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「マイ・インターン」はコメディの面白さもあるけど、人間を見る視線のやさしさが心地よくて好き。


今回は新作の「マイ・インターン」を日本橋のTOHOシネマズ日本橋6で観てきました。ここは、傾斜がある座席はいいのですが、スクリーンが下にあるので、前に座高の高い人が座るとスクリーンが切れそうになるのは、何とかならないかしら。

元工場だったところをオフィスに改造したビルでファッションサイトを経営する社長ジュールズ(アン・ハサウェイ)は2年で会社を一気に大きくした立身出世の人です。そんな彼女の会社で福祉事業として65歳以上の人を雇うシニア・インターン制度を始めます。そこへ応募してきたのは、電話帳を作る会社の部長だった70歳のベン(ロバート・デ・ニーロ)でした。彼は面接に合格し、ジュールズの直轄の部下となります。しかし、年長者を扱いかねてるジュールズは、ベンになかなか仕事を作りません。でも、ベンの人柄から、彼は会社の中でいつの間にか居場所を作ってしまいます。そんなある日、飲酒の運転手をベンがとがめたことから、ベンがジュールスの運転手となって、彼女の家にも通うようになります。ジュールズにはかわいい娘とペイジとジュールズのために家庭に入ったダンナのマット(アンダーズ・ホーム)がいましたが、仕事が忙しすぎるのか、夫婦の時間は少な目状態。一方、会社では、社長の経営をサポート&制御するためにCEOを置いてはどうかという話が持ち上がっていて、その候補者への面談が進められていましたが、ジュールズのお眼鏡にかなうCEOは現れません。ちょっと弱気になるジュールズを、ベンは長年の経験に基づく言葉で励まし、ベンは彼女の信頼を得るようになり、だんだんと仕事も任されていくようになるのですが....。

「ホリデイ」「恋愛適齢期」のナンシー・マイヤーズが脚本を書き、メガホンも取ったコメディの一編です。会社を定年退職した男がファッション会社のインターンとして再就職するというお話で、これをロバート・デ・ニーロが演じるという意外性のあるキャスティングが成功し、会話の間も楽しい、娯楽映画の一編として楽しめました。この監督さんは「ハート・オブ・ウーマン」でメル・ギブソンを、「ホリデイ」でケイト・ウィンスレットをコメディに使って成功している実績のある人だけに、こういうキャスティングもありなんですが、デ・ニーロもいつもと一味違う演技を見せて、新しいキャラクターに挑戦しているのが新鮮でした。「プラダを着た悪魔」の後日談映画のように宣伝されていますが、これは、ファッションはあくまで背景で、中身は、ナンシー・マイヤーズの女性映画でして、その描き方のひねりが効いていて、感心するところも多く、ホントによくできた娯楽映画でした。彼女の映画は、元ダンナのチャールズ・シャイアと組んでいたころからのファンでして、1980年代から上質のコメディを作り続けています。

シニア・インターン制度なるものがあって、それが会社としての社会福祉事業になるってのは知りませんでした。流行の最先端を行く、ネットのファッションサイトの会社で、人生リタイアした人間を再雇用するっていう設定が面白いと思いました。ここの社長は、若くて既婚子供一人ありという女性で、仕事をしていたダンナが彼女のために家庭に入って主夫をしているという設定も面白く、マイヤーズの脚本は女性らしい視点をあちこちに盛り込む一方で、それをさらにひねって男性目線でも共感できる展開で、ドラマを引っ張っていきます。電話帳工場の部長だったベンが、インターンになったものの仕事をもらえないというところから始まるのですが、ベンはそれでもめげずに、持ち前のキャラクターで会社の中で若い連中に慕われていくという展開がうまい。そこそこ偉かった筈のベンが若い社員ばかりの会社で、変に威張ったりしないで、自分の孫くらいの上司や先輩を立てていくという柔軟さは、この人、なかなかすごいと感心。社長のジュールスは若いやり手社長で、高齢者のインターンなんて使うのも面倒くさいと思って、最初のうちは仕事を与えないですが、それが逆に、ベンが会社の人間になじむ暇を与えることになり、いつの間にか、会社の中で居場所をキープしているのです。偶然、ジュールズの運転手になっちゃうベンは、彼女の家に入り込んだり、自動車の中のプライベートにも接するようになります。ジュールスはその何となく首を突っ込んでくる感じを嫌って、配置換えを指示するのですが、ベンの人柄に好感を持つようになり、ベンもジュールスの信頼にこたえようと頑張るので、二人の間にいい関係ができてきて、そこに単なる上司と部下という関係から、お互いに敬意を抱く友人関係が生まれていきます。マイヤーズはテンポよいコミカルな展開の中で、二人が近づいていく過程を丁寧に見せていきます。

