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「search/サーチ」はパソコン画面だけで見せるサスペンスですが、娯楽度高くてオススメ。


今回は新作の「search/サーチ」を上大岡のTOHOシネマズ上大岡5で観てきました。このシネコンはキャパの割にスクリーンが小さいと文句を言ってきたのですが、さすがに最大キャパのスクリーンだとそれにふさわしい大きなスクリーンを備えてました。大画面の大劇場感のある映画館です。

大好きだった母親をガンで亡くしたマーゴット(ミシェル・ラー)は高校の1年生。今は父親のデビッド(ジョン・チョー)との二人暮らし。マーゴットが友達の家に出かけた日の夜中、デビッドに3回電話がかかってくるのですが、眠っていたデビッドは気付かなかったのですが、翌日、彼から電話してマーゴットは答えず、そのまま行方不明になってしまいます。でも、デビッドは、娘の交友関係を全然知らなくて、どうしていいかわからない。そこで、マーゴットのパソコンを開いて、アドレス帳や彼女のSNSから、彼女が友人とキャンプに行く筈だったのに来なかったことや、学校では一人でいることが多かったことなど、親の知らない娘の顔が見えてきます。警察に連絡したデビッドにヴィック捜査官(デブラ・メッシング)が連絡してきて、デビッドがパソコンから得た情報を確認しつつ、捜査を進めることになります。マーゴットは、母親から習っていたピアノの教室もやめてしまっていて、その月謝を貯金していて、そのお金を誰かに送金していたとか、別人のIDカードを偽造していたとか、色々な事実が出てきます。監視カメラに町を出ていく彼女の車が映っていたことからも、マーゴットはどこかへ逃げようとしていたのではないかと言うヴィック捜査官に、そんなことはあり得ないと強く否定するデビッド。動画をアップするサイトにも彼女は自分の姿をアップロードしていました。その中の湖の絵から、彼女はその湖へ向かったのではないかと気づいたデビッドがその位置を確認すると、監視カメラで車が確認された地点のすぐ近くだと判明するのですが、果たしてマーゴットは一体どこへ消えてしまったのでしょうか。

オープニングは、パソコンが起動されるところから始まり、そこに3人の家族がユーザ登録され、パソコンの画面上にビデオ撮影された映像が展開されていき、マーゴットの幼い頃から、母親が病気になって亡くなるまでの様子、そして今に至るまでの映像が流れます。と、この映画、全てパソコンの画面上で展開していくのですよ。チャットの映像、テレビ電話の映像、監視カメラの映像、Webカメラの映像、SNSの画面、YouTubeの画面にニュース映像と、パソコン上で見られるメディアの情報だけで、1本の映画を作ってしまったのです。セブ・オハニオンとアニーシュ・チャガンティの書いた脚本を、チャガンティが監督した、サスペンス・ミステリーの一編ですが、パソコンの画面縛りという趣向の面白さと、お話自体の面白さでアメリカでも高い評価を得たようです。確かにこういう見せ方もあるんだなあってのは発見でしたけど、その趣向にあぐらをかくことなく、サスペンス・ミステリーとしても、大変面白い映画に仕上がっています。パソコン画面上だけで展開するドラマを映画館の大画面で観る意味があるのかと突っ込み入りそうですが、これが意外や大画面で観る絵になっているのですよ。画面の大きな映画館の方がスクリーンにのめり込めて楽しめるのではないかしら。私は大画面で観てよかったと思った方でして、パソコンの画面上で見るだけでは、感情移入もドキドキハラも半減しちゃうような気がします。

ただ、パソコンの扱いについては若干の知識がないと何してるのかわからないところがありますから、スマホなりパソコンなりの基礎知識がないと、映画についていけなくなると思います。私は、仕事でもプライベートでもパソコンを使ってますから、画面で何しているかは大体わかるのですが、オペレーションがかなり速くて、そのペースに追いつくのは結構大変。誰もがついていけたのかなあ、スマホの画面であのスピードで見せられたら私もついていけなかったかも。でも、その動きは、デビッドの思考の流れそのものになっているのですよ。パソコン画面を使った一人称ドラマとしては、かなりよくできてます。前に、カメラが車の中から絶対に出ない縛りのサスペンス映画がありましたけど、この映画もパソコン画面から出ないという縛りの趣向が面白いです。でも、その中から、見えてくるものは結構怖いものがありまして、娘のことをまるで知らなかった父親が、娘のSNSのアカウントに入り込むことで、彼女のプライベートが見えてくる展開は、誰もが自分のアイデンティティをネット上の晒している時代なんだなあってのを痛感させられます。娘のアドレス帳から交友関係がわかり、チャット動画のログから彼女が何を考えていて、彼女と親しい人間が特定できて、投稿写真サイトのログから、彼女のよく行く場所を特定する、その過程はスリリングではあるんですが、今、パソコン操作するだけで人間そこまで丸裸にできるってのは怖い時代です。でも、そのことで、娘の行方を追えたわけですから、よくも悪くもこれが現代なんだなあって思わせる映画でした。でも、私自身は、ネットに接しているのはこのブログくらいですから、私が姿を消しても、探しようがないだろうと思うと、自分は時代に乗り遅れているのかもって気づかされる映画でもありました。

また、この映画が単にパソコン画面縛りの趣向だけで見せる映画ではないのがお見事で、行方不明の娘が誘拐されたのか、単なる家出なのかがわからないまま、父親の知らない娘の姿が見えてくると、父親が娘のことを理解しようとしてこなかったことが見えてきます。娘の行方と親子関係の両方のミステリーとして観客を引っ張っていきます。デビッドのキャラが等身大で感情移入しやすいので、色々な意味でドキドキハラハラしながら画面に引き込まれてしまいます。最初は娘の情報をパソコンから必死に集めて、電話で確認を取っていたデビッドですが、事態が事件性を帯びてくると、ヴィック捜査官にそういうのは警察がやるから何もしないでくれと言われちゃうあたり、ダメなところもあるお父さんを応援したくなる展開になるのも、うまいと思います。チャガンティ監督の演出は、映すものはパソコン画面だけですが、展開されるストーリーはまっとうな誘拐サスペンスで、力量を見せてくれています。ドラマとして最後まで楽しませてくれているので、オススメ度高いです。登場人物は、デビッドとマーゴット以外は、警察にヴィック捜査官と、デビッドの弟のピーターだけ。それだけで、たくさんの伏線を散りばめて、最後きっちり回収するという、これだけのお話に作り上げた脚本もお見事でした。



この先は結末に触れますのでご注意ください。



デビッドが特定した湖を調査したところ、水の中からマーゴットの車が見つかります。車の中には誰も乗っておらず、マーゴット失踪事件は公開捜査となり、多くの関係者のコメントがテレビやネットで流れるようになります。車の中の遺留物から、ピーターを疑ったデビッドが、チャットのログを調べると、二人はデビッドに隠れて会っていたようなのです。証拠のための隠しカメラを仕掛け、デビッドがピーターを詰問すると、マーゴットはピーターの持っていたハッパを父親に隠れてやっていたのでした。そこへ、警察から連絡が入ります。前科のある犯罪者が、動画サイトでマーゴット殺しを告白して自殺したのです。これで、彼女が生きてる希望は絶たれ、遺体が発見できないまま、マーゴットの告別式が行われる日、デビッドは葬儀社のHPに見た顔を発見します。それは、動画サイトでマーゴットの映像にコメントを入れていた女の子で、二人はネット上で親しくやり取りをしていたのです。ヴィック捜査官はその女の子のアリバイを調べたと言っていたのですが、その女の子はモデルで直接確認を取ると、警察が来たという話は知らないと言うのです。何かがおかしいと気づいたデビッドは、警察へ連絡し、ヴィック捜査官を拘束します。行方不明から5日たっていて、娘を谷底にいると知らされたデビッドに、ヴィックは水無しで5日は生きていないといいますが、一昨日に嵐がきていたことを指摘して峡谷を捜索すると、マーゴットが発見されます。彼女を谷底へ落としたのはヴィック捜査官の息子のロバートで、かなり前からマーゴットに目をつけていて、モデルの女の子のアイコンで女の子のふりをして彼女とネット上の友達となっていました。本当のことを語ろうと、夜に湖に行ったマーゴットに接触したが逃げられて追った結果、押し合いになった時、マーゴットを谷底へ突き落したのでした。息子からそのことを聞いた捜査官は、自らマーゴットの捜査担当に志願し、証拠をねつ造したり、握りつぶしたりして、息子の罪を隠そうとしていたのでした。そして、マーゴットのパソコン画面になり、父親とのチャットが画面上に展開します。今、音楽学校の試験結果を待っている彼女の壁紙は車椅子の彼女と父親の写真です。そして、デビッドの言葉「私はお前を誇りに思っている」の後、ちょっと間をおいて「母さんもそう思ってるよ」と出て、暗転、エンドクレジット。

後半の怒涛の展開はお見事でして、最悪の展開となったと思ったら、さらにどんでん返しがあって、それに加えて、驚きのハッピーエンドになりまして、観終わって、あ、よかった、面白かったという映画になっています。それまで、母親のことに触れるのを避けてきた父親と、母親のことを思い出すのが辛くてピアノをやめていた娘の心の溝が少しずつ埋まっていくのを数行のチャットのやり取りで見せたラストシーンもホントにうまい。また、パソコン上で示されてきた、写真や動画がパズルのピースのように、収まるところへ収まっていくカタルシスもあり、よく計算されたドラマです。でも、ゲーム感覚にならないのは、、登場人物のキャラが丁寧に描かれていて、画面はパソコンでも、ドラマは十分な奥行きのあるものになっていたことが大きいです。伏線回収のカタルシスは、最近観た「カメラを止めるな」に通じるものがあり、主要登場人物4人の低予算の映画でも、これだけの物語を面白く見せられるんだなあって感心しちゃいました。デビッドが娘のために父親として奔走してる、その裏で、ヴィック捜査官が母親として息子のために暴走していたという、親の愛の表裏一体の構成も見事で、ドラマとしての見応えも十分ありました。とっつきは、見た目の趣向で見せる映画なんですが、そこにきちんと人間ドラマとサスペンスとミステリーを盛り合わせて、娯楽映画として大変面白くできていました。確かに、現代のネット社会での、人間の在り様を見せた映画であり、今、2018年のネットと人間の関係を見せた、記録的価値のある社会派映画ということもできます。5年後には、ネットと人間の融合がもって進んでいるかもしれないし、若干の歯止めがかかっているかもしれない。その過渡期でもある、2018年を記録した映画としても、意味があると思います。とは言え、娯楽としてドキドキハラハラしていい気分で劇場を後にできる映画としての存在意義の方が私には大きくて、未見の方には、ネタばれしないようにオススメしたい映画でした。
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コメント

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einhorn2233
シーラカンスさん、コメント&TBありがとうございます。PCの中に個人の情報が全てあって、お父さんが簡単にアクセスできちゃうってのは怖い時代になったものです。昔なら、日記帳に鍵をかけることで守られた親子間のプライバシーもPC上でかなり深いところまでわかっちゃうってのは、怖いご時世ですよね。

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シーラカンス
なかなかよくできた作りに関心しました。時代についていけない私ですが、PCというかネット社会に個人の情報がすべてあるというのが現実でリアルですね。TBさせてくださいね。

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einhorn2233
なぎさん、コメント&TBありがとうございます。見せ方がユニークでしたけど、その上の乗せたストーリーがしっかりしていたので見応えがあったように思います。若い人だと謎解きロールプレイングゲームみたいに見えるのかも。「ポートピア殺人事件」みたいだって、若い人が知ってるわけないか。

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なぎ
これはもう絶対にネタバレ踏まないようにして観たい作品ですよね!
ストーリーに新しさを求めているわけではなくて、見せ方がとにかくユニーク!
ほんとにおもしろい作品でした。

TBお返しさせてくださいね
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