この「処刑教室」はブルース・ウィリスが校長です。でもムチャしません。

今回は、新作の「処刑教室」を横浜ニューテアトルで観てきました。シネスコサイズのデジタル上映だったのですが、劇場のチラシを観ると、この先「ソリタリーマン」「ザ・ホークス」もデジタル上映になる模様。音がモノラルだったのは残念。映画館で、フィルム上映を観るってことは贅沢になりつつあるみたいです。しかし、横浜ニューテアトルは、横浜のシアターN渋谷になろうとしてるのかしら。

高校の新聞部のボビー・ファンク(リース・トンプソン)は、いわゆるイケてない男の子なんですが、ジャーナリスト志望で、生徒会長ポール(パトリック・タイラー)の記事をかくように部長から仰せつかります。そんな時、全国共通テストの答案が校長室から盗まれるという事件が発生します。ポールのカノ女でもあり、憧れの人でもあるフランチェスカ(ミーシャ・バートン)から、「答案を捜し出して」と言われて、俄然やる気を出すボビー。盗まれた当日の事を思い返してみるに、バスケットの試合中に怪我をして保健室に運び込まれたポールの行動が怪しい、そして、疑惑は確信に変わり、ポールが盗難事件の犯人だという記事を書いてしまいます。そしたら、何と、彼のロッカーから盗まれた答案用紙が発見され、ボビーは一躍、時の人になっちゃいます。フランチェスカとの距離もすんごく縮まっていい感じになってくるのですが、その一方、もうひとつの疑惑が彼の胸に沸き上がってきます。「ひょっとして、ポールは誰かにハメられたんじゃないの?」校内でペイントボールを乱射して、施設に送り込まれてしまうポールを見て、これは何とかしなきゃと思って、事件を再捜査するボビーなんですが、一方で、フランチェスカとラブラブでハッピーという状況。果たして、事件の真相はどうなっているのかしら。

MTVや短編映画をつくってきたブレット・サイモンの初監督作品です。2008年の映画だそうですから、日本ではお蔵だし上映という感じになるのでしょうか。「処刑教室」という邦題からして、配給会社のやる気のなさを感じさせます。原題は「高校生徒会長の暗殺」なんですが、実際の殺人なんか出てきませんし、暴力シーンもほとんどなく、ミーシャ・バートンのおっぱいがちょっとだけ拝めるくらいの映画です。「処刑教室」と言えば、知る人ぞ知るマーク・L・レスター監督の学園バイオレンス映画の佳作なんですが、そっちを知ってる人が、この映画を同系列の映画だと期待してると大ハズレということになります。その分、まあ安心して観れる映画には仕上がっています。湾岸戦争で片足を失った(らしい)校長をブルース・ウィリスが演じていて、ちょっとしたアクセントになっていますが、彼とても、生徒をボコボコにしたりするなんてことはしません。

ヘタレ新聞部員のボビーは、答案盗難事件の犯人探しを、フランチェスカと校長の両方から依頼を受けます。何で、このヘタレにそんなことを頼むのか、理解に苦しむところはあるのですが、彼は、彼なりに捜査を開始します。学校からマークされてる不良グループには、それぞれアリバイがあり犯人ではなさそう。その晩にバスケの試合をしていて途中で負傷して、保健室に運ばれたマークが怪しいということで、彼が犯人だという記事を書いてしまいます。マークは学校の中でもトップの特別な存在です。そんな、彼が犯人だという記事は大反響。彼のロッカーから盗まれた答案用紙が出てくるに至って、ボビーは一躍ヒーロー、一方のマークは天国から地獄。しかし、彼が犯人だという確たる証拠があって記事を書いたわけではないので、ボビーとしては、何か、おかしいと思い始めます。ひょっとして、マークはワナにはめられたのではあるまいか。生徒会長であったマークは問題生徒として隔離され、その後釜は、副会長だったマーロンになり、そして、フランチェスカの彼氏の後釜は何とこれがボビー。

フランチェスカとラブラブになってる一方で、それでも事件の再調査を開始するボビー。どうも、マークは昔の彼女に結構貢いでいたらしい。また、マーロンや生徒会幹部の動向も何か怪しい。学園ミステリードラマという展開になってきます。面白いのは、いわゆる登場する不良の皆様が結構いいやつで、生徒会の連中の方が暴力を振るう嫌な奴らだということ。そんな中で、探偵みたいにあちこち聞きまわるボビー。彼のナレーションで物語が進むので、ハードボイルド探偵ものみたいな雰囲気を出そうとしてるみたいです。フランチェスカはファムファタールみたいなポジションになるのですが、ブレット・サイモンの演出は、ハードボイルド探偵ものと学園ミステリーの両立を図ったようで、ハードボイルドも若者のキャピキャピもほどほどのところにおさめています。まあ、ある意味、行儀のよい(出てくる学生が行儀がいいわけではない)映画に仕上がっていますので、安心して観ていることができます。まあ、ハードボイルドにも、学園モノ、どっちにも弾けなかったということなんですが、ずっと高校の中で展開するドラマは「ソーシャル・ネットワーク」みたいでもあり、あまり考えないで作ってみたら、普通に着地したって感じでしょうか。



