FC2ブログ

「ストーリー・オブ・マイライフ 私の若草物語」はドラマチックだけど今風目線がどこかおかしくて全体的にはチャーミング。

ストーリー・オブ・マイライフ

今回は新作の「ストーリー・オブ・マイライフ」を川崎のチネチッタ3で観てきました。お客の入りそうな映画は先送りして宮崎アニメを公開して時間をつないでるみたいですが、夏休みになったら、今の一席置きの販売が全席販売可能になるのかしら。

南北戦争直後のアメリカはプラムフィールド。メグ(エマ・ワトソン)、ジョー(シアーシャ・ローナン)、ベス(エリザ・スカンレン)、エイミー(フローレンス・ピュー)の4姉妹は喧嘩することはあっても仲良く暮らしていました。母親(ローラ・ダーン)が父親が南北戦争に出征して帰ってこない間も明るく一家を支えています。隣人のお金持ちローレンス(クリス・クーパー)の孫ローリー(ティモシー・シャラメ)が4姉妹と知り合い、その中でも次女ジョーと意気投合します。ジョーは文才がありいつかは書くことで身を立てたいと思っていましたが、金持ちの叔母(メリル・ストリープ)は、女が一生食べていける仕事なんてない、いい結婚相手を見つけることが重要と説きます。そして、何年か経ち、ジョーは家を出てニューヨークで無名ながらも小説家になり、メグはローリーの家庭教師だったジョンと結婚しますが貧乏暮らしから抜け出せません。ベスは病弱で実家で療養生活を送り、エイミーは叔母のおともでヨーロッパに行き、絵の勉強をしつつ、お金持ちのフレッドと結婚寸前まで行っていました。そんな時、ジョーは実家のベスの病気がよくないという手紙を受け取り、実家へ戻ってくるのでした。

ルイーザ・メイ・オルコットの原作小説を、女優でもあり、「レディ・バード」を監督してオスカーにノミネートされたグレタ・ガーウィグが脚色してメガホンも取りました。原作小説は読んだことがなくて、アニメの絵からイギリスの4姉妹のお話という予備知識しかなく、冒頭からアメリカのお話だとわかってびっくり。映画は、初めての小説が大衆雑誌に売れてウキウキのジョーの姿から始まり、その後は時間軸が行ったり戻ったりするという構成で、かなり捻った作りになっていますが、それでもストーリーは観ていてわかるようになっており、凝った脚本をうまく采配した演出という感じでした。(まあ、どっちもガーウィグの仕事ではあるのですが。)

古風で家庭的なメグ、自由で現代的なジョー、病弱だけどやさしいベス、甘えん坊だけど意外とクールなエイミーと、一応のキャラづけはされていますが、映画では、ジョーとエイミーにフォーカスが当たっていて、キャラに奥行きが与えられています。ガーウィグの演出は、4姉妹の数年間を、エピソードをうまく拾ってつなげて、面白い映画に仕上げています。4姉妹のワイワイガヤガヤが今風の女の子になっていまして、喜怒哀楽をストレートに表現する女の子たちから、18世紀の時代色は感じられません。そこが共感しやすいということにもなりまして、特に説教臭さとか道徳の押し付けが感じられないのも好印象でした。当時は女性の仕事なんて社会的に見下されていましたし、そんな中では、女性にとっての金持ちとの結婚は、男にとっての立身出世と同じくらい経済的、社会的なステータスだったのでしょう。映画は賢明なことに、そういうところを現代の目線から批判することはしません。でも、当時は女性の選択肢がそれほどなかったことも見せます。そんな中で人生を育んでいく4姉妹(特にジョーとエイミー)を丁寧に描いていきます。両親は黒人差別に反対で、貧乏な人には手を差し伸べなきゃって本気で考えてる人ですが、娘たちは、それを善いこととして受け入れつつ、両親ほどにはのめり込まないあたりもリアルな感じで面白かったです。当時の社会状況や文化を否定しないで、でも現代との違いを明確に描くうまさは職人的な芸を感じます。

ニューヨークに出て下宿屋で家庭教師をしながら、小説を出版社に売り込むベスという女性は、当時としてはかなりモダンな女性ではないかしら。また、結婚願望がないって言いきっちゃうし、時代の流れからはちょっと外れた女の子として描かれます。要は親とか周囲の価値観とは別の私がいるのよみたいな、突っ張ったヒロインということができましょう。ニューヨークで同じ下宿に住む教師フレデリック(ルイ・ガレル)が気になってはいて、向こうもジョーが好きみたいなんですが、自分の雑誌に掲載された小説を率直に批判されて喧嘩別れしちゃいます。独立心と野心を持ったジョーは、家庭を作ることを目標としている長女メグと好対照の関係です。でも、メグだって金持ちじゃない男のマジ惚れしちゃってお金に困る生活に甘んじています。ベスも自分の境遇と折り合いをつけて生きようとしてます。その中で、エイミーだけは価値観が揺れるナイーブな女の子になっているのが、この悪人が登場しないドラマのアクセントになっています。このエイミーの行動が一貫性がなくてブレちゃうことがあるのですが、それを人間の成長のような見せ方をしているところに、作り手の贔屓目的なやさしさを感じてしまいました。

また、隣人のローリーが賢くて二枚目なんだけど、どっか子供っぽい男の子に描かれていて、ジョーとエイミーの心をかき乱す存在でありながら、頼りないキャラになっているのがおかしかったです。この映画に登場する4姉妹の恋愛対象の男性(4姉妹のお父さんも含めて)は、みんないい人なんだけどどこか頼りない。だからこそ、姉妹がしっかりしなきゃいけないって展開になるんですが、原作もそんな感じなのかしら。この芯の強い女性たちとかっこいいけど頼りない男性陣の構図が現代風だなあって思えてしまって、今風女性監督の視点を感じてしまいました。これ、原作通りだったら、原作者のオルコットはすごい先進的な女性目線を持った人だということになるよなあって感心しつつも、今の女性に対する監督のシニカルな視線ではないかしらって思っちゃいました。でも、芯の強い女性陣の弱さみたいなところもきちんと描いていまして、その視点がまた現代風なのが面白かったです。

演技陣は皆好演でして、控えめキャラで脇を固めた感のあるエマ・ワトソンがいい味を出しています。また、人としての形が出来上がっていく過程にあるエイミーを熱演したフローレンス・ピューが儲け役ながら、その大役を熱演しています。シアーシャ・ローナンは見た目が私のタイプではないのにどんな役を演じても魅力的に見せてしまううまい女優さんで、強さと弱さを一人の人間の中に演じ込めることのできる人。今回のジョー役は「ブルックリン」のヒロインと同じく、自由と女性としての幸せに葛藤するのですが、今回は狂言回し的なキャラも同時に演じて、演技力の奥行きを感じさせました。ティモシー・シャラメは、いい人なんだけど結果的にジョーとエイミーを翻弄しちゃう皮肉屋という難役を意外と渋めに好演していて見事でした。



この先は結末に触れますのでご注意ください。



ジョーは仲良しのローリーからプロポーズされますが、お互いの価値観の違いを理由に、結婚してもうまくいかないってプロポーズを断ってしまいます。その後、ヨーロッパを叔母と外遊中のエイミーがローリーと再会したことから、二人が恋に落ち電撃結婚ということに。一方、アメリカでは、病気が思わしくなかったベスが、ジョーやメグの看病も空しく帰らぬ人となります。そのジョーはローリーのプロポーズを断ったことを後悔していて、もう一度会えたらとローリーに手紙をしたためていたのですが、ベスの死で帰国したローリーとエイミーから結婚したことを聞いてビックリ。それでも、何とか笑顔で二人を祝福するジョー。ベスの死に打ちひしがれ、筆を折っていたジョーですが、一念発起して自分と家族を題材にした小説「若草物語」を書き上げて出版社に送ります。そんな頃、ジョーのもとをニューヨークからフレデリックが訪ねてきます。カリフォルニアに行こうと思っていると言って帰っていく彼を見つめるジョーの視線から、家族みんなが「彼を引き留めなさい」の大号令。駅まで馬車を走らせて、ジョーはフレデリックの胸に飛び込みます。一方、ジョーの本は出版社の目にとまりベストセラーになります。亡くなった叔母の家を学校に改装して幸せそうな皆が集まっているところで暗転、エンドクレジット。

