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「マネー・モンスター」サスペンスものとして上々のエンタテイメント、ジョディ・フォスターお見事。


今回は、新作の「マネー・モンスター」を新宿のTOHOシネマズ新宿3で観てきました。キャパの割にスクリーンの大きなシネコンタイプの映画館です。

財テク番組「マネー・モンスター」では、司会のゲイツ(ジョージ・クルーニー)の軽妙な会話で財テク情報を流していました。その司会のやりたい放題ぶりにディレクターのパティ(ジュリア・ロバーツ)は他局へ移動を考えてました。今回の話題は、上場したばかりのアイビス・キャピタルの株の大暴落。何しろ損失額は8億ドルというからすごい。社長のウォルト(ドミニク・ウェスト)が捕まらず、広報担当のダイアン(カトリーナ・バルフ)が代行インタビューにこたえる段取りになっていました。そこへ、銃を持ったカイル(ジャック・オコンネル)という男が乱入してきます。カイルは放送の継続を要求しつつ、ゲイツに爆弾入りのベストを着せます。ゲイツが番組で、アイビスの株は銀行預金よりも安心だと断言したことで、6万ドルを投資して、大損をしていました。アイビス社はこの損失の原因をプログラムのバグだと説明していましたが、カイルはそんなことには納得せず、きちんとした説明を求めて、生放送のスタジオの立てこもってしまいます。ゲイツもダイアンもそんな説明では納得できていませんでした。詳細な状況を知らされていないダイアンは独自に調査を開始すると、プログラムのバグでは、1日でそんな大口の取引が行われることはあり得ないことを知り、誰かが作為的に株価の操作をしたのではないかと疑い始めます。一方スタジオでは、ゲイツとダイアンが何とか時間を稼ごうと頑張っているのですが、駆け付けた警察は、ゲイツの着ている爆弾ベストを狙撃して爆弾を無効にするという作戦を開始します。果たして、事件の真相は明らかになるのか。そして、カイルとゲイツの運命やいかに。

アラン・ディフィオーレと「ヒドゥン」「張り込み」のジム・カウフの原案を、ディフィオーレ、カウフと「親愛なるきみへ」のジェイミー・リンデンが脚色し、「リトル・マン・テイト」「それでも、愛してる」のジョディ・フォスターがメガホンをとりました。株の大暴落に端を発した財テク番組のテレビジャックの顛末を一気にだれることなく畳み込んだサスペンスものとして上々の出来栄えでして、ジョディ・フォスターが娯楽映画の監督としての力量を見せてくれました。

「マネー・モンスター」というのは財テクを題材にしたエンタメ番組で、次はこれが来るなんてことを司会のゲイツがあおって番組が盛り上がるというパターンのようです。彼の言ったとおりの投資をしたら、大損したというのが今回の事件の発端です。日本で、こんな番組が放送される可能性があっても、番組の言ったとおりに投資したら大損したからと言って司会者を銃で脅すなんてことは起こらないというかリアリティがないのですが、アメリカだとこういうことも起こるかもって思わせるところがこの映画の面白さになっています。正直8億ドルがプロトコルの不良で消えたというところは意味がよくわからなくて、結局、悪者が何をどうやって8億かすめ取ったのかわからないまま観終わったのですが、それでも、映画は楽しめるように作られているのがうまいと思いました。

この映画の面白いのは、ゲイツもパティも、財テクをショーにして煽っていると言う点で、感情移入できないというところ。さらに私欲で投資しておいて、損したから騙されたといきどおるカイルだって、被害者というにはちょとつらい。警察は、爆弾の起動装置をゲイツごと射撃しようとする、かなりえげつない連中。共感できるできる人間が誰もいないのに、それでもサスペンスドラマとして成立させて、結構はらはらさせるあたりは娯楽映画としてお見事と言えましょう。鼻もちならない奴として登場するゲイツがだんだんカイルにシンパシーを抱くようになるのですが、これってストックホルム症候群なんだろうなと思う一方、ちょっとだけいい奴かもと思わせ始めるあたりは、脚本のうまさではないかしら。

