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オリジナル「死刑台のエレベーター」はお話がサクサク進んで心地よく乗れます

リメイクの「死刑台のエレベーター」を観て、ボロクソ言う記事を書いてしまったので、ここはやはりオリジナルを観ておかなくてということで、DVDをゲットしました。たまってたポイントを使ったら、千円ちょっとで買えてラッキーというのは置いといても、やっぱり観てよかったです。

会社社長の右腕ジュリアン(モーリス・ロネ)と社長夫人のフロランス(モーリス・ロネ)は不倫関係。そして、ついに二人は共謀して社長殺しを実行に移します。ジュリアンは社長を射殺して自殺したように見せかけるところまでは成功しました。ところが現場の証拠品を取りに現場に戻ったとき、エレベータに閉じ込められてしまいます。そして、その隙に彼の車がチンピラ、ルイと花屋の店員ヴェロニカのカップルに盗まれてしまいます。待ち合わせ場所でフロランスですが、ジュリアンは現れません。彼の車にヴェロニカの姿を目撃して、一抹の不安と疑惑を持ちながら、彼を探してパリの街をさまようフロランス。一方、車を盗んだカップルは、スピード競争がもとで、ドイツ人旅行者カップルと意気投合しますが、彼らの車をも盗もうとしたところを見咎められ、ルイはドイツ人カップルを銃で殺してしまいます。この事件で、残っていた車と彼らがジュリアンの名前を使っていたことから、ジュリアンが指名手配されてしまいます。そして、夜が明けてビルの主電源が入って、エレベーターが動き出し、ジュリアンはビルから出ることができるのですが、立ち寄ったカフェで警察につかまってしまいます。殺人事件にヴェロニカが一枚噛んでいると核心したフロレンスは彼女のアパートを訪ねて、彼女らを詰問します。しかし、ルイは彼が犯人であることを示す唯一の証拠品があることを知って、それを手に入れるべくバイクを走らせるのですが.....。

リメイク版を先に観てしまって、「うーん、これはダメかな」と思った後で、オリジナルに臨んだわけですが、こういう鑑賞の仕方もあるなあってのは発見でした。(半分、負け惜しみ)

まず、リメイク版はオリジナルとほぼ同じストーリーをなぞっていることがわかって、そこがまず意外でした。だって、あんな偶然の重なる話はないよなあって思いましたもの。でも、オリジナルで出来過ぎの偶然は、ヒロインが盗まれた車の助手席に花屋の店員がいるのを目撃したくらいでして、それ以外の偶然は、リメイク版で無理にとってつけたようです。ヒロインのモノローグが入る趣向も同じですし、警察の動きがうますぎるのも同じ、オリジナルもかなりキザというかかっこつけた映画でした。

でも、オリジナルの方が面白くできてました。それは、お話がサクサクと進むからです。オープニングで二人が殺人計画の電話をしていてから犯行、エレベーターに閉じ込められるまでは、一気に展開します。必要最低限の説明で、お話をぐいぐいと引っ張っていくのですが、その展開に素直の乗れるので、突っ込み入れるヒマがありません。ラストの切って落とすような演出もムダがなく、最後にちょいと気取ってみましたという感じのモノローグがささやかな余韻となっています。

また、モノクロ画面の美しさも観ていて楽しめる一因になっています。アンリ・ドカエの撮影は、光源を意識した絵作りがシャープな陰影を出していまして、夜間シーンでも、画面の隅々に光を入れることで、絵がスカスカにならないのです。日本のカラー映画って、画面が暗いという印象がありまして、リメイク版も、昼も夜も絵が暗めだったので、オリジナルの抜けるような明るさが大変印象に残りました。リメイク版は、やたら絵の具を盛り付けた油絵みたいな感じで、それが好きな人にはOKなのでしょうけど、映像全体がローキーになってしまい、光と影のメリハリが少なめになります。一方のオリジナルの絵は、陰影のコントラストが明快で、映像全体に光が溢れているように感じられます。どっちがいいかは、好みになるのでしょうが、私はオリジナルの映像をとります。



この先は結末に触れますので、ご注意ください。(まあ、それほど大げさなラストじゃないですが)



ルイにとっての殺人の証拠とは、モーテルで撮られた写真でした。そのカメラはジュリアンのもので、たまたま車にあったものをヴェロニカが持ち出したものでした。そして、そのフィルムはホテルの写真屋に預けられていたのです。しかし、写真屋に行ったルイを待ち受けていたのは先回りしていた刑事でした。ルイは逮捕され、そこへルイを尾行していたフロランスも現れます。刑事は、フロランスに他の写真もあるんですよ、彼女を促します。そこには、ジュリアンとフロレンスの幸せそうな写真が何枚もあったのでした。ここで、彼女のモノローグが入って、おしまい。

