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「フェイク・クライム」のビミョーな面白さは、観る人を選ぶかも。


今回は、新作の「フェイク・クライム」を横浜ブルク13シアター10で観て来ました。100席ちょっとの小さめの映画館なので、シネスコ上映だと上下だけ縮んじゃうのが残念。シネスコサイズは画面がでっかくなるからうれしいのですし、ワイドテレビとの差異をつけるためにシネスコサイズの映画になっているのに、画面が横に広がらないのは意味ないような気がします。

高速道路の料金所で働くヘンリー(キアヌ・リーブス)は夜勤明けに家に帰ると、そこに高校時代の友人エディがお腹こわした男ジョーと一緒にやってきて、ジョーの代わりに野球の試合に出てくれと言われて、他に二人も乗せて車を走らせます。銀行の前に止まると男たちはそのまま銀行強盗へ。車の中で待っていたヘンリーは、たまたま向かいのカフェにいた銀行警備員フランク(ビル・デューク)につかまって、銀行強盗として刑務所に送られてしまいます。服役中に妻のデビーはジョーとできてしまい、出所したヘンリーは帰るところもなくなります。そして、銀行の前でボーっとしてるところを車にはねられてしまいます。はねたのは女優のジュリー(ヴェラ・ファーミガ)で、銀行と隣接する劇場で「桜の園」の稽古中でした。ヘンリーはカフェのトイレで、かつて銀行の金庫室と劇場の間に密造酒を運ぶトンネルがあったという新聞記事を見つけ、そうだ「これがオレの夢だ」と目覚めてしまうのでした。刑務所で同房だったマックス(ジェームズ・カーン)を誘って、銀行の金庫室を襲おうとするヘンリー。交通事故が縁で仲良くなったジュリーに、ヘンリーは自分の夢を洗いざらい語ってしまいます。そして、トンネルがある部屋に入り込むために、ヘンリーは「桜の園」のロパーヒン役を演じる羽目になってしまうのでした。果たして、平凡な人生を送ってきたヘンリーの夢はかなうのでしょうか。

この映画の原題は「Henry's Crime」でして、「ヘンリーの犯罪」ということ。「フェイク・クライム」というのは、キアヌ主演の「フェイク・シティ」から取ったのでしょうけど、かなり安直。まあ、晩秋は、映画の在庫整理の時期ですから、公開する配給会社にもやる気がないのかなって感じです。この時期の映画は、あまり期待できないのが多いのですが、時に拾い物が見つかるので要注意です。それで、この映画はどうだったかというと、拾い物というほどの面白さまではいかないものの、珍品としての面白さを持った一品になっています。監督のマルコム・ベンビルという人は初めて聞く名前ですが、なかなか健闘していると思います。ただ、サーシャ・カヴァンによるストーリーに無理があったのが残念という感じでしょうか。

主人公のヘンリーは地味な男です。さらに、主体性がなくって、人に言われたことにすぐ左右されちゃいます。何を考えているのかわからないし、ひょっとしたら何も考えていないのかもしれないタイプ。わけもわからずに、銀行強盗の運転手にさせられ、自分だけ逮捕されても、エディの名前を言わずに自分だけ刑務所に入れられちゃいます。同房のマックスに夢を聞かれても「特にない」と答えてしまう。さらに、服役中に女房がジョーとできちゃっても文句一つ言いません。うーん、お人良しというのも違うような気がしてきます。とにかく、そんな感じでグダグダ感の強いヘンリーが、突然覚醒してしまい、銀行の金庫破りが夢だと張り切り始めてしまうのです。そして、服役中のマックスに面会に行って、一緒に自分の夢をかなえようと誘うのです。このあたりから、映画はオフビートなコメディの様相になってきます。ベンビルの演出は、キアヌをずっとアホみたいなキャラにしているのですが、そこを笑っていいのかどうか戸惑わせるところがあり、もっとキャラを立たせた方がわかりやすいドラマになったように思います。ボケに徹しきれないキアヌが半端に二枚目しているのですよ。

さて、ジュリーは、ロトのテレビCMに出ている女優だけど、もっと大女優になりたいと思っています。そんな彼女が今取り組んでいるのが舞台「桜の園」。そして、その劇場こそが、ヘンリーの夢をかなえるために必要な舞台だったのです。二人は意外と簡単にラブラブになっちゃうのですが、その後、ジュリーは、ヘンリーの夢に巻き込まれちゃうことになります。マックスは、銀行へのトンネルがある部屋が、ロパーヒン役の控え室だったところから、ロパーヒン役の役者にウソのオファーをして、舞台をキャンセルさせ、ヘンリーをロパーヒンに推薦するようにジュリーに頼むのでした。そして、なぜか演出家がヘンリーをロパーヒン役に使う気になっちゃうのですよ。そこで、ネズミ講に失敗したジョーを巻き込んで、控え室の壁を壊して、埋められていたトンネルを掘り返す作業に取り掛かります。

