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「ピノイ・サンデー」は、題材が興味深いのですが、映画としてはどうかなー?

恋さんのブログで知ったNHKのアジア・フィルム・フェスティバル、その中の1本「ピノイ・サンデー」を観ました。タイトルにでかでかとNHKのロゴマークが出るので、かなり出資してるのかしら。かつて、NHKが大盤振る舞いした底抜けSF超大作「クライシス2050」を思い出しました。別所哲也の黒歴史、あれで世界にデビューとか特番やってたもんなあ。結局、モーリス・ジャールのテーマ曲だけがごく一部で生き残っただけの映画でした。

フィリピンから台湾の工場に出稼ぎにきているダド(バヤニ・アグバヤニ)とマヌエル(エピィ・キソン)のある日曜日。ダドは妻子を本国に置いて、一方でアナ(メリル・ソリアーノ)とも付き合ってますが、妻子を大事にしたい彼はアナに別れ話を切り出して一悶着あったところです。マヌエルはカラオケ店で働くセリア(アレッサンドラ・ロッシ)をくどこうとしてますが相手にされません。二人はひょんなことから捨ててあった赤いソファを見つけます。マヌエルはこれを工場の寮の屋上に置きたいと言い出し、そのソファをかついで、寮まで帰ろうということになるのですが、もともとバスで出てきた市街地で拾ったもので、帰り道はかなり遠い。その上、寮の門限に遅刻してしまうと、強制送還されてしまうかもしれないというリスクも背負っています。あまり気の進まないダドですが、マヌエルの勢いに押されて、ソファを運ぶ羽目になっちゃうのですが、果たして門限までに寮に帰れるのかしら。

ドキュメンタリーで実績のある、マレーシア出身のウィ・デン・ホー監督の長編第一作です。脚本も彼自身が書いています。タガログ語台本を別の人が書いているところからして、ホー監督にとってフィリピン人は外国人ということになるようで、外国人の視点から、台湾で外国人であるフィリピン人を描いた映画ということになります。台湾で働く彼らにとって一番怖いのは強制送還されることです。そんな出稼ぎ状態の二人の休日、どっちも彼女とうまくいかなくなってます。

所帯持ちのダドは、実家の妻が怪我をしたことが気がかりでなりません。娘の誕生日のプレゼントといった荷物をまとめて国へ送るのですが、こういったシーンでホー監督はうまさを感じさせます。何てことないシーンを味わいのある絵に見せてくれます。公衆電話から家に電話するところ、ガールフレンドのアナとの夜のデート(彼女の住み込む家のおばあさんがなぜか一緒)のシーンなど、撮影のうまさもあるのですが、ドキュメンタリータッチの絵が、出稼ぎ労働者のリアルな息遣いを感じさせてくれます。一方、マヌエルは、カラオケ店の女の子セリアにお熱なのですが、セリアには別に彼氏がいて、マヌエルのことなんか相手にしてません。フィリピン人はクリスチャンが多いようで、台湾のフィリピン人が集まる日曜日のミサがあるのですが、そこには、ダドもマヌエルもセリアもアナもやってきます。母国を離れた人たちがこういうところに週に一度集まるんだあってところにも感心。ドキュメンタリーの監督らしく、こういう台湾のフィリピン人の様子を丁寧に描いていて、その映像の美しい見せ方が印象的でした。テレビの画面でそう思うのですから、劇場のスクリーンで観たい絵と言えましょう。

奥さんのことが気がかりなダドは、アナに別れをきりだすのですが、アナとしては彼と別れたくありません。それに今日は自分の誕生日なのに、よりによってそんな日に言い出すなんてとお冠状態。ダドは彼女にすまないとは思うのですが、やはり家族の方が大事です。このあたりの男女関係は日本だと不倫とか愛人関係になっちゃうのですが、この映画では否定的には描いていません。そういう関係もありだという見せ方は意外でしたが、そういう文化もあるのかなとちょっと発見気分でもあります。このあたりまでの展開は、シリアスなのかコメディなのか区別がつかない感じです。

