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「ようこそ、アムステルダム国立美術館」はどっかに見せ場とか突っ込みどころが欲しい

今回は新作の「ようこそ、アムステルダム国立美術館へ」を静岡シネギャラリー1で観てきました。もともとがビデオ素材なので、DLPによる上映でした。ここは、売店もないし、飲食物一切持ち込み禁止なんですが、それでもラインナップが充実しているので、結構混雑してます。ロビーにはキネマ旬報のバックナンバーが置いてあったりして、いかにも映画ファンだけいらっしゃいの雰囲気。

2004年、アムステルダム国立美術館の大々的な改装が行われるプロジェクトが始まりました。オープンは2008年の予定。設計は、コンペの結果、スペインの建築家が行うこととなりました。まず、美術館の南北を通っている通路の扱いで、揉めてしまいます。自転車使う人からブーイングが出てきて、早速の紛糾。とにかく、話を進めたい館長なのですが、関係者の思惑とかお役所の認可が遅いとかで、なかなか着工できません。学芸員が展示物をああだこうだと言ってるうちに、時間は経過してしまい、今度は関係者のテンションが落ちてきちゃいます。工事業者を入札で決めようとしたら、一社しか入札してこないとか、プロジェクトは混沌としてきちゃいます。結局、2009年の時点で、まだ着工できないでいるうちに館長は辞職。今のところ、オープン予定は2013年だそうです。はあ、そうですか。

私は、この映画の予告編を観ていたので、この映画が、美術館改築をめぐるドタバタを描いたドキュメンタリーだと知ってましたけど、タイトルだけでは、この映画を、美術館紹介映画だと思っちゃう人がいるかもしれません。上映中、場内からイビキが聞こえてきたのですが、確かに美術品目当てのお客さんだったら「話が違う」って思うかもしれません。オープニングは古い美術館の壁が壊されて、そこに光が入ってくるという幻想的な絵なんですが、映像がビデオクオリティなので、劇場のスクリーンでは見劣りしちゃうのは減点。そこから、先は美術館改築をめぐるたくさんの人へのインタビューを中心に、2004年から2009年の経緯を、ドキュメンタリーとして見せてくれます。監督はドキュメンタリーを中心に活躍しているというウケ・ホーヘンダイクという人。

冒頭で、描かれるのは、美術館の中心を貫く通路の問題。この通路は、歩行者と自転車が活用してきたものなんですが、改築後のデザインだと、自転車が通りづらくなるので、サイクリスト(初めて聞いた言葉です)のみなさんが強力に反対し始めちゃうのです。サイクリスト協会ってのがあって、これが圧力をかけてきて、さらに市民運動家の皆さんも一緒に騒ぐので、このデザインを変えざるを得なくなります。確かに、国民の財産である美術館が、外国のデザイナーの思いつきでいいようにされてはかなわないってのはわかります。実用がデザインより後回しにされても困りますもの。そして、さらに美術館内に建てられることになっていたタワーが美観的によくないということで、ちっちゃくされちゃうことになります。これなんかは、デザインの問題なので、デザイナーが振り回されてるなあって気がします。コンペに勝って採用されたのに、後から色々言われてテンションが下がっていくデザイナーの姿は気の毒ではあるのですが、万人のためにあるものですから、それは仕方のないことだという気もしてきます。

一方で、展示物をどうしようかという検討が学芸員の間でされていきます。日本の仁王像を取り寄せるくだりとかも登場します。また、美術館の警備員であるとか、美術品の補修員といった美術館に関わる人々の様子も描かれます。所蔵品の中で、展示されているのはごく一部で、どれをどこに展示するのかということに、学芸員のセンスが要求されるなど、美術館を楽しむための裏モノとしても楽しむことができます。

と、言うと、改造のドタバタと、美術館の裏側の両方が見られるボリューム満点の映画のようにも思えてしまうのですが、全体の印象では、それほどのボリュームはありません。あれもこれも盛り込んでみたものの、みんな中途半端で、117分というそれなりの長さがある割には、見終わった印象は、「何か物足りない」のですよ。ホーヘンダイクの演出は、アムステルダム美術館に関するものを館長を中心に並べてはいるのですが、そこから、今ひとつ浮かび上がるものがありません。特に、なぜ美術館の改装が遅れに遅れているのかという一番面白そうなところがよくわからない。ここで示される改装に関するトラブルは、美術ド素人の私でも何となく察しがつくものです。入札者が一者しかないなんて、絶対、そうなるまでの業者間のせめぎあいや、美術館側の無理難題とか色々とあるはずなんですが、そこは全然示してくれません。サイクリストとつるんだ市民運動家がうっとうしいという視点だけはなぜか明確に見えてくるのですが、それ以外は、何となく遅れてますという風にしか見えないです。また、アムステルダム美術館だからこそ、こんなにゴタゴタするのだというところも出てきません。

全体にあっさりした見せ方の割には、館長の言動は丁寧に拾っているように見えます。言い方は悪いですが、館長に密着取材するかわりに、あまりゴタゴタの核は描かないようにしているようにも感じられてしまうのです。ラスト近く、館長の辞任に伴い、後任は誰かとか、彼の辞任記念コンサートなんて展開を延々と見せられるのは、正直言って退屈でした。美術館の改装というイベントには、単なる利権とお金のせめぎあいだけでない、美術館ならではの、アートな葛藤があるんだろうなって期待もしたのですが、その辺への突っ込みは一切なし。いや、突っ込みが感じられたのは、サイクリストの自転車通路の問題だけで、全体に突っ込みがないのです。面白いタイミングでいい題材を取り扱いながら、何だかもったいないという印象でした。

一方で、建物の取り壊しとか、補修員や警備員の描写にアートっぽい絵作りをしているのですが、それがビデオ映像なので、映画館のスクリーンに乗せるには解像度が貧弱で物足りませんでした。

というわけで、実物を見ないで、話だけ聞くと、すごく面白そうに思えるのに、実物を見てみれば、それほどでもない映画でした。美術館ファンの方にも、美術館の改装裏話を期待する方にも、あまりオススメすることはできません。NHK特集の中の下クラスの出来栄えといえば、伝わりますでしょうか。

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コメント

No title

einhorn2233
恋さん、コメントありがとうございます。こっちとしては「大人の事情」の部分を知りたいんですが、その辺はスルーなんです。ちょっとアートで、ちょっと下世話なつくりを楽しめればよいのですが、オヤジとしては「どっちか決めて、ちゃんとやれ!」って突っ込んでしまいました。でも、観る前は面白そうなんですよ、この映画。

No title

「大人の事情」もあるのでしょうねえ。。
傍から観ると、結構面白そうなんですけどね。←無責任。。^^;
なんとなく一番下の文章から想像させていただいています♪
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