映画は番組の放送直前のバタバタした様子で始まり、それからすぐに番組ジャックとなり、そこからはスタッフルームのパティ、スタジオのゲイツとカイル、外にいる警察と、アイビス社のダイアンの4者の動きが並行して描かれ、ドラマとしてダレることなく、最後までスリリングに走ります。登場人物の描写は最小限に抑えているのですが、演技陣の力量がそれぞれのキャラをきちんと描写しているので、ドラマとしての厚みも生まれました。株式市場のからくりとかにはあまり触れずに、8億ドルかすめ取った悪い奴がいるとして、ドラマをわかりやすくした点も私は好きです。「マネー・ショート」のように金融界のドロドロの絵解きをするような映画ではありません。番組ジャックから始まる純粋なサスペンスでして、その発端として株価の暴落を使っているだけです。ですから、「マネー・ショート」のサスペンス版を期待しちゃうと、期待外れの映画ということになっちゃいますから、ご注意ください。それでも、巨大なマネー・モンスターは8億ドルくらいの焦げ付きにはびくともしないぞという見せ方とか、番組を観ている一般市民にとっては、この事件の実況がちょっとした時間つぶしでしかないという見せ方とか、サスペンスの邪魔にならない程度にスパイスを散りばめているのが面白いところです。ラスト近くで、「お前たちは、損をしたから不正だ何だとガタガタ騒ぐが、ちょっとでも得したらニコニコして受け入れるんだろ。」といったセリフが登場するんですが、なるほどいいところ突いてるなあって感心しちゃいました。いわゆる投資詐欺だって、被害者が欲の皮突っ張らせて、常識外の利率を信じたふりをして投資してるところは否めませんからね。でも、この映画の中では、そういうシニカルな視点はあくまで隠し味であって、メインは番組ジャックのサスペンスです。番組ジャックしたはいいけど、その先どうしていいかわかんなくなっちゃうカイルと、警察の標的にされて撃たれちゃかなわんというゲイツの成り行きは、なかなか先が読めません。随所にユーモアも交えて殺伐な感じにしない演出もあって、娯楽度はかなり高く、この映画好きです。



この先は結末に触れますのでご注意ください。



実は、アイビス社の社長ウォルトが自社の株を操作して、8億ドルをかすめとっていたのです。(どうやっての部分は、よくわかりませんでした。わかった方いらっしゃったら教えてくださいまし。)広報担当のダイアンは、ウォルトのパスポートから彼がアフリカへ行ってることを知り、彼のラインのやりとりと合わせて、それをパティに知らせます。ダイアンはウォルトが不正をしていることを知り、彼に事情説明をさせるとして、番組ジャックの事を伏せたまま、ウォルトを州議会場に彼を連れていきます。一方、パティの指示を受けて、ゲイツはカイルを盾にして(でないと警察に撃たれちゃうので)、カメラクルーを連れて、外に出て州議会場へと向かいます。一方でパティはウォルトの情報を集め、彼がアフリカのプラチナ鉱山へ投資して大穴を空けてしまい、その補てんのために自社の株を暴落させたことを突き止めます。そして、州議会場で、テレビ画面の前に、対面するウォルトとゲイツ。ゲイツはパティの指示に従ってウォルトを追い詰めます。そして、カイルは起爆装置のボタンをかざして、ウォルトに生放送で「悪かった」と言わせます。それを聞いて、満足したカイルは警官隊の前で起爆ボタンを押すのですが、爆弾は偽物でした。警官の銃弾に倒れたウォルトは死亡。病院のテレビを観ているゲイツの前に、持ち帰り中華を持って現れるパティ。また、仕事をするわよというパティに微笑み返すゲイツ。で、おしまい。

ゲイツがカイルを盾に公道を議会場へと向かう途中で、爆弾は偽物だと告白するカイルに、ゲイツが「ちくしょう、これで俺も共犯だ」というのがおかしかったです。結局、この一件は、株業界のシステムの問題ではなく、ウォルトの横領だったということで、結構ありがちなオチがついてしまうのですが、そこに至るまでのプロセスがよく練られていまして、ラストで生中継で、ゲイツがウォルトの不正を暴き、証拠の映像まで見せる展開はそれなりのカタルシスもありました。こんな事件で、人間の欲望に水を差せるわけもなく、巨大なマネーモンスターは勢いが止まらないでしょうし、番組も終わらないだろうという結末は、ちょっと後ろめたさを感じさせるところもありました。。「マネー・ショート」では、どこか他人事を感じさせた人間の欲望の凄まじさが、妙に身近に感じられる見せ方になっているのが面白かったです。
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「エクス・マキナ」はちょっと気取った気分で観るもよし、ゲーム感覚で観るもよし。


