネスコ化してるよなあ。

アメリカはボストンのチャールズタウン、ダグ(ベン・アフレック)の率いる強盗団が狙ったのは、早朝の銀行でした。彼らはまさに強盗のプロで、入念に下調べした上で、証拠を徹底して残さないのですが、無音警報が発せられるアクシデント発生、支店長のクレア(レベッカ・ホール)を人質にとって逃走に成功します。クレアの住所が、一味の住んでいる場所の近所と知り、ダグの相棒のジェム(ジェレミー・レナー)は、彼女からFBIに知られるのではないかと言い出します。ダグはそれを制して彼女を自分が監視すると言うのですが、その結果、彼女と恋に落ちてしまいます。強盗の指令は花屋のファーギー(ピート・ポスルスウェイト)から出ていました。そして、次の仕事の指令が来ます。ダグはもう手を引きたいのですが、ジェムはそれを許しません。ファーギーは、クレアを盾に脅迫してきます。結局、ダグは強盗稼業から足を洗うことはできないのでしょうか。

ベン・アフレックが監督した犯罪ものの一編です。「The Town」という原題にもあるように、犯罪の多発する街を舞台に、そこに絡め取られている人間が、何とかしてその街を抜け出そうとするお話です。ダグやジェムにとって犯罪は生業らしく、ダグの父親も犯罪者として刑務所に入れられています。仕事のやり方も、手際がよくてまさにプロ。仕事の終わりには漂白剤をばらまいてDNAの跡も残さない。そんな生き方をやめたい、街を出たい、そう思っている主人公ダグですが、思うようにいきません。親友のジェムはそういう生き方を当たり前のように受け止めているようで、殺人も辞さない相当なワル。善悪の葛藤とは別のヤクザな世界が展開しまして、彼らを追うFBIも連中を逮捕するためには手段を選ばないという感じ。日本のヤクザ映画だと義理と人情の板挟みになるのが定番ですが、こちらはあまり内面の葛藤にはならないのが、アメリカ映画って感じです。

こんな稼業から足を洗いたいなあって漠然と思っていたのかもしれませんが、クレアと知り合ったことで、それが具体的なプランになってきます。ジェムの妹クリスタとは体だけの関係を持っているようなんですが、ダグはクリスタを本気では愛してはいません。一方クリスタは彼との未来を夢見ているところがあります。ダグとクリスタの関係は、サブプロットながら切ないものありまして、結局、ダグに相手にされない彼女が哀れに見えてきます。クリスタを演じたブレイク・ライブリーは「旅するジーンズと16歳の夏」ではかなげな女の子を演じた女優さんですが、ここでは、若くして子持ちの蓮っ葉な女性をリアルに演じて印象的でした。日本映画だと、このクリスタの存在が、ダグの後ろ髪を引くポジションになるのですが、この映画では、あっさりと切り捨てられてしまうので、余計目に哀れさが際立ちました。

一方で、この映画のメインのヒロインであるクレアは、ヤクザな連中とは縁がないいわゆる堅気な女性なんですが、ダグにマークされたのが運の尽きというか、ダグと恋に落ちてしまいます。クレアを演じたレベッカ・ホールは「それでも恋するバルセロナ」で普通のキャピキャピキャラを演じていたのですが、この映画でも、普通の女性キャラを印象的に演じています。ダグにとっての運命の女(ファム・ファタールっていうのかな?)というには、リアルな存在感がこのドラマのカラーにうまく溶け込んでいます。そんな生身のヒロインであるクレアに正体を隠して付き合うようになるダグなのですが、彼女の存在が、本気でこの世界から足を洗いたいと思わせるのです。しかし、それは許さんと脅すのがヤクザの元締めのファーギー。ダグはクレアを守るためにも次の仕事に手を染めるしかなくなってしまいます。



この先は、結末に触れますのでご注意ください。



FBIは、強盗のための情報流出の線から、ダグの一味にたどりついていました。一度はしょっぴかれるダグですが、証拠が不十分ですぐに釈放されます。そこへでかい仕事が舞い込んできます。FBIにマークされているダグとしては気が進まないのですが、ファーギーに脅されて、野球場の売り上げを奪う仕事に加担することになります。一方、ダグに邪険にされて、ヤケを起こして交通事故を起こしてしまったクリスタは、FBIに強盗のことを話してしまいます。ダグたちは首尾よく球場の売り上げを奪うことに成功するのですが、球場は警官隊に囲まれていました。銃撃戦の末、結局、ダグだけが生き残り、彼はファーギーを殺し、クレアと一緒に逃げようとしたのですが、すでにクレアの家にはFBIの手が回っていました。彼女に奪った金を残し、ダグは姿を消します。フロリダで静かに暮らすダグの姿を映し出して暗転、エンドクレジット。

強盗シーンは全部で3つあるのですが、これがなかなか迫力がありました。派手な銃撃戦もさることながら、カーチェイスシーンが見事で、狭い道路でのカーチェイスはクラッシュシーンは少なめながら、迫力十分で、見応えがありました。

演技陣では二人のヒロインが際立っていたように思いますが、FBIを演じたジョン・ハムの善悪を超えた存在感と、ジェレミー・レナーのワルぶりも見事でした。特にワンシーンだけの出演ですが、ダグの父を演じたクリス・クーパーが圧巻でした。刑務所の面会シーンでしたが、ダグの出自が父親から伺える名シーンとなっていました。それらは、役者の各々にきちんと見せ場を采配したアフレックの演出がうまかったとも言えます。そんな中で、ドラマの中心であるダグのキャラクターが今一つ曖昧なのが不思議でした。しかし、彼のキャラが明快でないことによって、集団ドラマの趣が出て、街を描いた映画という味わいが出たことも事実です。実在の街を舞台にしていることで、言い訳みたいな字幕が出るのですが、そういう気遣いが必要な結果、悪役がファーギーに集約されたのかなって気もしました。街に絡め取られたら一生抜け出せないという設定が、ラストでファーギー一人殺すことでクリアされてしまうあたり、リアルに徹し切れなかったのかのかも。かと言って、これ以上悲惨な結末にする娯楽映画ではなくなってしまうので、そのさじ加減は難しいところです。私はこの映画を人間を描いた娯楽映画として楽しめましたから、バランス感覚のいい映画なのでしょう。

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Yahooブログから引っ越してきました。静岡出身の横浜市民で映画とサントラのファンです。よろしくお願いいたします。

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