価値観の違いとか言って、ローリーのプロポーズを断ったジョーですが「でも寂しくてたまらない」と本音をのぞかせるあたりがおかしく、ローリーとの復縁を願っていたら妹と結婚されて困り笑顔で祝福するジョーがかわいい。映画はベスの死までをドラマチックに描くのですが、そこから後の怒涛の展開をコミカルな味わいにまとめているのが面白かったです。映画のラストは、フレデリックの訪問と、出版社でのジョーがカットバックで描かれるのですが、社長は「ラストでヒロインは結婚させろ、オールドミスの話じゃ売れないだろ。」と言い、ジョーはそれを飲みます。で、フレデリックとジョーが結ばれるシーンとなり、なるほど「結婚とは女性にとって経済的問題」なんだというオチはかなり面白かったです。当時の価値観を否定しないで笑いの種にしたあたりのしたたかさはガーウィグのセンスなのでしょう。そして、彼女の小説が印刷から装丁されている過程を丁寧に映像で見せるあたりは、最近の電子書籍へのアンチテーゼかなって思いました。あの本ができてくる過程のワクワクする映像は、ドラマには必要なくても、現代の映画には必要なシーンだよなあって納得しちゃいましたもの。ガーウィグの才気と職人芸を堪能できる楽しい映画でした。ライトにまとまった映画ではありますが、そこに作家性を入れるあたり、彼女の次回作が楽しみです。
スポンサーサイト



コメント

choroさん、コメント&TBありがとうございます。

einhorn2233
お久しぶりです。ご訪問ありがとうございます。
私は「若草物語」は初めてだったのですが、それでも、ずいぶんと今風な女の子たちだなあって思いましたです。シアーシャ・ローナンの他の映画「ブルックリン」や「レディバード」にイメージが近い感じでしょうか。楽しい映画でした。後、トラックバックは今一つやり方がわからなくて、頑張ってトライしてみます。

木蓮さん、コメントありがとうございます。

einhorn2233
「若草物語」というと映画もアニメもクラシックというイメージがあったのですが、この映画の女の子たちは、今風のキャッキャしてる娘さんだったのが意外でした。そう考えると古風なタイプを淡々と演じたエマ・ワトソンが浮いちゃいそうなのに、そうならなかったのは見事でした。脇キャラに回った分、その演技力が光ったという感じでした。

木蓮
原作は随分昔に読んでるはずだし、過去の映画化作品も観てるはずなのですが、すっかり忘れちゃってます( ̄∀ ̄*)イヒッ
古典らしさが無かったのがかえって良かったと思いましたし、若い人にもとっつきやすいように思います。
瑞々しい感性で、グレタ・ガーウィグ監督、只者ではないですね。

新作が公開され始めたのに、なかなか観たいものをやってくれなくて、ヤキモキしています。

お久しぶりです♪

choro
einhornさん、お久しぶりです。
更新されたんですね。嬉しいです♪

昔から馴染みのある名作で、過去の映画も観ておりますが、今回はこの構成が新鮮で、かつ、姉妹それぞれの個性や思いが丁寧に描かれていて楽しめました。

やはり長年にわたって読み継がれている作品は、何度映画化されてもいいですね。
そのたびに新たな発見があって面白いです。

映画館はようやく行けるようになりましたね。
ひと席おきの配置ですし、皆さん、静かに観賞されているので、リスクは少ないかな~と思いました。
映画くらい、大画面で観て楽しみたいですよね(笑)。

いまだに慣れていないFC2ですが、TBさせてください。(できるかな?(笑))
非公開コメント

トラックバック

「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語 」(2019)

2006年にDVDで観た’94版の感想を改めて読むと、それが4度目の映画化となっているので、今回は5度目なのでしょうか?他にもTVドラマでも何度も映像化されているようですが。前回の感想に書いたように、私にとっては、母の好きだった’49年版の印象が一番強いのですが、(リバイバル時に劇場鑑賞していますし(笑))今回久々に再映画化というので楽しみにしておりました。しかし、コロナのために当初の予定よ...