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「レイチェルの結婚」は苦いホームドラマだけど、後味は悪くないです

今回は川崎チネチッタ9で、「レイチェルの結婚」を久々の初日で観て来ました。ここは、スクリーン位置が右に寄ってるので、座席の中央を確保したいときは注意しないといけない映画館。

どこかの施設の前で迎えの車を待つキム(アン・ハサウェイ)。父(ビル・アーウィン)と義理の母が迎えに来ます。キムの姉のレイチェル(ローズマリー・デウィット)が結婚するというので、久しぶりに家に帰ってきたキムなのですが、周囲は何だかぎこちない。それ以上に本人が妙にピリピリしています。キムが出かけた先は、薬物依存者の集会です。どうやら、彼女は薬物依存から施設に入っていたようです。新婦の第一付添人が自分でないことに怒りの感情を見せるキムを、かなり気遣うレイチェル。父もやたらとキムに気を使ってるみたいで、何だか不自然。それでも、結婚式に向けて家族の引き合わせが行われ、レイチェルと彼氏は幸せそう。でも、レイチェルと家族の気まずさの原因は彼女の薬物依存だけではないみたいです。幸せのイベントの中で浮き上がっちゃうキム、果たして、家族との関係を修復できるのでしょうか。

シドニー・ルメットの娘ジェニー・ルメットが脚本を書いて、「羊たちの沈黙」「フィラデルフィア」のジョナサン・デミが監督しています。デミの作品って、最近まるで劇場公開されていないんですが、その未公開作品の一つ「シャレード」のリメイクの評判は散々だったようです。この作品もハリウッドのメジャー作品とは思えない内容で、ある一家の2日間を描いた、苦いホームドラマになっています。

久しぶりに家族と再会したキムですが、どこか不安定な感じがして、周囲も不自然に気を使っているという感じ。レイチェルは妹を歓迎してるんですけど、父親の異常なまでの妹への気の使いぶりが気に入りません。一方で、キムはやっぱり自分は疎外されていると必要以上に思い込んでしまっています。結婚式の前日のパーティの席で、ご両家の友人親戚がスピーチする中で、自己チューなスピーチをして空気を凍らせてしまうあたり、かなり厄介な人間みたいです。自分で自分を厄介な奴だと認識している分、さらに厄介な奴というキャラをアン・ハサウェイはリアルに熱演しています。あちこちの映画祭で主演女優賞を取っただけのことはあって、「パッセンジャーズ」のふわふわしたキャラとは別人のようなリアル困ったちゃんが見事です。一方のレイチェルを演じたローズマリー・デウィットも結婚式という人生の晴れの門出ながら、問題児の妹の出現にマリッジブルーどころではなくなる花嫁を細やかに演じています。

物語が進展するにつれて、キムの困ったちゃんぶりが観客にもじわじわと伝わってくる構成がうまいです。どうやら、過去に家族に色々と迷惑をかけているみたいなんですが、そのことにキムに自責の念がないことを姉は不満に感じています。一方で父親の態度は、そんな問題ありの妹にばかり気を使っているみたいで、それが姉の不満を余計目に募らせているのです。ああ、こういう関係ってのは、なまじ家族だからこそ乗り越えられない壁があるよなあってのが伝わってきて、人の気持ちを汲み取ることって大変なんだと改めて実感させられます。そして、キムがただの問題児ではなかったことがわかってきます。




この先は結末に触れますのでご注意ください。



キムは、16歳のとき、鎮痛剤を山ほど飲んでラリってるときに、弟を乗せて車を運転して事故を起こし、弟を死なせてしまった過去を持っていました。そのことから、キムは自分自身を許すことができないでいました。だからこそ、父親は、キムのことを気遣っていました。一方で、キムは誰からの赦しも得ることができないで苦しんでいたのです。家族にとって、彼女は辛い過去を思い起こさせる存在ではあるのですが、家族として突き放せない、キムはそのことを知っていて、でも家族だから愛し愛されたいと願っている、そんなある意味ねじれた関係は、お互いが歩み寄れば摩擦を起こし、離れれば不安になる関係と言えましょう。アカの他人なら、恨むにしても忘れるにしても、自分の中で感情を割り切ればいいことなのですが、家族というしがらみは自分だけでクローズさせることが難しいようです。

一方、キムやレイチェルの実の母親で、父親とは離婚後、再婚してるアビーは、血がつながっているのに、家族という関係から、自分を切り離しているので、父親やレイチェルのような葛藤がありません。その分、明るいけど、何だか情の薄さを感じてしまうアビーをデブラ・ウィンガーが好演しています。登場シーンは少ないですが、レイチェルに「なぜ、薬物依存症の私に弟を任せたの。」と問い詰められて、文字通り突っぱねちゃうシーンが印象的で、多少薄情だなあと思う半面、逆境を乗り越える一つのやり方として、こういうのもありかなと思わせる説得力がありました。

キムとレイチェルが美容院に行ったとき、キムの知り合いに遭遇し、彼女が施設にいたとき、不幸な生い立ちをでっち上げて、周囲の同情を誘っていたことがわかってしまい、大喧嘩になってしまって、キムはどこかへ行ってしまいます。彼女は母親アビーのところへ行くのですが、そこで殴り合いのようになってしまったアビーは車を茂みに突っ込ませて、顔の痣を作ったまま、結婚式に出ることになります。そして、結婚式は無事に終わり、キムは施設の女性の車に乗り込みます。これは再び施設へ戻っていくことを意味しているのかな?というところで映画は終わります。

雨降っても地固まらない家族の有り様をデミの演出はドラマ性を廃してスケッチのような見せ方で描きました。デクラン・クインの手持ちカメラがドキュメンタリーを撮るかのように人物を追いかけ、アップのショットが各々の想いを汲み取っていきます。若干、カメラ動きすぎの感もありましたが、狙ってやっていることのようです。フィルムでなく、HDカメラによる撮影というのもドキュメンタリー感に一役買っているのかもしれません。

辛い過去を持った家族ではあるのですが、なかなかお互いの気持ちをストレートにぶつけあうことができません。いや、これまでにも何度か衝突はしていると思わせるのですが、それで修復できない関係だというあきらめのようなものが感じられました。心を通じ合わせることに疲れたという感じもするのです。それでも、切れない絆がお互いにあるので、時として、近づいては遠ざかることを繰り返しているように見えました。人間が成長(成熟と呼ぶ方が当たっているかな)していく中で、その溝が段々と埋まっていくのではないかなという期待を感じさせるラストではありました。家族っていいなあ、と思うか、家族って厄介だなって思うか、それは人それぞれなのでしょうけど、でも、家族だからしょうがないなあっていう余韻が残るあたりに娯楽映画としての旨味を感じました。

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コメント

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einhorn2233
もくれんさん、コメント&TBありがとうございました。結局、あの家にはヒロインの居場所がなかったのかなと思うと切ない結末でもありました。私は家族の厄介さにまだ直面したことがないのですが、うまいこと、本音を出さずにやりすごすのは難しいのかなって思います。

No title

木蓮
家族って大切だから厄介なんですよね。
見てる間は苦しかったけど、最後落ち着いて良かったです。
TBさせてくださいね。

No title

einhorn2233
なぎさん、コメント&TBありがとうございました。何度も観ないといけないような映画は、私は「相性が悪い」「縁がない」映画だと思うようにしてます。昔みたいに気に入った映画を続けてみることができなくなっちゃいましたから、一度観てダメだったら、この映画とはご縁がなかったのかなあって割り切っちゃいます。

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なぎ
何度か観ると、いろいろ考えさせられるのかもしれませんが、
どうも苦手なタイプの内容でした(^^ゞ
TBお返しさせてくださいね☆
頂いたTBがちょうど2200個目でした。ありがとうございました(^^)

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einhorn2233
くるみさん、コメント&TBありがとうございます。この映画、展開があまりにも淡々としているので、家で観るにはちょっとしんどいかもしれませんね。結婚式のシーンなんていつまでやるの?なんて思ってしまいましたもの。

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くるみ
公開されなかったので・・・DVD鑑賞になってしまいました^^;
切ないシーンは重たく、温かい場面では温かい気持ちに、結婚式のシーンは楽しく
ホームビデオを観ているような感覚。キャストのみさんの即興演技が素晴らしいと。
トラバお願いします!

No title

einhorn2233
恋さん、コメント&TBありがとうございます。「家族だから×××」ってことが山ほどあるんですが、その×××の部分をいっぱい盛り込んであるのが面白い映画でした。お父さんの必死の気配りぶりが印象的でした。何だか気の毒になっちゃって。

No title

ここまで深刻なことがないにしろ、家族って色々ありますよね。。
殆どセリフは役者さんが考えて喋っている、というのには驚きましたけれど、誰もが持つ家族像というものが共通している部分があるのは確かかもしれません ^^
トラバさせて下さいませ。

No title

einhorn2233
のびたさん、コメント&TBありがとうございます。ドグマ方式ってありましたね。私一本だけ「ラバーズ」ってのを観た記憶がありますけど、ビデオ映像をスクリーンで見せられてる感じが今イチでした。今ならデジタルビデオでかなり鮮明になるんですけど。確かに時間の切り取り方はハリウッド的ではなかったように思います。でも、ドラマチックに盛り上げるにはヘビー過ぎる設定ではありました。

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出木杉のびた
え、デミ監督、「シャレード」のリメイク撮ってたのですか。全然知りませんでした。でも評判良くないなら、観なくてもいいですね。
この作品も手持ちカメラに、BGMも映画内で演奏されている音楽だけと、ドグマ方式で撮っていて、すっかり反ハリウッドなのではないでしょうか。
アン・ハサウェイの演技が、痛々しいくらいに素晴らしかったです。

No title

einhorn2233
Choroさん、コメント&TBありがとうございます。重いテーマを突き詰めない演出は見ていてほっとするものがある一方で、結局は先送りして時間に頼るしかないなあって後味が残りました。どうにもならないものはどうにもならない、それでも、その場を取り繕うところが人間の善意で、それはちょっと滑稽でもあるという映画でした。

No title

einhorn2233
Cartoucheさん、コメント&TBありがとうございます。私みたいに薄情な人間だと、この家族は離れて暮らすのが一番の癒しじゃないかとも思ってしまうのですが、それでも家族ならでは(厄介な)絆があるようですね。でも、そうまでするほど、家族は大事なのかってのは、文化の違いも感じてしまいました。

No title

choro
家族だからこそ割り切れないので難しいものもありますよね。
重いテーマながら重くなりすぎない演出はバランスがよかったですね。
それぞれのキャストの巧さも光っていました。
こちらからもTBさせてくださいね♪

No title

car*ou*he*ak
ほんと家族っていいものだし、反面厄介なものでもありますね。
このような事件があった後ではなかなか再生はむずかしそうで
痛々しかったです。
でもインド風の結婚式も素敵で、楽しめました。
TBさせてくださいね。

No title

einhorn2233
pu-koさん、コメント&TBありがとうございます。私自身、家族と腹を割って会話したことがないってのもあって、こういう題材をリアルに見せた脚本演出は評価しちゃいます。切っても切れないからこそ、言えないことってありますもの。むしろ、この映画の薬物依存者の会なんかの方が思いのたけをぶちまけやすいかも。

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pu-ko
そうなんですよね。ありきたりの映画であれば家族の関係の修復と言うハッピーエンドで終るところ、
本作では家族の問題ってそんなに簡単ではないというリアルな部分を見せてくれました。
それでも家族なんだから、、いつかは分り合える日が来るに違いない。レイチェルの新しい命の誕生ももしかしたらいい光となるかもと思えました。
母親役に対する分析流石ですね。確かに非情に映りましたが、唯一の男の子を亡くした母親ですから
その哀しみが大き過ぎたからこそ、ああして切り離すしか術がなかったのかもですね。
アン・ハサウェイは上手かったですね。TBさせてください。
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