ラストは、刑事コロンボみたいなオチが鮮やかに決まると同時に、初めて主人公二人の愛情がどんなものか見えてくるという、なかなかにしゃれたものです。リメイク版は同じ趣向をやってる筈なのに、なぜかびしっと決まらないでダラダラって感じになっちゃってました。オリジナル版は、きちんとミステリーとメロドラマの両方を完結させているという点がお見事でした。

とは言うものの、主人公がエレベーターに閉じ込められて、ヒロインがパリの夜を彼を探して歩き回るというあたりは、ドラマとしてはあまり面白いものではありませんでした。マイルス・デイビスの音楽を聞かせ、アンリ・ドカエの絵を見せるための時間のように思えたのですが、こう言うと、オリジナルまでけなしてることになるのかしら。でも、娯楽映画として、この時間も楽しめたのは事実ですし、音と映像だけで見せる映画もあっていいと思いますもの。そして、後半はミステリーの展開となり、主人公がドイツ人カップル殺人犯として逮捕されてしまい、それを救うべくフロレンスが行動を起こすという展開は、物語で見せる映画になっています。

オリジナルとリメイク版の細かい違いを挙げていくときりがないですが、一つだけ挙げるなら、演出のテンポの違いでしょう。オリジナルはとにかくお話に乗せられてしまう語り口のうまさがあります。一方、リメイク版は突っ込みの入る隙が多すぎたようです。両方とも、同じウソ(フィクション)をついているのですが、片方には気持ちよく騙されちゃうのに、もう片方はウソがバレバレでイライラしちゃうという感じなのですが、伝わりますでしょうか。

〔追記〕
リメイク版の記事に、登場人物の描き方が浅いとか足りないといった文句をつけていたのですが、それはオリジナルも同じだったことを追記しておきます。登場人物のキャラの深みがないのは、オリジナルもリメイク版でも同じなのですが、オリジナルはその点が映画に対する不満になりませんでした。登場人物をきっちり描くような作りになっていませんし、そんなことが気にならないほど、面白かったのです。まあ、リメイク版の方が登場人物にいかにもな大芝居をさせているところが多くて、そこに突っ込みが入る余地があったのかなって、今、気がつきました。
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No title

もくれんさん、コメント&TBありがとうございます。リメイクはですねえ、もうダメダメ映画の典型でした。ボロカスに突っ込み入れまくるというのが最良の楽しみ方に思えてしまう感じでしょうか。ヒロインの心の動きをスマートにかっこよく、そして無駄なく見せているあたりに演出のうまさを感じました。

No title

( ̄m ̄〃)ぷぷっ!、リメイクはどちらへ行っても散々ですね。
まあ、名作をリメイクってのはそれだけでリスキーですよね。

オリジナルは良かったですね。
物語のサスペンス性は弱いものの、ジャンヌ・モローの心の不安がこちらにも伝わってくるような演出で、気をもんでしましました。
結局、死刑台のエレベーターに乗ってたのは誰なのかと考えさせられるラストも良かったです。
こちらもTBさせてくださいね。

No title

タケルさん、コメントありがとうございます。この映画は、音楽や映像の仕掛けの部分で前半点数を稼いで、後半はミステリタッチで娯楽映画としての得点を稼いでいるという感じでした。「地下鉄街のザジ」は未見なので、チェックしてみます。マルの映画だと「鬼火」を思い出しました。雰囲気と音楽で見せ切っちゃうところが似ているのかなって気がしまして。

No title

pu-koさん、コメント&TBありがとうございます。映画史に残る名画かと言われると「そうかなあ?」と思いつつ、とにかくリメイク版と比べて面白くできてました。ヒロインが町の中を歩き回るシーンも、光がたくさん感じられて画面の密度が高いように感じました。

No title

見ましたか
俺も見直そうかな♪

【地下鉄のザジ】は何度も見たし、
【~ザジ】を見て【死刑台~】を振り返ると、
ルイマルのヤリクチが「腑におちる」んじゃないかな?

「面白いけど、ヒッチコックまがい?」
ってのが、昔見た時の印象でした。

「《映画》が見たい!」って人には良いかも知れないけど、
「人間が見たい!」って人には、ルイマルは物足りないかな?

日本版【死刑台~】は、
そこを読み違えて、
「《人間》をベースにしたサスペンス」を作り損ねるべくして失敗した

ああ、失敗だわって余裕を持って見た分、
評価も甘くなったのかもね。

もし未見なら【地下鉄~】をお薦めします

No title

わーーい、ご覧なりましたね。
リメイクは現代に置き換わってる分、無理を重ねたものになってるだろうと思いましたが、なるほどテンポというのも重要なポイントなのですね。
そうそう、ラストのあの写真だけで、二人のロマンスを描ききる手法も見事ですよね。
夜の街をウロウロも確かに面白くはないけどw乾いた感じで好きでした。
TBさせてくださいね。
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einhorn2233

Author:einhorn2233
Yahooブログから引っ越してきました。静岡出身の横浜市民で映画とサントラのファンです。よろしくお願いいたします。

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