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「スリーピング・ビューティ 禁断の悦楽」は映画としての面白さがあります、説明するのは難しいけど。


今回は、新作の「スりーピング・ビューティ 禁断の悦び」を横浜ニューテアトルで観てきました。DLPによる上映でしたが、ビスタサイズでステレオ。でもサラウンドスピーカーは鳴っていないようでした。デジタル音響設備のない劇場でのDLPの音響ってどうなっているのかしら。

ルーシー(エミリー・ブラウニング)は、大学に通いながらも、オフィスでの仕事もし、ウェイトレスもやってます。大麻もやるし、刹那的に男と寝ることにも躊躇しない一方で、友人なのか恋人なのかバードマンという男の部屋にちょくちょく通っています。部屋を追い出されそうなこともあって、ルーシーはシルバーサービスという触れ込みの仕事の面接に行きます。時給もいいことから、その仕事をするようになるルーシー。でも、それは裸に近い下着姿で、老人たちのパーティの給仕をすることでした。そこはどうやら秘密クラブのようなところで、彼女以外にも、女性たちがより露出の多い格好で働いていました。オフィスをクビになり、お金にさらに困るようになった彼女に新しい仕事がきます。それは睡眠薬を飲んでベッドに何時間か眠ることでした。その間に何がなされているのか、彼女は知りません。いつしか、彼女はその仕事を何度もこなすようになる一方で、自分が何をされているのか知りたいと思うようになりました。

オーストラリアのジュリア・リーが脚本&監督した作品です。タイトルにクレジットはなかったのですが、川端康成の「眠れる美女」をベースにしたお話だとか。オーストラリア映画の名匠ジェーン・カンピオン提供となっていますが、クレジット中では、special thanksの扱いでした。

101分の時間は、ドラマチックな流れはなく、短いエピソードが淡々と綴られ、その中でルーシーのちょっとふわふわしたつかみどころのないキャラクターが見えてきます。学生なんだけど、オフィスでダラダラと仕事もしていて、ウェイトレスは割とがんばっているように見えます。そして、バーで男を引っ掛けて寝ることもしている。一方で、バードマンという病弱な男とはプラトニックな恋愛関係のように見える。このつかみどころのないルーシーの描写に、観客はどんどん引き込まれていきます。ジュリア・リーの演出は、淡々としているようで、そそるドラマを作ることに成功しています。何と言うかドラマとしての醍醐味が感じられるのです。これは、観る方によって異なる感じ方の一つですので、すべての人がそう感じるとは思えないのですが、この映画、私は大変面白く観ました。言葉で説明しきれないのですが、これは、一度ご覧になって感じていただきたいと思います。

さて、そんなルーシーが新しくついた仕事は、あくまで正業あっての副業だと、雇い主のクララから言われます。シルバーサービスという名目ですが、仕事は普通じゃありません。胸が見えちゃうような衣装で、金持ちの老人の食事会の給仕をするのです。他にも女性がいて、彼女たちはもっと露出のきつい衣装で給仕をしています。いわゆる、金持ちのエロ道楽要員とでも言いましょうか。それでも、セックスの相手をさせられるわけではありません。彼女の送り迎えをする運転手がいるのですが、彼がちょうど、結界の境目にいるような感じで、彼女を非日常の世界へと運んでいくという構図が面白いと思いました。

他の女性がかなりセクシーなのに比べると、ルーシーは、胸は小さいし体型も幼児体型で、どこか乙女っぽさを感じさせるところがあります。そこを見込まれたのかどうかはわかりませんが、彼女に別の仕事のオファーが来ます。ルーシーはそれを受けることになるのですが、それは睡眠薬を飲んで、全裸で眠ること。何かあるに違いないとルーシーは感じているのですが、ペイがいいので、その仕事を受けることになります。映画は、このあたりもドラマチックな展開は一切ありませんが、一つ一つのシーンを丁寧に描くことで独特の間と端正な流れを作ることに成功しています。こういう呼吸の映画を観ていると、何となくアートな気分になってくるから不思議です。語り過ぎないけど、じっくりと丁寧に見せるという方法そのものがストーリーの良し悪しを超えて、映画としての魅力を運んできます。