この先は結末に触れますのでご注意ください。



マーロンのパーティに呼ばれたボビーは、そこでフランチェスカと結ばれます。施設で投薬療法を受けているマークを何とかしてやりたいと思うボビーですが、実際は何もしてやれません。自動車運転研修中に、生徒会幹部の車が薬局をハシゴしているのを目撃します。何かのクスリがこの事件には絡んでいるようです。一方、新聞部の別の記者が今度は「ボビーがマークをワナにはめた」という記事を書いちゃいます。これが学校中に流れてしまい、ボビーは記事を否定しますが、フランチェスカにも振られ、彼も問題児として、隔離されてしまいます。しかし、問題生徒の隔離エリアで、ボビーに頭脳が回り始めます。そして、再テストの回答を盗み出そうとしている生徒会のメンバーたちの現場を押さえます。多勢に無勢で殺されそうになるボビーですが、実は、彼らの会話は学校中に放送されていました。

ガリ勉生徒は、クスリでテンションを上げる必要があり、生徒会幹部は親の白紙処方箋を使って、興奮剤などを、生徒にいい値段で売りさばいていたのです。そして、マークははめられました、さらにボビーもはめられたのです。フランチェスカの本当の恋人は副会長のマーロンでした。盗まれた答案の回答を悪い方へ改変することで、ガリ勉たちは点数がダウン、余計目にクスリが必要になるというマーロンたちの読みは大当たりとなるはずでしたが、ボビーがその事実を白日のもとにさらしてしまいます。フランチェスカがボビーに何を言っても、もう彼に届くことはありません。事件は解決したものの、ボビーと学校には大きな傷跡を残すことになりました。探偵は一人その場を去って行くのでした。おしまい。

ミステリーの部分にそれほどびっくりするような仕掛けはありませんでしたけど、きちんと伏線をひいているあたりは良心的です。ラストで、全ての事件のカギがフランチェスカにあることがわかるのですが、ミーシャ・バートンのビッチぶりは、おとなしめというか、ドラマに力不足なのが残念でした。前半でストレートなヒロインに思わせるというミスリードもあるんですが、やっぱり怪しいものですから、全てがバレたら、開き直ってほしかったところです。ただ、生徒会のクスリの横流しや、答案を隠したりしたのは、結局、金が欲しかったから、というところに集約しちゃうのは、あまり面白くありません。舞台が学校なんですから、それ以上の旨味があってもいいような気がします。動機の部分だけは、リアルにハードボイルドしてますってことになるんですが、ショボいハードボイルドでもあります。

高校の中のおかしな連中のスケッチですとか、隔離されてる不良生徒といった、面白いネタを盛り込んでいるのですが、それが、ミステリーの中に生かされてなかったのは残念でした。もし、単純に学園ドラマにしたら、結構シリアスな展開になり、クスリの犠牲になる優等生の葛藤とか、優秀な生徒を優遇したい学校の思惑とか出てくるのでしょうけど、映画は、結局、生徒会幹部の悪さに集約させておしまいですから、悪役をわかりやすくした、マンガタッチな展開とも言えます。やはり、リアルな人間ドラマにはなりきれず、学園ごっこ、ハードボイルドごっこというところに落ち着いちゃったことになるのかしら。ムダがないのは事実ですが、そのムダってのは、フランチェスカの葛藤、ボビーのへたれぶり、マークの逆境での打たれ弱さ、ボビーを囲む不良生徒のワルぶり。そんなのが、映画の彩りにもなったのでしょうけど、その辺の色づけをパスしちゃったもので、「へー、そーなの」という印象しか残りませんでした。やはり最後まで、行儀のいい映画で終わっちゃったという感じです。ラストで、ボビーと新聞部長がいい感じになるかな?という予感を持たせたところが、気になったくらいでした。

でも、この映画に「処刑教室」って邦題つけた奴は、かなりな確信犯だと思います。他の題名だったら、誰も観に来ないだろうって、わかってたんだろうなあ。ブルース・ウィリスが形だけでも銃持って構えてくれたら、映画の感じが変わったのにね。

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Yahooブログから引っ越してきました。静岡出身の横浜市民で映画とサントラのファンです。よろしくお願いいたします。

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