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「大怪獣バラン」は怪獣映画の典型、ただ、それ以上のものでなく

劇場で観たいと思ってもなかなか思うように観られない映画があります。最近の映画の場合は、めぐり合わせが悪かったとあきらめることもできるのですが、昔の映画になると、劇場以外のメディアでもいいから観たいという気分になります。

昭和33年の「大怪獣バラン」という映画が劇場公開されました。今回はこの映画のDVDを観ました。

日本のチベットと呼ばれる東北地方の奥地で、地理的に珍しい蝶が発見されたことから、調査に向かった二人の研究員が謎の死を遂げます。魚崎(野村浩三)と新聞記者の由利子(園田あゆみ)は、死の謎を追って、北上川上流の岩屋部落に入ると、そこではバラダキ山神を鎮める儀式の真っ最中。すると、禁断地域の向こうから怪物の咆哮が聞こえてきます。その奥の湖へ向かった魚崎たちの前に、巨大なトカゲのような怪獣バランが姿を現し、岩屋部落を全滅させます。早速、自衛隊が湖を包囲し爆雷攻撃をしかけますが、バランは通常火器をものともせず、手足の間にむささびのような膜を張って、空を飛んで姿を消します。次に現れたのは、東京湾近くの海上で、漁船を襲い、自衛艦の攻撃をものともせず羽田に上陸してきます。特殊火薬に期待をかけて、バランの腹の下で爆発させるのですが、これまた失敗、果たして無敵の怪獣バランに人類は勝利を収めることができるのか。

もともとはテレビ用に製作が開始され、後からシネスコサイズの劇場用映画に変更になったということで、東宝スコープではなく、東宝パンスコープという表示になっています。これは、スタンダードで撮影したネガをトリミングしてシネスコサイズの画面を作ったものと思われます。東宝の特撮映画は「空の大怪獣ラドン」「地球防衛軍」がカラーで製作されていたのですが、この作品はモノクロでして、特撮スペクタクルの大作感はあまりありません。ただし、製作田中友幸、監督本多猪四郎、特技監督円谷英二の特撮映画定番トリオが担当しています。

映画の前半はいわゆる秘境ものでして、東北の奥地が日本のチベットと表現されているのが、今では問題になるそうですが、とにかく、都会人が珍しい田舎の部落で、神主の権限が強いところで、バラダギ山神を祀る人々が描かれるのです。バラダギ神のお面をかぶった人々が、神を鎮めるために歌い踊るってのを現代(と言っても、昭和33年)にやるのは問題があるのかもって気がします。でも、主人公たちはそういう地方信仰をまっこうから迷信だと否定してかかります。今だとこういう断定的な言い方をしないのかもしれませんが、高度成長の宇宙時代(人工衛星で盛り上がっているころ)には、これが普通なのかもしれません。でも、迷信を否定した先が怪獣バランですから、そういう意味ではのどかな時代だとも言えます。

バランが登場してからは、自衛隊との攻防戦のみで描かれていまして、湖から追い出されたバランが部落を破壊し、自衛隊の攻撃にもびくともしないところを見せます。そして、意外やムササビのように空を飛ぶというサプライズを見せた後、海中を移動するバランと艦隊との戦い、さらには空からのミサイル攻撃となり、羽田に上陸してからは戦車隊との攻防になるという、怪獣映画の一つの典型を見せてくれます。人間側にはほとんどドラマはなく、主人公は事件の目撃者以上のポジションは取らないのですが、それでも1時間半弱を楽しませる内容にはなっていました。

ただ、東宝の怪獣映画の中では、今ひとつステータスが低いのも事実でして、それは盛り上がりを欠くという点に集約されると思います。バランが壊すものは、岩屋部落と羽田空港というのは、都市破壊というにはスケールが小さく、また、怪獣の存在のキャラが弱いので、怪獣そのものに映画を支えるパワーがなかったということがあります。ゴジラは原水爆の落とし子であり、ラドンには大自然の驚異というキャラクターが与えられていたのですが、バランはたまたまそこにいたでかいトカゲ以上のものでなく、大暴れするわけでもなく、強大な武器も持っていません。そこがリアルなのだと言えば、そうなのですが、映画にするなら、さらにドラマなりキャラクターなりを与えてあげないと、バランが引き立たないのです。

バランは造形がすばらしく、特撮にもリアルな絵が多いのですが、やはり地味な印象になってしまったのは、脚本が弱いのかもしれません。もっとバラダギ山神の部分を膨らませてくれたら、キャラも立ったのかもしれませんが、そこを迷信で片付けてしまったのが映画の限界だったのかしらん。

伊福部昭の音楽は、コーラスによってバラダギ山神を歌い上げたテーマ曲が素晴らしかったのですが、後半の自衛隊を描写するマーチに今一つ元気がないように思えました。

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No title

hiromtb2007さん、コメントありがとうございます。へえ、バランも護国怪獣の候補だったのですか。ゴジラと戦うとどんな絵になったか興味あります。この映画って、主人公が出てこなければ、バランはバラダギ山神のままで、岩屋部落も無事だったという、「文明人要らんことする」映画だったのですよ、実は。

No title

「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣大決戦」は本来バラン・バラゴン・アンギラス対ゴジラだったのだとか・・・仰り通り魅力的な怪獣なんですけどネ・・・(苦笑^^;
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Yahooブログから引っ越してきました。静岡出身の横浜市民で映画とサントラのファンです。よろしくお願いいたします。

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