FC2ブログ

「恐怖の足跡」はホラーファンには一見のオススメ

昭和37年(1962年)の映画「恐怖の足跡」をDVDで観ました。

アメリカの田舎町、車の競走をやってた若者の車が橋から川に落ちてしまい、乗っていた若い女性3人のうち、メアリー(キャンディス・ヒリゴス)だけがなぜか川から自力で上がってきます。教会のパイプオルガン奏者だった彼女はユタ州の教会へ移り、新たにパイプオルガン奏者の職を得ます。ところが、車の窓や下宿屋に薄気味悪い顔をした謎の男が姿を現し始めるのです。そして、海辺の遊園地の廃墟がなぜか気になって仕方なくなり、デパートにいるときには全ての音が聞こえなくなり、彼女の存在を誰も認識しなくなるといった怪奇現象が起こるのです。たまたま出会った医師は、強烈な事故の体験がもたらした幻覚だろうと言うのですが、彼女にはそうは思えません。そして、自分の下宿にも男が現れ、その町を去る決意をするのですが、なぜか、遊園地の廃墟へと向かってしまうのでした。果たして、遊園地にどんな秘密があるのか、そして謎の気味悪い男の正体は?

日本では劇場未公開ながらカルト映画だという評判だったので、食指が動きました。ちょっと「呪われたジェシカ」に似ているというのも気になった点でした。「呪われたジェシカ」というのは、吸血鬼ものなんですが、ヒロインを悩ますものが現実なのか幻想なのかよくわからないところがあって、その見せ方が大変怖かったです。深夜テレビで観たのですが、それは怖い映画だったのです。そして、もう一つ、この類のホラーサスペンスの典型ともいうべき結末を持っているのです。監督のハーク・カーヴェイはこれ以外に名前を聞かないのですが、突拍子もない怪奇な話を手堅くまとめています。

メアリーという女性はヒロインとしては普通の女性として描かれているのですが、あまり人付き合いが好きではない内向的な女性です。オルガン奏者としては優秀なようなんですが、人前に出るのを嫌ったり、向かいの部屋の男の誘いにもつれなくするなど、どっちかという変人だと思われちゃうタイプ。そんな彼女ですから、不気味な顔をあちこちで見かけてもそれを誰かに相談できないという設定はうまいと思いました。やっと、相談できた相手は医者で、彼女の妄想だと言われてしまいます。ただ、そう言われた彼女は、自分の心の問題なら自分で何とかしてみせると言い切ります。今の精神医学だと、それでも外的療法があるんですが、当時はどんなもんだったのかちょっと気になります。やはり精神的なものは本人が自力で克服することが第一だったのかもしれません。

この先は映画の結末に触れますのでご注意ください。

それでも、謎の不気味な男は彼女の周囲に現れ、オルガンを弾く彼女にその不気味な男のイメージがとりつくシーンがなかなかに圧巻で、その幻想の中にも、遊園地の廃墟が現れます。あの廃墟に何かあるに違いないと思って、そこへ出かけても最初は何も見つかりません。しかし、自分の部屋の中にまで不気味な男が現れるに及んでこの町を出る決意をするメアリーを、また自分の存在が他人に見えなくなるという症状が襲うのです。完全に外界から存在を認知されなくなった彼女が町をさまようシーンが見所です。そして、乗り込んだバスには死人のような不気味な連中が彼女を待ち構えていたというショック描写もありますが、町を出ようとした以降の出来事は、一応夢オチとして決着がつきます。遊園地の廃墟に再度向かった彼女ですが、そこでは死人のような連中が踊りながら彼女に迫ってくるのです。そして、その踊りの中に自分の姿を見つけ出し、半狂乱になった彼女を死人たちは追ってきます。白日のもとに砂浜を逃げ惑う彼女を死人たちは追いかけてくるのです。これも夢オチかと思うと、砂浜に彼女の足跡とそれが途中で消えているのを保安官や医師が発見するのです。一体、あのちょっとおかしな女はどこへ行ってしまったのか。

ここでさらにオチがついて、最初の事故を起こした車が泥の川底からやっと引き上げられると、その中にメアリーの死体もあったというところでエンドマークが出ます。要は、メアリーは最初から事故で死んでいて、それがどう間違えたのか現世にさ迷い出てしまい、最期は死人の世界に連れ去られたという解釈ができます。ただ、それも一つの解釈でしかなく、いろいろな読み方ができる内容になっているのが面白い映画だと言えましょう。また、ホラー映画の様々な設定や要素がこの映画にはたくさん描かれていることからカルトと呼ばれるようになったと思われます。自分が他人から認識されずに孤独に追い込まれてしまうヒロイン、なぜか遊園地の廃墟が気になって頭から放れない強迫観念、白塗りの男があちこちに姿を現す不気味さ、ゾンビの如く群れをなして襲ってくる死人たち、怪現象が実は夢であったという展開など、ジョン・クリフォードの脚本は説明を省いて、メアリーの周囲に起こる不気味な出来事だけをうまく並べて、ラストでぞっとさせる後味を与えることに成功しています。

40年以上前の映画でありながら、ヒロインのキャラクター、医師の診断など無理のないもので、現代の物語としても十分に通用する内容になっています。こういうオチを持った映画は以降に何本も作られていますが、そのルーツとしても注目すべきものがあり、その出来栄えも決して見劣りしない内容だったと思います。今回はテレビの画面で観たのですが、映画館のスクリーンで観たら相当怖いだろうと思わせるものがありました。モノクロ映画ならではの怖さを感じさせるところもありまして、傑作とは言いがたく、見様によっては珍品ということにもなるですが、ホラー映画好きには一見の価値のある映画と申せましょう。

スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

No title

ダムダム人さん、コメントありがとうございます。この映画の着色バージョンがあるんですね。遊園地の廃墟は、あの世とこの世の境目のような場所なのかな。でも、どこを切っても論理的でない展開なので、あえて説明できなくてもいいのかも。不思議なイメージをうまくつないで何となく納得させちゃう面白い映画でした。

No title

この作品は静岡に長期出張だった時にカラーバージョンのDVDを
買ってみました。
なんでも、「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」にも影響を
与えたそうで、なるほどと思いました。

ただ、私の見たのは無理に「色をつけた」ので
オリジナルの「重い雰囲気」が若干薄れた感じがしました。

あの遊園地の廃墟は彼女の幻想ではなく実在していたのですよね?
(最後まであの場所の持つ意味が分かりませんでした。)

No title

pu-koさん、コメント&TBありがとうございます。モノクロの画面が不思議感と怖さの両方を運んでくるあたりは感心しちゃいました。確かに全体に流れる浮遊感ありましたね。それがラストへの伏線になっているのですから、見事だと思います。

No title

さすがホラー好きのeinhornさん、DVDもお持ちで、ちゃんと記事にされてたんですね。
確かに不気味さが畳み掛けられる感じで、これを映画館で観たら相当怖いだろうと思います。
自宅ホームシアターのスクリーンでさえ、再見したくないですもん。
夢とも現実とも判断がつかないような浮遊感といい、最後に感じる切なさといい、コンパクトな作品ながら印象に残る珍品。いや名作と呼びたいです。
TBさせてくださいね。
プロフィール

einhorn2233

Author:einhorn2233
Yahooブログから引っ越してきました。静岡出身の横浜市民で映画とサントラのファンです。よろしくお願いいたします。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR