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「マレフィセント」はドラマチックなのを期待したら、意外と薄めで。


今回は、有楽町のTOHOシネマズ日劇1で「マレフィセント」を観てきました。この映画館では、字幕版、日本語版、字幕版3Dの3バージョンを公開していますが、時間帯によって見せられるバージョンが違うってのは、観客にとっては結構面倒臭い話でして、1劇場1バージョンという割り振りはできないものかと思います。シネコンだとそういうタイムテーブルも普通なのですが、昔ながらの大劇場で、シネコンのまねしなくてもいいじゃないかと思う私が古い世代なのかなあ。

昔々、仲の良くない二つの国、人間の国と妖精の国が隣り合っていたころのお話。幼い妖精のマレフィセントは偶然森に迷い込んだステファンという少年と知り合い、お互いに想いあうようになります。そして、二人が若者に成長した頃、人間の国の王は兵を率いて妖精の国に攻め入ろうとしますが、マレフィセント(アンジェリーナ・ジョリー)率いる妖精たちの軍によって、追い返されてしまいます。そこで、功をあせったステファンは、マレフィセントに会いに行き、油断したマレフィセントに眠り薬を飲ませて、彼女の命を奪おうとします。しかし、殺すことをためらったステファンはマレフィセントの翼を奪い、それをマレフィセントを倒した証拠として国王に献上し、国王の後継者として指名されます。裏切られたマレフィセントは復讐に燃え、国王となったステファンに娘オーロラが生まれたとき、その洗礼の宴の場に現れて、娘が16歳の誕生日に糸車の針により、永遠の眠りにつくという呪いをかけるのでした。オーロラは、3人の妖精のもとにあずけられることになります。しかし、幼いオーロラをマレフィセントは監視していました。ところが、だんだんとオーロラがかわいく思えてきたオーロラは、呪いをかけたことを後悔するのですが、かけた時の呪いの強さで、解くことができません。そして、16歳になったオーロラは、誕生日にお城へと帰ってきてしまい、呪いに導かれて、糸車のあるところへ向かい、針に触れて、眠りについてしまいます。その眠りを覚ますためには真実の愛のキスが必要なのですが、果たしてオーロラは永遠に眠り続けてしまうのでしょうか。

ディズニーのアニメでも有名な「眠れる森の美女」を魔女の立場から描くという企画でして、「美女と野獣」「ライオンキング」のリンダ・ウールヴァートンが脚本を書き、「アバター」「アリス・イン・ワンダーランド」などのプロダクション・デザイナーという実績のあるロバート・ストロンバーグが初メガホンを取りました。「眠れる森の美女」では徹底した悪役であった魔女が、この映画では、いい人として描かれているところがミソでして、裏「眠れる森の美女」とも言うべきお話になっています。と、言うことになっているのですが、私、「眠れる森の美女」が未見でして、眠り姫のお話としては、この映画が初見になります。元を知らないので比較のしようがないのですが、この映画のお話は「森の妖精が、恋人だと思っていた男の裏切りに逆上して、その娘に呪いをかけたら後悔しちゃった」というものでした。あくまで、悪いのはマレフィセントを利用して王位を乗っ取ったステファンという男。マレフィセント自身はこの映画の中では、それほどの悪いことはしてなくて、むしろ、幼いオーロラがかわいくて仕方がないという感じなのです。そんな彼女の母性が前面に出てくるものですから、本当の母親の影は大変薄い、というか、ほとんど登場してこないのですよ。実際のところ、オーロラを一番かわいいと思っていて、マニフィセントの呪いに一番胸を痛めているのは母親のはずなのですが、そこんところをオミットしちゃった脚本は、なかなかに巧妙でして、私も映画を観ている最中はマニフィセントの方に感情移入してしまい、母親のことは忘れてましたから、ドラマづくりとしては成功しているのではないかしら。

一つのお話を視点を変えてみると別の物語が見えてくるというのは、大変面白い見方だと思います。物事を善と悪に二極分化させるのは簡単ですが、世の中そうは完全な善も悪も存在しませんから、物語の視点を変えてみるということで、より真実へ近づく可能性が生まれてきます。まあ、ともかくも、この映画では、悲劇のヒロイン、マレフィセントの物語となるわけですが、そこはディズニーの映画ですから、女の情念ドロドロの映画にはなっておりませんでして、コミカルな要素を散りばめながら、ラストはアクション対決に持っていくエンタテイメントに仕上げています。ストロンバーグの演出は、あまりドラマに感情移入せず、スターとしてのアンジェリーナ・ジョリーをひたすら立てることに重きを置いているようで、その明確なスタンスのおかげで、変な葛藤が登場しないストレートなドラマとして仕上がっています。でも、その分、普通のおとぎ話をひっくり返したという印象はありません。ティム・バートンの映画のような、嫌われ者やマイノリティに対するペーソスがないので、ドラマとしての深みは感じられないのですが、そのおかげで、素直に見れる映画になりました。



この先は結末に触れますのでご注意ください。(後、けなし気味でもあるのでご注意ください)



オーロラが眠りにつく前、森を隣国の王子がとおりがかり、彼女に会っていました。二人はお互いに惹かれあうようになっていました。城に戻ったオーロラが眠りについたことを知ったマレフィセントは王子を連れて城へと赴き、彼にオーロラへキスするようしむけるのですが、キスしても眠りは覚めません。呪いの強さに絶望したマレフィセントがオーロラにキスするとあら不思議、オーロラは目を覚まします。真実の愛とはマレフィニセントの愛だったのです。そこへステファン国王たちがマレニフィセントの苦手な金属でフル装備で襲い掛かります。お城の中のチャンチャンバラバラの末、ついにはステファンにとどめをさすのでした。そして、オーロラは人間の国と妖精の国の両方の女王となり、二つの国は一つにまとまるのでした。めでたしめでたし。

チャンバラシーンはなかなか見応えのある見せ場にはなっているのですが、観終わった時の感想は「なーんか軽いわね」って感じになっちゃいました。マレニフィセントは善と悪の両面を持って葛藤するのではなく、最初から最後までいい人なのでドラマとしてシンプルになりすぎちゃったのかもしれません。また、観終わった後味が劇映画を見たというよりは、アニメを見たような気分になっちゃったのが不思議です。登場するキャラクターにリアルな人間の機微が感じられなかったのかなあ。「アナと雪の女王」を観たのと同じ感じなのですよ。映像がアニメチックだからということもあるのでしょうけど、アンジェリーナ・ジョリーを始めとする人間の役者さんがリアルな人間としての奥行を出せなかったということもできます。「ヴァージニア」よりふっくらとしてかわいくなったエル・ファニングちゃんもアニメキャラのようにしか見えませんでしたから、これは演出の責任かもしれません。それとも、もともと人間を素材にアニメを作ったつもりなのかしら。

2D字幕版での鑑賞だったのですが、特に3Dを強調するようなカットもなく、2Dで十分な内容だったと思います。オリジナルの視点を変えたドラマということで、そこにひねりや葛藤を期待しちゃったのが今イチな後味につながったようです。素直に、かわいそうな妖精マレフィセントの物語として観れば、かなり楽しめるのではないかしら。演技陣では、ステファンに「第9地区」のシャールト・コプリーを持って来たり、妖精の一人にイメルダ・スタウントンを持って来たりしているのに、ほとんど印象に残りませんでした。ジェームズ・ニュートン・ハワードの音楽もドラマチックではあるのですが、どこか腰の据わらなさを感じてしまいました。ライトな子供向けおとぎ話として楽しむのが正解なのかな。
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「ラスト・ベガス」は役者のよさをのんびり楽しめる娯楽映画としてオススメ


今回は東京での上映は終わっている「ラスト・ベガス」を静岡シネギャラリー1で観てきました。ミニシアター系の映画を上映している映画館ですが、まさかメジャーの娯楽映画をこのスクリーンで観ることになろうとは、静岡のシネコン事情は一体どうなっているのかしら。

少年時代からの仲良し4人組、ビリー(マイケル・ダグラス)、パディ(ロバート・デ・ニーロ)、アーチー(モーガン・フリーマン)、サム(ケヴィン・クライン)も、もう七十に手が届くお年頃。その4人のうちビリーが32歳の若い奥さんと結婚することになりました。アーチーとサムはそれを聞いて、ベガスでバチュラーパーティをやろうってことになるのですが、パディは自分の奥さんの葬式にビリーが来なかったことをずっと根に持っていました。そこで、アーチーとサムが強引にパディを連れだして、4人は久しぶりの再会となります。彼らはホテルの予約を取ってなくて、そこのバーで歌を歌っているダイアナ(メアリー・スティーンバージェン)と知り合いになり、ビリーとパディは何となく彼女に惹かれるものを感じ始めました。一方、アーチーは年金の1万ドルをカジノのブラックジャックで10倍にして、ホテル最上階のペントハウスをとることができました。カジノの賞金を元手にクラブのVIP席に行ったり、たくさんの人をペントハウスに招いてバチュラーパーティをやったりと大盤振る舞い。しかし、ダイアナを巡るビリーとバディの確執はおさまっていなかったのでした。

「カーズ」のダン・フォーゲルマンの書いた脚本を「あなたが寝てる間に」「ナショナル・トレジャー」のジョン・タートルトーブが監督した一編です。久しぶりに再会したおじいちゃん4人が多少の諍いがあっても、友情っていいねっていうお話です。まあ、一言で言えばいい感じのエピソードをほのぼのタッチでつないだ映画という感じかしら。ですから、紆余曲折のドラマチックな展開を期待すると、「あれ、これでおしまい?」って気分になる映画でもあります。主演の4人は、それぞれが演じてきた役柄を裏切らないキャラづけをされていまして、設定を飲み込むのに手間がかからず、全編のんびりと楽しめる娯楽映画に仕上がりました。

マイケル・ダグラス演じるビリーは金持ちで精力的な男で、70になって、32の嫁さんをもらおうという元気じいさん。一方、モーガン・フリーマン演じるアーチーは色々と持病があるらしく、息子から細かく健康管理されているおじいちゃん。ケヴィン・クライン扮するサムは長い間連れ添った奥さんとの関係も良好、今回のベガスでちょっとくらい羽目をはずてもいいのよって奥さんからゴムをプレゼントされたりしてます。そして、ロバート・デ・ニーロ演じるパディは奥さんを亡くしてから家でテレビばかり見ている偏屈なじいさん。4人は70歳くらいの設定のじいちゃんたちでして、実際一番若いケヴィン・クラインで66歳で、一番年のいってるモーガン・フリーマンが76歳ですから、決して老け役ではなく、年相応の役どころを演じてるってことになります。それぞれのキャラクターを丁寧に描いていまして、設定がすとんと理解できるってところが点数高いです。映画の初めのところで、登場人物のキャラクターが明快になっているってのは娯楽映画として必要だと思っていまして、最初のキャラクター付けに成功すると、後の展開ものんびりと楽しむことができます。

105分の映画ですが、最近のハリウッド映画にしては、ドラマが大きく振れることがありません。言い方を変えるとドラマ的には薄めの内容になっています。でも、あれもこれも詰め込み過ぎな映画に慣らされてしまっている自分には、ちょっと物足りなくもあるものの、結構このお気楽さは貴重かもと思えて、演技陣の芸を楽しむことができました。もう一人、このドラマのキーマンになっているのが、年のいったクラブ歌手を演じたメアリー・スティーンバージェンです。この人も60になってるんですが、年相応に魅力的でして、じいちゃん4人が歌っている彼女に見とれちゃうのも、さもありなんという気がします。スティーンバージェンという女優さんは主役もやったことありますし、脇役も敵役も演じますし、コメディだけでなく、シリアスドラマやスリラーまでこなす達者な女優さんです。私は「冬の嵐」「バックマン家の人々」あたりからのファンでして、年を重ねるとともに若さとは違う別の魅力を備えていく女優さんだと思っています。このところは若い主役のお母さんみたいな役どころが多かったのですが、ここでは、じいちゃん世代のヒロインとしていいところを見せてくれます。

70前後のじいちゃんたちの同窓会に、60のオバちゃんが絡んで、これを恋愛もののコメディ(ラブコメというよりは、ラブメインな感じ)に仕上げているあたりに好感が持てました。じいちゃんばあちゃん同士ですとか、じいちゃんと小娘のとりあわせなら見たことあるのですが、この年恰好でリアルな恋愛ものってのは、あまり見たことないですもの。確かに主演の5人は若々しいところを見せる俳優さんではあるのですが、実年齢を考えてみれば、70ってのはまだまだ枯れる年じゃないんだって元気になる人もいるのではないかしら。



この先は結末に触れますのでご注意ください。



ビリーとパディの諍いのもととなったパディの奥さんの葬式に、ビリーが欠席したのには、実は理由がありました。若い頃、ビリーとパディは、彼女が好きになり、その結果、彼女にどちらかを選んでもらうことにしました。彼女は、ビリーを選んで、ビリーの家を訪れたのですが、ビリーはそんな彼女を、パディを選ぶように説得したのでした。そして、今回、また、ビリーとパディは、ダイアナを好きになっちゃったのです。当のダイアナは、ビリーの方に惹かれていましたが、翌日結婚式を控えたビリーの強く出られません。でも、ビリーは何くれとなくダイアナの前に姿を現して、彼女の心をかき乱します。そして、ビリーが「もうすぐ、パディが君にプロポーズしてくる」と伝えると、ダイアナは「また昔と同じようにパディに譲るの?」と声を荒げ、それをパディに聞かれてしまいます。衝撃の事実に落ち込むパディですが、逆に、ビリーに対して「本当に愛している方を選ぶべきだ」と説得します。そして、パディの結婚式は中止となり、4人はまた各々の生活に戻っていくのでした。そして、ビリーから、他の3人へ電話があり、彼がダイアナと結婚するという報せを受けるのでした。めでたし、めでたし。

まあ、若い婚約者にとっては、式の当日にキャンセルされたのですから、ずいぶん気の毒な話ではあるのですが、それでもこっちの方がハッピーエンドだよなと思わせるドラマづくりになっていたので、後味は悪くありません。式のためにベガスにやってきた彼女に、ビリーが詫びを入れるシーンをきちんと入れているせいなのかな。それに、若い彼女の方に何か問題があるという描き方にしていないのも好印象でした。八方丸く収まっているわけではないのに、それでも後味を悪くしないあたりは「クール・ランニング」や「あなたが寝てる間に」のタートルトーブの演出力なのかなって思いました。ともあれ、お気楽気分で観る娯楽映画として、オススメできる一品です。

「ラストミッション」はいい感じにまとまった娯楽アクションとしてマル。


6月から体調を崩して映画館にも行けない状態が続いていたのですが、やっと元気になってきたので、1ヵ月半ぶりの劇場での映画鑑賞となりました。久々の映画館ということで、あまりヘビーなのはパスということで、お気楽に観られそうな、「ラスト・ミッション」を川崎チネチッタ4で観てきました。

セルビアのベオグラードのホテル。兵器商人ウルフの部下アルビノを殺す作戦を実行中のCIAのイーサン(ケヴィン・コスナー)たちですが、アルビノに作戦がばれてしまい、銃撃戦となってしまいます。アルビノの足を撃ちぬき後一歩のところで、イーサンは意識を失ってしまいます。イーサンは医師から、悪性腫瘍で余命3ヶ月と告げられ、残された時間を5年間会っていなかった娘ゾーイ(ヘイリー・スタインフェルド)と過ごすべく、CIAをやめてパリへとやってきます。しかし、自分のアパートはアフリカ人一家に不法占拠されてしまっていてびっくり。そして、元妻クリスティン(コニー・ニールセン)を訪ねて、娘と再会します。最初はぎくしゃくした関係だった父娘でしたが、だんだんいい関係になってきます。そこへ現れたのは、CIAのクール・ビューティ、ヴィヴィ(アンバー・ハード)。彼に開発中の腫瘍の特効薬を投与することを条件に、ウルフ捜査に協力しろと言ってきます。イーサンはその条件を飲み、娘と過ごす時間の合間に、一気に5人殺したり、アルビノ配下のタクシー会社社長を誘拐したり、アルビノの帳簿係を拉致したりと大活躍。さて、イーサンは、娘との関係を修復し、ウルフを仕留めることができるのでしょうか。

