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「脇役物語」は名脇役を主演にしている割には、イマイチ期待はずれのラブコメコピー

今回は新作の「脇役物語」をヒューマントラストシネマ有楽町1で観てきました。いわゆるミニシアターの作りですが、スクリーンはやや小さめ。有楽町駅のすぐ前で場所はいいのですが、私が行くときはあまりお客さんがいない。昔で言うと、有楽シネマあたりの位置になるのかしら。

有名劇作家松崎健太(津川雅彦)の息子で俳優をやってるヒロシ(益岡徹)は、脇役ばっかりやってきたせいか、街でよく別の人と間違われてしまう運のない人。初の主演作品(ウッディ・アレンの日本版リメイクですって)の話があったのに、忘れ物を議員の奥さんに届けたタイミングを写真に撮られて、不倫スキャンダルの相手にされてしまい、主役の話はなかったことになってしまいます。そんな意気消沈してるヒロシの前に現れたのが売れない女優のアヤ(永作博美)でして、元気キャラの彼女に魅かれる彼ですが、あんまり積極的になれません。一方、スキャンダルの汚名を晴らすには、議員の奥さんのホントの不倫相手を押さえればいいんだという理屈になって、奥さんのストーカーを始めちゃうヒロシ。一方、アヤは元彼が彼女の金を使い込んでたことが発覚、アパートを追い出されて、劇団の友人のところに転がり込みます。でも、ヒロシとの縁で、大作家である父親と知り合いになり、新しい芝居に出させてもらえそう、さらに夢みてたニューヨークでの演技修行の推薦書も書いてもらえることになります。さて、ヒロシとアヤの恋の行方はどうなるんでしょうって、これがベタな展開に......。

その昔、テレビドラマで菅原文太が刑事か何かの役で主演しているドラマで、竹井みどり演じる奥さんとの関係がうまくいかない新聞記者を演じて、すごく印象に残っているのが、この映画の主役益岡徹でした。それ以降もテレビ等で見るたびに気になる人でした。すごく脇役としての味わいがある役者さんでして、それが今度は映画の主役、そして脇役俳優を演じるということで興味が湧きまして、スクリーンに臨みました。原案、共同脚本、監督は緒方篤という人で、映像作家という肩書きらしく、「不老長寿」という短編を作っていて、今回の映画で、長編映画監督デビューだそうです。プロデューサーがニアリ・エリックという日本在住のアメリカ人で、映画の製作は今回が初めての人ということで、いわゆる娯楽映画の職人が作った映画ではないです。

全体に泥臭いドラマを作らないようにしようとしているのが伺えました。わざわざ、全編に英語字幕を入れちゃうあたりは、舶来偏重のいやらしさみたいのも感じさせるのですが、トータルなラインは、ハリウッドラブコメを日本人の設定で作りたかったんだなって気がします。議員夫人の携帯に仕掛けをして盗聴し、浮気の現場をつかもうとするドタバタは、向こうの俳優さんがやったら面白いんだろうなって思いましたもの。後、主人公が人違いされては、警察のご厄介になり、父親が引き取りにくるのを繰り返すパターンもなかなか面白く見ることができました。

正直、益岡徹が脇役俳優を演じるということで、結構な期待を持っていたのですが、あんまり、そっちの期待に沿ってくれる映画ではありませんでした。何でかって言うと、主人公が脇役俳優であるという設定が生きてないのですよ。自分が脇役俳優であることに、半端に否定的というキャラが、観客に共感を呼ばないのです。脇役俳優であることにそこそこプライドを持っている、あるいは逆に脇役にはもう飽き飽きしていて主役をやりたい、といった明確なキャラがあると、もう少し、主役を観客に方に近づけることができたように思いました。そこに、主人公松崎ヒロシのリアリティを持たせたのかもしれませんが、その先で展開するのが、ベタなラブコメ風ドラマなので、曖昧な人間のリアルなキャラはドラマを弾ませてくれないのです。

主人公二人の実年齢からすれば、アラフィフ男とアラフォー女なのに、物語はハリウッド風ラブコメという、ちょっと日本人の感覚からすると、不自然に感じられる部分もある映画です。益岡徹は、これまで演じた脇役的芝居でリアルに見せようとする部分が、ドラマと不一致になっていたように思います。その一方で、アヤ役の永作博美は、吹っ切れた演技が楽しかったです。女優しながら、酒屋でバイトをし、ニューヨークで演技修行をするという設定は、年齢的には20代中盤から後半といったところになるのでしょうか。エネルギッシュで頭の回転の早い若い女性というキャラをハイテンションで演じています。彼女の底抜けハイテンションがかなりこの映画を救っていまして、ラブコメという味わいが出たのは、彼女の熱演によるところが相当大きいです。津川雅彦演じる父親も、向こうのラブコメによく登場する、いい親御さんキャラですが、やはりテンション高い演技がラブコメに貢献していました。



この先は結末に触れますので、ご注意ください。



何だかんだあって、ヒロシは議員夫人の不倫現場の写真を撮ることに成功します。しかし、不倫相手に見咎められ、小競り合いになるのですが、そこに議員夫人が割って入り、ヒロシに土下座して、写真を返してくれと頼まれてしまいます。彼女の体にはアザがあって、どうやらダンナである議員に暴力を振るわれているらしく、若い恋人といる時が一番幸せそうな彼女を見て、写真を公表することをやめてしまい、主役の話もあきらめて、俳優事務所もやめちゃいます。そして、その事をアヤに告白するのですが、アヤはアヤで彼の父親からのサポートを断ると宣言しちゃうのでまたケンカになっちゃうのでした。