ともあれ、ダドとマヌエルが出会って、二人でアイスを食べてたら、引越しの夫婦がソファを捨ててちゃうところから、メインの物語が始まります。二人でこれを寮まで運ぼうとするのが、コミカルなタッチで描かれます。二人がケンカしたり、バイクとぶつかってケンカになって警察に連行されちゃったりします。さらに、廃品回収のトラックに乗せてもらったのはいいのですが、居眠りしているうちにどこにいるのかわからなくなっちゃう。通りがかりの飛び降り騒ぎに巻き込まれテレビに映っちゃう。ソファで飛び降りようとした少年を救おうとした英雄なのに、取材カメラから逃げ回って逆に疑われてしまうと、まあ色々あるわけです。前半にリアルな人間描写に比べますと、急に主人公二人がコメディアンみたいな声を張り上げる芝居を始めるので、何かしっくり来ません。ホー監督は、長編映画は初めてだそうですが、前半のドキュメンタリータッチに比べると、芝居中心のドラマとしての部分は、こなれていないような印象を持ちました。マヌエルのソファへのこだわりとか、ダドの振り回され方が泥臭いコメディになっていまして、「えー、こんな話になっちゃうの?」ってちょっと残念に思ってしまいました。

川を渡るところで、ついにソファを運ぶことを挫折した二人、日も暮れてきます。ビールを飲みながら昔のことを語り合う二人、昔、二人はバンドをやっていたようで、川を流れていくソファの上で、ギターを弾きながら一曲歌います。このシーンも絵がきれいで、水中に照明を仕込んで、前半のリアルな絵とはまた違う幻想的な映像を見せます。そして、ソファの上で目を覚ます二人、バスで移動する彼らの姿と、川の中でゴミになっちゃったソファの絵が入ります。そして、海辺の夕方、なんかノンビリした二人は、フィリピンにいるようです。ふたりでバイクに乗って、「金持ちになるんだ」と話しながらエンドクレジット。と、結局、ソファは寮まで運べず、その中途のところでお話を無理やり終わらせたという印象でした。寮へ帰らなかった二人は、強制送還させられてしまったのでしょうけど、お話のスケールが前半、後半、ラストであまりに違うのは、映画としての統一感を欠いているような気がしました。出稼ぎ者のリアルな日常から、泥臭いコメディになって、ラストでちょっと人生語ってますって構成なのですよ。もっと、コメディの部分が弾んで、面白くできてれば、いい方に印象が変わったかもしれません。

二人が歌うシーンのバックに、映画に出てきた人々のスケッチ風カットを入れたりして、雰囲気を出そうとしているのですが、ソファを運ぶという設定だけ思いついたけど、結末に困っちゃったって感じなのですよ。娯楽映画としては、あまり誉められた結末ではないのですが、新人監督のアート系作品としては許されちゃうのかしら。

大筋の部分が決着つかないのが、映画としては不満なんですが、それでも、歌の絡むシーンなど印象的でして、中盤でセリアが歌うシーンも絵が美しかったですし、全体的に劇場で観るにふさわしい落ち着いた絵作りがされているところも魅力的でした。この監督さんの次の作品は期待できそうだなと思わせるところがあり、そういう意味では、観て面白い映画とも言えます。私ととっては、台湾で働くフィリピン出稼ぎ者の存在を知ることができ、その生活の一端を見ることが出来たという意味で面白い映画でした。

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コメント

No title

einhorn2233
恋さん、コメント&TBありがとうございます。あの結末は最初から決まってたのかしら、後から無理やりっぽさを感じてしまったので、こんな記事になっちゃいました。ソファへの思いは、私には強制送還の怖さほどのリアリティが感じられなかったのですが、そういうドラマ部分が、設定のリアリティについていけなかったのかなって気がします。ドラマ的でない教会のミサのシーンも大変印象的でしたし、ドキュメタリーの人なんだなってのは映画からも伝わってきました。

No title

ソファを運ぶドタバタは、静から動というより、結末に向わせるための花火、みたいな感じはありましたね~ ^^
でも、ソファが彼らのとても大事なもの・・・結局自分のものにはならないものだけれど・・・というところは、ちょっと切なくなっちゃいました。映像綺麗でしたね~ ^^ トラバさせて下さいませ。
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