リュック・ベンソンの原案を、アディ・ハサクとベンソンが脚色し、「チャーリーズ・エンジェル」「ブラック&ホワイト」のマックGが監督しました。マックG以外は、フランスのスタッフで固められた全編英語の映画です。アクション映画にケヴィン・コスナーを持ってくるってところが微妙な感じもしたのですが、元CIAが事件に巻き込まれるというありがち設定を、マックGが意外や手堅くまとめていて、サプライズはないけれど、滅法面白い映画に仕上がっていました。ジェットコースタータイプの映画ではありませんし、ハードアクションでもない、いわゆる普通のレベルのアクション映画でして、登場人物に丁寧にキャラ設定したことで、映画としてのほどほどの満腹感があるというのもマルです。

主人公のイーサンはベテランのCIAエージェントでして、強いし、相手を殺すことにも躊躇ありません。そんな彼が自分の娘との関係にオタオタしちゃうという、いわゆるギャップを笑うコメディ風のつくり(昔、そういう趣向のシュワちゃん主演の「トゥルー・ライズ」という映画がありました)にはなっているのですが、あくまで「コメディ風」というところがミソでして、コメディに徹していないのですよ。要所要所はハードボイルド風なところもありまして、その味わいは、リュック・ベンソンが監督したジャン・レノ、広末涼子主演の「WASABI」に近いものがあります。主人公やその元妻や娘を普通の人として、丁寧にキャラづけをしているので、浮世離れしたバカコメディになっていないのですよ。マックGの演出も、派手なアクションよりも、主人公が娘対応にオタオタするところの方を印象に残るようにしていて、そこに武器商人の追跡劇が挟み込まれてるって印象なのです。アクションシーンも、カーチェイスも含めてなかなか頑張っているのですが、それでテンションあがるというよりは、主人公一家の再構築ストーリーをのんびりと楽しむ感じにまとまっています。

オープニングのホテルでの攻防戦はなかなかの迫力で、ハードアクションを期待させるのですが、本筋に入ってからは、銃撃戦やカーチェイスもあるもの、派手なアクションよりは、娘との関係にオタオタするイーサンの方が印象に残るような作り方をしています。また、父親としてのイーサン、そして娘、元妻のキャラづけを丁寧に見せる演出も成功しています。銃撃戦では、どんどん死人が出ている一方で、親子関係でオタオタする元CIAというギャップのおかしさはありますが、純然たるコメディというのではなく、コメディ風の味付けになっています。こう書くと、アクションそこそこ、バイオレンスややあり、お笑いほどほどという、何だかつかみどころのない映画のように聞こえてしまいますが、実際のところ、色々な要素をバランスよく取り込んで、まろやかな味わいにまとめたという感じなのですよ。

敵役のウルフとアルビノは徹底的に冷酷な悪役という描き方になっていますが、その子分格にあたるタクシーの社長や帳簿係がなかなか面白いキャラで笑いを取ります。商売では悪いことしても、家庭ではよき夫であり父である社長は、イーサンに振り回されながらも、父親としての助言してあげたりしますし、イタリア人の帳簿係は、イーサンに脅されながら、娘のゾーイにスパゲティソースの作り方を教えてやったりします。この二人が殺されずに最後で生き延びちゃうあたりの気遣いもうれしい展開になっています。