ところが、映画のキャスティングディレクターがヒロシの演技を認めてくれて、再び主役の話が降ってきます。さらに、ところが、ヒロシはその役をアヤに推薦して、結局アヤがウッディ・アレンの日本版リメイクの主役に選ばれちゃうのでした。で、アヤは今度は、ヒロシを脇役にゴリ押しして、二人は映画で共演することになるのでした。二人抱き合って、キスしてるところをカメラが彼らの周囲をぐるぐる回って、めでたしめでたし。

とまあ、二人を結びつけるきっかけになった父親の存在が最後まで二人の関係を引っ張ることになります。父親との関係を主人公二人が清算することで、二人は結ばれてハッピーエンド。ハッピーエンドの映画は好きですけど、アラフィフ、アラフォーカップルの恋愛模様にしては、ちょっと軽かったかなって感じ。若くない者同士のライトなラブコメでは、アメリカ製でも、古くは「グッバイガール」から「理想の恋人.com」とか、いい映画はいっぱいあるんですから、もっともっと向こうの映画からパクれるところがあったように思いました。

とまあ、文句の一つや二つも出てしまうのは、益岡徹という俳優さんは、こんなもんじゃない、もっともっと映画の中で生かせるのになあって思うからです。ラストの見ていて恥ずかしくなるラブシーンとか、そんなことより、もっとヒロシという人間に奥行きをつけられただろうにって気がしてしまうのですよ。永作博美のハイテンション演技も、正直、無理して、ハリウッドコメディ演出に合わせてる感じがしてまして、もっとナチュラルな演技の方が彼女は光るんじゃないかと思ってしまうのです。もし、この映画が、ハリウッドラブコメに匹敵する面白おかしい映画でしたら、そういう突っ込みも入らないのですが、ラブコメとしては弾みそこねた感がありまして、その分、このキャストで、こういう展開はもったいないって後味が残ってしまいました。

後、脇役の名優が、映画の脇役俳優役で主演していて「脇役物語」というタイトルがついてるのですから、この映画の中の脇役にも気を使ってよという余計な突っ込みも入れておきます。マネージャー役の佐藤蛾次郎、プロデューサー役の角替和枝、後輩役の江本佑ですとか、キャラをふくらませて欲しかったところです。

総合的にはそこそこの仕上がりでして、映画としては、きちんとまとまっていますので、上に書いてあるほど悪い印象を持たないでください。私としましては、益岡徹と永作博美という逸材が出ていると思えば、かなり面白い映画を期待してしまうのです。音楽担当のジェシカ・デ・ローイは、ハリウッドラブコメ風のライトな音作りをしていまして、ここだけは、職人的うまさを感じました。

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cartoucheさん、コメントありがとうございます。実際の脇役の名優に、脇役俳優を演じさせるという設定に、結構期待しちゃったのですが、残念ながら、その先で、映画作りがうまくまわらなかったみたいです。永作博美さんもかわいいだけじゃないキャラの奥行きが出せる人なのに、なんかもったいなあって感じの映画でした。

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わき役さんにスポットを当てた映画っていう設定が
とてもいいですね。
でも内容はちょっと・・のようで残念です。
ヒューマントラストシネマ有楽町1は立地もよく中もきれいで
私も好きな映画館ですが、そうそういつもお客さんが少ないので
心配になってしまいます。

No title

pu-koさん、コメントありがとうございます。いや、ホントに設定は面白いんですよ。役者もいいんだけど、作り手が役者や設定を生かしきってないってところがもどかしい感じでした。中年俳優を使うなら、その年齢にふさわしいドラマの作り方をしてほしいのですが、「ロミオとジュリエット」をアラフォー俳優がストレートに演じたらやっぱり無理があるだろうって、そんな感じなんです。

No title

設定が面白いですね~。
せっかくリアルな役割なのに、キャラ設定に迷いがあったのかしら。
確かに「なんとなく脇役いや」では、弱いかもしれませんね。
最近はハリウッドもアラフィフ アラフォーな俳優陣によるラブコメも多い(多分ラブコメやれる若手の実力者がいない)ので、中堅どころを活かした作品には何気に期待しちゃいます。

No title

恋さん、コメントありがとうございます。日本映画に英語字幕は正直ジャマですよ。つい読んじゃいますもの。まあ、日本語の英会話訳としては面白いかもしれないです。私も主演の二人はかなり好きなんですが、それに映画が追いついてないのが歯痒い感じでした。あまり、期待なさらずにご覧ください。

No title

ほ~全編に英語字幕が。。
どんな感じなのでしょうね、ちょっと今想像中ですが。
益岡さんは私も好きな役者さんです ^^ 眉毛がとてもいい感じなんですよね~♪永作さんも好きですし、音楽もいいということなので、多分上映はないでしょうけど(涙)DVDで観て見ます♪
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Author:einhorn2233
Yahooブログから引っ越してきました。静岡出身の横浜市民で映画とサントラのファンです。よろしくお願いいたします。

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