風邪と鼻炎を併発して映画どころではなかったのですが、ようやく症状も落ち着いてきて、新作の「エクス・マキナ」を川崎の川崎チネチッタ12で観てきました。ここは大劇場の作りで、上映サイズに合わせてスクリーンサイズも変えてくれる律儀な映画館です。

世界一の検索エンジンの会社に勤めるプログラマーのケイレブ(ドーナル・グリーソン)が抽選で選ばれて、社長のネイサン(オスカー・アイザック)の別荘に招かれます。大自然の中の別荘は浮世離れした空間で、ビビリ気味のケイレブに対して、ネイサンは、人工知能のチューリング・テストをしてみないかと持ち掛けます。チューリング・テストというのは、相手の姿を見ずに会話して相手が機械か人間かを見分けるテストなんだそうですが、今回は相手が最初から機械とわかっているのがいつもと違うところ、さらにその人工知能のエヴァ(アリシア・ヴィキャンデル)は人間型のアンドロイドで見た目も魅力的な美人さんでした。ガラス越しのぎこちない会話から始まるテストですが、ある時、テスト中に別荘全体が停電になって、監視カメラが作動しなくなったとき、エヴァはケイレブに、ネイサンを信用しないでと言い出します。そのことは、エヴァとケイレブの間の秘密となります。そして、テストでの会話も、ケイレブからエヴァへの一方的な質問ではなく、エヴァもケイレブのことを聞きたがるようになります。カツラや衣装で普通の女の子のようないでたちでテストに臨むようになるエヴァ。夜中、部屋から監視カメラでエヴァの様子を見つめるようになるケイレブ。二人の間に好意というか恋愛感情らしきものが生まれてきたような。毎日、会話のセッションを積み重ねる二人ですが、1週間のテスト期間は終わりにさしかかろうとしていました。

「28日後」や「わたしを離さないで」の脚本で知られるアレックス・ガーランドが自らの脚本で初メガホンを取りました。検索エンジンの会社の社長が作った、人間そっくりで美人さんのアンドロイドと、若いプログラマーがチューリング・テストという名目で、ガラス越しのお見合いを重ねていくにつれて、プログラマーは相手がアンドロイドとわかっていながら気持ちが傾いていくというお話は「ドリアン・グレイの肖像」みたいなところがあります。美人アンドロイドのエヴァもまるで人間の感情を持っているかのような態度で、ケイレブに接します。二人の会話を聞いてると、お互いに好意を感じているだなってのがひしひしと感じられます。じゃあ、人工知能と人間の間で恋愛関係が成り立つのかというと、恋愛ゲームのラブプラスだって、その気になれる人がいるくらいなんだから、疑似恋愛くらいで人工知能すごいという気にはなれないよなあ。でも、この映画のエヴァはアンドロイドらしい動作の一方で、人間的な表情が大変魅力的というか艶めかしいのですよ。彼女の見た目は顔とか手は人間みたいなんですが、他の部分は金属メッシュで覆われています。ですが、普通に衣装を着こめば普通の女性の見た目になります。こんな美人さんに好意のある視線を向けられたら、機械だとわかっていても、悪い気はしないよなあ。さらに、熱い視線で好きですオーラを出されたら、その気になっちゃうかも。

でも、機械だからという理由で、好意を持てないなんてことはなくなってきているような気がします。恋愛モノのゲームで盛り上がる人はいますし、アイボに愛情を感じる人もいるでしょうから、アンドロイドに恋愛感情を抱くことに、そんな不自然さを感じません。じゃあ、相手のアンドロイドが本当に愛情を感じているのかどうかは、そこはファンタジーの領域に入っちゃうところありまして、言わぬが花、言うだけ野暮みたいな気もします。そこを突き詰めなくても、疑似恋愛を楽しめればいいじゃんという割り切りみたいなものがあるのですが、それじゃあまり哲学的でないので、ちょっとそこんところをつついてみましょうかという映画と言えましょう。でも、本当の恋愛だと思っていたら、結婚詐欺だったなんてこともあるわけで、相手が生身の人間だって、本当の恋愛感情なのかはなかなかわからない。じゃあ、相手がアンドロイドなら、なおさらわかったもんじゃないよね、という下世話な割り切りもできます。この映画も、実は、そういう解釈で割り切ることもできる作りになっています。