お話の展開としては悪くないのですが、何考えてるかわからない、ボーっとしてるヘンリーが舞台役者をやれちゃうってところに、相当無理がありまして、主人公がボケに徹することも、二枚目を演じきることもできない中途半端なキャラになっちゃいました。そのため、その先の展開が、説得力なくなってしまったのが残念でした。まあ、何考えてるのかよくわからないヘンリーに振り回されるマックスやジュリーのあたふたぶりを楽しむ映画なのかもしれません。この後、犯罪映画としても、ラブストーリーとしても、グダグダな展開になっていくのですが、そのグダグダさに、はまれば、結構楽しめる映画だと思います。展開がグダグダなので、キャラもハンパにしときましたというのであれば、さもありなんという気がしてきます。かなり、オフビートな味わいなので、普通の犯罪もの、あるいはコメディを期待すると「何じゃこりゃ」という気分になりますが、映画全体がボケをかましていると思えば、意外な面白さもあります。ただし、映画の宣伝文句である「信じたら、だまされる」を真に受けると、だまされるかも。



この先は結末に触れますのでご注意ください。



トンネル掘りを始めたヘンリー、ジョー、マックス。そこへ割り込んできたのがエディでして、分け前を取ろうと乗り込んできます。マックスとしては面白くないのですが、ヘンリーがエディに何も言い返せずに結局一味に加えちゃいます。そして、フランクが彼らに大金が金庫に入る日時を教えてくれるのですが、その日が舞台の初日だったので、ヘンリーちょっと困っちゃいます。どうやら、ヘンリーとしては、ジュリーに本気で惚れてしまったので、彼女を見捨ててずらかるのがつらくなってきたようなのです。それでも、決行の日はやってきます。ヘンリーが真面目にロパーヒンを演じている裏で、何とかトンネル掘りは間に合い、あっさりとお宝ゲットしてしまいます。しかし、予想にたがわずエディが独り占めしようと銃を持ち出すのですが、そこでつかみ合いになって、マックスがエディをとりおさえます。その時の流れ弾でヘンリーは負傷。マックスとジョーは金を運び出し、舞台を抜け出してきたヘンリーと一緒に車で走り出すのですが、ヘンリーが車を停めろと言い出します。そして、車を降りたヘンリーは舞台へと戻り、舞台上のジュリーにアドリブで愛の告白をします。舞台をめちゃくちゃにされて、唖然とするジュリーを抱き寄せるヘンリー、そして二人がキスする寸前で暗転、エンドクレジット。

金庫までトンネルを掘って、札束をせしめるまでには何のサスペンスもなく、あっけない展開でして、結局、そこがドラマの中心ではなく、ヘンリーが舞台へ引き返すところがクライマックスになっています。とはいえ、そこにドラマチックな葛藤があるわけではなく、「あ、やっぱ、俺、戻るわ」というノリなので、わざとクライマックスをはずしている感じなのです。舞台へ無理やり乗り込んだヘンリーはロパーヒンの役のままで、ジュリーに愛の言葉をぶつけます。これが、一応「桜の園」のストーリーとかぶっているのが、ちょっとおしゃれな趣向になっています。それまでボケ倒してきたヘンリーが、朗々と愛のセリフを語るところは意外と言えば意外ではあるのですが、そこで大笑いできるかというと、「微妙...」って感じなのです。でも、その「微妙...」という感じがこの映画の持ち味なのです。演技陣も、キアヌのボケぶりも勿論ですが、相手役のヴェラ・ファーミガもいつもの知的な美形という感じではなく、「微妙..」なキャラになっちゃっています。悪役の多いピーター・ストーメアはハイテンションな演出家を演じましたがこれも変なキャラになっています。ジェームズ・カーンだけが、映画の中でマトモな人として機能していまして、そこで、映画が若干引き締まったのですが、それも全体の空気に流されていました。観終わって、こういう映画もあるんだねという意味で、悪くはない出来栄えですが、どこがオススメポイントかと聞かれると、「うーん、微妙...」って感じかしら。
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No title

pu-koさん、コメント&TBありがとうございました。悪くはないけど、人に薦めるのはどうしよっかなー?って考えちゃうような映画でした。全部はずすんではなくて、どこかワンポイント決めてくると、ボケとのコントラストがついて、映画として締まったように思います。最後までボケに徹したのが、明らかに狙ってるとわかるだけに、微妙な感じになっちゃいました。

No title

私は前半のキアヌのボケっぷりがかなり好きだったんですが、後半はまじ「微妙..」でしたよね(笑)
脚本が無理矢理でしょうね~。
キアヌが舞台の台詞を驚くほどに上手くこなしてくれたら、ちょっと違ったかもだけどイマイチ。
それゆえクライマックスも「・・・。だから?」ってなもんでしたw
そうそう、カーンさんが引き締め役として上手さを発揮してましたね。
TBさせてくださいね。
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Yahooブログから引っ越してきました。静岡出身の横浜市民で映画とサントラのファンです。よろしくお願いいたします。

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