また、この映画のアクセントになっているのが、CIAのエージェントのヴィヴィ。美人だけど、あっさりと人を殺す冷酷な女で、そもそも彼女がウルフを殺すために、引退したイーサンを実験中の特効薬をエサにして事件に巻き込んだのです。アンバー・ハードが濃い目の悪役メイクで、衣装やウィグをとっかえひっかえ登場して、インパクトのある演技を見せてくれます。ひょっとして、こいつは最後にイーサンを殺すつもりなのかもと思わせるところもありまして、ミステリアスなキャラがうまくはまりました。

主役のイーサンを演じたケヴィン・コスナーというと「ボディガード」や「JFK」などに代表される、頼りになるヒーローキャラが多かった人ですが、2000年以降は、脇役を演じることが多く、盛りを過ぎたスターというイメージがありました。ですから、こういう娯楽アクション映画の主演というのは珍しいと言えます。それもコミカルな味の映画で、主演というのは意外性がありました。本編でのコスナーは残念ながら、コミカルな部分をうまくこなせているとは言い難く、父親キャラの部分で点数を稼いだという感じでしょうか。親子愛をベースにしたリーアム・ニーソンの「96時間」を当てたベッソンが、同じようなネタで、別パターンを作ったとも言えましょう。マックGの演出は、コスナーを立てようと頑張っていますが、映画の題材がコスナー向きじゃないなあって気がしちゃいました。クリント・イーストウッドが今より若い頃にやったら、ちょうどはまる感じの役どころなのですが、今の時点でのベストキャストは誰なのかというと、ちょっと思いつきません。娯楽アクションなので、スターバリューのある人がいいなあと思うのですが、アクションの合間にコミカルな味を出せる人って、なかなかいないので、そうなると年恰好から考えてもコスナーが正解なのかも。



この先は結末に触れますのでご注意ください。(と言ってもお約束は裏切りません)



イーサンは、アルビノの送り込んだ殺し屋を返り討ちにし、ウルフとアルビノの乗った車を襲撃して、地下鉄の駅まで追い詰めるのですが、そこで薬の副作用が出て倒れこんでしまいます。何とかアルビノは仕留めるのですが、ウルフには逃げられてしまいます。そして、家に帰ったイーサンは、クリスティンやゾーイと一緒にゾーイのボーイフレンドの家にパーティに出かけます。すると、そこで海外逃亡を企んでいたウルフとばったり再会。ウルフは子分たちを動員して、イーサンに向かって銃を乱射するものですから、パーティ会場は大混乱。それでもウルフをエレベーターから突き落としたイーサンは手負いの状態のウルフを仕留めようとするのですが、またしても目がかすんで倒れこんでしまいます。そこへヴィヴィが現れ、イーサンに銃を渡すのですが、ウルフのとどめを挿すことを拒否するイーサン。そして、ヴィヴィが表情変えないまま、ウルフに銃弾を撃ち込むのでした。舞台は変わって海辺の家では、イーサン、クリスティーン、ゾーイの三人がクリスマスの準備をしています。どうやら、イーサンは宣告された余命3ヶ月よりも生きながらえたようです。イーサンに届いた小包を開けると、そこには注射器とヴィヴィからのクリスマスカードが入っていました。家の様子を外から伺い、ふっと笑ってみせるヴィヴィ。おしまい。

ハリウッド映画の王道パターンからすれば、クライマックスは娘が誘拐されて、主人公が悪役と一騎打ちとなり、最後の逆転で、主人公の勝利、ひしと抱き合う父と娘というのが定番なのですが、そうはならず、悪党が元妻や娘を狙わないというのが、ちょっと新鮮でした。フランスだと仕事と家庭は分けて考えるという文化なのかな。ともあれ、アクションシーンあり、笑いあり、ホームドラマありで、病み上がりのお気楽に観る映画としては、かなりいい線いってると思いました。マックGってちゃんとしたの作るんだなあって。
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einhorn2233

Author:einhorn2233
Yahooブログから引っ越してきました。静岡出身の横浜市民で映画とサントラのファンです。よろしくお願いいたします。

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