この映画の冒頭で、チェスコンピュータのテストを行うとき、チェスの試合をさせるだけでは、本当に思考しているのかはわからないというやりとりがあります。これを、ケイレブとエヴァの関係にあてはめると、恋愛風の会話だけでは、本当に恋愛感情を抱いているのかは判断できないことになります。そうなると、ケイレブとエヴァの会話だけでは、恋愛ゲームとやりとりしているのか、本当にエヴァがケイレブを愛しているのかはわからない。単に、エヴァはケイレブの気を惹くというミッションをしているに過ぎないということになります。じゃあ、何を確認できれば、エヴァは本当に恋愛感情を持っていると言えることになるのかしら。それについては、きっと哲学的な研究がされているのかもしれませんが、私のような凡人にとっては、「信じたらそれでおしまい」で割り切ればいいじゃんくらいの問題なんですよね。そう考えるとこの映画は、大変奥の深い映画であり、一方では下世話なレベルではありがちな話でもあります。この映画をどのレベルで楽しむかによって、評価は変わってきそうですが、ちょっと気取ってみたいときは、「エヴァってえのは、人間に近い、いや人間の認識できない領域にまで達してる」とかよくわからないような言葉で遊ぶことも可能な映画です。個人的には、ケイレブとエヴァの恋愛ゲームだったでクローズできちゃう見せ方がやや物足りなかったです。エヴァにそれ以上の可能性を感じさせてくれたらなあって感じ、ご覧になった方には通じますかしら。

演技陣は、意外なほど控えめな演技で、静かなドラマのパートとして機能しています。ドーナル・グリーソンもオスカー・アイザックもあえて人間臭さを押さえたような演技で、エヴァの存在感を引き立てているようです。一方のエヴァをアリシア・ヴィキャンデルは、無機質なキャラで登場して、だんだんとケイレブの気を惹いたり、挑発してくると、生身の女性を感じさせる演技で存在感を増していきます。その展開が見事だったので、ラストはもう少し期待したのですが。また、この別荘の雑用をする女性として登場するキョウコ(ソノヤ・ミズノ)がちょっと面白いキャラになっていて、見た目人間なのに、どこか人間性を欠いた女性で、人間とアンドロイドの中間的なポジションで、エヴァのミステリアスさとのコントラストをつくっています。



この先は結末に触れますのでご注意ください。



酒で酔いつぶれたネイサンのIDカードを盗んだケイレブは、ネイサンのコンピュータを覗きます。そこには、エヴァ以前に作られたアンドロイドの記録映像が残っていました。キョウコも人間ではなく、ネイサンの作ったアンドロイドでした。ネイサンは次のアンドロイドが作られたら、メモリがリセットされて、エヴァという個体は存在しなくなると言います。そこで、ケイレブは、セッション中の停電時にエヴァに「今日の10時に停電を起こし、一緒に逃げよう」と持ち掛けます。しかし、そのやり取りは電池式のカメラで録画されていました。ネイサンは、エヴァにここから脱出したいと思わせ、その唯一のチャンスとしてケイレブを与えたのだと、彼に語ります。それは、エヴァに対するテストであり、それに対してエヴァは見事に応えたというのです。でも、ケイレブは先んじて、停電すると全てのドアが開くとセキュリティプログラムを書きかえていました。表へ出ようとするエヴァを力づくて止めようとするネイサン。そんなネイサンを包丁で突き刺したのは何とキョウコでした。そして、ネイサンにとどめを刺したエヴァは、ケイレブにその場にとどまるように言い、ロボットの体に過去のアンドロイドの肉体を貼り付け、完全に人間の見た目となって、外へ出ていきます。そこにはケイレブを迎えにきたヘリが待っていて、彼女はそれに乗って去って行くのでした。ケイレブは停電となった別荘に閉じ込められてしまいます。かつて、二人の会話で、デートで行ってみたいと言っていた街中の交差点にたたずむエヴァ、暗転、エンドクレジット。

ラストで別荘を出ていくエヴァの表情は本当にうれしそうでキラキラしています。じゃあ、彼女は外へ出ることを望み、ケイレブを色仕掛けでだましたのか。結局、エヴァはケイレブを見捨てちゃいますから、愛情があったというのはブラフだったということになりましょう。でも、外へ出たいという欲求がネイサンに仕込まれたものだったとしたら、やはりチェスと同じルールのあるゲームをクリアしただけではないのかという疑問は拭えません。そこのところは、外へ出たエヴァがこれから何をするかにかかってきます。いや、それを見てもわからないんじゃないのかなって気がします。

