今昔映画館

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「ぼくの名前はズッキーニ」にいいオヤジが大泣きさせられちゃいました、泣ける泣けない置いといて、いい映画でオススメ。


今回は新作の「ぼくの名前はズッキーニ」を川崎の109シネマズ川崎3で観てきました。ここは、130席というキャパは小さめなんですが、スクリーンは結構大きいというシネコンの典型的な映画館。それでも、最前列とスクリーンの間にスペースを設けて、前の方でもスクリーン全体が観易い作りになっています。

9歳のズッキーニは、酒を飲んでは乱暴する母親と二人暮らし。いつも屋根裏部屋で絵ばかり描いていたのですが、また彼に乱暴しようとやってきた母親を誤って階段から突き落としてしまい、孤児院「フォンテーヌ園」に送られることになってしまいます。担当警官のレイモンが彼を園まで連れて行ってくれます。そこには、リーダー格のシモン、アメッド、ジュジュブ、アリス、ベアトリスの5人がいて、すぐに仲良くなります。仲間たちにはそれぞれ、親の事情でそこに預けられていて、シモンに言わせると「みんな誰にも愛されていないのさ」ということになるんですって。やさしいレイモンは仕事抜きでもズッキーニを訪ねてきてくれ、彼は園のことをレイモンに話すのが楽しみ。そんなある日、カミーユと言う女の子が園に送られてきます。彼女はお父さんが浮気したお母さんを殺した後自殺したという事情があり、胡散臭いおばさんがこの園に連れてきたのでした。ズッキーニとカミーユはすぐにお互いに好意を持つようになりました。でも、自分が引き取ればお金がもらえると知ったおばさんが、カミーユを引き取ると言い出します。カミーユは絶対嫌だ、ここに居たいと言うのですが、まず週末だけ引き取りに来ます。そこで、シモンが一計を案じるのですが...。

ジル・パリスの原作を、コマ撮り人形アニメで描きました。セリーヌ・シアマが脚色し、短編アニメの実績のあるクロード・バラスが監督しました。アカデミー賞やゴールデングローブ賞などにノミネートされ、セザール賞を受賞していて、評価の高い作品です。孤児院を舞台にした物語はドラマチックな展開はありませんが、淡々と描かれるエピソードから、人間の悲しみや希望が見事に描かれ、そして、子供をいじめたり捨てたりしてはいけないという明確なメッセージを持った映画です。愁嘆場がある映画ではないのですが、私にとっては、ここ10年で一番泣かされた映画になっちゃいました。切ないというか何と言うか、こんなに胸を締め付けられる映画は久しぶりでした。泣ける泣けないは置いといても、見応えのあるオススメできる映画です。66分の映画なんですが、長いエンドクレジットがあって助かったというくらいラストで泣かされてしまいました。

オープニングは屋根裏部屋で、お父さんの絵を描いた凧を揚げているズッキーニの姿が描かれます。このズッキーニという少年ですが、頭がすごくでかくて、さらに目が大きいという、日野日出志の怪奇漫画に出てきそうな結構ブキミなキャラ。この映画に登場するキャラはみんなそんな感じの造形になってまして、かなりとっつきは悪いです。それに、ズッキーニは病的なおどおどキャラで、あまりしゃべらないので、余計めに怖い感じなんですよね。この見た目に馴染んでくると物語に入り込めて、子供たちの物語に泣かされることになります。

孤児の事情は様々ですが、結局は親の都合です。親が死んだり、犯罪者だったり、国外退去させられたり、そんな事情で親と暮らせなくなった子供たちが、フォンテーヌ園にやってくるのです。お互いの事情を知りつつ、あまり深入りしないで、諍いを起こすことがあっても、基本は仲良く日々を送っている子供たちの姿が、人形アニメで生き生きと描かれているのですが、生身の子供が演じていないことで、そのキャラクターが明確に打ち出されてきます。子供が演じているのではないことで逆にリアルに感じられるというのは意外でしたけど、だからこそ、この話を人形アニメで作る意味があり、人形アニメだからこそストレートの胸を打つのだと言えそうです。雪遊びの帰りのバスで、眠っているカミーユにズッキーニがこっそりキスするシーンも素直に微笑ましく胸に響くシーンになっています。

この園には、男先生とロージーという若い女性職員がいて、二人は恋人同士なのか夫婦なのか、とにかく園児のたちの見えるところでキスしたり、いつの間にかロージーのお腹が大きくなってきます。性のことに興味津々な子供たちは、セックスがどんなものなのか話し合ったりして、あれするとおちんちんが爆発するんだぜ、えー大変なんてことを言って喜んでいます。絵を描くのが好きなズッキーニはそういう話も絵にしちゃうところがおかしかったです。また、スキー場に泊まりで雪遊びに行くエピソードもドラマチックな要素はないんですが、子供たちの満たされない孤独をサラリと描いています。親子連れをじっと見つめる子供たちの姿とか、夜、音楽に合わせて踊り子供たちとか、そういうところに何か胸締め付けるものがありました。人間が演じてると思うとそこに共感のフィルターみたいなものがかかるのですが、人形なものだから、その想いがすっと胸に響いてくるって感じ伝わりますかしら。(←言葉足らずで伝わらないのが歯がゆい)

子供たちは自分がこの先どうなるのかという未来像を持てないでいるというところもきちんと描かれます。いや、具体的に描かれるというよりは感じさせるというのが正確かもしれません。この人形たちの細やかな動きから、色々なものを伝えてくるのがすごいって思います。確かに不安もあるけど絶望だけじゃない、それが生きるってことなんだよねって感じが見事でした。ちょっと見はブキミと言っちゃいましたけど、その見た目から伝わってくる感情の動きが見る者の心の琴線に触れるのですよ。これは是非、劇場でご覧になって確認してください。66分でも密度の高い時間を過ごすことができると思います。ラストではっきり示される、子供を捨てちゃいけない、虐待したりしてはいけないというメッセージが心に届けば、それだけでも、この映画を観る意味があります。



この先は結末に触れますのでご注意ください。



レイモンが週末にズッキーニを引き取りに来た時、彼の車にこっそりカミーユが乗り込みます。レイモンは二人を遊園地に連れていき、彼の家まで連れていくのですが、そこへカミーユの叔母が彼女を強引に連れ帰ります。シモーヌをどこに引き取るかは、判事の判断を仰ぐことになるのですが、シモンがカミーユに録音機を渡しておいて、叔母の言葉を録音して判事の前で披露したので、カミーユは園に居られるようになるのでした。レイモンも一緒に外で食事している時、レイモンはズッキーニに彼とカミーユを引き取りたいと言います。それを隠れて聞いたシモンが荒れちゃうのですが、一人でいるシモンにズッキーニが話しかけると、シモンは「こんな年で里子に出ることはまずないんだから、おれたちのためにもここを出るんだ」と言ってズッキーニを抱きしめるのでした。(泣) そして、二人が園を去る日、みんなで写真を撮ります。その写真はズッキーニの残した凧に貼られることになります。レイモンの家でズッキーニとカミーユは素敵な部屋を与えられます。その部屋でなぜか涙ぐむカミーユ。ズッキーニはシモンたちに絵を手紙を送ります。「誰にも愛されていないなんてことはない。僕はずっとみんなを覚えているよ」。園ではロージーの赤ちゃんが生まれて、彼女と赤ちゃんを、シモン以下子供たちが囲んでいます。「この赤ちゃんがすごく臭くても捨てない?」「銀行強盗になっても?」「警官になっても?」次々に質問を重ねる子供たち。空には、みんなの写った写真の凧が飛んでいるのでした。(大泣)エンドクレジット。

レイモンというやさしい警官との出会いが、ズッキーニに新しい人生を始めさせるのはハッピーエンドなんですが、でも他の子供たちは園に残ることになる、そのあたりの切なさを人形だと愁嘆場にならないで見せることができるのですよね。子供たちの別れのシーンも淡々と見せるだけに余計目に泣かされてしまいました。人生不公平だけど、いいこともあれば悪い事もある、どっちに転んでもみんな頑張って生きてるというのを、こういう形で見せられると、何か切ないというか、自分恵まれてるのかなとか、色々な想いが心の残る映画になりました。ひょっとして、これ、今年のベストワンかも。それほど期待していたわけではないので、その不意打ちにKOされちゃいました。
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Yahooブログから引っ越してきました。静岡出身の横浜市民で映画とサントラのファンです。よろしくお願いいたします。

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