単にほのぼの展開なだけのお話ではなく、ドタバタコメディのエピソードも入れますし、シリアスな夫婦の危機を見せたりと、欲張った構成の映画でして、2時間のボリューム感に、中身をきっちりと詰め込んだ娯楽映画としても、この映画、評価しちゃいます。あれもこれも盛り込んで、退屈させず、でもまろやかにまとめるってのは、相当な演出力がないとできないと思ってます。ホラーならホラー、笑いなら笑いに一点集中した映画の方が、作りやすいし、評価もされやすい一方で、色々な材料を過不足なく取り込んだ幕の内弁当みたいな映画は、過小評価されやすいところがあります。この映画は、ベタな笑いに、家族愛、男女の恋愛観にサクセスストーリーまで盛り込んでいて、それでも映画としてよくまとまっていて、満足度が高い仕上がりになっていますから、オススメ度高いです。こういう映画が評価されるようになると、面白い映画が劇場にかかるようになるのではないかしら。

ロバート・デ・ニーロの飄々とした演技に対して、アン・ハサウェイはやり手社長だけど、家庭が今一つうまく行っていない人妻をコミカルに熱演しています。シリアスドラマで熱演というのは、イメージがつかみやすいですけど、コメディでシリアスなキャラを熱演というのは、つかみどころがない感じです。でも、これは劇場で本編を確認していただけるとわかると思いますが、ホントそんな感じなんです。「レ・ミゼラブル」よりも、この映画の方に彼女の女優としての底力を感じましたもの。また、主演二人を囲む会社の同僚を演じた若い俳優連がスター二人をきっちりと立てて、笑いをとってドラマを支えています。そんな中で出番少ないのですが、ルネ・ロッソは、デ・ニーロの恋人として存在感を見せました。主役二人の間に恋愛感情を感じさせるとドラマが濁ってしまうので、ちょっとの出番でも、デ・ニーロの相手役としてインパクトを与えるキャラとして彼女のキャスティングは成功しています。スティーヴン・ゴールドプラットの撮影は、屋内、屋外ともに明るい映像で、人物をきっちりと浮き立たせて、ドラマの豪華感に一役買っています。こういう映画には、こういう華のある絵が欲しいなって思う映像になっています。

マイヤーズの脚本、演出は細かいエピソードに味がありまして、ジュールスのキャリアウーマンが娘のママ友の間ではあまり評判がよくないとか、社長の助手の横にベンが引っ越してきたので、働きが認められていないと泣いちゃう女の子のエピソードとか、ちょっとだけスパイスの効いたエピソードを盛り込んでいます。その他にも、女性社長と男性社員の関係とか、女社長の気負いの部分とか、主夫とキャリア妻との夫婦関係など、面白い視点で描いた部分が多く、それらが、この映画のボリュームとなって、厚い作品に仕上がっています。メインエピソードとなるCEOの話も、会社に首まで浸かっているジュールスが、家庭での時間を取り戻すための決断だというところが、この映画のスパイスとなって後半の展開に効いてきます。



この先は結末に触れますのでご注意ください。



会社にCEOを迎えるべく、何人もの候補者に面接するのですが、女性蔑視だったり、ファッション業界を舐めていたり、なかなかこれはという人がいません。ある日、ベンはジュールスの娘を彼女の友達の誕生会に連れていってやるのですが、その帰り道、ダンナのマットが他の女性とキスしているのを目撃してしまいます。何となく気まずいベンは、ジュールスと視線を合わせられなくなるのですが、出張先のサンフランシスコのホテルで、逆に彼女から、夫が浮気していると告白されてしまいます。ジュールスはそれでも、夫との関係を再構築したいと願いますが、ベンは二人のヨリが戻ることには懐疑的です。そして、最後に面談したCEOの候補は、ジュールスも好感を持ち、その男にCEOを頼むことになります。しかし、翌朝、オフィスにジュールスを訪ねてきたマットは、自分のために仕事の権限を他人に譲るのはやめてくれと言います。マットにとってジュールスは大事な女性だから、幸せになって欲しいから、やりたい仕事をやって欲しいと言うマットと抱き合うジュールス。CEOの話はおじゃんとなります。ジュールスがベンを探すと彼は今日は休暇を取ったとのこと。彼の恋人に聞いて居場所を探すと、公園で他の仲間と太極拳をしているベンを発見。ジュールスもそこに混じって、太極拳を始めるところで、暗転、エンドクレジット。

ダンナの浮気を知ったジュールスは、その現実に直面するのがいや、そして、二人が別れるのはもっといや。一方のベンはこの二人はもうダメだろうと思っているのが面白かったです。そして、ラストは、浮気をした夫の方がジュールスに歩み寄ることで、二人の破局は回避されます。こういう展開はベンの想定外なんだろうなって思えてくると、なるほどこういうところにジェネレーションギャップが出てくるのかと、妙に納得してしまいました。マットが浮気をしたのも、ジュールスのために家庭に入ったものの、そこで自信を失い、妻との時間も作れなかったためというのも、今風の展開と言えますし、その事実に対して、ジュールズが弱いからこそ、関係修復したいと願うというのも意外と言えば意外です。このダンナの浮気に対する、作者の視点はすごくやさしいですし、それを糾弾できないジュールスも、妻のためにCEOを入れることをやめさせようとする夫のマットもやさしいと言えましょう。白黒つけたがるアメリカ文化とは一線を画す人間関係を、肯定的に描いているあたりは、マイヤーズの女性ならではの目線ではないのかなって思い至りました。これまでのラブコメなら、絶対に敵役で最後にぎゃふんと言わされる浮気夫のマットに、華を持たせる意外性を、心地よい決着として見せるあたりのうまさは、職人娯楽映画以上のメッセージを感じさせました。仕事中毒に近い敏腕女性社長も、昔ながらの文化を引き継ぐシニア・インターンも、職を辞して家庭に入る専業主婦も、各々の悩みや共感できる部分があるってことを丁寧描いて、懐の広い映画になっているのが、私のお気に入りになりました。一言で言うなら、いい感じの映画、それもすごくいい感じの映画。
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コメント

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einhorn2233
かずさん、コメント&TBありがとうございます。これは、映画全体の持つ空気が心地よい映画でした。主人公二人の関係もそうですし、脇役の扱いも暖かいものがありました。こういう映画ってもっと評価されてもいいと思うのですけど、あまり世間の評判が高くないのが残念。

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かず
これは見てみて爽快でした。
二人の関係がとてもよかったし、ベンの紳士ぶりは男でも憧れます!
TBお願いします。

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einhorn2233
Choroさん、コメント&TBありがとうございます。ナンシー・マイヤーズってコメディの中に女性ならではの視点を盛り込んでくるところが面白い監督さんですし、娯楽映画を仕上げる腕前はうまいなあって思います。そういう意味では、娯楽映画の信頼のブランドという感じでして、今回もその信頼は裏切られませんでした。

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choro
これ、よかったですよね~
私もお気に入りの作品になりました。やっぱりナンシー・マイヤーズの作品はいいですよね。
観た後、気分がよくなる映画はホッとしますね。
TBさせてくださいね。

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einhorn2233
オネムさん、コメント&TBありがとうございます。確かにやさしさの部分はリアリティがないかもしれませんが、その視点にちょっとしたヒネリを感じて、結構面白く観てしまいました。後、全体に丁寧にテンポよく作ってあるってところもお気に入りの映画です。

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オネム
かなりお気に召したようですね。
優しいとおっしゃるところが、私はどうもリアリティがないというか、本当はもっと現実は厳しいんじゃないかと思ってしまい、まあ、コメディだからいいんですけれど、ちょっとゆるいかなって思ってしまいました。でも見終わったらハッピーになれていいですよね。
こちらからもTBお願いします。
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