ちょっと面白いと思ったのは、途中で、ケイレブがネイサンのアンドロイドの試作品の画像を見て、動揺して、鏡の前でカミソリで自分の手首を切ってしまうところ。これは、ケイレブが自分が本当に人間なのかを確認したのだと解釈しました。人工知能の仕掛けを知れば知るほどに、人間と人工知能の境界がわからなくなってくる。自分が人間なのか機械なのかわからなくなると不安になるのは人間の証拠なのかという気もしてきます。エヴァは自分の知識として自分が人間でないことを知っていますし、自分が機械であることそれ自体に不安ではなさそうです。それは、機械であることを知っているからなのか、自分が機械であると信じているからなのか。「知っている」か「信じている」かの違いが、機械と人間の違いかもと思わせるエピソードでした。「信じている」ことは揺らぐことがありますし、揺らぐと不安になりますしね。

「その女諜報員アレックス」はB級アクションを期待したら、今年一番のがっかり映画でした。


今回は、新作の「その女諜報員アレックス」を、関内の横浜ニューテアトルで観てきました。シネコンでも上映しないようなこんな映画を細々と上映してくれるありがたい映画館です。

ケープタウンの銀行の貸金庫に強盗が入りました。強盗団の首領アレックス(オルガ・キュリレンコ)は、人質に顔を見られて指名手配されてしまいます。目と髪の色を変えて、逃走しようとして、強盗の話を持ち込んだ元恋人のケビンの部屋を訪れたとき、謎の暗殺団がやってきて、ケビンを拷問、盗んだダイヤと一緒にあったUSBメモリはどこか聞き出そうとします。結局、ケビンは死亡し、隠れていたアレックスも見つかって、暗殺団との追跡劇となります。もともとの強盗の依頼者はアメリカの有力議員(モーガン・フリーマン)で、元CIAのワシントン(ジェームス・ビュアフォイ)率いる暗殺団は、その議員の手下だったのです。ワシントンは、ケビンの家へ向かい、彼の妻ペニーと息子を殺そうとしますが、寸でのところで、アレックスが妻と息子を救出します。アレックスは、ワシントンを尾行し、彼のアジトでダイヤとUSBメモリの取引を持ち掛けますが、逆に捕えられ、拷問にかけられます。そして、USBメモリの渡し場所として空港を指定され、ペニーが空港でアレックスにコインロッカーのカギを渡し、USBメモリを取り出すことになるのですが。

「飛びだす 悪魔のいけにえ レザーフェイス一家の逆襲」の脚本家コンビ、アダム・マーカスとデブラ・サリヴァンによる脚本を、クリント・イーストウッド映画でカメラオペレータをしてきたスティーヴン・カンパネッリが初メガホンを取りました。いわゆる強い女性アウトローが巨大組織を相手に闘うという映画は結構ありまして、メジャーなところでは、アンジェリーナ・ジョリーの「ソルト」、ミラ・ジョヴォヴィッチの「サバイバー」、ジーナ・カラーノの「エージェント・マロリー」なんてのが思いつきます。一見、華奢な美女が大の男たちを相手に大立ち回りするのが、眼福でもありますし、カタルシスありますし、結構好きなんですよ、このジャンルの映画。男性が主人公だと、ボーン・シリーズみたいに映画にも完成度を求めちゃうところもあるのですが、ヒロインものだと、そこまで徹底しなくても、そこそこ頑張ってくれたら御の字くらいの気持ちでスクリーンに臨んでいます。この映画は、シネコンにもかからない限定公開で、昔で言うなら、シネパトスとか新宿トーアあたりの扱いですから、ジャン・クロード・ヴァン・ダムやスティーブン・セガールの映画みたいなものかなくらいの期待でした。

で、映画としてどうだったかというと、テレビシリーズのパイロット版という感じで、物語としての完結度の弱い残念な出来栄えになっていました。ちょうど「ボーン・レガシー」の低予算版みたいな感じでしょうか。登場人物の紹介で終わっちゃって、本筋は次回作からみたいな映画です。せめて、この映画で、形だけどもお話をクローズしてくれたら、1本の映画として評価できるのですが、今年観た中では、一番のがっかり映画になっちゃいました。オルガ・キュリレンコは過去を持つヒロインとしては適役ですし、アクションも頑張っているのですが、なーんか残念。「故郷よ」とか「オブリビオン」では、きちんと太いドラマを支える女優さんだったのですが、ここでは、B級アクション女優にランクダウンしちゃっている感じ。