この先は結末に触れますのでご注意ください。



眠るルーシーのベッドをカメラは距離を置いてとらえています。そこへクララと客がやってきて、セックスや傷をつけるのはなし、それ以外をお好きにと説明があり、クララが去り、客の老人は服を脱ぎ始めます。ある老人は彼女に添い寝し、ある老人は彼女を言葉でなぶり、ある老人は彼女を持ち上げて振り回したりします。眠っている間は何が起こっているのか知らない彼女ですが、それが気になって、盗撮用の隠しカメラを買って、部屋の電気スタンドに仕掛けます。そこへやってきたのは初めて彼女と一緒に寝た老人でした。クララの作った薬を飲んで眠りにつく老人。時間が経ち、クララがやってきて、ルーシーの様子がおかしいのに気付いて、あわてて叩き起こすと、ルーシーは目を覚まします。そして、自分の横に冷たくなった老人がいるのに気付いて、大声を上げて泣き叫ぶルーシー。隠しカメラの捉えたルーシーと老人の映像になり、暗転、エンドクレジット。

最後の老人は、自殺の場所として、ルーシーの隣を選んだということのようです。しかし、そこにもドラマチックな要素はなく、静かに流れる時間だけが描写されます。眠るルーシーに、媚態といったものは感じられません。無垢な乙女がそこに横たわっているように見えます。sleeping beautyとはうまい表現だと思います。実際には、簡単に男と寝ちゃうようなヒロインなんですが、映画の中ではセックスシーンは登場しないということもあって、ルーシーの不思議な透明感が感じられる映画になっています。ルーシーという女性は、天使と娼婦の両方を持った、でも純粋な心も持った女性として描かれています。ある意味、存在感が希薄で、ふわふわと漂っているようにも見えるヒロインなんですが、そんなヒロインにこの仕事は妙にマッチしているようにも思えます。ベッドに横たわる彼女は、女性を主張しない、でもどこかにエロスを秘めています。ああこういうエロさが、アート映画としての、そそる要素なのだなと後になって気付かされました。彼女が眠るベッドを捉えた映像が一幅の絵になっているのも、映像としてのインパクト強いです。これは、撮影のジェフリー・シンプソンの功績でしょう。

ルーシーという女性は、共感を呼ぶとか、かわいいというタイプの女性ではないのですが、エイミー・ブラウニングは、その不思議な存在感を見事に演じきりました。彼女の横に寝る老人の一人にヒュー・キース・バーンがいたのにはびっくり。私の世代には「マッド・マックス」の敵役トーカッターとして忘れられない役者です。
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No title

もくれんさん、コメントありがとうございます。ジェーン・カンピオンの「ある貴婦人の肖像」と似た雰囲気がある映画です。お話は別物なんですが、どこか不思議な感覚が通ずるところがあったように思います。ことばであらすじを語るとつまらない映画みたいなんですが、本編の持つ不思議な魅力は、私の拙い筆では語りきれないです。機会あればお試し下さい。

No title

ジェーン・カンピオン!と思いましたが、監督ではないのですね。
不思議な感覚の映画ですね。
その感覚があうかどおかかな~って気もしますが、興味ありますね(^^ゞ

No title

pu-koさん、コメントありがとうございます。ヒロインは整った美形ではないのですが、どこか安らぎを与えるところがあります。そんな彼女が眠る姿に老人たちが感じるものは様々でした。どこが面白いのか説明が難しいのですが、とにかく映画として堪能できましたので、機会があれば、是非お試しください。今年のベストテン入り確実の一編でした。

No title

ポスターもいいですね。女優さんもとても奇麗。
老人たちは眠る彼女に何を求めたのかな?
天使?理解者?エロス?
記事読ませていただいてとっても観たくなりました。
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einhorn2233

Author:einhorn2233
Yahooブログから引っ越してきました。静岡出身の横浜市民で映画とサントラのファンです。よろしくお願いいたします。

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