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「マーガレットと素敵な何か」はソフィー・マルソーが魅力的、でも設定がどうも腑に落ちない


今回は、新作の「マーガレットと素敵な何か」をシネスイッチ銀座2で観て来ました。その昔の銀座文化2ですが、久しぶりに行ったら、こんなに広くてスクリーンの大きな劇場だったのかと、ちょっとびっくり。お客さんがあまり入っていないのは、地味な映画だから仕方ないかな。

バリバリのキャリアウーマンのマーガレット(ソフィ・マルソー)は、仕事も順調で、仕事の同僚マルコム(マートン・ソーカス)といい関係で結婚ももうすぐのところ。そんな彼女の前に謎の老人が現れて、彼女に手紙を渡します。その手紙の差出人は何と7歳の頃の自分でした。当時は、差し押さえを食らって、父親は家を飛び出し、貧乏な暮らしだったマーガレット。そんな彼女が未来の自分への手紙を書いて、公証人のメリニャックに託し、その依頼どおり、今の彼女に手紙を届けに来たのでした。初めは面食らう彼女でしたけど、次々に届く手紙を楽しみにするようになってきました。自分にとって封印していた子供時代がだんだんと意味のあるものに見えてきたのです。それは、弟の和解や、幼馴染のフィリベールとの再会につながっていきます。彼女は、幼い頃の自分によってもう一度、人生を見直すことになるのでした。

「世界でいちばん不運で幸せな私」のヤン・サミュエルが脚本・監督を手がけたコメディです。7歳の頃の自分が、今の自分に託した手紙によって、自分の人生を見直すヒロインのお話です。ま、この説明で大体のところは表現できてると思います。でも、映画としては、どうも腑に落ちないところがありました。バリバリのキャリアウーマンのヒロインが登場するのですが、結構幸せそうだし、仕事もできるので、その人生に何か足りないものがあるようには思えません。英国人の彼氏との関係も良好ですし、ちょっと突っ張ったところはあるけれど、それは懸命さの裏返しみたいなものです。そんな彼女の許に届いた過去の自分からの手紙に彼女の心は揺らいでしまうのです。なぜ?

彼女の子供時代はあまり恵まれたものではありませんでした。家財が差し押さえられている最中のバースデーパーティ。有り金残して、父親は蒸発。生活に困窮して、マーガレットのクラリネットも売られてしまいます。そんな中での楽しい思い出はフィリベールとの結婚式ごっこ。そして、寄宿学校に行くことになるのですが、それ以降、彼女は過去をどっかへ置いてきたらしいのです。弟ともずっと音信不通にしていましたし、フィリベールもどうなっているのかわからない。マーガレットは、手紙を読んで、置いてきた過去にもう一度会おうとするのです。弟との再会は、あまりうまくいかず、フィリベールとの再会もどこかぎこちないものが残ってしまいました。そりゃそうだよなあと納得しちゃうところがあります。でも、ここまで、過去の自分に振り回されるヒロインがどうにも解せない。さらに、未来の自分を振り回すような手紙を書いた7歳のマーガレットの意図も理解できませんでした。

確かに、一度は捨て去った過去に、もう一度向き合うことは大変なことですし、そのことによって、今の行き方を見直し、人生を修正しようとすることもあるでしょう。マーガレットが、手紙をもらって、動揺して公証人のメリニャックに苦情を言いに行くのも何となく理解できます。でも、だんだんと彼女は手紙が来るのを楽しみにするようになります。7歳のときに自分がやったことを忘れてるのか、忘れているふりをしているのか。子供の頃、ここまで手の込んだことをしているのですから、覚えていそうなものなのに、自分の書いた手紙に一喜一憂するマーガレット。というわけで、過去から未来を見直すお話はありなんですが、そのお膳立てが不自然、というか無理やりな感じなのです。

そして、ちょっとだけ人生の軌道修正をすることでハッピーエンドになるわけですが、過去の自分に認められることを気にするヒロインに、どうにも共感できませんでした。過去の自分は否定すべき存在ではありませんが、自分の方が未来の近くにいるのですから、遠い昔から、自分の未来を左右されるのはかなわないよなあって気がしてしまったのです。ここは、人それぞれの感じ方だと思うのですが、過去を遠ざけるという生き方も否定できないし、その上で頑張っているのならそれでいいじゃないかという気がしてしまったのです。一方で、7歳の彼女の手紙は、未来の自分を知らない分、純粋で辛辣です。それでも、その手紙で、ヒロインの心が揺らいでしまうのは、映画の作り手の術中にヒロインがはまってしまったように見えました。

この感じ方は、7歳の頃の自分をどういう風に受け入れられるかによると思うのですが、私にとっての7歳の自分は、人生経験もなくって、生意気なことばかり言ってるガキでした。ただ、その不完全さは、子供であることで許されていました。そんな自分に今の自分をとやかく言われたときに、それが否定的であれ、肯定的であれ、「お前が言うな」と思ってしまうのです。私の中に自己否定の側面があることも認めちゃうのですが、この映画のようなファンタジーを素直に受け入れられないのは、残念だけど仕方ないのかもしれません。

ソフィ・マルソーは40過ぎてもまだまだきれいですけど、この映画の年齢設定は、アラフォーじゃなくてアラサーのように思えました。恋人とラブラブで、仕事も上昇志向、子供も欲しいわねって言ってるあたりは、アラフォーには見えませんでした。これが、最初に、人生に行き詰っているような女性なら、過去の自分の手紙で、自らを奮い立たせるという展開も納得できたのですが、そういう振幅の大きな展開は狙っていないようです。順風満帆のように見えるヒロインを、ちょっとだけ人生の変化へと導くという展開になっています。その節度は認めちゃうのですが、それでも、ヒロイン振り回されすぎだよなあって思ってしまいます。

彼女が、自分の過去をもう一度探してまわる展開は、時には人間、自分の原点に変えるのもいいよね、という感じではあります。井戸の中から宝箱を掘り出したり、幼馴染の今の姿に安堵したりするのは、人生の中でそういう時があってもいいよねという空気を感じさせてくれます。それだけに、過去の自分からの手紙に振り回されるヒロインという設定が、どうにも腑に落ちませんでした。人間、もっと、さりげない一瞬に、昔の自分を振り返る時があると思うのですが。
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einhorn2233

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Yahooブログから引っ越してきました。静岡出身の横浜市民で映画とサントラのファンです。よろしくお願いいたします。

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