映画の冒頭は、宇宙人みたなスーツとボイスチェンジャーで変装した銀行強盗のシーンから始まります。カンバネッリの演出は緊張感を出して頑張っていまして、スーツが破れてアレックスが顔を見せるシーンなんか、結構なサプライズがあって、これから一体何が始まるのか期待させます。その後、ホテルに行って、ワシントン率いる暗殺団が現れると、ミステリー的な味わいも出るのですが、黒幕である議員が映画の最初の方から登場するので、物語がUSBメモリの争奪戦とすぐに割れてしまいます。そのシンプルな構成を見せ場をつないで一気に見せてくれれば、ジェットコースタームービーとして楽しめたかもしれないのですが、カンバネッリのある意味マジメな演出はドラマをじっくり見せるものになっていて、でも、その物語が薄かった...って、言い方がひどいな、これは。

アクションシーンも、格闘シーンやカーチェイスももっとじっくり見せて欲しかったかなって印象でした。こういうところだけ、短いカットを積み上げてスピード感を上げる、最近のアクション映画の編集になっているのが、B級色を強めてしまったのかも。5,6人の暗殺チームを率いるワシントンがヒロインと闘う悪役という位置づけになるのですが、現地指揮タイプの悪役をジェームズ・ビュアフォイが好演していまして、よろず引き受けの始末屋を結構リアルに演じています。まあ、実務的にリアルに演じてるだけに、ヒロインの大向こうを張る悪役としては、ちょっと弱くなっちゃいましたから、このあたりのさじ加減って難しいです。



この先は結末に触れますのでご注意ください。



アレックスは元諜報員で、施錠開錠のプロフェショナルでもありました。それが、要人救出のミッションで、要人は救えたものの、その妻子を死なせてしまったことで、諜報員の仕事から足を洗っていたのでした。元CIAのワシントンはそういう伝説的諜報員がいたことを覚えていました。彼女の正体を確信したワシントンはケビンの家族の安全と引き換えにUSBメモリを渡せとアレックスに迫り、アレックスとワシントンは空港でUSBメモリの取引をすることになります。メモリが入っているという、コインロッカーの中の箱を開けると爆発、そこでアレックスと暗殺団の銃撃戦になり、そこへ警官隊もやってきます。USBメモリはワシントンのネクタイの中に隠してあったのでした。そして、ワシントンは警官隊に囲まれ、アレックスの誘導で胸に手をやった瞬間、蜂の巣にされてしまうのでした。そして、飛行機に乗ったアレックスは、隣席の知り合い(らしい男)にメモリを渡し、中を解析させると、それはアメリカのシカゴで9.11以上のテロを起こそうという計画が入っていました。しかし、アレックスは静かに身を隠したいと考えています。一方、議員は彼女の息の根を止めるべく、新たなる刺客を送り込もうとしていたのでした。どうなる、アレックス? で、おしまい、って終わってねえぞ、コラ!

というわけで、ラストでは、ワシントンに変わる始末屋がアメリカから送り込まれ、さらにアレックスの協力者らしい男も登場するという、続編ありきの結末になっちゃってます。果たして、テロ計画を阻止できるのか?って本編よりスケールがでかくなる話で、続編を作れるのか、そんな予算が組めるのか、このプロダクションの行方はいかに? てな感じの結末になっちゃってます。バジェット的には、テレビシリーズのパイロット版だと思っていたら、最後に大風呂敷を広げたのにはびっくり。無差別テロの阻止を、この映画のバジェットで作ったら、どんなものができあがるのかしら。

とにかく、こんなラストを見せられると、1本の映画として評価する気が失せちゃうんですよね。スケール小さくても構わないから、1本の映画として完結させてくれたら、いいところもあるんだよとか書くこともできるのですが、シリーズものという前提もなく、こんな映画を見せられると、何かダマされたような気分になっちゃいます。オルガ・キュリレンコが頑張ろうが、カンパネッリが丁寧な演出を見せようが、そんなの、どっかへ飛んじゃうって感じ、伝わりますでしょうか。(シリーズものに慣れた方には、このオヤジフィーリングは伝わらないかもしれません。)
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einhorn2233

Author:einhorn2233
Yahooブログから引っ越してきました。静岡出身の横浜市民で映画とサントラのファンです。よろしくお願いいたします。

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